白兎が魔王の義息なのは間違っているだろうか(細部設定訂正中)   作:クロウド、

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ちょっととぶよ〜!


怪物祭

 その日のオラリオは朝から賑わっていた。

 

 それは、【ガネーシャ・ファミリア】が主催する催しが原因だ。年一度に行われるフィリア祭、オラリオの闘技場で【ガネーシャ・ファミリア】の調教師達がダンジョンで捕らえたモンスターを倒すのではなく、手懐けるまでの一連の流れーーー調教を客に披露する祭りだ。

 

 このギルドが企画するまつりはそれぞれ賛否両論だ。危険因子であるモンスターをダンジョンから地上に出すなど本末転倒という声や街の人間へのあからさまな商売と蔑む声や、純粋に客達を楽しませ市民や冒険者達の緊張をほぐすという意味で素晴らしい祭りだという声もある。

 

 そんな祭りに参加している二人に焦点を当てよう。

 

「はい、あーん」

 

「嫌です」

 

「なんでやー!? ウチが満足するまで付き合ってもらうって言ったやんか!?」

 

 道を歩くのは一人の女神とその眷属、つい先日ベルに胸を多少大きくしてもらった【ロキ・ファミリア】主神、遊戯神ロキと『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインだ。

 

 しかし、ハイテンションなロキとは違いアイズは先程から終始ブスッとしている。

 

「なんや、さっきのフレイヤの話でも気にしてんのかいな?」

 

「ッ!!?」

 

 先程朝食のために立ち寄ったた店で偶然会った美の女神との話を思い出し顔をしかめるアイズ。

 

「アイツの男あさりは今に始まったことやないやろ? それがたまたまベルたんだけやっただけや。」

 

 神フレイヤの気に入った子供への執着は一部の神なら誰もが知っている。そして、彼女が話したその子供の特徴は、

 

『……恐ろしく強い子だったわ。多分、私の眷属も、いえ、オラリオの全勢力を集めても圧倒的な敗北をきすだけでしょうね』

 

『でも、その根幹はとても綺麗だった、美しかった。あの子は私が今まで見たどんな色より輝きを放っていた』

 

『だから目を奪われた、見惚れてしまったの……。』

 

 うっとりとした目でそう語る絶世の美女は絵になるだろう。しかし、その相手が誰か知るものにとっては内心穏やかじゃない。

 

『なるほどなぁ、やっぱりベルのこと気付いてたか。』

 

 そんな人物、ロキは知る限り一人しかいない。

 

『だけど気ぃつけたほうがいいで、ウチとしてはあの子がオラリオの支配を望むならウチは喜んで手を貸すつもりやしな』

 

『!!?』

 

 ロキのした爆弾発言にアイズが珍しく驚愕を顕にした。

 

『……意外ね、貴方がそんなことを言うなんて』

 

『ウチかて、眷属が大事なんや。戦争になったら勝てるわけない相手に無駄死にさせるかいな。それに、あの子はウチのお気に入りでもある。なにより、お前は知らんやろうけど、あの子の後ろにはあの子より恐ろしい奴らがゴロゴロおるらしいで? わかったら、とっとと諦めるんやな』

 

 それだけ告げて、ロキとフレイヤの会話は終わっていた。

 

(あ〜、これはひょっとして……。いや、ないないどうせベルたんの強さに興味あるだけやろ。そもそも、アイズたんがベルたんに惚れる道理なんて……ハッ、まさかこれが一目惚れというやつなんか?)

 

 ベルの名前を出してから更にブスッとし始めたアイズにどうしたもんかと頭を悩ませる。

 

 しかし、一つのとおりに入った途端異常に盛り上がりを見せている店を見つけた。溢れかえった人で屋台の中が見えない程だ。

 

「おっ、なんやなんや? 面白いもんでもあるんか?」

 

「おおっ! これはロキ様、ここの店が出す変わった料理が絶品で人が集まっているんです」

 

 顔見知りの市民に尋ねるとへぇと面白そうだと笑みを零すロキ。

 

「アイズたん、行ってみようや〜!」

 

「…………。」

 

 ロキに引っ張られ自分を気遣ってくれていることはわかっているので反抗はしない。そのまま人の波をかき分けて店の前まで行く。

 

