極指揮官道   作:瑚椒

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今回は共犯者がいないので初投稿です。
それと先に謝っておきます。ごめんなさい


第四話

 グリフィン管理下の大型ショッピングモールにて。

 一人の従業員が品出しをしていた。すると後ろから声を掛けられる。

 

「すみません」

 

 こう言った職業で声を掛けられるのはよくある事なので笑顔を浮かべて振り返る。

 だが今回の客は一味、いや一味では済まない。二味も違った。

 身長はかなり高く恐らく180cm後半だろうか、髪はオールバックで綺麗に纏められており、掛けているサングラスの奥からは鋭い眼光が覗いている。額から右目の下までにかけて長い一直線の傷があり、恐らくそう言った家業の人だろうと、誰でも想像出来るだろう。

 

「白い粉の棚って──どこですかねぇ?」

 

 声を掛けられた定員はスっと表情と目のハイライトを消し答える。

 

「……ないです」

 

 すると男の後ろからカーボーイハットを被った小柄な女の子がぴょこりと顔を出す。

 そう、我らがコーラちゃん事、SAAだ。

 

「すみませ〜ん! 多分指揮官は小麦粉とかの事を言ってるんだと思います!」

 

 すると店員は表情を取り戻り小麦粉が置いてある棚に案内し、そそくさと去っていく。

 指揮官は小麦粉をカートに置いた買い物かごに入れ牛乳を買うべく飲料売り場へと向かう。するとSAAは売られていたコカ・コーラの2Lペットボトルを五つほどカートに入れる。

 

「いや、こんなにいらんやろ」

 

「え〜何本あったっていいじゃん」

 

「アカン! 飲み過ぎや!」

 

 そう言いコーラのボトルを元あった場所に戻してしまう。コーラを戻されたSAAはちっとも懲りずに、指揮官がカートから視線を外した隙にまたかごに入れる。

 その勝負を何度も様々な場所で繰り返す。ゲームコーナーではソフトをねだり、プラモデルコーナーではRGのZガンダムをねだり、挙句の果てにMGのディープストライカーを買って欲しいとねだる。

 その度に指揮官はアカン、アカン、アカン! と繰り返す。

 

「も〜!! ちょっとぐらい買ってくれてもいいじゃん!」

 

 彼女にとってMGのディープストライカーはちょっと、の範囲内らいしが帳簿をつけている指揮官からすれば、ちょっと、所の騒ぎでは無い。

 

「このちょびヒゲ! グラサン!」

 

 SAAは言葉という名の鉛玉を指揮官のハートにぶち込む。少し後ずさりするが、流石は元伝説のヤクザ。

 

「わがまま言う子にはもうピコピコ買わへんで!!」

 

 どうにか体勢を立て直しSAAを叱る。だがそれは傍から見れば(話の内容はさておき)子供を恐喝しているようにしか見えない。

 それに気が付いたSAAは指揮官の手を引いて一度安静に話せる場所、カフェへと連れていく。

 

「何名様で──スッ」

 

 席の案内に来た店員は指揮官の顔を見て思わず顔を逸らしてしまう。

 プロ根性で何とか指揮官達を席に案内した店員は、素早く水とメニューを置いてバックヤードに飛んでいくように逃げてしまう。

 指揮官は何も気にしていないが、SAAはやっぱり慣れてる自分たちがおかしいんだな、と再確認する。

 そして心苦しいが、ズバリと本音を言って、それを聞いた指揮官は眉を顰める。

 

「俺が……怖がられてる? そんな訳あるかい」

 

「いやあるよ」

 

 最早否定を許さぬ程の即答である。

 

「なら店員さん呼んでみてよ」

 

「はぁ? 仕方ないのぉ……」

 

 指揮官はすっと手を挙げて店員を呼ぶ。それに店員は反応して近づいてくるが

 

「は〜い、なんで……す──」

 

 そっと横を向いて違うお客さんの所に言ってしまう。

 

「ほら」

 

 何とか注文を済ました二人はお互い頼んだものを口にしながら話を進めていく。

 

「その服装がダメなんじゃない?」

 

 そう言って指揮官の着ている服を指さす。上から下までいかにも高そうな真っ黒のスーツ、その上にSHINOBIと共にデフォルメされた犬がプリントされたエプロンを着るという、斬新すぎてどの時代も追いつけない様なファッションをしている。

 

「服……やと?」

 

「ん〜……なんだろ? 威圧感があるって言うのかな? ともかく、せっかくショッピングモールに来たんだから服とか見てみたら?」

 

「服、ねぇ……」

 

 思い立ったが吉日という事で二人は(指揮官のポケットマネー)で支払いを済まし服を選ぶ。

 だが指揮官は元伝説のヤクザ、服を選ぶセンスは常人のそれとは一線を超えていた。

 まず一つ目。

 ヤクザ特有の派手な柄の入った赤いワイシャツに下は白のズボンを着て靴は先の尖ったローファーを履いている。

 

「あ〜」

 

 次に二つ目。

 上下白のジャージで胸の部分にブルドックのデフォルメされた顔がプリントされており、横に黒のラインが入っている。因みに靴はサンダルである。

 

「はいはいはい」

 

 そして指揮官は最後にとんでもない物をぶち込んできた。

 

そう、和服である。

 

 たかが和服と侮ることなかれ、所謂ヤクザスタイルの和服である。

 羽織を着て下には派手な柄の入った袴を履いている。トンプソンが見れば復帰したのでは無いかと驚かれるレベルだ。

 

「なるほど……」

 

 最早SAAの瞳には光は失われていた。

 指揮官はジャージだけ購入して服屋を出る。しばらく歩くとSAAはソファーに崩れ落ちるように座り、頭を抱える。

 

全部! 一緒! 

 

 突如大声を上げたSAAに指揮官はビクリと肩を震わす。

 

「指揮官はさぁ! 話聞いてた!?」

 

「はい」

 

 SAAはソファーから立ち上がり指揮官に詰寄る。

 

「もっとこうさ! 可愛げのあるもの選ぼうよ!」

 

 その時指揮官は内心「威圧感すごっ」と驚いていたのであった。

 指揮官は仕方なく一人で"可愛げ"のある物を探してショッピングモールの中を歩き回る。

 すると、ふととある物が目に止まる。

 

「こッ!? これはッ!?」

 

 指揮官はその可愛げのあるものを急ぎ購入し、SAAの元に戻る。

 SAAは少し疲れた顔でソファーに身体を預けきっている。

 

「SAA! これならどおやァ!」

 

 SAAはまたか、と言った表情で指揮官の方へと顔を向ける。すると今までの表情が嘘だったかのように目を輝かせ指揮官の元へと飛んでいく。

 

「コーラマンエプロンじゃん!!」

 

「ええやろ?」

 

「うん! 最っ高!!」

 

 SAAのテンションは跳ね上がり指揮官の前でピョンピョン跳ねながら興奮している。

 その様子を指揮官は満更でも無さそうな表情をしている。

 周りはなんだアイツらと言った冷たい視線を向けているが、それにお構いなくSAAははしゃいでいる。

 

「ねぇ指揮官! コーラゲットだぜ! って言ってみてよ!」

 

「コーラを……なんて?」

 

「それより先ずはポーズから──」

 

 それを遠目から見ていた子供は母親に

 

「ねぇ、おかあさん──あのふたりやばいよ」

 

 と口にする。

 うん、その感性は正しいぞ少年!




極主夫道!1~3巻好評発売中!皆も買おうね!買え!(豹変)

珍しく9時台に投稿出来たので褒めてください。それとついでに感想と高評価ください(強欲)

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