A.核融合動力(超兵器機関)なので基本的に水でも飲んどきゃ燃料補給は必要ないです。
Q.じゃあ飯抜きで良くね?
A.あら、葉巻?「自重しますのでそれだけはお赦し下さいお願いします」
食堂での一件の後、直ぐに執務室に呼び出された私は艦長にその場で正座をさせられて第二回説教会を受けていました。
「おいおい、人がテメェの為に動いてるっつうのに足を引っ張ってくれやがってよぉ。どうしてくれんだああ?」
「申し開きも御座いません」
食堂からの報告を聞いて灰瀬提督も苦笑いを浮かべている。
それでもあれ程素晴らしいものをお腹一杯頂けたのですから後悔はしていませんっ。
「なぁんだそのアホ面は?ちゃんと反省してんのかこら!」
「は、はいっ!それはもう、海より深く反省していますとも!」
「……はぁ、なら罰としてこれから輸送船団の護衛任務に行ってもらう。詳細は灰瀬提督が話してくれる」
艦長は諦めた様な溜息を吐きつつ私の頭頂部へと飛び乗りました。
バトンを渡された灰瀬提督は一つ咳払いをされると任務内容を説明して下さいました。
内容を簡単に纏めると私が消費してしまった食糧諸々の補給を緊急的に要請する事になったのでそれの護衛をして欲しいとの事でした。
「──と、言うわけで龍田を除く第二艦隊の皆と行ってきて貰えるかしら」
成程、確かにこれは私が行かなければなりませんね。
「護衛任務謹んで拝命致します」
「あと俺から一言。大食らいな戦艦としてお前の名前は大本営には伝わっている。面倒事に巻き込まれる可能性は十分有り得るから覚悟しておけよ?」
まぁ訳を話さなければ緊急的な補給が認められる筈ありませんか。
さしずめ今回の任務は報告内容の事実確認と顔合わせと言った所でしょうか。
「仔細承知しました。それではこれより任務に入ります」
私は灰瀬提督に敬礼を向けると、執務室を後に出撃ドックと向かいました。
場所は分かるのかって?
もちろん分かりませんので通り掛かった黒髪ストレートの真面目そうな少女に案内して頂きました。
送って下さった彼女(朝潮さんと言ってました)にお礼を伝えて出撃ドックへと入ると既に指示を受けた第二艦隊の皆さんが待っていました。
私は全員の視線がこちらに向いている事を確認すると深く頭を下げた。
「皆さん、この度は大変ご迷惑をお掛けしました。特に天龍さん、今回のお支払いは必ず致しますので何卒御容赦下さいませ」
「言い回しがうさんくせぇ」
肩に掴まりながら失礼な事を呟く艦長を無視して頭を下げ続ける。
「気にしなくて良いって。ま、でも気になんならいつか飯でも奢ってくれや」
天龍さん……!なんて素晴らしい方なんでしょうか。
一生付いて行きます姉さん!
*あら、葉巻?は飯で釣れるチョロインだった。
なんでしょうか?いま不快な声が聞こえた気がしましたが。
まあいいでしょう、皆さんをお待たせしてしまってますから。
「はいっ、ありがとうございます天龍さん!そしてお待たせしました皆さん。本日は改めて宜しくお願いします」
今一度お辞儀をすると艤装を展開し、準備完了の旨を伝えます。
「よしっ、それじゃあお前ら!いつも通り気を引き締めて行くぞ!第二艦隊抜錨っ!」
「「抜錨っ!」」
掛け声と共に一斉にドックを飛び出して行きました。
護衛対象の下まで向かっている途中、艦長とこの世界で得た情報を共有していました。
「どうやらお前が沈めたあの砲を積んだ黒いヤツらが人類と戦ってる深海棲艦ってので、奴等に対抗出来る存在ってのが今の俺みたいな見た目の妖精とそいつらが造るあいつら艦娘って事らしい」
「という事はこの世界には艦の姿をした軍艦は存在しないのですか?」
「いや、存在はするがその兵装では損傷を与えられないそうだ」
「深海棲艦……奴らは何処かの国に所属しているのでしょうか」
「それは考えにくいな。奴らは世界中に出没しているようだし、その中で明らかに利を得てる国があれば直ぐに特定されてるだろう」
