国内でも選りすぐりのエリートが集う秀知院学院の生徒会長である白銀御行と、副会長である四宮かぐやが、知略を巡らせてお互いを自分に告白させようとする物語です。
どうぞよろしくお願いします。
初投稿ですので分からないことも多々ありますがよろしくお願いします。
秀知院学園生徒会の一行で遊園地に遊びに行く、という設定です。
季節は秋に差し掛かるあたりです。
頭脳戦はほぼありません。
「20時02分:○○○前」
どうしていつもこうなってしまうのでしょう。所定の時刻はとうに過ぎ、一縷の望みも絶たれた。2人、ただ立ち尽くす。
「どうして、いつも私は────」
涙が滲み、頬を伝う。ずっと計画していたのに。今度こそはと思ってたのに。
「分かっていたことでしょう?」
内から声が聞こえる。
そうだ、私はいつも────
あと少しのところで、手が届かないのだ。
「7時32分:白銀宅」
白銀御行は悩んでいた。休日に遊びに行くということは、制服ではなく私服を着ていかなければならないということを忘れていたのだ。
「……」
布団の上に服を並べておよそ1時間が経過しようとしていた。そもそもこの男、数着しか服を持っておらず、組み合わせも何も無いのである。さらに、その壊滅的なセンスはいいとこ中学2年生程度に相当する。幸か不幸か、本人はそれに気づいていない。
加えて30分悩み、ようやくたどり着いた最適解(本人比)は筆舌に尽くしがたいものであった。仮に、妹がいなければこの男は意中の相手にこの地獄を見せつけることになったのであろう。ドヤ顔で。
「それで外に出るの? マジで? ダサすぎるから死んだ方がいいよ?」
唐突な罵詈雑言にショックを受け、閉口する兄を後目に妹は兄の部屋に乗り込む。
「何あの服今どき中学生でも着ないわよ意味わかんないんだけど」
ぶつぶつと文句を言いながら、瞬時に最善手を打つ。
「はい、早く着替えて」
「お、おう」
「その腰につけたチェーンとドクロのネックレスは絶対置いていってね。恥ずかしいから」
「すみません……」
「じゃあ、私寝るから。話しかけないでね」
「おやすみ。えっと、ありがとな、圭ちゃん」
スタスタと歩き、ドアの前で立ち止まる。
「それと、次からはもっと早く言って」
「わかった、おやすみ」
ドアを閉めて自分の部屋に向かう。
「いってきます」
ドアが閉まる。自転車に乗り、家を出るのを確認してから布団に戻る。
「気をつけてね」
ぼそりと呟き、微睡みに身を任せた。
「9時50分:奈余駅前」
四宮かぐやは焦っていた。電車をおりてすぐにタクシー乗り場へと向かう。集合時間まであと10分。どう足掻いたって間に合わないだろう。こんな時、いつも使っている自家用ヘリがあればと思うも、不可能な話である。時候は秋とはいえ、まだ蒸し暑い。メイクが崩れてないか、コンパクトミラーで確認する。
「まだ来ないのかしら」
とりあえず遅刻する旨をメールで送る。今日は朝から超絶運が悪い。何か起こるのではないかという不安がよぎる。
「今まで大丈夫だったのだから今日もきっと大丈夫なはず。せっかくみんなで遊びに行くのだからいっぱい楽しまないと」
この日のためにかわいい服を買ったし、普段はしないメイクまでしたのだ。代わってくれている早坂のためにも、今日は何としても成功させなければならない。
ようやく来たタクシーに急いで乗り込む。
「お客さん、どこまで?」
「佐宮遊園地まで!できるだけ飛ばしてください」
今日こそ私は、この戦いに終止符を打つ。
「10時20分:佐宮遊園地 東門入口前」
石上優はうなだれていた。遊園地にカップルが多いことは知っていた。ええ、知っていたとも。
「どうした石上、口から何かどす黒いものが漏れてるぞ」
「そりゃそうもなりますよ、どこもかしこもリア充ばっかじゃないすか」
「そんなことわかっていただろう」
「実際に見るのとはまた違うんですよ、コイツらどうせ遊園地で楽しむとか言うよりいかにチャンスがあるかを考えているんでしょう、お化け屋敷に入ってキャー怖いって抱きついたり夜には観覧車であれやこれやするんでしょう、ヤダヤダばっちい」
「まあまあ、落ち着けよ......ん?」
入口から従業員が歩いてくる
「白銀くん、久しぶりだね」
「ああ、竹さん、お久しぶりです」
