初登場の深海棲艦達「解せぬ」
誤字報告ありがとうございますっ!
何度も読み返してから投稿しているのですが、その度に書き直したくなってしまうんですよね。
ま、まぁ……気を付けます。
翌朝、私は早速明石に取り次いで貰い鳳翔さんの自室へお邪魔しております。
因みに艦長は情報を集めるとか何とか言って足早に出ていってしまいました。
明石曰く紳士らしいです。
それは兎も角こちらの鳳翔さんですがどうやら既に前線を退いているとはいえ今は灰瀬提督の補佐と空母艦娘の指導に加え、柱島泊地内で小料理屋を開いているという非常に多忙なお方だそうです。
そんな中で貴重な時間を割いて着付けを教えて頂いたその御恩に報いる為、私は指揮管制装置を総動員させて早々に着付けを覚えると代わりに付きっきりでお手伝いをさせて頂く事にしました。
「鳳翔さん、本日はご教授頂き本当に有難うございました」
「そんな、こちらこそ本日は宜しくお願いしますね?」
「はいっ、宜しくお願い致します」
そうして鳳翔さんと共に部屋を出ますと、まず初めに向かったのは弓道場でした。
因みに提督の補佐は秘書艦の朝潮さんが仕事を一通り覚えたので今はたまに様子を見に行く程度だそうです。
道場の中へ入ると既に二人の方が真剣な眼差しで弓を構えておりました。
「…………」
その張り詰めた雰囲気に思わず息を呑む。
その直後、二人の手から続けざまに放たれた矢はそれぞれの的の中心を寸分違わす撃ち抜いてました。
「おぉ……素晴らしい腕前ですね」
弓道に明るくない私でもその技術が洗練された物である事は理解出来た。
「貴女は……?」
「あ、失礼しました。私はドロップ艦として昨日こちらの鎮守府に配属となりましたあら、葉巻?と申します。本日は鳳翔さんのお手伝いとして参りました。どうぞ宜しくお願い致します」
「……アラハマキさんね、私は正規空母の加賀よ。宜しく」
「私は赤城です、宜しくお願いしますねアラハマキさん?」
私のお辞儀に続いて赤城さんがお辞儀を返してくださいました。
加賀さんは照れているのでしょうか?そっぽを向いてしまいました。
「ふふっ、では赤城さん加賀さん。今日は折角アラハマキさんも居らっしゃる事ですし演習形式で訓練を行いましょうか」
え、演習ですか?
戦うのは構わないのですが……私はどうすれば良いのでしょうか。
「アラハマキさん、対空は出来ますか?」
「対空……まぁ、取り敢えずは出来ますが」
ガトリング砲を載せてますからね。
「では正面海域まで出ましょうか、内容は道すがら説明しますね」
訓練内容を纏めるとこんな感じです。
赤城さんと加賀さんがそれぞれ私と一対一で演習を行います。
但し、通常の演習と違い私の攻撃対象は航空機のみで私が艦載機を全機撃墜するか私の轟沈判定で演習終了という事らしいです。
ただ、このままでは流石に不公平ですので鳳翔さんに一つ提案する事にしました。
「鳳翔さん。終了条件の1つを私の轟沈判定から雷撃又は爆撃の直撃弾一発に変更して頂けますか?」
「……っ!嘗められたものね」
「アラハマキさん……」
いえ、決して彼女達の練度を侮っている訳ではありませんよ?
それでも動かない砲台を相手にするなら私じゃなくても良いですし、折角なら私でしか出来ない訓練の方が良いかと思いましてね。
という建前は置いといて、要は私も楽しみたいんです。
それにこの身体での戦闘にも慣れておきたいので赤城さん達には初めから全力で来て頂けるよう煽らせて頂きます。
「さあさあ遠慮は無用です。私に当ててみなさい?出来るものならね」
「ふん、鎧袖一触よ。後悔させてあげるわ」
「こーら、アラハマキさん?自信があるのは良いですが横柄な態度は頂けませんよ?」
うっ……少しやり過ぎたでしょうか。
鳳翔さんの笑顔に何故か寒気を覚えるので此処までにしておきますか。
「失礼しました……ですが失望させませんのでその条件でお願いします」
「通常の演習でも新入りの子になんか負けないわ」
「加賀さん?こんな軽い挑発に乗るなんて貴女らしくないですよ?」
「……すみません鳳翔さん。アラハマキさん、貴女が良いのならその条件でお受けします」
加賀さんが条件を飲んで下さった所で鳳翔さんは改めてルールを説明して下さいました。
「それでは今回の演習は、アラハマキさんに直撃弾一発が命中又は艦載機の全機撃墜を確認した時点で終了とします。よろしいですか?」
「はい」
「問題ありません」
「それではお互いに位置に着いたら開始の合図を出しますね」
鳳翔さんが指定したポイントまで移動しながら嬉々として演習の準備を進めていました。
先ずは電磁防壁と防御重力場を解除して〜
127mmに模擬弾を装填して〜
あ、後は戦闘状況を仮定しておきましょう。
電磁防壁及び防御重力場は機能停止、こちらに残された兵装は残弾6000の127mmガトリング砲のみ。
相手は反物質弾頭を搭載した大量の航空機で一撃でも直撃すれば轟沈必須。
勝利条件は敵航空機の全機撃墜のみ。
ふふふふふ……これは燃えてきました。
艦長抜きで始めてしまうのが申し訳ない位ですね。
ですがお待たせする訳にも行きませんから今回は我慢して貰いましょう。
「こちらあら、葉巻?。指定の地点に到着致しました」
『こっちも到着しました』
『それではアラハマキさん対加賀さんの演習を始めます。試合開始っ』
鳳翔さんの合図によって遂に戦いの火蓋か切って落とされました。
早速電探を起動させると既に二中隊がこちらへと向かって来ていました。
発艦方法は矢が変化するそうですが……なるほど、流石に慣れてるようですね。
ですがあれだけなら一気に突っ込めば!
