白兎が魔王の義息なのは間違っているだろうか(細部設定訂正中) 作:クロウド、
「はいは〜い、どちら様だい?」
ヘスティアが玄関の扉を開くとそこには光沢のあるセミロングのブラウンの髪とどこか親しみやすい顔立ちが特徴的な女性がたっていた。
彼女が着ているベルのブラックスーツとはまた違う黒いスーツとパンツからヘスティアは彼女が何者かが検討がついた。
「君は……ギルドの人間かい?」
「はい、ベル・クラネル氏のアドバイザーをさせていただいているエイナ・チュールと申します。貴方は神ヘスティア様でしょうか?」
「如何にも、ボクがベル君の主神ヘスティアさ。アドバイザー君が態々ホームにまで訪ねてくるなんてなにか緊急のようでも?」
「いえ、ここ数日クラネル氏がギルドに現れないのでなにかあったのかと思い訪ねさせていただきました」
エイナの言葉にああ、なるほどと納得するヘスティア。ベルは最近ホームにこもってばかりで殆ど外に出ていない、《ロキ・ファミリア》の幹部達との特訓があったからだ。
「それで、クラネル氏は……?」
「ベル君は元気さ、見ての通りお店を開くために色々準備があったからね」
「お店?」
エイナがヘスティアの言葉の意味を聞こうとした瞬間、彼女にとって聞き覚えのある声が中から聞こえた。
「なんや、エイナちゃんやないか」
「ベルのアドバイザーというのはお前だったのか」
「え、神ロキ様とリヴェリア様? なぜここに」
突然現れたオラリオの有名人達に目を白黒させるエイナ。さらにこの二人はエイナと面識がある。
「取り敢えず上がってもらったらどうや? ドチ……ヘスティア」
「……それもそうだね」
ドチビと言われかけ額に青筋が浮かぶがここで下手な喧嘩をするのは得策ではないことくらいヘスティアだって理解している。
三人はエイナを連れてホールへと向かう。
「これは……!」
エイナは立派なホールの内装にビックリする。
そして、まるでタイミングを図ったように廊下の奥から声が聞こえた。
「どうでした? 近接格闘術の特訓は?」
「……あのふざけたネーミングセンスさえどうにかなればもっとやる気が出るんだがな」
「だから言ってるでしょう、僕に言われても困るって」
「チッ……。」
話し声は二人分、一人は勿論、ベル。そして、もう一人の声もまたよく聞き覚えのある声だ。
そして、廊下に繋がる扉から現れたのは黒いドレスを両手に持ったベルと白髪の狼人、《ロキ・ファミリア》幹部の一人、ベート・ローガだ。
「ベル君に、ベート・ローガ氏……?」
「あ゛ぁ? ババア、誰だソイツ?」
名前を呼ばれたベートがどこか苛立っている様子でリヴェリアに尋ねる。
「私の友人の娘で、ベルのアドバイザーだ。」
「コイツの……?」
ベートは「コイツにアドバイザーなんて必要か?」という目を向ける。
「エイナさん、どうしてここに?」
「あっ、そうだったベル君。最近、ギルドに中々顔を出さないからなにかあったのかと思って、でも……元気そうで良かった」
ベルの顔を見てホッとした様子のエイナ。冒険者という職業はその仕事柄危険がつきまとう。自分が担当する14歳の少年がそんな冒険者になって思うことがないエイナではなかった。
その少年がギルドになかなか現れなくなり心配するのはごく自然なことだった。
しかし、さりげない"ベル君"呼びに彼の主神の眉が一瞬、動いたことには気付かなかった。
「……だけど、どうしてベル君のファミリアのホームに《ロキ・ファミリア》の皆さんが。それに、このお店は」
「……実は僕達、《ロキ・ファミリア》の傘下に入れてもらえることになりまして」
「ええっ!?」
ベルの言葉に驚くエイナ。《ロキ・ファミリア》はオラリオの二大派閥、そんなファミリアの傘下に加わったと言う話を聞いて驚かないほうがおかしい。
「このお店は、僕が資金源としてホームをリフォームしたんです。皆さん、僕の料理を大変気に入ってくれまして今日もこうして来てくださったんです。ねっ、そうですよねベートさん?」
ベルは近くにいたベートの肩を叩いて話をふる。
「あ゛ぁ!? 俺は別に……」
「……そうですよね、ベートさん?」
肩に置かれた手が力を帯びる、そして、ベルの背後からヒュドラさんステンバ〜イ!