白銀は従業員の方へ歩み寄り、少し会話をして戻ってきた。
「知り合いですか?」
「ああ、実はGWに短期でバイトしたことがあってな」
「なるほど、だから夜間営業のことも知っていたんですね」
「まあな」
よいしょ、とベンチに座る石上の横に腰掛ける。
「それにしても四宮センパイ遅いですね」
「ああ、家の都合であれば仕方ないだろう」
「てっきり、花火の時みたいに来れなくなるかと思いましたよ」
「そ、そうだな......まあ、その話はいいんじゃないか……。と、ところで藤原書記はどこに行ったんだ?」
「藤原センパイならお手洗ですよ、人も多いんで混雑してるんでしょう」
「なるほどな」
藤原のことはともかく、四宮のことが妙に引っかかる。
しばらくして、藤原と共に四宮も現れた。
まあ、杞憂であればいいか。
「では、みんな揃ったことですし早速入りましょう」
「10時40分:佐宮遊園地 エントランス前」
チケットを4枚取り出し、スタッフに渡す。
「それにしてもラッキーでしたね藤原センパイ」
「そうなんですよ〜!朝起きたらピッタリ4枚遊園地のチケットがポストに入ってたんですよ〜!テスト終わってみんなで遊びたいなーって思ってたからちょうどいいなあって」
「まあ、来月には老朽化で閉めるらしいし、それで配ってたのかもしれませんね」
「なるほど〜!」
ああ、これは1ミリも疑ってませんね。
この遊園地は四宮グループのものですしチケットなんて容易に手に入りますわ
「では、どこから行きましょうか。1番近いメリーゴーラウンドなんてどうですいかがでしょう」
「あっ!いいですね〜!私かぐやさんと乗りたいです!」
「まあ、そこはせっかく4人でいるのですからくじ引きで決めるというのはどうですか」
鞄の中からくじを取り出す。もちろん細工済みだ。
「じゃあ、はじめは会長から、どうぞ」
「俺か、それ」
くじを引いた。何を隠そう、四宮にはどのくじが何に当たるかを初めから把握しているのである。
「何が書かれていますか?」
「マルだな」
「では、同じ絵柄の人がペアになる、ということで。じゃあ次はわた……」
「じゃあ次は僕が、あ、マルですね。会長、一緒です」
「男2人でメリーゴーラウンドか、寂しいものだな」
「んふー。かぐやさんはわたしとですねぇ」
「……石上くん、会長と2人、思う存分楽しんできなさい。思い残すことがないようにな」
「えっ、僕死ぬんですか……」
まあ、これから他の乗り物にも乗るのだから今回は許しましょう。私の寛大な心に感謝しなさい。次は許しませんけど。
3時間後
「やったー!また私がかぐやさんとです!」
「どうして」
「さあ行きますよ!ジェットコースターです!」
「もーー!どうしてこうなるのーーー!」
藤原にずりずりと引きずられていく
「結局ずっと男2人で乗ってますね」
「まあ、いいんじゃないか。これはこれで楽しいし」
それに、あいつのこんな笑顔を見れるなんて半年前には思わなかった。
「2人も早くきてくださーーーい!」
「はいはい」
「行きましょうか、会長」
「そうだな」
2人が並ぶ列へと歩いていった。
17時30分「左宮遊園地:エントランス前」
「ふう〜!やっと1周しましたねえ!」
「老朽化が進んでる割にはアトラクションも多くて楽しかったですねえ」
「まあ、今日は夜9時まで空いているらしいですのでまだ時間はたくさんありますね」
「まだ乗れてない場所もいっぱいありますしね!この鏡のところ行きたいです!」
「ああ、そこは随分前から入場できなくなってるぞ」
「ええっ!そうなんですか」
「屋根が透明になってて晴れた日には鏡に空が反射して綺麗だったんだがな……老朽化だそうだ」
「んーーそれは残念ですね……。乗れなくなってる乗り物たくさんありましたし。じゃあ、またお化け屋敷行きましょうよお、かぐやさあん!」
「嫌よ!絶対嫌!」
「まさかかぐやさんがあんなに怖がりなんて」
「うるさいわね」
「ちぇー」
「……全く、他の場所ならいいわよ」
「やったーーー!」
こんなに楽しいと思えることはいつぶりだったろう。そもそも幼い時から友人と遊びに行くことなんて以ての外、外に1人出てることすら禁じられていたのに。まだ後4時間もみんなと一緒にいることが出来る。このひとときを最大限に楽しまないと。
