仮面ライダーオーズの力をもらって、マーベル世界へ神様転生した男の話。

尻切れとんぼ。
唐突。

書き出しだけで満足しちゃった分の供養。


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神様転生したけど50%を外す気がしてならない

どうやら、いつかあったことのある神さまは邪神の類だったらしい。

昔からツキのない僕が、場末のネット小説ごとく神様転生なんて思えなかったので、むしろ納得してしまった。

とはいえ、過酷な未来を前に頭を抱えるくらいは許してほしい。

 

誘拐された有名人が見事帰還したニュースを見て、思わず頭を抱えた。

 

 

二度目の生と聞いて、羨む人も多いと思う。

強くてニューゲーム。しかも神さまのサービス付き。

 

勝手知ったる幼少期。

自由を噛み締めた少年期。

よりどりみどりな青年期。

 

正直に言おう。

最高だ。

ぜひ羨んでくれ。

 

ツキのない僕でも、最高に楽しめる。

 

学校じゃ人気者。クラスカーストのトップ。

恋人も友達もみんな僕を尊敬の眼差しで見つめてくる。

 

たまの不運も、むしろチャームポイントになるのだから普段の行いは大事だ。

 

よほどのことじゃなければ、大抵の不運はチャームポイントだ。

こんな優越感は他にないじゃないか。

 

神さまのサービスも最高だ。

 

僕が望んだオーメダル。

つまりは仮面ライダーオーズの力。

僕が望んだのは非日常。

 

程よく人気がなく、治安が悪いがゆえに人もあまり近寄らない場所に出現するクズヤミー。

それの出現を感知し退治する僕。

ひどいマッチポンプだが、誰かに迷惑をかけたこともない。

不運が仕事しかけることもあるけれど、どれも水際で止められた。

ヒーロー気分を味わえるサービス付きとは、さすが神様。ほしいものをわかってる。

 

順風満帆。

学業を終えても、過去の錬金術の賜物、オーメダルから得た特許で左うちわの不労生活。

 

たまにクズヤミーを察知し、速攻で潰し、稼いだ金で遊びまわる毎日。

 

技術は金を生む。

金は余裕を生む。

余裕とはすなわち幸せだ。

あの時の僕は、幸せの絶頂だった。

 

いや、今も状況は変わっていないし、自分が置かれている状況を理解できていなかっただけだ、といえばそれまでなんだけれど。

 

思い返せば、雲行きが怪しくなってきたのは一昨年。

某有名企業、そもそもその会社の名前を見た時点で気づくべきだった、と特許の使用契約を結び一生遊んで暮らせる金を手に入れた僕は、そろそろどこかに別荘でも買って酒池肉林パーティーでもしようかな。なんて思ってたんだ。

そして、いい加減クズヤミーも鬱陶しくなってきたので、出現する原因を潰そうなんて思い立ってしまった。

 

なにせ、オーメダルの技術は余すところなく理解できてしまっている。おそらく神様が気を利かせて知識か、それを理解できる知能でもつけてくれたんだろうが、考える頭は持っていた。

理由が突き止められれば次の特許もとれてさらに金儲けできるだろうし、思い立ってやらない理由はなかった。

 

そして検証して理解して、首を傾げた。

なにせ、原因に自分が関わってなかったんだから。

 

ああ。あそこでもっと検証しておけば……。

いや。意味のない後悔だ。どこで気がつこうと結局は同じこと。

 

結局その時は、対症療法的にクズヤミーを対処できるセルメダル動力のドローンを開発して、その特許で一儲けするに収まった。

 

馴染みの会社の社長が帰還したとのニュースを見て、祝いの品でも送ろうかな、なんて考えている時に気がついた。

というか、この会社とは何度も取引をしているのに気がつかなかったのか。

 

トニー・スターク

スターク・インダストリー

 

ここ。マーベル世界線じゃないか。

 

 

 

 

怒涛の一年が過ぎた。

社長のアイアンマン騒動に巻き込まれて、セルメダルを使用した兵器を作りやがった副社長と戦うことになるわ。

緑色の化け物にボコボコに殴られるわ。

人殺してそうなお偉いさんに拉致られて特許全部持っていかれそうになるわ。

 

そして今。

 

空に開いた穴をを見て、数年後、全宇宙の半分の命が消え去ることをお思い出した。

 

