白兎が魔王の義息なのは間違っているだろうか(細部設定訂正中)   作:クロウド、

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感想を見る限り皆さんだいぶこのあたりが気になってるらしいので、ちょっとネタバレも含まれていますがどうぞ!

状況はアポロンに戦争遊戯申し込んで、『青の薬舗』で同盟ファミリア達の代表が集まって会議です。


《お試し版》魔王の来訪

「ベル、どうするのだ?」

 

「どうするって、決まってんでしょう? 僕の部下に手を出したんだ。骨の髄まで叩き潰して二度とあんなことができないように心も体もへし折る」

 

 手をバキバキと鳴らして怒りを表明するベル。

 

『終わったな、《アポロン・ファミリア》』。それがその状態のベルを見ての全員の頭の中だ。

 

 同情の価値は欠片もないので、別にそれでも構わないが、

 

「しかし、戦争遊戯となれば、もはや力を隠すことはできんぞ? 認識阻害のアーティファクトも使えない。」

 

「別に構いませんよ……。いい加減僕もコソコソするのには飽きてた頃だ。それに、今回は僕の秘密主義が招いた結果。だったら、第二、第三のアポロンへの牽制として……アーティファクト大解放だ」

 

 ベルの言葉の意味を理解して主神と団長達は思うことがないわけではないが、もはやベルを止めることはできないことも理解しているので止めない。

 

「いいのかい、ベル君?」

 

「反対ですか、神様?」

 

「いいや……やっちまえ、ベル君!」

 

「………フッ、それでこそ僕の主神だ」

 

 二人は互いを信頼しきっている。その覚悟を無碍にすることは決してしない。

 

「はぁ……。まぁ、今回はあのアポロンの馬鹿の自業自得やし、そもそもベルたんを止められるわけないからな〜、フィン、リヴェリア。二人はどう思う?」

 

「僕は別に構わないよ、この際同盟についても公表するかい?」

 

「それがいいだろう。ベルの力がおおっぴらになれば団員達の強化もしやすくなる」

 

 《ロキ・ファミリア》から、ロキ、フィン、リヴェリアは特に反対するつもりはないらしい。

 

「俺としても構わない。それにアポロンの奴の横暴には前々から腹が立ってたからな」

 

「自分もタケミカヅチ様と同じ思いです」

 

 《タケミカヅチ・ファミリア》から、タケミカヅチ、命からは寧ろ賛成らしい。

 

「私としてはあまり怪我人を増やしてほしくはないが……ここまで来ては収拾は効かないだろう」

 

「寧ろ、ベルの力が公になればお客が増える……。」

 

 ベルが起こそうとしている悲惨な状況を思ってあまり乗り気ではないミアハと、商魂たくましいナァーザ。

 

「私はタケと似たようなものね、アポロンの奴は痛い目を見たほうがいいと思ってたのよ」

 

「手前としては今までどおりアザンチウム鉱石の加工について教えてもらえれば構わんよ」

 

「俺も椿と同じだ。それに、個人的にもヒュアキントスの野郎が気に入らない」

 

 ヘファイストス、椿、ヴェルフからも特に反対意見はないらしい。

 

「それで、あとはお前だけや。どうする、ヘルメス?」

 

「俺が反対するわけ無いだろ? そろそろベル君には大見えたって動いてほしいと思ってたんだ。なぁ、アスフィ?」

 

「………今までどおり、アクセサリーを輸入してもらえれば構いません」

 

 これで、ベルの同盟ファミリア達からの反対意見は全てなくなった。

 

「んじゃ、ベル君本気出すのは戦争遊戯でってことでいいかい?」

 

「はい」

 

「アポロンの絶望の顔が見物やな」

 

 圧倒的理不尽の前に自分の眷属達がなすすべもなく潰される姿を想像し、ちょっぴり同情する神々達。

 

 そこへ、『青の薬舗』の扉が開け放たれる。

 

「報告します、ボス!」

 

「どうした、カヌゥ?」

 

 現れたのはリリルカの一件以降、ベルの洗脳が聞きすぎたのかすっかりベルに心酔した《ソーマ・ファミリア》の一人、カヌゥだった。

 

 今は《アポロン・ファミリア》に焼き討ちされたホームの代わりに《ヘスティア・ファミリア》のホームの警備員をしてもらっている。

 

 そして、その姿はベルが与えた黒服サングラスである。

 

「はっ! 我等の拠点に怪しい一団が現れました! もしかしたら、アポロンの奴が先手を打ってきたののではないかと!」

 

「何?」

 

「ありえません、我等のホームは若様が作った城塞級のアーティファクト。敵意あるものが侵入することは決して出来ません」

 

