新たな仲間を……あら、葉巻?   作:上新粉

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それぞれの事情

鎮守府に戻り即座に荒葉輔を救護班の妖精達に引き渡した灰瀬はあら、葉巻?らを連れて応接間へと向かった。

勿論それは灰瀬が事情を説明する為でもあり、荒覇吐達の今に至るまでの経緯を聞く為でもあった。

 

大きめのテーブルを挟んでそれぞれ向かい合って座る。

灰瀬の隣には少し遅れて到着した夕張、あら、葉巻?の両隣には荒覇吐とアマテラスがあら、葉巻?の腕にそれぞれ組み付いて灰瀬を睨み付けている。

あら、葉巻?は隣の二人を気にとめずに早速本題を切り出した。

 

「灰瀬提督……いえ、ここは敢えてフィンブルヴィンテルとお呼びしましょう。フィンブルヴィンテル、貴女は私達の事を何処まで知ってるんですか?」

 

あら、葉巻?は真剣な目で灰瀬の事を真っ直ぐに見つめる。

灰瀬もこれ以上隠しても無駄だと考えあら、葉巻?の瞳に視線を合わせて答え始める。

 

「……結論から言えば貴女達の生まれや経緯に関しては全く知らないわ。私が知ってるのはこの鎮守府でのアラハマキさんと貴女からきいたアマテラスさんの事、そしてここ最近海軍に伝わっていた荒覇吐さんと思われる艦娘についての情報くらいね」

 

「そうですか……ではウィルキアという国に聞き覚えはありませんか?」

 

「ウィルキア?申し訳無いけれど記憶に無いわ」

 

あら、葉巻?は灰瀬の一挙一動を見逃さない様に観察するも、虚偽を述べてる様には思えなかった。

故にあら、葉巻?は考える。

この世界は自分たちの知る世界の並行世界でウィルキアは目立たない一小国のまま、若しくは存在せず更には超兵器機関の存在すらヴァイセン・ベルガー1人によって完全に秘匿された世界である可能性が高いと。

とはいえ、ヴァイセンベルガーの狙いが分からない以上灰瀬の言葉を鵜呑みには出来ない。

だから少しでも判断材料を得る為にあら、葉巻?は荒覇吐達にも問い掛ける。

 

「荒覇吐、アマテラス。逆にあなた達はフィンブルヴィンテル達の情報を手に入れたのかしら?いくらなんでも名前だけで決め付けたとは言わないわよね」

 

「勿論ですわお姉様。私達に情報を渡したのは私達をこの世界に連れてきた存在ですわ」

 

「この世界に連れてきた存在……まさかあなた達を連れてきたのも!?」

 

「多分マキ?お姉ちゃんの考えてる奴と一緒だよ。というかそんなデタラメな存在が複数居るなんて考えたくないってのもあるけど」

 

あら、葉巻?だけでなく、荒覇吐とアマテラスもこの世界に連れてきた存在に当たりは付けていた。

そしてそれは必然的に目の前の究極超兵器に対する警戒を引き上げる要因となっている。

だが、一方であら、葉巻?は件の存在は彼女ではないとも感じていた。

 

「(もしかしたらそうじゃないと信じたいだけかもしれませんが……自分に矛を向けさせる理由も現段階ではハッキリしません)」

 

あら、葉巻?が思案に耽っていると、今度は灰瀬の方から質問が来る。

 

「アラハマキさん、貴女の世界での私とヴァイセンベルガーがどのような存在だったか教えて貰えませんか」

 

「私の世界の……ですか。いいでしょう」

 

あら、葉巻?はフィンブルヴィンテルに関して、フリードリヒ・ヴァイセンベルガーという男が行ってきた所業を自身の知る限り伝えた。

 

 

 

 

 

 

全てを聞き終えた灰瀬は苦虫を噛み潰したように顔を歪めていたが、やがて息をゆっくりと吐くとおもむろに口を開いた。

 

「皆さんが私達に対して悪感情を抱いていた理由は解りました。私から話しても信用はされないでしょうが、お爺ちゃ……この世界のヴァイセンベルガーは件の存在とは全くの別人です。そもそも私は内戦中の国の廃村で拾われ、その時は自分が人間でないことすら知りませんでした。それでも元帥は私の事を本当の孫の様に溺愛してくれましたから」

 

灰瀬は頬を赤く染めて薄く微笑んだ後、顔を引き締め直して真剣な表情で続けた。

 