思わず隣を見る。

そうそうたる英雄のそばに、僕がいる。

 

空を覆うほどに群れをなす宇宙人。

闘志を燃やす仲間たち。

それに便乗して構える私。

 

ああ。まずい。

 

ガタキリバのコンボで、数に対しての優位性は潰せる。

ラトラータのコンボで、速度の対しても張り合える。

妙な攻撃も、サゴーゾのコンボで対抗できたし、

ダジャドル、シャウタのコンボで戦う場所も選ばない。

文字通り一騎当千の戦士になれる。

 

闘志がしぼんでいく。

 

ハルクに殴られて行動不能になるのであれば、僕の攻撃も有効だ、戦いの舞台には立てるだろう。

 

嫌な想像が止まらない。

 

宇宙産の武器を構える兵士たち。空飛ぶクジラにそれに乗る巨大な兵士。

スペック上、戦えはするだろうとも。

なにせこの姿がヒーローのそれ。

子供達が憧れた、希望を語るの英雄そのもの。

 

軽口を叩く社長に軽口を返せているはずだ。

目覚めた英雄とコンビネーションできているはずだ。

怪力無双の巨人と宇宙人にはりあえているはずだ。

技術を極めた二人をうまくサポートできているはずだ。

 

通信が耳にはいった。

 

コールソンが死んだ。死んでいた。

 

オーズへサインを求めた彼。

誇りを持って戦った彼。

 

——あなたは間違いなく、ヒーローですよ。

 

よりよほど英雄にふさわしい、彼。

 

メダジャリバーが手から滑り落ちる。

 

有象無象。

プレデターじみた宇宙人が牙を剥きその手の武器を振り上げる。

有象無象。

オーズの装甲をたやすく貫き、そのその胸へ、胴へ、頭へ、その刃を突き立てる。

有象無象。

痛み。何千、何万もの傷。

有象無象。

変身が解け、その数を減らすオーズたち。

有象無象。

乱れた戦線に、社長からの通信が入る。何を言われているのかわからない。

 

ああ。もう考えるのも面倒だ。

感じるのも嫌だ。

 

コンボを変える。

紫のメダルを揃えて入れる。

 

姿が変わる。

紫の翼を生やし、大地から斧を掴み取る。

 

そこから先は覚えていない。

ただ、一連の騒ぎが終わったあと、僕は組織に監禁された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ。社長。お久しぶりです。

僕に時間を割いてくれるとは。

ペッパーさんとの時間にした方がいいと思いますけど。え?また喧嘩。

あんな美人の器量良し。さっさと捕まえないと鳶にさらわれちゃいますよ?

ただでさえ、ああ。すいません。

え?キャプテン?いえ。一ヶ月前ですかね?

シャワルマ差し入れてもらいました。

 

ええ?

いやさっぱり。新聞とかニュースはあんまり。

営業活動しなくてよくなりましたし。

クズヤミーの報告を怠らなければ生活保証してくれるいい生活ですよ。

 

はぁ。登録。

いえ。見ての通りの監禁生活なんでどうしようとも変わるとは思えません。

へぇ。キャプテンが。彼らしいですね。

え?正しさ?……さぁ?

社長がすでに結論を出した通りじゃないですか?

社長が期待してることはわかりませんが、僕みたいな小市民に、え?だからこそ?

 

ほんとに社長?

 

すいません。失礼でした。

あなたが私を説得しにきている時点で多少の情勢は読めます。

これまであった些細な問題。杖の奪還とか、暴走した警備システムとかペッパーさんの誘拐事件とか。些細なことでは助力を願わなかったあなたが、今、ここにいる。

 

その重要度は、ハルクでもわかる。

あなたの危惧は、理解している。

いえ、傲慢な物言いですね。

あなたの危惧を知っている。

 

メディアは全く。

長官?いえあの一件以降あったことはありません。

 

知っている理由を聞かれても困ります。

あえて表現すれば生まれる前から知っていた。とでも言いましょうか。

ウルトロンの暴走も。宇宙の果ての闘争も。あなたがキャプテンと対立することも。ええ。知っていた。

 

あなたの危惧も。知っている。

 

僕は、おそらく剪定される側の人間なので、協力した方がいいと思っている。自慢じゃないですが、僕が肩入れした方が勝利するでしょう。前提として十全に僕が力を発揮できれば、という条件が付きますが。

