4-1 榊千鶴 異世界との邂逅
私は目が点になった。
この日。
訓練場のトラックを走っていたら、幼い女の子が二人……フラフラとやってきた。
危ないので注意をしようと思ったけど、その内の一人に見覚えがあるのに気づいた。
社さんだ。彼女は、香月副司令とよく一緒にいるし、なにか大切な用事があるのかもしれない。
でも……もう一人はよく知らない子供。初めて見る。
まぁ、面識はあまりないにせよ社さんが一緒なのがわかったので、とりあえずあまり気にしていなかった。
それに、私たちは、もっと訓練をして強くならなくてはいけない。自分達には余裕がない。
要件があるなら、訓練兵の私ではなく神宮寺軍曹が対応す――
「セートアーップ!!」
「!?」
社さんと一緒にやってきた女の子は……急に発光したかと思うと……何故か白色のドレス?
……いや、私にはよく形容できない服装になっていた。なにあれ?
あと、社さんの頭の毛がピコっと動いたのは……茜の髪の毛みたいなものかしら?
いえ、まぁ、それはどうでもいいの。多少びっくりはした。けど、そこまで驚きはしなかったと思うわ。たぶん。
……だが、次の瞬間。
「あ、やっぱり飛べるんだ~!(フワワ~)」
……?
……え、飛べるの? 飛べたの人類? ……どういうことかしら?
いやいや、そういうことじゃなくて……新しい強化装備?
「速ーい!!(ビュンビュン!!)」
30秒くらいかしら。
私の脳は思考することを拒絶していたかもしれない。だけど、それは分隊全員がそうだった。
ふと我に返ると、女の子は私たちが必死に走るトラックを、凄まじいスピード(ギュンギュン)で飛び回っていた。
私は、唖然と棒立ちしていた。玉瀬なんかは、口から涎が垂れていた。
訓練を止めてボーっとしている私たち分隊を叱責するはずの神宮寺軍曹も目が点になっていた。
しかし、神妙な表情と姿勢を取ったまま硬直していたのは、さすが教官だわ。尊敬します。
あの子の連れの社さんも……(わかりにくいけど)身動き一つせずに停止していたと思う。
空をとぶ彼女の靴にピンク色の羽が見えるのは……なにかしら、あれ。
それに彼女が持っている杖? 新しいスナイパーライフルかしら。えらく可愛らしいのね……。
戦術機も凄いモノだと思ったけど……あれは……どういうモノと表現するのかしら。
……ごくり。
それにしても……と、とんでもない新兵器を開発したものね……さすが国連だわ。バイリンガル。
伊達に自由を信奉していないし、形には、全く囚われてはいないってことなのね。
……そういえば、少し前に茜から聞いたことがあるわ。
訓練兵の衛士はわざと恥ずかしい強化装備を着させられることがあるって。
もしかして、その1つ? 恥ずかしいってこういう……あ、悪趣味だわ。
……でも、強化装備ってすごいものなのね。あ、珠瀬辺りなら上手く着こなして――
……私達の脳がとろけてバターになってしまうところだったが、(奇跡的に)通りかかった香月博士がこの事態に気づき、空を飛んでいた少女を回収してくれた。
よかった。本当によかった――! 常識は取り戻されたのだ!!
「いい!? まりも、これは絶対に誰にも言わないで。
これは私の……そう、研究の重要な……重要な? あーもう!……とにかくそういうことだから! いいわね?」
「そういうことなの~!」
「「……」」
場違いだけど、笑顔がすごくかわいい子ね。
でも、博士の渋そうな顔にはちょっと同情するものがあるようにも思う。
あと、絶対に動じないと思っていた御剣さんを含め、
分隊全員から視線で答えを求められたけど……こういう時だけ妙な団結を見せないで欲しい。
教官でさえ困惑の表情を浮かべているのに、この私にどうしろというのか。
現実はかくもしょっぱいと言うことを、そろそろ認識して欲しほしいだわ。
その結束力は、あの無人島のときに出して欲しいものよ。ほんとに。
……最後に。
夕日のせいか、女の子を連れて訓練場を後にする香月博士の背中が少し煤けてみえた。
実験とは、辛いものなのですね……。がんばってください。香月博士。
4-2 社霞 その日の夜
なんだろう。
(飛べるんだ~)
なんだろう。
(はやーい)
「……かっこいいです」