否定しようとしたベートだったが、無言のベルの笑顔が、『話を合わせろ馬鹿野郎』と言わんばかりだった。
「チッ……まぁな……。」
ベルにしか聞こえない程度の舌打ちをしたあと話を合わせるベート。それにニッコリ微笑むベルさん。完全に脅迫の図である。
ふと、エイナの方を見てみると眼鏡を外して目を擦り再び眼鏡をかけてベルに目を凝らす。
「どうかしましたか?」
「え? うんん、ベル君の後ろに頭が沢山ある龍みたいなモンスターが見えた気がしたから……」
「ハハハ、冗談言わないでくださいよエイナさん」
お前はもっと恐ろしい存在だろうが、という視線をエイナ以外の全員から受けるベル。
「でも、お店を開けるくらいお料理に自信があるならわざわざ危険な冒険者を続けなくても……。」
「すみません、エイナさん。それだけは聞けないお願いです」
ベルは真っ直ぐな目でエイナを見つめ返す。ベルはもう本来の方法で英雄になることはできない。だからといって、その方法を捨てることもできない。
冒険者にはそれぞれ事情を持っているものも多い。それを態々アドバイザーに申告する義務はない。エイナもベルがベルなりの事情を持ってると理解したのだろう。
「ハァ……わかったわ、でも無茶だけはしないでね。最近、ダンジョンに怪しい冒険者が現れているらしいし」
「怪しい冒険者だと?」
エイナの言葉にリヴェリアが反応する。
「はい、ここ数日。ダンジョンで何度か目撃されているのですが、所属も目的も不明で唯一わかっているのは黒いコートと黒いストール、それとサングラスを身に着けているという話だけで……。」
ヘスティア達は一斉にベルの方を向きたい衝動を必死に抑えた。いや、そんなやつひとりしかいないだろと言いたげだ。
そんな心情など知らないエイナは思い出したように立ち上がった。
「あっ、そろそろ、仕事に戻らないと……。」
「え、もう行っちゃうんですか? せめて、お茶だけでも」
「ごめんね、今度は休みの日に来させてもらうよ」
「じゃあ、せめて……」
ベルはキッチンから紙箱を持ってきて切り分けられていないフルーツタルトを入れる。
「これ、持っていってください」
「え? でも……」
「いいから、いいから♪」
結局、強引に渡される形でエイナはタルトの入った紙箱を受け取ってエイナは仕事に戻っていった。
「やっぱりいい人だなぁ、エイナさん」
「ベル」
「わかってますよ、リヴェリアさん。あの人にはこっちに来てから色々お世話になりましたし、僕みたいな化物にあまり関わってほしくない」
どこか寂しげに言うベル。彼は力を得るために人としての器を捨てた。自身を化物というのもその為だろう。
だが、リヴェリアが言いたいのはそこではない。
「いや、私が聞きたいのはエイナが言っていた『怪しい冒険者』についてなのだが……。」
「さぁて、工房に行ってアーティファクトでも作ろうかなぁ」
逃げようとしたベルの肩を今度はリヴェリアが掴んだ。そして、クルリと体を回させて目線を合わせるように正面から睨む。
そして、一言。
「吐け」
「イッ、イエス・マム! ウラノス様からの依頼でダンジョンに潜っていましたが、顔バレしないように変装していました以上です」
「目立っていては意味がないだろうが!」
リヴェリア様のごもっともな叱責が飛ぶ。
「ベルたん、どんだけサングラスすきやねん……。おいドチビ、どうにかできんのか?」
「ボクもどうにかしたいと思ってるんだけどねぇ……。やっぱりハジメ君に相談してみようか?」
そんな馬鹿な様子を無視してベートは帰ろうとしている。
「アレ、お帰りですか?」
「これ以上テメェの馬鹿に付き合えるか、それより、あの約束忘れてねぇだろうな?」
出入り口の前で肩越しに振り返るベートは鋭い視線でベルに尋ねた。
「ああ、Lv6になったらオーダーメイドのアーティファクトを作ってやるって話ですか。覚えてますよ」
「ならいい」
そう言って今度こそベートは帰っていった。
「ベルたん、そんな約束してたん?」
「ええ、毎日毎日ウチに来られて頼まれてたんじゃ疲れますからね。ガレスさん以外の三人にはそう言ったんです」
あの後、あの場にいなかった他の幹部達とも本人の強い要望で模擬戦をすることになった。勿論、ベルの全勝、流石Lv6というかガレスはベルのお眼鏡にかない、晴れてアーティファクトを作ってもらえることになった、しかし他の三人は見どころこそあるものの実力不足と断言されてしまう、だが、それはもうしつこい要望にベルが妥協案を出したのだ。
「あ〜、どおりで最近ティオネもティオナも張り切ってると思ったわ」
「……ええ、特にティオナさんのアタックが凄かったです」
ベルはげんなりした様子で呟く。悪意のない密着などホントに童貞には厳しいアプローチだった。
「それでは、ガレスはどうなるんだ?」
「今作ってますよ。神様、ドレスここに置いときますよ、採寸は問題ないと思うけど一応試着してみてくださいね」
そう言って今度こそ工房の方へ戻っていった。
「さて、私達もそろそろ帰るぞ」
ロキはリヴェリアの席を見て既に皿にはフルーツタルトは無くなっていることに気づきその意味を理解する。
「はっ、しまったぁ〜!」
ロキはリヴェリアに引きづられて帰っていった。よって、今回の戦いヘスティアの不戦勝。
今回はちょっと手抜きかな〜って思いますけど、まぁ仕方ないと諦めてほしい。