 ベルの脇に控えていたメイド。フルールナイツ第二位、ネメシアがカヌゥの考えを即座に否定する。

 

「つまり、ただのお客さんということじゃないんですか?」

 

「いえ! そいつらは店員をしていた我々にこう言いました! 『ベルはいるか?』、と!」

 

「僕を? まさかっ!?」

 

 ネメシアの隣にいたメイド姿のリリルカの問に答えたカヌゥにベルはその人物達の正体に当たりがついた。カヌゥの肩をガッして、詰め寄る。

 

「おいっ、その一団の中に黒髪の男と金髪紅眼の少女はいなかったか!?」

 

「はっ! 確かにおりましたが、少女ではなく大人っぽい美女であります!」

 

「マジかよ……このタイミングでくるのか……? クソッ、まだもてなしの準備全然終わってないのに!!」

 

 唖然として呟くとベルはブーツの"瞬光"と自前の"縮地"を併用してトップスピードでホームへと走っていった。

 

「なぁ、ドチビ。ウチ、物凄く嫌な予感がするんやけど?」

 

「奇遇だね、ボクもだよ」

 

 ロキとヘスティアの顔がどんどん青くなっていく。というか、その正体に気がついた勘のいい者たちは一斉に顔を青くする。

 

「フリージア、まさかとは思うけど……。」

 

「はい、十中八九。あの御方でしょう」

 

 フルールナイツ序列10位フリージアの答えにヘファイストスが頭を抑えた。他の者たちも似たような反応だ。ついに来てしまったかという顔だ。 

 

「取り敢えず、急ごう。もし現れたのが僕らの想像どおりの人物ならベルと同盟を組んでいる僕達とは敵対関係ではないはずだからね」

 

 そこは流石大手ファミリアの団長、フィンが皆を先導して《ヘスティア・ファミリア》のホームに向かう。 

 

 しかし、その手には恐ろしいほどの鳥肌が立っていたのは隣に立つロキとリヴェリアしか気づいていなかった。

 

 ホームについたベルが見たのは自分がよく知る人物が《ソーマ・ファミリア》と言い合いをしている姿だった。

 

「だ〜か〜ら〜、俺達はベルに会いに来ただけだっつってんだろ?」

 

「貴様ッ! ボスを呼び捨てにするとは何たる無礼! 皆のもの、であえであえ! この愚か者を叩き出すぞ!」

 

 団長のザニスの号令でテーブルの下に隠れていた黒服サングラスの《ソーマ・ファミリア》さん、ステンバ〜〜イ!

 

「ここは忍者屋敷かよ!? つうかこいつ今、ベルのことボスっつったか?」

 

「……ん。まるで、ハジメに魔改造されたハウリアみたい」

 

「子は親に似るというが、ここまで似るとはのう。御主人様よ、ベルは着実に二代目魔王になり始めとるぞ」

 

 男が驚く中、彼の傍らにいた金髪の美女と後ろに控えていた和洋折衷の着物を着た美女が呟く。

 

「一体、何処で教育を間違えたんだ……。」

 

「かかれッ!」

 

 頭を抑える男を無視してザニスは号令をかける。瞬間、《ソーマ・ファミリア》の団員達が一斉に男に襲い掛かる、だが、

 

ドパンッ!

 

 ベルが天井に向けて放ったドンナーの音で《ソーマ・ファミリア》は硬直する。

 

「下がってろ」

 

「しかし、ボス!」

 

「下がれ!」

 

 強い口調で言い放つと、ベルはずかずかと男のもとまで歩いていく。

 

 そして、

 

「久しぶり……父さん」

 

「久しぶりだな、ベル。元気そうで安心したよ」

 

 どちらともなく、抱き合う二人の親子。ハジメとベル。その様子をザニス達はポカーンと見ていたが、いち早く正気に戻った団員がベルに問う。

 

「ぼ、ボス……。父さんということはまさかそいつ、いえ、その御方は!」

 

「お前たちの想像通りの人物だ」

 

『『『!!!?』』』

 

 ハジメの正体に気付いたか団員達は一糸乱れぬ動きで一斉に片膝をつき、忠誠の姿勢を見せる。

 

 ハジメ達はその完璧な動きにギョッとする。

 

『『『正体に気づかなかったといえ、大変御無礼を! お許しください、魔王閣下!』』』

 

「おいちょっと待て、閣下ってなんだぁ!!?」

 

 あまりにイタイ敬称にハジメが絶叫する。

 

 その後ろで彼の嫁〜ズと親〜ズが必死に笑いをこらえていた。


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