 

ドライバーも、メダジャリバーも、あなたが話を通せば僕の手元に帰ってくるでしょうしね。政府側に着けば、まあ、装備一式は帰ってくるでしょう。

 

だが。僕は。

戦えない。

 

……ニューヨークの一件ですでに心が折れてます。

僕はこの世界に対して責任を背負えない。

 

せいぜい自分のケツを拭うのが精一杯。

 

すでに心が折れている。

 

……軽蔑してください。

成人して、力を持っていてなお、責任を持てない僕を。

 

クイーンズの少年すら知っていることを僕は実行できない。

 

クリントが死にかけたと聞きました。

バーナーが行方不明とも。

ソゴビアの一件。杖の奪還作戦とそのリスク。

聞いていましたし、参加の打診もありました。

 

けど。

僕は動けなかった。

 

同じ釜の飯を食ったクリントの危機にも。

不安を共有したバーナーとの離別も。

 

知っていた。

変える手段も、持っていた。

 

にもかかわらず。

にもかかわらず、です。

 

その勇気がない。

 

時間を割いてもらって恐縮ですが、僕はこの通りです。

すでに心が折れて、欲望の器は底が抜けてます。

 

死んでいないだけの、生きぞこないです。

 

どうかこの骸はいないものとして、いえ。敵としてお考えください。

 

ロキより軽薄で、ヒドラより邪悪。

そういうものと認識ください。

 

私の助力は、期待しないでください。

 

 

社長の顔は見れなかった。

呆れか、失望か、僕をどんな顔で見ているのか、それを知るのが怖かった。

 

気づけば社長は部屋はすでにおらず、その半月後、キャプテンが死亡したのだと伝え聞いた。

 

ああ。最悪のバタフライエフェクトだ。

 

 

 

 

 

長官。

お久しぶりです。

 

ここへ来られるだけの権限を取り戻せたんですね。

 

…………ああ。

なるほど。またニューヨークが。

長官は千里眼でも持ってるんですかね。

あるいは未来視か。

 

さすがアメリカ。人種の次は種族のるつぼでも目指すつもりで?

いえ。失礼。お忙しいのに、話の腰を折るつもりはありません。

なにせこの通り、人と話すのも稀な状況なので。

 

それで?

宇宙人の襲来?

社長に任せれば問題ないでしょう。

 

彼に一任すれば、質も量も揃えられる。

まあ事態解決の次は世界大戦になるでしょうが。

 

すいません。なにせ一人で考えること時間が大半な、おや。

 

…………。

 

僕以外にも死人がいるとは思わなかった。

お久しぶりです。キャップ。一般人の生活はどうでした?

柔らかな笑顔が似合うナイスミドルになっちゃってまあ。

 

それがあなたの欲であれば、何もいうことはありませんとも。

 

……けれど。

なぜ?ここに?

 

あなたが表舞台に出れば、その時点で未来は変わる。

救いが確定された、あなたがやってきた未…………。

 

…………はじめまして?

 

キャプテン。

流石に堪える。そりゃあなたにとっちゃ、数十年前かもしれませんが、それでも共闘した仲の話を忘れ、……。

 

…………。

 

ああ。

そうか。

 

あなたは未来からきた。

はじめまして?ですか?

 

…………。

 

傑作だ。

ほんとに?

キャップは彼と、共闘を?

 

僕が変わり?

冗談。力不足です。

 

その名は僕には重すぎる。

 

……ほんとですか?

いえ。疑っているわけじゃない。

ただ。……飲み込むのに時間がかかる。

 

そんな世界もあった。

それを事実として認められない。

 

ああ。けど。

そうか。ヒドラの前身は第二次世界大戦の軍事組織。

しかもその名前?

 

傑作だ。

スクリーンで見たかった。

 

名だたるヒーローたちの共演。

え?経験が?

 

今度お邪魔しますよ。

茶飲話に聞かせてください。

 

あなたたちの、その英雄譚。

 

お返しに。私の話をしに行きます。

その結果がハッピーエンドになるように、奥さんと祈っててください。

 

仮面ライダーと、アヴェンジャーズの共闘。

世界を救いに立ちますよ。




彼が世界を救えたか否かは、また別の話。


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