私は一気に最高速まで加速し艦載機との距離を詰めます。
そして片舷五門の127mmガトリング砲を艦載機へ二秒間浴びせると二中隊は瞬く間に落ちていきました。
「っと、流石に近付き過ぎですね。一旦下がりましょうか」
一旦距離を置いてから発艦を確認して一気に距離を詰めてガトリングで落とす。
ただそれを何度か行っているだけですがどうやら今の彼女では対応し切れないようですね。
いえ、この性能差で何本か魚雷と爆弾は投下してるだけでも充分伸びしろを感じる所ではありますね。
『……参りました』
やがて加賀さんから全機撃墜の報告が入ってきました。
弾薬消費は……3200発少々ですか、正直あの搭載数は侮れません。
彼女の練度が上がればその内被弾する可能性は高そうですね。
「加賀さん、有難う御座いました」
『こちらこそ。貴女との力の差を思い知らされたわ』
「はは……それでは赤城さんも準備が出来次第始めましょうか!」
おっと、思わず気持ちが昂って口元が吊り上がってしまいました。
『あはは……鳳翔さん、棄権しても良いですか?』
『いけませんよ赤城さん?』
『許しません』
『加賀さんまでっ!?』
ふふっ……仲が宜しい様で羨ましいですね。
私も妹達に逢いたいなぁ。
暫く愚図っていた赤城さんでしたが漸く観念したらしく所定の位置に着いたとの連絡が入ってきました。
『う〜やるからには全力で行きますからねっ!』
「全力と
『解ってますよっ!』
『それでは赤城さん対アラハマキさん……始めっ!』
さて、今度は回避航行を取りながら来る艦載機を確実に落として行きましょうか。
ふふふふふ……回避に徹した私に果たして当てられるでしょうか?
私に向かって真っ直ぐに突っ込んでくる攻撃機は一機も魚雷を放つ事無く撃墜していきました。
爆撃機も急降下爆撃では追い付けないと判断した所までは良かったのですが、私の旋回半径と速度で行ける予測地点全てをカバーしなければ当てる事は出来ませんね。
そうして直ぐに赤城さんから連絡が入りました。
『参りましたぁ……やっぱり可笑しいですよ!何で九九艦爆と並んで走ってるんですか!?』
「並んではいませんよ?私の方が遅れてましたから」
『いやいや!あんなの航空機に爆弾当てろって言ってる様な物じゃないですかぁ!』
ええまぁ仰る通りですね。
せめて元の艦体ならまだ当てやすかったと思いますが。
「まぁまぁ、お二人なら直撃弾の一発や二発直ぐに当てられる様になりますよ」
『当然です。次はやります』
『う〜そうですかねぇ?』
『そうですね……アラハマキさん。私ともお手合せ願えますか?』
鳳翔さんが?
いや、赤城さん達はこの鎮守府で成長途上の艦娘ですが彼女は引退してるとはいえこうして指導を頼まれている位ですからそれなりの実力はあるのでしょう。
艦としての性能はあの二人の方が高いでしょうがそんな事は当てにならなそうな雰囲気ですね。
「……解りました、宜しくお願いします」
『はい、宜しくお願いしますね?』
……一応406mmガトリング砲も装填しておきましょう。
やがて位置に着いた鳳翔さんの代わりに赤城さんが開戦の合図を送りました。
どうしましょうか……取り敢えずは様子見がてら距離を詰めましょう。
私は加賀さんにやった様に正面の中隊へ突っ込み127mmガトリング砲を放つ。
戦闘機は避けようと翼を傾けるも嵐の様な砲撃を躱し切る事など出来ずに落ちていきました。
その様子に一安心しつつ距離を離す為旋回を始めようとした時、不意に嫌な風切り音が聞こえて来て私は思わず急停止を掛けていました。
結果それは好手でもあり悪手でもありました。
「なっ!?電探にはさっきまで反応は無かったはず!一体何処に!?」
速度を一気に減速させた直後、周囲を囲む様に十六発の爆弾がほぼ同時に着水していました。
速度を下げていなければ直撃だったかも知れませんが何とか避けられました。
今は兎に角距離を置こうと速度を一気に最高速まで持っていこうとしたその時、正面から三機の攻撃機が魚雷を切り離していました。
攻撃機は漏れなく撃ち落としましたが魚雷は着水させること無く直撃させるつもりですね!