どうしても、会長と乗りたいものがあるのだ。
ずっと、遊園地に一緒に行ったらと夢見ていた。それは、もっと遅く。出来たら、月が上り終える頃。
「じゃあ、次はどこに行きます?かぐやさん」
「そうですねえ……」
プルルルルーーー。プルルルルーーー。
電話の音がする。自分の携帯だ。
プルルルルーーー。プルルルルーーー。
開くと、早坂からだった。
受診ボタンを押す。
口を開くなり早坂は
「大変申し訳ございません」
と言った。
その瞬間に全身から血の気がひくのが自分でもわかった。
「お嬢様が抜け出していることがお父様にバレました。すぐに連れ戻すようにと、言付かっております」
───────────────────────
事の発端は昨日の夜。急に本家から使いの者が来て、明日はお父様が来るから家にいるようにと伝えられた。そうはいってもせいぜい数分だろう。私に会いに来るのではなく、当主の務めとして視察に来るだけなのだから。私など、その程度にしか思われていない。
「いかがなさいますか、かぐや様」
「当然、遊園地に行くに決まってるでしょう」
「ふう……。全く。では、いつものように私が変わればいいのですか」
「そう怒らないでよ早坂、お土産買ってきてあげるから」
「はあ……。忘れないでくださいよ」
早坂の変装術は目を見張るものがある。あの父親程度を騙すには有り余るくらいだろう。
「あと、明日はお忍びでということなので送迎の車やヘリは使えませんので、悪しからず」
「ええ、分かってるわ」
この時までは、いつものように難なく乗り切れるものだと思っていた。
何か違うと思ったのは次の日の早朝。朝起きたら使いの者が私が外に出ないようにと、部屋の入口で待機していた。いつもはこんな事しないのに。
「気が散るのだけど、外に出て頂けないかしら」
「申し訳ございません。当主様の命令ですので」
結局解放されたのは9時半頃だった。一度本家に召集がかかったからと、家にいるように念を押して帰っていった。
そこから急いで着替えて化粧をして駅へと向かったのだ。
朝は運が悪かったけど、最高の一日にしようと。早坂のためにもなんとしても会長に振り向いてもらうのだと。そう……思って……。
「聞こえていますか? かぐや様」
「ええ……聞こえていますわ」
「もはや今戻ってきても折檻は免れないでしょう。それならば全部終えてから戻ってこられては」
「ですが、早坂は命を受けているのではなくて?」
「呼び戻すようにと、言付かったのは当主様からですが、私が仕えているのはかぐや様ですので」
「早坂……」
「ただ、気を付けてください。きっと、私が行かずとも使いのものがかぐや様を連れ戻しに来るでしょう。恐らく、そこにいることももしかしたら割れているかもしれません」
ピンポンパンポーン
お客様のお呼び出しを申し上げます。四宮かぐや様。四宮かぐや様。お連れ様がお待ちです。至急、エントランス前事務所までお越し下さい。
「どうやらそのようね」
「ご武運をお祈りしています、かぐや様」
「いつもありがとうね、早坂」
「私はかぐや様にお仕えしておりますので。それでは。良い結果を土産として待っております」
「四宮、今アナウンスで呼ばれていたが大丈夫なのか?」
「ええ、大丈夫よ。放っておいて構わないわ。ところで、これから自由行動にしてくれないかしら」
「ああ、別に構わないが」
「じゃあ、会長。ついてきてください」
「ちょっ、四宮?」
「藤原さん、石上くん、私所用を思い出しまして、必ず戻ってきますので」
「はあ、わかりました」
会長の袖を引っ張って急ぎ足で歩く。そう、ここは四宮グループの所有物ということは、私の顔はすぐに割れるということだ。出来るだけ目立たないように、目的地に向かう。明らかに普段の私であれば絶対にしない行動だが、そうも言っていられない。
「ッ……」
近くにあった売店に駆け込む。使いの者がもう来ている。明らかに何かを探している動きだ。
「四宮、もう少しこっちにずれろ。外から見える」
「会長……?」
「何が訳ありなんだろう。聞きはしないが、今から何をすればいいんだ」
こういうところが本当にずるい。こちらの事情を知らずとも察して気持ちを汲んでくれる。
