新たな仲間を……あら、葉巻?   作:上新粉

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悲劇の提督(二人目)
ま、自業自得じゃないですかね?

あ、それと「早速ですが〜」の後書きにてあら、葉巻?のイメージを追記しておきました。
凡そイメージ通りに作れた気がします。


大本営が決めたルールはきちんと守りましょう。

「ちぃっ、武蔵達は一体何をやっているんだ!」

 

昨日から連絡の取れない武蔵達に苛立ちを募らせていた男は怒りに任せて先程から机を何度も叩いていた。

 

その様子に一時的に秘書艦を任命されていた吹雪は怯えつつも滞らない様に書類を捌いている。

 

「おいっ!いつまでちんたらやってんだ!早く終わらせて奴らを探してこんか!!」

 

「ぅ……!ご、ごめんなさいっ!」

 

だがそんな吹雪の何が癪に触ったのか、男は手に持ってい万年筆を激昴のままに彼女へ投げ付けて叱責した。

 

「くそっ、何奴も此奴も無能共が……噂の発生時期からしてもアレの練度などたかが知れてるだろうが!」

 

精鋭艦隊である武蔵達第一艦隊が低練度のたった一隻の艦に負けるなど万一にも考えて居ないその男は、武蔵達が自身の命令を無視したものだと考え憤慨しているのだ。

 

そんな張り詰めた空気の中にノックの音が鳴り渡る。

 

「はぁ〜、やっとか……入れ。さあ武蔵、言い訳を聞かせてもらおうか」

 

だが扉を開けて入って来たのは男がよく知る顔ではなかった。

 

門輪(かどわ)提督。貴方ですね?艦娘達に私の誘拐を命令したのは」

 

「なっ……誰だ貴様はっ!どうやって入った!!」

 

門輪は突然の侵入者に慌てて立ち上がり腰に付けた拳銃を構える。

 

吹雪も門輪を庇うように間に入って連装砲を構えた。

 

しかし不幸な事に戦場を知らぬ男とは違い、一瞬の誤りが死に直結する駆逐艦である吹雪には相対した瞬間に相手の力量が自身を遥かに越えている事を理解してしまっていた。

 

「(勝てない……だけど司令官だけでも逃がさなきゃ!)」

 

一瞬たりとも気の抜けない吹雪とは裏腹にあら、葉巻?は落ち着いた口調で話し始める。

 

「ああ、紹介が遅れました。私、柱島泊地第四鎮守府所属あら、葉巻?と申します」

 

「アラ、ハマキ?そうかっ、お前が例のっ!くくく……いや、良く来たな。私がこの柱島泊地第一鎮守府提督の門輪だ、宜しく頼むぞ」

 

あら、葉巻?が武蔵達によって連れてこられたと勘違いした門輪は拳銃をホルスターにしまい前に立つ吹雪を押し退けると、彼女に歩み寄ると先程までとは打って変わり満面の笑みで右手を差し出した。

 

「司令か━━っ!」

 

吹雪が慌てて引き留めようとするが、時すでに遅く次の瞬間には門輪の肘から先は勢いよく天井へ叩き付けられていた。

 

「…………なっ……なああぁぁあぁぁっ!!?」

 

「生憎ですが、自分の手を汚さず部下に誘拐をやらせる様な腐った方と交わす握手など御座いませんので」

 

「ぐぅぅぅ……きっさまぁぁぁぁ!艦娘の分際でぇぇぇ!!撃てぇ吹雪ぃ!」

 

「ひっ……は、はい!」

 

目の前の存在は恐ろしい。

 

でも司令官も怒ってて怖いし、なにより艦娘ならば司令官を守らなきゃ行けない。

 

立て続けの恐怖に駆られ、既に正常な判断が出来ない吹雪は目を瞑りながらも門輪の指示通りに主砲の引き金を引こうとする。

 

しかし……

 

「吹雪ちゃん、でしたか?敵わぬと知ってなお司令官を護ろうとするその心意気はとても素晴らしいです。ですが護るべき司令官がこれでは……腐敗を除いたら直ぐに帰りますので少しこのまま大人しくしていてくださいね?」

