認めたくなかった……
信じたくなかった……
けれどそれは残酷なまでに現実で……
黒い雷球を放つ彼女は間違いなく提督であり、そして超兵器。
私は荒覇吐を庇い艤装の一部が消滅しながらも妹の無事に安堵した。
私の電磁防壁を突破し艤装を消滅させたあの兵器は恐らく反物質砲と呼ばれるものでしょう。
そんなものを載せた兵器などあちらの世界では数える程しか居ません。
即ちそれは彼女こそがアマテラスの言うフィンブルヴィンテルである事の証明となっていました。
何故……どうして。
それでも私は彼女を信じたかった、何か事情があるのではと思いたかったのですが……
彼女は答えてはくれませんでした。
本当に……本当に残念です。
私は貴女を信じたかった……けど、やはり貴女は私を信じるつもりはないんですね。
「提督。いえ、フィンブルヴィンテル……貴女は此処で終わりです」
「ごめんなさい、アラハマキさん。だけど……」
もう良いですよ。もう取り繕わなくても良いんです。
貴女が自分の意思で妹達を殺そうと言うのなら……
127mm,406mmガトリング砲全門の外部動力を起動。
対艦ミサイル全二十四門装填完了。
クリプトンレーザーの混合ガス充填中。
荷電粒子砲及び拡散荷電粒子砲の粒子加速器を起動。
超兵器機関制限解除、出力120%。
「あら、葉巻?これより殲滅を開始します……ふふ」
さあ、貴女に関わる全ての物に終焉を与えましょう。
「うふふ?あははははっ!!!」
「アラハマキさ──んぐっ!?」
あら?全力って突っ込んたつもりですが差程損傷が見られないなんて……うふふっ、流石は究極超兵器ですね!!
私は全力の突進で吹き飛んだフィンブルヴィンテルへ荷電粒子砲と406mmガトリング砲で追い討ちを掛ける。
しかしその多くか彼女の対空パルスレーザーによって迎撃されてしまいました。
ならばと私は再び接近し私達姉妹が最も得意とする艦艇としては有り得ない超近接戦闘へと移行しました。
幾ら究極超兵器と言えど接近戦ではこちらの方が分が有りますよ?
「うっ、ぐぅ!アラ……ハマキ……さんっ……話……を!」
「話?話ならしてるじゃないですか!全てを使ってねっ!!アハハハハッ!」
防御重力場でどうにか致命傷は避けてる様ですが、果たして何時まで続きますかねぇ!
「私……わっ……貴女と戦うつもりは……っつ!!」
「アハ、私の妹にそれを撃っておきながら戦うつもりがないとは笑わせてくれますね!」
「そ、それは……それ以外に私には彼女を止める事は出来なかったから……」
「……?ならば私とも戦う理由は充分じゃないですかぁ。それとも私など全力を出さずとも止められるとでもお考えで?」
「け、けど……」
むぅ……?何を躊躇してるのか解りませんねぇ。
私達は兵器、であれば例え味方であろうと害をなすのであれば撃滅するのが当然でしょうに。
「はぁ〜あ、少しは楽しめると思いましたが……これなら鳳翔さんや赤城さん達の方がまだ楽しめますね。フィンブルヴィンテル、貴女には失望しました」
まともに戦う気が無いならこっちにも手がありますよ。
私は両腕のドリルで乱れ突きながら全兵装をフィンブルヴィンテルへと構えました。
「うふふふふ?死なない程度に壊してあげます、ねっ!」
そう言って私は全ての火力を一点に集中させて放ち続けました。
流石に究極超兵器の名は伊達では無いようで、集中砲火を受けてなお沈むことなく立っている姿には賞賛を送っておきましょう。
ですがすぐに動けるかどうかは別問題ですね。
私は動けずにいる彼女を置いて標的をノロノロと鎮守府へ向かってる艦娘へ定めました。
「やっ、待ってアラハマキさん!!」
「あははっ!待ちませんよぉ?見せてあげますね、これが貴女が望んだ結末ですよ!」
「痛っ……ぅ……!」
「痛いですか?苦しいですかぁ?でも安心してください。直ぐに痛みなど感じなくなりますからねっ」
直ぐに追い付き左腕の艤装を格納した私はその腕で緑色のポニーテールを掴んで引き寄せる。
痛みに顔を歪ませる少女の顔へドリルの先端を突き立てたその時、ふと彼女が胸元に抱える何かが目に止まりました。
血……?なんでしょうか……この胸がざわめく感じは……。
「その手を……退けなさい」
「いや、けど……」
「次はないですよ?さあ、退けなさい!」
語気を強めて再度命令すると少女は観念した様にその手の中を見せてくれました。
だが彼女が抱えていたのは……。
「かん……ちょう……?」
これは……どうしたというのですか?
そんな、これでは今にも死んで……死……?
「あ……ああ…………」
誰が一体……誰が……荒覇吐……?いえ、そもそも私が勝手な事をしなければこんな事には。
私が……私……が…………私が私がワタシがワタシがワタシがワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガワタシガ────
「ああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
「ア、アラハマキさんっ!」
脅威を取り除かないと艦長を助けないと全て沈めて艦長を助けなきゃ!
「艦長に仇なす者は全て壊してしまわなければ……全て!」
「っるせぇ……よ、バカ、葉巻?」
い、今の声は……!?
「か……艦長っ!?待ってて下さい!直ぐに周囲の奴らを殲滅して救護室へ連れてきますからっ!」
「っはぁ……はぁ……よく聞けバカ、戦闘態勢解除……だ。そして荒覇吐達にも伝えろ。戦闘は終了だってな……ぐっ、反対する……なら、力ずくでも言う事を聞かせろ」
「し、しかしっ!」
「その後の事は俺が全部何とかしてやる……だから……いいな?」
艦長は私に指示を出すだけ出すと再び気を失ってしまいました。
早く艦長を治療しないと手遅れになってしまう、その為にも争って居る場合では無い。
しかし……彼女は私達を欺き、あまつさえ荒覇吐に反物質砲を放ったのに。
よしんば理由があったとしても彼女がした事も私がした事も無かった事になる訳ではありません。
そんな私が彼女に赦しを請い助けを求める?
彼女が私を赦すとは思えません。
ですが艦長は後の事は任せろと言いました。ならば私が成すべき事は艦長の指示に従う事、そして艦長を救う事だけです。
私にとって艦長の指示とその命こそが最優先ですから。
私は直ぐに二人に通信を繋ぎ伝えました。
「荒覇吐、アマテラス、戦闘態勢を解きこちらに来て下さい」
『分かったわ!マキお姉ちゃんっ!』
『……承知しましたわ、お姉様』
素直に聞いてくれて助かりました。
後は、二人が来るまでに伝えておきましょう。
私は苦痛を浮かべながら膝を着く彼女に近付き、深々と頭を下げました。
「フィ……いえ、灰瀬提督。此度の叛逆行為の数々、許されるとは考えておりません。私はどんな処分でもお受けしますので、妹達は見逃して下さい。それと……艦長をどうか、どうかお救い下さい」
誰が何と言おうとあの人の居ない世界など最早考えられません。
あの人が私の艦長だったからこそ今の私が居るのですから。
「…………夕張、荒さんをこっちに」
「えと……はいっ!」
「アラハマキさん、貴方達の処遇は追って伝えます。先ずは荒さんの救命が最優先ですので付いてきて下さい」
「……っ!感謝します」
私はそのままの姿勢のまま感謝を伝えた後、合流してきた妹達に事情を伝え50knotで進む灰瀬提督へと続きました。
艦長、後は任せましたからね。
絶対に助からないと赦しませんよ。