何処の国にも属さず、世界中を敵に回して暴れ回る組織。
ウィルキア解放軍……いや、彼等とは全く立場も勢力も違うかも知れない。
だが彼等も国を離れ世界の大半を敵に回して理想の為に孤軍奮闘の活躍を見せていると聞いていた。
ウィルキア解放軍とは結局戦う機会は無かったけれど近しいと思われる存在と今度は大手を振って戦えるのか。
「ははっ、随分と獰猛な笑みを浮かべてんじゃねぇか」
艦長に言われて漸く自身の口角が吊り上がっていた事に気付く。
いけないいけない、平穏に暮らしたい筈なのに兵器としての本能が思わず求めてしまう。
私は口元を引き締め直す。
「忘れて下さい。少し別の事を考えていましたので」
「隠す必要はねぇよ。お前が戦いを求めるのはそれが兵器としての本分だからだ。本能と理性、どっちも含めてお前はお前なんだよ」
戦いを求めてるとか、ひとをまるで
まあでも……そうですね。
私は超兵器なのですから戦いを求めるのはしょうがない事なのかも知れません。
「了解です。それでは戦う事の出来る平穏な生活を目指すとしましょう」
「なんだそりゃ?滅茶苦茶な目標だな。だが、嫌いじゃねぇ。精々俺も付き合ってやるよ」
「よろしくお願いしますね、艦長?」
「ああ、所でそっちはなんか有益な情報はあったか?」
「あ……」
どうしましょうか。今さっき艦長に言われるまで情報収集の事なんて忘れてました……なんて言ったらこの場で第三回臨時説教会が開催されてしまいます。
考えに考え抜いた上で最重要事項があった事をを思い出した。
「そうですっ!カレーライスと言う食事は素晴らしいものでした!」
「…………」
直後、いやな沈黙に包まれる。
不味いっ!このままでは説教会が開かれてしまう!
思考を高速回転させてこの場を逃れる方法を考える。
その時、私のメモリに一筋の電流が走る!
「あっ、天龍さん!深海棲艦ってどうして私達と戦うのでしょうか!?」
不意に話を振られた天龍は驚きつつも頭を掻きながら少し考えた後、自身の考えを述べてくれました。
「そうだなぁ、艦の怨念だとかあっちにも提督が居てそいつが世界を手中に収める為にとか色々言われてるが……正直俺にはなんだって構わねぇ、俺は護りたい奴らの為に戦う。その上で分かる事がありゃそれでいい」
「ふふっ、そうですね。考えすぎて護るべき方を護れなくては本末転倒ですからね。良い考えだと思います」
考える事、求める事は大事ですが優先順位は定めておくべきですね。
「へへっ、そう言われっと照れるな━━っと、今回の護衛対象が見えてきたぜ」
天龍さんの言葉を受けて視線を前に向けると二隻の輸送船が見えてきました。
まだそこそこ距離がありますがこの身体だと随分大きく見えますね。
近付くに連れてその大きさははっきりとしていき、目の前に着く頃には空を見上げるようにしないと船首が見えない程の大きさとなっていた。
「はぁ〜、これは大きいですねぇ?」
「ああ、つっても排水量は重巡級だけどな」
重巡級という事は10000t程度と言う事でしょうか。
これで……そうすると嘗ての私は人間からしたら島が170knot超で動いてる様に見えたのでしょうか。
……我ながら恐ろしいですね。艦長もよくそんなものに乗っていましたね。
「流石です艦長」
「あ?いきなりなんだよ」
「いえ、改めて艦長は凄いなと思っただけです」
「はぁ?まあ良いが取り敢えず挨拶して来いよ」
おっと、よく見たら甲板に人が縄梯子を降ろしてますね。
天龍さんが縄梯子をつたって登っていくので私も後に続きます。
駆逐艦の皆さんは海上で周囲を警戒されるようです。
縄梯子を登り切るとそこでは作業員と思われる艦長と同い年位の男が待っていました。
「どうも。早速ですが艦内で
その言葉に天龍さんは不思議そうな顔を浮かべるが待っているのは灰瀬提督よりも位の高い相手であるため何も言わずに後に続いた。