「それに……私がアラハマキさん達と同じ存在だと分かったのはアラハマキさんがこの鎮守府に来る少し前ですから」

 

「なっ……!?そんな与太話信じられるわけありませんわ!ですよねマキ?姉様!」

 

声を荒らげるアマテラスだが、その意見は至極真っ当である。

だが……と、あら、葉巻?は頭を悩ませる。

あの譜院という男には嘗て見たヴァイセンベルガーのような他者を全てを見下したような傲慢さは感じられなかった。

勿論、それらが全て演技である可能性も捨てられないがそれを含めてもあら、葉巻?には到底同一人物には思えないのだ。

 

「……いいでしょう。そもそもそれを信じるか否かは私ではなく艦長が判断する事」

 

「お姉ちゃん!?」

 

「マキ?姉様!?」

 

自身に関わる判断を艦長に委ねる。

それは艦艇であれば当然とも言えるが、艦娘となり自由を得た荒覇吐やアマテラスからすればやはり信じられないものだろう。

 

そんな二人の反応に思う所が無い訳でもないあら、葉巻?だが、今はそれよりも優先して聞いておきたい事が残っていた。

 

「提督、貴女が私達をこの世界に連れてきたどうかについては答えを聞いた所で信用する要素がありませんので聞きませんし、私の処遇も先程話したようにどんな事でも甘んじで受け入れるつもりです。なので一つだけ答えてください。自分の正体が私と同じだと判明した時点で正体を明かさなかったのはどうしてですか?」

 

あら、葉巻?が行った質問は灰瀬提督を……この世界のフィンブルヴィンテルがあら、葉巻?に取って信用するにあたいするか否かを確かめる為のものであった。

 

その答えは……

 

「……怖かったの」

 

「怖い……ですか?まさか究極超兵器である貴女がいち超兵器である私を恐れていたなんて事はぬかしませんよね?」

 

「私からしたら貴女達も十分脅威ではあるけどそういう事ではないの。私が最も恐れたのは……皆が私の正体を知って離れていってしまう事」

 

「雑魚と一緒にいたいから自分を弱く見せるってこと?何それバカなの?しぬの?」

 

「それ程の力を持ちながら……筆舌に尽くし難い程の愚物ですね」

 

それは妹達が即座に唾棄するような物言いであったが、あら、葉巻?には思う所があった。

 

「(孤立する事を恐れる心ですか……確かに元の世界では知る由もありませんでしたが、今なら何となく理解出来ます。もしも艦長に見放されたらと考えたら居ても立っても居られませんし、事実それが現実のものになりそうだったから私は冷静で居られなかったのでしょう)」

 

ここ数日感じていた焦燥感の正体、そして今回の暴走の根底にはそのような恐怖心があった事をあら、葉巻?は初めて実感していた。

とはいえそれだけで目の前の超兵器を信用出来る程あの世界でのフィンブルヴィンテルの存在は小さくはない。

だからこそ彼女は自身が最も信頼出来る者の判断を信じる事に決めたのだ。

 

「(宣言通りに後の事は任せますよ艦長……)わかりました、では私からこれ以上言う事はありません。灰瀬提督……艦長と妹達の事は何卒お願い致します」

 

「分かってる、決して悪い様にはしないわ」

 

「……では、私達は指示があるまで部屋で待機しております。行きますよ、アマテラス、荒覇吐」

 

「うん、わかった!」

 

「……マキ?姉様がそうお決めになられたのなら私は従うだけですわ」

 

灰瀬の返事を聞いたあら、葉巻?は安心したような柔らかい笑みを浮かべ部屋を後にした。

そんな彼女に続いて二人とも応接間から出ていくと、途端に張りつめていた空気が緩む。

あら、葉巻?は別としてアマテラス達から常に当てられ続ける殺気は予想以上に気力を削っていたらしく、灰瀬はだらしなくソファの背もたれに寄りかかりながら大きくため息をついた。

 

「はぁぁぁ~……良かったぁ」

 

だが、無意識に口から零れたその言葉には緊張や危機から解放された以上の意味が込められていた。

 

 

 




これにて一先ず未完とさせて頂きます!
これを見ている方がどれだけいるかは分かりませんがここまでご愛読頂きありがとうございました!





もしかしたらまたひっそりと再開する可能性も無きにしも非ず……です。
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