「本家の者に見つかってしまうと強制送還されてしまいます。だから、見つからないようにしなければなりません」
「えっ、それって大丈夫なのか?」
「ええ、問題ありません。迷惑をおかけしますが」
マップを取り出す。
「ここに行きたいんです」
場所はエントランスから一番遠く、今から向かってギリギリ間に合うかどうか。
「なるほど」
「では、出来るだけ急ぎましょう」
周りを見渡し、誰もいないことを確認して売店から出る。今なら何にも負ける気はしない。だって、隣にいてくれているから。やけに心臓がうるさい。この鼓動の速さはきっと……、これ以上考えるのをやめた。
そうして、どうしても行きたかった。この人と一緒に乗りたかった場所ーーー観覧車がある西門入り口に向かった。
お願いだから。せめて今日くらいは。
「20時02分:観覧車前」
どうしていつもこうなってしまうのでしょう。
つい数分前まで、煌々と煌めいていたのに。
「稼働時間は20時までだったそうだ」
「どうして、いつも私は────」
涙が滲み、頬を伝う。ずっと計画していたのに。今度こそはと思ってたのに。
「分かっていたことでしょう?」
内から声が聞こえる。
そうだ、私はいつも────。
「四宮……」
「ごめんなさい。大丈夫。私はもう大丈夫。四宮ともあろうものが人前で涙を流すなんて。忘れてください。明日にはもういつも通りだから。こんなの慣れっこですから」
それを聞いた瞬間、腹の中でごうっと何かが燃えた。なんだそれは。そんなのがあっていいわけが無い。何かわからないがこのままおわらせていいわけがない。俺の矜恃にかけてでも。
「四宮、ここでちょっと待っててくれ」
「えっ……」
「大丈夫、すぐ戻る」
そう言い残し、全力で駆け出した。
5分後
「はぁ、はぁ、待たせてすまない。着いてきてくれ」
「はあ、分かりました」
「どこに行っていたのですか?」
「秘密だ。少々無理を言ったからできるだけ急いでいこう。大丈夫か?」
「はい」
「ここだ、中に入ろう。問題ない。許可は貰っている」
「ええ、でもここは……」
「そうだ、ここは本来なら立ち入れない。暗いから足元に気をつけてくれ」
「はい……」
「このカーテンの向こうに、見せたいものがある」
白銀についていく形で、カーテンをくぐった。
そこにはまだ何も無く、ただただ暗い空間が拡がっていた。
「そこに立っておいてくれ」
指定された場所に立つ。
「じゃあ動かすぞ」
ごうんごうんと音を立てて、天井が回った。
そこにあらわれたのは、十重二十重の光の雨。
柔らかな一筋の月の光が、幾重もの鏡に映り、反射し、中心のかぐやを照らしていた。
「本来はこういう使い方じゃないんだけどな、日中は太陽が眩しいから、直接光を目に入れるのを避けるために使うんだが、月の光ならば大丈夫だろうと思ってな」
「……ほんとうにきれい」
ほんとうに。ほんとうにきれいだ。なんて幻想的なのだろう。とてもあたたかい。
「万華鏡みたいだろ」
「ええ……。よく知ってましたねこんなこと」
「GWの時にバイトしててな、ここの管轄だったんだよ」
「だからあんなに詳しかったんですか」
「観覧車の代わりになるかは分からないが」
「十分です……十分すぎます」
「それは良かった」
「あと20分位は借りれることになっている、落ち着いたらふたりの元に戻ろう」
「そうですね」
部屋の中心に座り、ただ、月を眺めていた。
「なんだか、十五夜の日を思いだすな」
「そうですね」
「そういえば、月が嫌いだ、と言っていたな」
「ええ、そう思ってました」
「思ってた、ってことは今は違うのか」
「会長の言葉を聞いて、私なりに考えてみたんです」
「ほう」
そうだ、私はこれを伝えたかったのだ。
「会長は、不死の薬を渡したのは「いつか私を迎えに来て」というメッセージだといいました。二人の間にどれだけの距離があっても、私はいつまでも待ち続けます、という意味だと」
「ああ、そうだ。なんか恥ずかしくなってきたな」
「そして男は言葉の裏を読まずに、美談めいたことを言って燃やした、と」
「ああ。得てして、四宮はどう読む?」
「男は、本当に姫を諦めたのでしょうか」
「ほう」
「かぐや姫が不死の薬を渡したのは自我を無くす前なんです。そのあとは男の言葉も耳に入らずに、月へ帰ってしまいます」