「くっ……旋回が間に合わない!?ならばっ!」
私は406mmガトリング砲十八門を全て魚雷に向けて一気に放つ。
三本の魚雷は目の前で電磁波を拡散させて私の身体を僅かに鈍らせました。
「危ない所でした……ですが油断はしません!」
魚雷に仕込まれた装飾用の煙が周囲を覆う中、全速力で真っ直ぐに突っ切ると直ぐに振り返る。
そして先程まで私が立っていた場所へ爆弾を落とす爆撃機目掛けて127mmをばら撒きました。
「ふぅ、まだ残っている様ですね。集中を切らさないようにしないと」
撃墜数は十七機、流石にお二人ほど搭載数は無いと思いますがそれでもまだ半分以上は残ってるでしょう。
再び気を引き締め直し電探を確認する。
実際の数は信用出来ない状況ではあるものの方向に間違いはありません。
「いくらでも掛かって来なさいっ!」
近付くエンジン音を耳に第二幕への幕開けを覚悟しました。
〜〜〜〜〜〜戦闘終了〜〜〜〜〜〜
『はぁ……参りました』
「ふぅ……有難うございました鳳翔さん」
その後も何度か危うい場面は有りましたが406mmガトリング砲も総動員して漸く鳳翔さんの最後の一機を撃墜させるに至りました。
『いえ、こちらこそ久し振りに熱くなってしまいましたわ。次までには彼女達諸共私も鍛えて参りますのでまたお願いしても宜しいでしょうか?』
『次はこうは行きません』
『うぇっ!?』
「はい、楽しみにお待ちしていますね?」
赤城さんが驚愕の表情を浮かべてそうですが私も存分に暴れられて楽しかったので願ってもない申し出です。
それにしてもあれが熟練のパイロットって奴ですか……まさかあれだけの弾幕を掻い潜って急降下爆撃を行って来るとは流石です。
思わず重力場を展開してしまう所でした。
鳳翔さんとの演習を振り返りながら岸へ戻るとどういう訳か灰瀬提督と艦長が揃って出迎えて下さいました。
「艦長?こんな所でどうしたんですか?」
「おう、演習は楽しかったか?」
艦長はにこやかな笑顔で聞いてきました。
何かいい事でもあったのでしょうか?
「ええと、はい。思い切り身体を動かせたので満足しております」
「そうかそうか……で?
「何発?それは…………あっ」
艦長の質問の意味を理解した私は冷や汗をかきながらスーッと視線を逸らしつつ小さな声で答えました。
「…………です」
「聞こえんなぁ?」
「うっ……406mmが1968発の127mmが11756発……です」
「え……」
こ、これは不味いですっ!灰瀬提督が聞いただけで固まってしまう量だと言う事が判明してしまいました!
「よーし、鳳翔さんだったか?」
「は、はい」
「ちょっとこの馬鹿借りてくな?」
「あの……私が彼女に演習を頼んだんですっ!アラハマキさんのせいでは!」
「ま、あんたの処遇は提督に聞けばいい。俺はコイツに個人的に話があるだけだ、いいな?」
そう言われてしまっては鳳翔さんもこれ以上何も言えません。
それにとても楽しかったので私としても鳳翔さんが罰せられる様な事にはなって欲しくありません。
「艦長、どうにか鳳翔さん達に迷惑が掛からない様にして頂けませんでしょうか」
「ふ〜ん?ま、残念だかそれは俺の管轄外だな。ほら行くぞ!」
「そんなぁ……はい」
鳳翔さん、どうかご武運を。
私は心の中で祈りながら艦長の後に続きました。
その後グラウンドに連れて行かれた私はそんなに身体を動かしたいならと足が動かなくなるまでひたすらに陸上を走らされ続けました。
船なのに……。
本日のあら、葉巻?の燃料・弾薬消費量(艦これ風)
燃料:0
弾薬:652(大和改の弾薬フル補給二回分相当)
灰瀬提督「……訓練に使用する資材の管理は貴女に任せてますが、次からは彼女を演習に呼ぶ時は私に事前報告を義務付けますね」
鳳翔「はい、私も思慮が足りませんでした。以後気を付けます」