A.WSG2Pの難易度に関係して下記の様に定めております。
VERYEASY →Lv1 -9 未改装
EASY →Lv10-29 未改装
NORMAL →Lv30-69 一次改装済
HARD →Lv70-75 二次改装済
VERYHARD →Lv76-89 二次改装済
ULTRAHARD→Lv90-99 二次改装済◀本作のあら、葉巻?
「ではこれで失礼しますが……確りと直してきてくださいね?絶対ですよ!」
入渠ドックに到着すると朝潮さんは再三念を押してから元来た道を戻っていきました。
「そこまで念を押されなくても……まぁ兎に角、行きましょうか吹雪ちゃん」
「はっ、はい!!」
うん、元気が良い様で何よりです。
さてこちらの入渠ドックと呼ばれる施設ですが人が使うお風呂を模してる……というより普通にお風呂も付いてるそうです。
ですが私は部屋のシャワーを提督の後に使用していた為、今回が初めてで少しばかり緊張しています。
相も変わらず着脱に手間の掛かる衣服を脱ぎ、彼女に倣い小さなタオルを手に奥へと入っていきます。
「おぉ、凄い熱気と湯気ですね」
「アラハマキさんは入渠ドックは初めてなんですか?」
「はい。こちらに来てから損傷する様な事はありませんでしたし、平時は部屋のシャワーをお借りしてましたから」
「そうなんですかっ?なら私が入渠ドックの中を案内してあげます!」
「え、えぇ。それではお願いします」
とはいえ、見渡せば端々まで見えるのですが余りにも嬉しそうに説明していく彼女に水を差すのも躊躇われるので大人しく話を聞く事にしました。
「身体を洗ったらこちらが入渠ドックですっ」
「説明ありがとう吹雪ちゃん、助かりました」
吹雪ちゃんに感謝を伝えてから、入渠用の四つに独立した浴槽の内の一つに入り肩まで浸かります。
「ふぃ〜……お風呂というものも悪くありませんね」
これだけ心地良いのでしたら入渠以外でも偶にはゆっくり浸かりたい所です。
後程提督にも相談するとしましょう。
湯船を存分に堪能しながらそんな事を考えていましたが、吹雪ちゃんがいつまでたっても風呂に入ろうとせずに何か言いたげにしていたので取り敢えず入る様に勧めます。
「一緒に入らないんですか?」
「へっ?ホ、ホントに一緒に入って良いんですか!?」
ええと、何に食いついたのかは知りませんがそもそも私が許可するものでは無いかと。
「まぁ、艦娘が風邪を引くかは知りませんが何かあってはいけませんから」
「は、はいっ!では失礼しますっ!」
彼女は非常に目を輝かせて返事をすると、そっと入ってきました……私と同じ湯船に。
「……吹雪ちゃん?他の場所も空いてますよ?」
「えと……駄目……ですか?」
駄目かどうかと聞かれると困ってしまいますね。
私としては彼女一人くらいなら別に窮屈でもありませんが、あくまでも入渠施設なので一つの設備に二人の艦娘が入るのは果たしてどうなんでしょうか?
「……すみません、やっぱり私……お邪魔ですよね」
うーん……まぁ何か影響が無いかについては上がった後確認するとしますか。
「そんな事ありませんよ。いらっしゃい、吹雪ちゃん」
「アラハマキさん……っ!ありがとうございます!」
「わぷっ!?」
こっちに来るように言うと吹雪ちゃんは溢れんばかりの笑顔で私へと飛び付いて来ました。
彼女が起こした飛沫が目に滲みますが取り敢えず目を瞑って堪えましょう。
それよりも気になる事がありますから……。
「えへへ……♪」
「ふぅ……所で、貴女はどうして無理を承知で私に付いて来たの?私は貴女の目の前で司令官を殺害したのですよ」
普通なら恨んでも可笑しくありませんし、恐らくあちらの鎮守府の中でも私を憎んでる方は少なからず居るでしょう。
その中でも彼女は目の前で司令官を殺されてるのに憎む所か私でも解るくらいに懐いています。
全てが私の寝首を搔く為だとすればそれはそれで驚異的な演技力と執念ですけど。
暫く沈黙を貫いていた吹雪ちゃんでしたが、意を決したかの様にぽつりぽつりと話し始めました。
「確かに私の中で司令官は全てでした。初期艦として着任した当時からずっと司令官の為に頑張って来たんです……」
吹雪ちゃんから話を聞いていくとあの男は着任当初から最低な人間だったらしく、何か都合が悪い事が起きたり吹雪ちゃん達のちょっとしたミスとも言えない物にも腹を立てて事ある毎に彼女達を殴り付けて居た様です。
更には資金の為に誘拐や密輸等の犯罪行為を指示し、その罪を艦娘の独断に仕立てあげ自分だけ上手く逃れたりもしていたらしいです。