「かぐや姫が月に帰ったあと、男は絶望して病に侵され、床に伏します。そのような状況でわざわざ薬を燃やしたりするでしょうか」
「なるほど、その時代であれば病に侵されたら死を覚悟するのが当然だからな」
「それなのに、わざわざこの国でいちばん高い山を探して、そこに登り頂上で薬を燃やした」
「ふむ、それで?」
「あの薬を燃やしたのは、「あなたのことを永劫忘れない」というメッセージだったのではないでしょうか」
「ほう」
「自分の国から月へと向かう手段がないことは男も分かっていたはずです。でも、それでもどうしても伝えたかった。病に侵され、死も目前に迫りながらも。だからこそ、月から、かぐや姫から見えるかもしれないいちばん高い山で燃やしたのでしょう。私はここにいる、と。あなたのことは忘れていない、と。」
かぐやは続ける。
「諦めたのだから燃やしたのではなく、永遠に思い続けることをかぐや姫に伝えるために、永遠を手放したのではないでしょうか」
「自分が永遠の存在となるよりも、相手の中で永遠の存在となることを、男は選んだのです」
「……なるほどな」
「はい、これが私の解釈です」
そして、あなたによって変わった私の姿です。あなたに出会わなければ、ずっと月も、私自身のことも嫌いだったでしょう。本当に。あなたに出逢えたから、変わったのです。
これを、あの観覧車で伝えたかった。
「これはまた、俺も考えてみる必要がありそうだ」
「ぜひ、またお聞かせください」
「永遠か……俺も誰かのそんな存在になれたらたしかに素敵だろうな」
……もしや、これは絶好のチャンスなのでは?
このような密室に二人きり、そしてこの雰囲気、ロマンティックではありませんか……!
「会長は誰かの永遠になりたいなーなんて思ったりしないんですか??」
「おおう、俺か。そうだなあ……」
うん?……もしや、これって絶好のチャンスなんじゃね?二人きりだし、めちゃくちゃ雰囲気もいい、これは押したらいけるんじゃないか……?
「ああ、そうだなあ。急にはぱっと思いつかないなあ。四宮はどうなんだ??」
「ええっ!私ですか?私は……どうでしょうねえ」
「いやいやさっきあんなに語ってたんだからいないってことは無いんじゃないか?」
「はあ?サイッテーです!そんなこと考えてたんですか!少しでもいい人だと思った私が馬鹿でした!まったく会長ったら──」
プルルルルル──。プルルルルル───。
「はい。ああ、竹さん。すぐ行きます。本当にありがとうございました」
ガチャ
「もうここまでだな、2人のとこに戻るぞ」
「ええ」
カーテンをくぐる。
「来月にはなくなってしまうのですね」
「そうだな」
立てかけられていた看板を見る。
「へえ、これってなんて読むのですか?」
「これはあめのはしご、だな。空からの光が梯子のように見える、ということから付けられたのかもな」
「天の梯子ですか……」
「あのさ、四宮、実は来年───」
「ん?なんですか?」
「……いや、何も無い」
これは決まってから言うことにしよう。願わくば、今のこの状況が───。
「じゃあ、行こうか」
後日譚、というかその後のオチなのですが、石上くんと藤原さんには事情をお話して、謝罪と次の埋め合わせをしました。当然屋敷に戻った私はお叱りを受け、数日の間、学校に行くこと以外の外出を禁じられました。
「それで?二人きりの密室できらきらと雰囲気も良い中であなたは何をしていたんですか?」
「違うのー!私もいろいろあって頑張ろうとしたのー!」
「はあ、またいつもの通りということですね」
「何よその言い方」
「ふう……。もう夜も遅いのでご就寝ください。そろそろ文化祭も近づいてまいりますので、お体に触らないようお気をつけください」
「はいはい」
そろそろ文化祭。今年は何をやるのかしら……。もしも、もしも会長と回れたら、それはどれだけ幸せなことでしょう。
あーあ、夢にでも出てきてくださったら良いのに。
文化祭で我が身に起こることを彼女は知る由もなく、ただ、深い眠りについた。
Fin.
はじめて書いたので拙い部分も多くあると思われますが、どうぞよろしくお願いします。十五夜のシーンがとても好きで、アンサー的な立ち位置で書かせて頂きました