 

「あ…………はい」

 

いつの間にか目の前に立っていたあら、葉巻?は徐に吹雪を右腕で優しく抱き抱えると耳を覆い外の音が聞こえない様にする。

 

吹雪は自身が苦しくならない様に気遣いつつ抱き締められている事と初めて認められた事による多幸感で、先程までの恐怖が嘘の様に取り払われて行くのを感じていた。

 

「何をしてる吹雪っ!さっさとそいつを殺せぇぇ!」

 

「吹雪ちゃんには貴方の声は届きませんよ。勿論、貴方の断末魔もね?」

 

「くっ……誰か居ないのか!提督が襲撃を受けているんだぞ!!」

 

「騒がしかった方なら皆黙らせてあげましたよ?」

 

「なっ、我が艦隊を全滅させてきたというのか……」

 

あら、葉巻?は門輪の問いに薄い微笑みで返す。

 

その返答の意味する所に気付いた門輪は漸く自分がやぶ蛇をつついてしまった事を理解したのであった。

 

「す、済まないっ!金輪際二度と関わらない事を誓う!だ、だから……命だけは……」

 

「私と艦長の間で判決は既に出ていますので、それでは……さようなら」

 

断罪の女神の持つ左腕の丸鋸は顔面を真っ青にして祈るように跪く愚かな男の頭上から一切の慈悲無く振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうもこんばんは、休暇は二日だけの予定でしたが急遽別の用事が出来たので灰瀬提督達に無理言ってもう一日開けて貰ったあら、葉巻?です。

まぁ、言ってしまえば二日目の案件の後始末ですね。

言っておきますが今回は艦長公認の作戦ですので私一人の我儘ではありませんよ?

どうやら今回の件を他の鎮守府への見せしめとして活用されるそうですね。

 

流石艦長、転んでもタダでは起きない人です。

 

「という訳でこの事も艦長の作戦として頂けませんかね?」

 

「何がという訳か知らねぇが却下だ。どうにかしたきゃ自分で説得しな」

 

むむむ、提督なら直ぐに認めてくれそうですが……問題はお偉いさんなんですよねぇ。

 

まぁ、何が起きたのか話せば長くなるのですが……。

 

「アラハマキさん……あの、やっぱりお邪魔……です……か?」

 

「そんな事ないですよ?吹雪ちゃん、貴女は心配しなくて大丈夫ですから」

 

「は、はいっ!ありがとうございます!」

 

えと、まぁもう解るかと思います。

 

はい、確かに私が吹雪達の司令官を葬った筈なんですが……恨まれる所か何故かとても懐かれてしまいました。

とはいえ艦娘の引き抜きは禁止されてるのは以前天龍さ……天龍が仰ってたのを忘れてはいません。

なので置いて帰ろうとしたのですが……余りにも悲しそうな顔をされるので無下にも出来ずつい連れてきてしまったという次第です。

 

因みに武蔵さん達を含め第一鎮守府の艦娘は()()()()全員無事でしたので鎮守府に残り新しい提督の指導を行う事になるそうです。

 

そっちに関しては直接関係がある事ではないので、私達がどうこうする事はないのですが。

 

ただ吹雪ちゃんに関しては私達……いえ、私がどうにか話を着けなければなりません。

 

それでもどうにもならなければ、残念ですが戻って頂くほかありませんが。

 

まあ、取り敢えずは灰瀬提督に相談しましょう。

 

「へ?第一鎮守府から連れてきた……ってどういう事なの?門輪中将は……っていやいやそれ以前の問題よね」

 

「ええと、艦長?今回の件は提督に話しても良いのでしょうか」

 

「……ま、良いだろ。灰瀬提督も関わる話だからな」

 

艦長からの了承を得たので私は提督にこの三日間の出来事を掻い摘んで話しました。

 

「え、と……じゃあ門輪中将は……」

 

「二階級特進……は将官には認められてないんでしたか」

 

「……そう」

 

私にはどうという事のない話ですが、同じ人間である灰瀬提督には余り気分の良い話では無かったようですね。

 

戦中の国の軍属でしたら日常茶飯事だと思うのですが……まあ理解と納得は別問題と言う事でしょうか。

 