他にも彼女が話したあの男の最低な行為を上げればキリがありません。
本当に悪運の強い奴です、もし今の話を先に聞いていれば簡単には死なせなかったのでしょうに。
「それでもっ、いつかは褒めてくれると思って頑張ったんです!」
辛い日々を思い出したのか身体を震わせる彼女を抱き寄せて背中をさすり続けました。
「ずっと……司令官を思ってきたんですね」
「ひぐっ……はい……でも、アラハマキさんが抱きしめて……褒めてくれた時に気付いたんです…………司令官が褒めてくれなかったのは当たり前なんだって……司令官は私達を道具としか見てなかったんですから」
道具なら用途通りに使えるのが当然、それが出来ないのは欠陥品……ですか。
確かに艦娘を艦船として扱うのなら褒める事は稀ですが……。
「吹雪……貴女に言うことでは無いかも知れませんが、門輪中将は艦娘を道具では無く奴隷の如く扱う正真正銘の屑です」
「アラハマキ……さん?」
「艦娘は道具。その考え自体を否定するつもりはありません」
下手な馴れ合いが大事な場面での決断を鈍らせる要因になる事だってあるでしょうしね。
「ですが道具として扱うなら行った事に対しては所有者が責任を持つのが当然ですし、ましてや自分の命とも言える道具に当たるなんで論外です。ですからそんな奴の事で思い悩むなど無駄な事はもうやめましょう」
「えと……はい」
あっ……少し捲し立て過ぎましたかね。
あの男の事を考えるなって言ってる私が腹を立てていては話になりませんね。あの男はもう死んだのですから。
「っとすみません、少し熱くなってしまいましたね。ともかく此処の提督は優しい方ですし、それに私も居ますからもう心配しなくても大丈夫ですよ」
「アラハマキさん……うぅ……ひっぐ……う、うあぁぁぁぁぁん!」
吹雪の頭を肩に引き寄せて撫でて上げると、彼女は堰を切ったように大声で泣きだしました。
感情……艦娘として命を持った事による変化。
それを弊害と取るか美点と取るかは指揮を執る人間次第、という事でしょうか。
私はその事に感謝していますし、吹雪にもそう思える様になってほしいですね。
そんな未来の事を想いながら彼女が泣き止むのを静かに待ち続けました。
30分程して吹雪も落ち着きを取り戻し始めた頃、アラート音と共に浴槽の上に付けられた赤色回転灯が光り出しました。
「ん?ねぇ吹雪、このランプはどういう意味ですか?」
「えっ?えと、これは修復完了のアラートですっ」
修復完了という事はもう上がっても良いんでしょうか?
もう少し浸かっていたい気もしますが提督達を待たせていますので上がるとしましょう。
「それでは上がりましょうか」
私が出ようと立ち上がった時、今度は先程とは違うアラートがなり始めました。
そして直ぐに入渠ドックへ放送が入った。
『吹雪さんっ!貴女アラハマキさんと同じドックに入ってますね!』
「はっ、はいぃ!」
『一つの入渠ドックに二人も入ってたら妖精さんが間違えるでしょう!今のは貴女の修復完了の合図だからさっさと出なさいっ!』
「ご、ごめんなさいっ!今出ますぅ!アラハマキさん、ありがとうございました!それでは後程お会いしましょう!」
吹雪は慌てて浴槽を出ると私に頭を下げてそそくさと出ていきました。
あぁ、やっぱり駄目でしたか。
そんな気はしていましたが……それより。
私は入渠ドックに取り付けられた無線機で朝潮さんへ繋ぎました。
「所で朝潮さん。私は何時まで入っていれば宜しいのですか?」
朝潮さんは暫く押し黙った後、諦めたかの様に答えました。
『2日、正確に言えば残り49時間と2分です』
「……はぁ」
図らずも私の休みが二日間追加された瞬間でした。
次からは出撃は一日にしましょう。
そう決意した瞬間でした。
★誰得なおまけ★
あら、葉巻?の入渠時間計算式
総入渠時間:49時間30分55秒
倍率:2.79
(Lv * 5 + [ √(Lv - 11) ] * 10 + 50) * 倍率 * 減少HP + 30 (秒)
(99*5+[√(99-11)]*10+50)*2.79*100+30 (秒)
(495+93.8+50)*2.79*100+30 (秒)
178,225.2+30 (秒)
178,255.2
※Wikipedia参照
※倍率は入渠時間から割り出しましたが四捨五入している為、一部計算が合わない場合が御座います。
因みにこの計算だと耐久1の時に入渠すると6年10ヵ月15日8時間41分10秒掛かります。
……上がる頃には第二次世界大戦終わってますね。