私もその後に続き、艦内の一室へと招かれた。
「梁田少将。柱島泊地第四鎮守府の方々をお連れしました」
「通せ」
「はっ!それではこちらへ」
作業服の男に通された部屋は補給艦には似つかわしくない豪勢に装飾されており、中央にはこれまた豪華な硝子机を挟んだ奥のソファーに白髪の初老の男性がもたれかかっていました。
「失礼しますっ、柱島泊地第四鎮守府第二艦隊旗艦天龍。僚艦のアラ=ハマキ?と共に参りました!」
「ご紹介に与りました戦艦あら、葉巻?と申します。本日付で柱島泊地第四鎮守府に配属となりました。以後お見知りおきを」
「わざわざ済まないね。アラハマキ君に話があったものでね、そこに座って楽にしてくれて構わないよ」
天龍さんに続き少将の前で敬礼を向けたまま名乗り終えると、少将は柔らかい口調でソファーに腰掛けるように薦めた。
その際、艦長が眉を顰めて居たのが気になったけれど天龍さんが座ったので私も座る事にした。
「さて、回りくどい話は苦手でね。単刀直入に聞こう。アラハマキ君、私の鎮守府に来い。あんな新米がやってる様な所より私の所の方が国に貢献出来るぞ?」
「少将さんよ、艦娘の引き抜きは禁止されてる筈だぜ?」
天龍さんは握り拳を抑えながら少将に進言する。
だが少将はそれがどうしたとでも言わんばかりの尊大な態度で返答した。
「それくらい知っているさ、だがお前ら程度の鎮守府でそいつを運用出来るのか?一回の補給で鎮守府半月分の食糧を食うのだろう?」
「うっ……確かに今はまだ20人弱の小さな鎮守府だけどよ。それでも此奴はうちに来てくれた大切な仲間だ!はいそうですかと見放すつもりはねぇ!」
姉さんっ!カッコ良すぎます!
初対面でお茶目な艦娘で片付けちゃってごめんなさい!
……ですが向こうには大食らいな戦艦としか伝わってないはずでは?
そんな私を態々直接出向いてまで引き入れようとするなんて変わった方ですね。
「ふん、余計な手間を掛けさせるな」
そう言って少将が指を鳴らすと同時に二人の艦娘と思わしき女性がどこからとも無く現われ私と天龍さんに銃口を突き付けて来ました。
「おいおい、こんなので俺らを脅してるつもりか?」
「もちろん、その弾頭は妖精印の特別製でな。演習に使われる模擬弾の弾頭をと同じに出来ている物だ」
「つまりこれでヘッドを撃たれればユー達は人間のガールも同然ネー」
「勝手な行動は赦しません!」
「ちっ、そいつは厄介だな」
模擬弾と言うのがどれ程の物か分かりませんが下手に動くべきではありませんか。
だからと言ってこんな男の所には行きたくありません。
私はそっと艦長に目配せすると艦長は肩を竦めつつも私の頭の上に飛び乗って注目を集めました。
「梁田少将、だったか?」
「む?妖精がなんの様だ」
「その弾頭、演習で使ってる物だって言ってたがお前らん所の演習ってのは一発当たっただけで動けなくなるようなクソ仕様なのか?」
「はは、そんな訳なかろう?だがこの距離から頭部に一撃でも入れば戦艦でも一撃で轟沈判定は免れんだろうな」
「そうか……おい!あら、葉巻?、そこの二人を抑えろ」
「はぁ」
対人戦闘の心得は無いのですが、艦長の考えは把握しました。
「金剛、榛名、やれ」
「了解しましたっ!」
私が動き出そうと足に力を込めた直後、先に動いた榛名が天龍さんを撃ちました。
「ぐぅっ……ちくしょう、が……!」
「天龍さんっ!?」
「グッナイ、ビッグイーターガール」
そして続け様に金剛が私の額へと引き金を引きました。
Q.ウィルキア解放軍に負けたやろうが!
A.グレた末弟以外は彼らが解放軍である事は知りません。(あくまでタイマンは末弟の独断なので)
Q.演習用の模擬弾って?
A.艤装と機関にのみ影響を及ぼす特殊な電磁波を発生させる弾頭です。(過去作品からの設定持ち込み)