5-2 珠瀬 はぢめてのスターライト
「ま、まただ……」
ザワザワ……。
否応無しに、訓練部隊の内にも動揺が広がってしまう。
昨日の出来事はすべて夢だったって、B分隊内で初めての円満解決をした所なのにっ……!
どうして、夢の中の人物(だったことにした幼女)がまた私の前に姿を現しちゃうの……っ!?
「ねぇ、タマちゃん。射撃って、アレを射ってるの? すごいすごいの!」
「え? う、うん。そうだよ」
あれ、何で私の名前知ってるの? それにタマちゃんって……猫みたいだ。
あ! 榊さん、いつの間にか私と一番遠い所で射撃練習しようとしてる!!
というか、みんなジリジリ距離をとってません!? ひどいです……。
「……あの、えっと、そうだけど……。もしかして……その手に持ってるはライフルで、試射するの?」
「ライフル? これ? ……っ! そうなの!」
私は射撃が得意だったばかりに……この子の手にあった銃らしきものに話題をふってしまった。
……ふってしまったのだ。
「この銃なら私でも、あの的も当てられると思うの!」
「ええっ!? 本当ですか!? すごいです!
一番遠い的すごい難しいのに……あの、私、撃つところを見学しててよいですか?」
「うん。いいの! 上手くいくか分からないけど……なのは、がんばります!」
なのは? 名前なのかな?
そんな事を考えてると、やっぱりあの白いドレスのような服に着替え……たのかな?
次世代の強化装備って、不思議なギミックで着替えられるんだなぁ。すごい……けど、あんまり着たいとは思わない。
それから、その子は、すぅ……っと、軽く深呼吸するように息をすると……。
「バスターッ!!!!(ゴバッ!!)」
「ッ……!!!??!?」
かわいらしいライフルの銃口……とは思えないけど、ともかくその先端から、ものすごいサイズの桃色の光線が発射された。
その桃色の光線は、重光線級の BETA のものと比較して何倍くらいになるんだろう。
よく分からないけど、とにかく視界は目一杯桃色の光だけで……冗談みたいに世界は暗転してしまって……。
世界の終わりかと思ったよ。
的の向こうにある山に直撃したピンク色の砲撃が、プリンかピーナッツバターみたいにどろりと抉る姿が見えました。
……桃色の光線は、射撃場も根こそぎ吹き飛ばした。
当然、的なんて端から端まで全部吹き飛んでしまいました……。
それどころか、射撃線上の大地を抉って……裏山の向こうの景色ってあんな感じだったんだぁ。
「あれ? 思ったよりすごい威力なの。控えめにしたつもりだったのに。
でも、ほら! 一番遠い的もたぶん全部撃ち落とした! パーフェクトなの! ストライク?」
「っっ!!? 射撃は一発で複数の的を吹っ飛ばしたりしないよ!?
あの……も、もしかして今の対師団用のものすごいミサイルでしたか……? あの私……私……」
「え? 大丈夫だって~。この銃使い捨てじゃないよ。
あれくらいの砲撃なら、まだまだ弾切れなんてしないよ。もう一回撃ってみる?」
「ダ、ダメ! あ、あ、あうあうあ~……」
私は射撃は得意だし、本当はみんなよりうまいって自信があった。
だから、新しいこの“銃”もきっと何か分かるような……そんな気がしてた。
でもそれは、大きな勘違いでした。
……射撃って、なんだったんだろうなぁ。精密狙撃ってなんなんだろう。
もう、うかつに知らない人と話したりなんて絶対しないよ。
5-2 夕呼 どうしてこうなった
……。ちょっと目を離した隙にこれだわ。昼過ぎ、横浜基地に緊急コードが発令された。
あの小憎らしい子供のせいで。
それ自体すぐに解除されたのだけど……変なことになったものだ。
「ちょっと夕呼! あなたよね!? あの社さんと一緒にきた子が砲撃したモノを作ったの!
とんでもない代物だわ……! あれなら BETA にも勝てる!」
「……ちょっと、まりも。大げさよ」
(緊急コード発令の原因になった)基地の監視映像は私も見た。
射撃場から射撃の的に目がけて砲撃をした……あの子の姿。嫌な予感がした。
ここで再生を止めるべきだった。
(ザザッ……バスターー!!! ……ッッザザザザザザ!!)
「……ッ!」
映像がとんでもなく乱れた。そして、後には、異常なまでの砲撃の跡が。
……なにあれ。
凄乃皇の荷電粒子砲でもあそこまで吹っ飛ばせないわね。
仮に日本の電力全てをかき集めて、それを陽電子砲撃にして砲撃しても……それでも届きそうもないわね。
……なにあれ。
その上、あれだけの砲撃を極々間近で行ったにも関わらず、まりもや訓練兵に異常は見られない。
……なにあれ。
「……ぐすっ、ありがとう夕呼っ。今日はっきりと確信したわ。あんなすごいものを作るのが夕呼の仕事だったのねっ……!
あれなら、日本は救われる……っ! BETA なんかに絶対負けないわ……!」
「……」
なるほど。あの抉られた裏山を佐渡島ハイブに見えたわけね。なるほど。
なんでかしら。かける言葉が見つからないわ。
……あれがオルタネイティヴ4? 冗談じゃないわ。冗談じゃないけど……
私はオルタネイティヴ4を成功したとしても、“これ”以上の感動をまりもに与えることができると……いいんだけどな。
「……とりあえず、他言は禁止よ」
「あっ、ええっ、そうよね。
私ったら、取り乱しちゃって……でも、本当にありがとう……っ!」
ぶわわっと再び大きく涙するまりも。
まりもの最大限の感謝の言葉だけに……すごい胸が苦しい。
こんなに、いたたまれない絶賛を受けることになるなんて……っ!
5-3 月詠中尉 冥夜樣……おいたわしや
「冥夜樣……私たちが至らないばかりに……。
国連軍に来たのはそれほどの心労を感じていたとは……慣れない環境は辛いとは思いますが……」
「ッ……!? 違うのだ月詠! 本当なのだ!
本当に年端もいかぬ幼女が空を舞っていたのだ!」
なんということだ。
私たちが冥夜樣に距離をおいていたばかりに、冥夜樣……。