「お聞き苦しい話をしてしまい申し訳ありませんでした」

 

「いえ、いいのよ。貴方達は私や鎮守府の皆に被害が及ばないように動いてくれたんだもの。責めるつもりなんてないわ」

 

「有難う御座います。ですが誰かの為であろうとも思う所があれば仰って下さいね?」

 

それで思い悩み過ぎて倒れられたら元帥が全艦隊連れて突撃しかねませんので、提督には是非とも無理をなさらないで頂きたいです。

 

「えぇ、それでその時に秘書艦だったその子を連れてきたと」

 

「いえ、えとその……はい」

 

流石の提督も頭を悩ませていました。

ルール的には引き取る訳には行かないのですが、それを私の袖を掴んで小刻みに震える彼女に伝えるのは心情的に憚られたのでしょう。

 

とは言え、提督にルールを破らせる訳にもいきませんので他に何か方法が無いか吹雪ちゃんに聞いてみる事にしました。

 

「吹雪ちゃん?貴女は海軍の艦娘に関する取り決めは知ってますか」

 

「えっと、はい!武蔵さんが出撃してる間の秘書艦を普段から任されていましたので多少なら」

 

「そうですか。なら艦娘が転属出来る条件と言うものはありますか?」

 

「転属……ですか?そうですね……」

 

吹雪は暫く考え込んでいましたが、やがて思い付いたかの様に顔を上げました。

 

「あっ!そう言えば司令官不在の鎮守府の艦娘は本来大本営に集めてから防衛戦力として各鎮守府に派遣される事になってるんです!」

 

防衛戦力?それぞれの鎮守府から防衛に割り当てている訳では無いのですね。

 

「して、派遣される艦娘はこちらで指定出来るものなのでしょうか?」

 

「えと、そこまでは……すみません」

 

「充分ですよ、お陰で解決の糸口が見えてきました。提督、今からお伝えする事を元帥に書面でご報告えますか?」

 

「ええ、それは構わないけど……どうするの?」

 

私が提督に書いて頂いた内容をかるくまとめるとこんな感じですね。

 

今回の門輪中将殺害は彼の秘書艦の証言から提示した条件に反する可能性が推測される為、吹雪を防衛班への派遣という名目の下アラハマキの監視に付かせる事を所望します。

 

これで吹雪ちゃんは私の監視役として常に近くに居ても問題は無いですし、彼女が無事でいる限り私の身の潔白を証明し続ける事にもなります。

 

まあ実際は苦し紛れの言い訳も良い所ですが……ま、お孫さんからの陳情なら後はどうにかしてくれるでしょう。

何はともあれこうして無事に帰って参りましたので金剛さんから引き継ぐとしましょうか。

 

「金剛さん、朝潮さん。三日間ありがとうございました。お陰で充分に発散出来ました」

 

「問題ナッシング!流石に一人で沖ノ島沖の哨戒任務を終わらせてしまったのはショッキングだったけどネー?」

 

本来は燃料や弾薬補給の為に帰投と出撃を繰り返して攻略とするそうですが、燃料切れが起きないからと私が噴進砲の弾切れギリギリまで暴れ回っていたせいで沖ノ島沖の深海棲艦達が一時的に制海権を手放したそうです。

 

ですがあの辺りは暫くすると再び制海権が奪われてしまうので定期的に哨戒が必要らしいので、暫くは楽しめそうですね。

 

「あぁ!アラハマキさん!貴女損傷を受けてるじゃないですか!」

 

逸れた思考を戻しつつ金剛さんに感謝を述べて交代しようと思っていると、僅かに煤けた頬や腕に気付いた朝潮さんが声を上げた。

 

損傷と言っても耐久の0.1%程度のものなので気にする必要も無いと思うのですが朝潮さん達はそうは思わないらしいです。

 

提督は素早く入渠指示を出して朝潮さんは私と吹雪の手を引っ張って入渠ドックへと一目散に歩いて行くのでした。

 




Q.あら、葉巻?の耐久ってどれくらい?

A.WSG2Pのultra hard仕様なので120,000となっております。
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