 そして、人の波をかき分けた先にあったのは。

 

「へい、らっしゃい!!」

 

 そこにいたのは白いタオルを頭に巻いて、『祭』と書かれた気合の入ったTシャツを着て、焼きそばを焼いているベルさんでした。

 

「いや、なんでやねん」

 

 ロキの突っ込みはベルの屋台に並ぶ人々の喧騒に掻き消された。

 

「ベル君! お好み焼きの追加だ!」

 

「ベル、こっちはたこ焼きの追加を頼む!」

 

「了解!」

 

 瞬間、ベルの姿がぶれたかと思えば、お好み焼きを焼いている別の鉄板の前に現れ紙皿に次々と焼き終えたお好み焼きを載せていく。さらに、たこ焼きプレートの前にも現れ、超高速で紙箱に入れていく。

 

「すげぇな、あの店員。早すぎて残像が見えるぜ」

 

「冒険者か? タケミカヅチ様もいるしあの人の眷属ってことか?」

 

「いや、アイツあっちのちっこい女神様の眷属らしいぜ。なんでも、来週オープンする喫茶店の店主だとか」

 

「「「へぇ〜」」」

 

 そんな呑気な声が聞こえる中、ロキはさり気なく屋台に近づいていく。

 

「おい、ドチビ」

 

「ん? なんだ、ロキじゃないか。今忙しいからあとにしてくれよ」

 

「いや、そうやないやろ。なんでベルたんが屋台出してんねん?」

 

「ちゃんとガネーシャのところには許可もらったよ?」

 

 ヘスティアは懐にしまってあった、【ガネーシャ・ファミリア】のサインの書かれた、【怪物祭】中の屋台の出店許可の書類をロキに見せる。

 

「ベル君が【怪物祭】中に出店を出せるのをヘルメスに聞いたらしくてね。来週オープンするウィステリアの宣伝に丁度いいってことになったんだ」

 

「タケを紹介させたのそういうことかいな……。」

 

「バイト代奮発するし、眷属分の賄いも用意するって言ったら喜んで了承してくれたよ? 気に入ったら、ウィステリアでバイトしないかとも言ってたな」

 

「まあ、タケの方からしたらありがたい誘いやろうなぁ」

 

 ロキの視線の先には老若男女に無差別に優しい笑顔を見せて客を集めるイケメンの男神。武神タケミカヅチ。彼こそ例の宴でロキがベルに紹介した神だ。

 

 東方で自身が保護した子供達を眷属としていて、嘗てのヘスティアと同じように零細な自分のファミリアのためにバイトで生計を立てている。

 

 因みにヘスティアとは神友であり、眷属と一緒にどうだ? と頼んだら二つ返事でOKしてくれた。

 

「というか、ベルたんアレ技能使ってるやろ? "縮地"って言ったか? フィンの槍にも付与されてる」

 

「そりゃ、料理の大半はベル君が担当してるからねぇ……。僕らは客寄せと簡単な盛り付けの担当さ」

 

「ロキ……。」

 

「ん? どないしたんや、アイズたん」

 

 ロキの服を引っ張るアイズが指差すのは出店の壁に引っ掛けられた少し膨らんだ透明な袋。中に入ってるのは、

 

「なんや、アレ? 雲?」

 

「ああ、綿飴かい? アレは糸状に溶かした砂糖を丸めてるんだよ。袋に入れておかないと砂糖が固まっちゃうからああして袋に入れてるんだ」

 

「ほほう、流石地球……。変わったもんがあるな〜。何? アイズたんあれ食べたいん?」

 

「………(コクリ)。」

 

(しゃぁ〜! レアなアイズたんのおねだりや〜!)

 

「んじゃ、ドチビ。アレ2つ」

 

「毎度あり、300ヴァリスになります」

 

「結構、高いな……。まぁええけど」

 

 財布から代金を渡すと、ヘスティアは壁にかけられた袋を二人に渡す。

 

「んじゃ、暇になったらまた店に顔出すわ〜。」

 

「ベル君にあっていかないのかい?」

 

「いや、無理やろアレは?」

 

 今も技能をバレないように調節しながら超高速で料理を作るベルを顎で指して「そうだね」とヘスティアも同意する。

 

 袋から取り出した綿飴を片手に二人はそのまま去っていった。




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