白兎が魔王の義息なのは間違っているだろうか(細部設定訂正中) 作:クロウド、
とあるビルの屋上、誰も見向きもしないような場所に透明な光の板が現れる。
そこから一つの小さな影が飛び出してきた。
「へぇ〜、ここが地球かぁ。おおっ!凄いよ、バベルみたいな建物がたくさんあるよベル君!」
「神様、そんなにはしゃがなくてもこれから一週間はこちらに滞在することになってるんですから。落ち着いていきましょう」
ひと足早くゲートから飛び出したヘスティアにあとから出てきたベルが苦笑い混じりで声をかける。
「全く、子供やないんやからあんまはしゃ……ッテすげぇ!なんやこれ!」
「お前も対して変わらんだろう」
遅れて出てきた【ロキ・ファミリア】一同も驚きと感動が混じった声を漏らす。そこから次々と今回の旅行ツアーに参加したメンバーが出てくる。
まずは【ヘスティア・ファミリア】のメンバー、リリ、カサンドラ、ダフネ、春姫そして、ウィーネ。ついでにメイド二人、ネメシアとフリージア。居候のアルテミス。残念ながら他の異端児は見た目の関係でお留守番である。
次に【ロキ・ファミリア】のメンバー、ロキ、フィン、リヴェリア、ガレス、アイズ、ティオネ、ティオナ、ベート、レフィーヤ、リーネ、ラウル、アキ。
【タケミカヅチ・ファミリア】、タケミカヅチと桜花、命、千草の四名とその他の眷属。
【ミアハ・ファミリア】からはミアハとナァーザの二名。
【ヘファイストス・ファミリア】から、ヘファイトス、椿、ヴェルフの3名。
【ヘルメス・ファミリア】より、ヘルメスとアスフィ、アイシャ、オマケにルルネ。
【ディオニソス・ファミリア】からはディオニソスとフィルヴィス。
【豊穣の女主人】よりシルとリュー、そして、彼女の主神アストレア。
そして、ギルドの長期休暇をとってきたエイナ。
因みに【ソーマ・ファミリア】もお留守番である。
ベルと特に親しい40人ちょっとの神と眷属+α。かねてより企画していた『ワクワク地球ツアー』の参加者達である。
クノッソス大進行の打ち上げパーティのようなものだ。
「あっ、ディオニソス様。一応"魂魄魔法"で反転させましたけど。下手な動きをしたら……今度こそ魂ごと消しますからね?」
クノッソスの一件の首謀者であるディオニソスに凄みのきいた視線を向けると彼は懺悔をするように頭を抑えた。
「ああ、わかっている。……今では自分でもなぜあんなことをしたのか理解できない」
ベルが彼の魂に行ったのは魂の善悪の反転。彼の中に僅かに残っていた眷属を思う心と、眷属が泣き叫ぶ姿を見て喜びを感じる心を文字通り反転させた。即ち、彼の心が一切の曇りもなく歪んでいれば何も変わらない。
【魂魄魔法】で魂を覗いてみるが彼の言葉に嘘の揺らぎは見えない。
一応、神にも通用する誓約を破った時点で即送還させる『誓約の首輪』をつけさせてはいるが……。
「全く、大変だったんですよ?ウラノス様に今までの仕事の分の借り全部帳消しにすることと街をもとに戻すことを条件に貴方が黒幕だったっていうことを秘密にしてもらうの……。オマケに方方に土下座の日々……。」
「ああ、本当に迷惑をかけた。申し訳ない……。」
ことの顛末はディオニソスの神酒を盗んだエニュオと名乗る何者かがエインという部下を引き連れディオニソスとペニアを操り、オラリオに混乱をもたらそうとした……そう伝えてある。
「しかしなぁ〜、やっぱウチは心配や。なぁベルたんやっぱこいつ送還せんか?」
クノッソスで死にかけた眷属がいるためロキのディオニソスの扱いは以前以上に辛辣だ。まあ、当然といえば当然だ。ベルのお陰で死人こそ出ていないのが幸いである。
「まあ、僕としてはどっちでもいいんですけど……。あのディオニソス様を敬愛してるファミリアの人達を思うと、自殺したり暴徒とかす人が続出しそうで……。」
「それは確かに……心配ではあるな……。」
オラリオでも曰く付きと言われているファミリアに、所属し続けた眷属達を思うと後味が悪すぎる。彼等が自分の主神が自分達を見捨てたなんて知ったら何をやらかすか、折角平和になったオラリオで同盟同士での潰し合いなどしては住んでいる者達の心が危ない、それが主神たちは心配だった。
まあ、ベルが本当に心配なのは……。
「…………。」
「?……どうかしたのか」
「……いや、なんでもないですよ」
フィルヴィスを見ていたベルは目を合わせた瞬間、視線をずらした。
彼女の体はベルの【変成魔法】と【再生魔法】でかつてのものへと戻っていた。
彼女の生き方は同情もしてるし、なにより怪人になりながらも誇り高く生きようとした生き方を尊敬している。
だが、それ以前に仲良くなった頃から、別の感情を抱いている節がある。
オラリオに来てから何人かの女性に感じたその感情を。
(ああ!なんなんだ、このモヤモヤは!?激しくイライラする!)
ディオニソスの悪事が公になれば彼女は自ら名乗りあげ罰を受けようとするだろう。ベルにはそれが何故か激しく気分が悪かった。
……鈍感である!
「ところで、ベル君」
「はいぃ?」
「え?なんかスゲェ機嫌悪くない?」
ヘルメスからの相変わらずの軽い声に、相対するような重く不機嫌そうな声で返すベル。
「ヘルメス様、早く謝ってください。別世界で置いてけぼりは流石に不味いです」
「え?俺が悪いこと前提?」
アスフィに言われて取り敢えず謝罪するヘルメス。自分でも何度か男のロマンと称して覗きの片棒担がせたりと色々やっちまった覚えはある。
「いや、すみませんヘルメス様が悪いわけじゃないんでけど……こう、モヤモヤして……。」
「モヤモヤ?はは〜、なるほど」
ベルの返しにヘルメスはなんとなくその正体を察しニヤニヤと笑い始める。そして、何故かその隣ではヴェルフと桜花がわかるわかると言いたげな表情をしている。
「ああ、わかるぞベル……。」
「お前にも春が来たか」
今度はホントにイラッとして殺気が漏れる。おまけに背後からヒュドラさんがステンバ〜〜イ。
話が進まないので良識人ミアハが尋ねる。
「それでベル、ここは一体どこなのだ?どこかの建物の上のようだが」
「ティオ母さんとレミア母さんが使ってる服飾関係用のオフィスですよ。来る前に話は通してあります、まずはここでこっちの服に着替えてもらいます。
ああ、それとこっちに来る前に配ったアーティファクト取らないでくださいよ?エルフ耳や獣耳なんてこっちじゃありえないんですから」
一つ注意をして、ぞろぞろとオフィスに入っていった。
感想カモ〜ん!