白兎が魔王の義息なのは間違っているだろうか(細部設定訂正中)   作:クロウド、

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豊穣の女主人

『ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!』

 

 ダンジョンの中に銃声が響く、ベルの両手に握られた銃、ドンナーM2&シュラークM2が火を吹き。ゴブリン達の頭をが吹き飛ぶ。

 

 弾が切れると宝物庫に入れてある弾丸が装填されていく。

 

 背後からであろうと、完璧にピンポイントで頭をぶち抜くベル。さすが魔王クオリティ。

 

「少しばかり本気で行ってみようかな……。」

 

 ベルは手元のドンナーとシュラークをホルスターに収める。

 

 そして、宝物庫から一本の真っ黒な刀を取り出す。

 

 彼の母の一人の相棒、その後継《黒刀・真打》。従来の黒刀も様々な技能を付与されていたが、そこから更に様々な技能を追加し、ベルが望めば大体の技は出せる優れものである。

 

 そして何より黒一色の長刀……ロマンである。

 

 嘗て、魔王は言った。無駄だろうとなんだろうと、ロマンこそが全てを可能にするのだと。

 

 そのロマンあふれる刀の鞘を握り、柄を右手で握り構えを取る。

 

 瞬間、ベルの姿が消える

 

 そして、次に現れたときには全てが終わっていた。

 

 そこにあったのは刀を納刀したベルと、立ったまま首と胴が切り離されたゴブリンの死体のみ。その切り口は実に鮮やかで、血が吹き出すのが一瞬遅れたほどだ。

 

「78点、ってところかな……。」

 

 ベルのブーツにはある技能が付与されている。その名は《瞬光》。スキル《天歩》の最終派生技能。使用時、あらゆる知覚能力が拡大し、空中での高速歩行を可能とするものだ。

 

 さらに彼の母の一人から伝授された《八重樫流》による神速の抜刀術。

 

 父の《瞬光》にも、母の抜刀術にも未だ遠く及ばないがそれでも、これだけスキルを使いこなすのは並の努力で出来るものではない。

 

 この年で既にここまでの領域に足を踏み入れている。そして、彼のもう一人の母、兎人族の女性。初代バグウサギとは違い様々な武器を使ってオールラウンダーな戦い方ができ、その全てがトップクラス、タイプは違うが既に立派にバグっていらっしゃる。故に彼の二つ名は《バグウサギ二世》なのだ。

 

「もうワンテンポ上げてみるか」

 

《気配感知》でこちらに近づいてくるモンスターの一群を捉え、迎え撃つように再び剣を構える。

 

 そして、再び神速の抜剣がモンスター達を切り裂いていった。

 

 ベルは今日もダンジョンを蹂躙するのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ここかい?」

 

「ええ、そのはずです。だけど……思ってたより随分大きいですね」

 

 ベル達がやってきたのは《豊穣の女主人》という看板を掲げた酒場としてはかなり大きな店。

 

 この店は以前、ベルが出会った少女が働いている店で是非来てくださいと言われアクセサリーの売れ行きもかなりいいので、たまには外食でもということでヘスティアも誘ったのだ。

 

 店の扉を開けると中から香るのは料理と酒の匂い。

 

 まず目がついたのは緑の制服を着たウェイトレス達だ。プライドが高いと言われるエルフまで同じウェイトレス服を着ている。そして、何より従業員は全員女性だった。

 

(父さんがメイド好きなの……わかる気がしてきた)

 

 心の中であのとき助けてあげなくてゴメン、とここにいないハジメに謝罪するベル。血は繋がっていなくてもやはり親子である。

 

「あっ、ベルさん!」

 

「どうも、シルさん。来ましたよ」

 

 扉の脇で他の者と同じようにウェイトレス服を着た銀髪の少女が駆け寄ってくる。

 

 シル・フローヴァ。彼女こそが、ベルの知り合いの少女だ。

 

「もう、一週間も経ったのに来てくれないから忘れられたんじゃないかと思いましたよ」

 

「ハハハ、すみません。こっちに来てから色々やることがあったもので……」

 

 中々店に来なかったベルに不貞腐れたような表情をするシル。実際、ホームのリフォームやヘルメスとの交渉などやることは実に多かったので嘘はついていない。

 

「コホン」

 

 そこへ、ご機嫌斜めなヘスティアがわざとらしい咳払いをする。

 

「ああ、すみません。シルさん、こちらの方は僕の主神ヘスティア様です。神様、こちらはシルさん。今朝話した知り合いです」

 

「知り合いですか……。」

 

 シルの不機嫌そうな呟きを鈍感系主人公よろしく、ベルイヤーは華麗にスルーする。

 

「初めまして、ヘスティア様。シル・フローヴァです、ベルさんには以前冒険者に絡まれていたところを助けていただきまして」

 

「ほ〜う、それだけかい?」

 

「そうですね、『今は』、まだそれだけですね」

 

「……言うじゃないか」

 

 やたら、今は、という言葉を強調するシルとそれを真っ向から睨み返すヘスティア。

 

 ベルはこの光景に覚えがある。そう、七大迷宮が一つオルクス大迷宮でハジメが同級生達と再会したとき彼の正妻とハジメを片思いしている少女が見せた光景によく似ている。

 

 あのときの二人の背後には雷雲を纏う龍と般若の顔が見えたが、今回の二人には燃え盛る炎とそれを打ち消さんとする氷の幻が見える。

 

 ベルはハジメという教訓から二人を放ってカウンターにつく。

 

 魔王からの教訓、こういうときは女達だけでやらせる。これが正解だ。

 

 椅子につくとカウンターの奥からどっしりとした体つきの女性ーーーおそらくはドワーフであろうーーーが話しかけてくる。

 

「アンタがシルのお客さんかい?」

 

「ええ、まあ」

 

「ははっ! 冒険者にしては可愛い顔してるねぇ! なんでも物凄い大食漢らしいじゃないか! ジャンジャン金使ってくれよぉ!」

 

 彼女こそここの女将、ミア・グラントである。

 

 ベルはどうやらシルに大食漢に仕立て上げられたらしい。まあ、お金には余裕があるし問題ないかとスルーするベル。

 

 それと、同時にベルはミアを見て確信する。

 

(この人、元冒険者だな……。いや、店員の殆どがそうか。レベル3、いや、4はある。この人は5以上。なるほど、ここは訳有冒険者の駆け込み寺ってところか。)

 

 ベルはひと目見てミアと店員達の正体を見破った。ベルは戦いの役に立つものはあらかたハジメから学んだ。勿論、相手の力量を測るなど造作もない、そして、コチラ側がそれを隠すという手も勿論。

 

(今日はこれをつけといて正解だったかな)

 

 ベルは自分の指にはめてある指輪型のアーティファクトを見る。これには他人から装着者への認識を阻害する効果があり、Lv5以上であろうともベルのそれを感じることをできなくなる。昨日の二人の様子を参考に今朝からつけている。

 

 因みにこのアーティファクト、ハジメが嫁〜ズに下卑た目がいかないように作ったものを元に改良したものである。

 

「綺麗な指輪ですね」

 

 いつの間にか隣にいたシルがベルの指にはめられたアーティファクトを見る。

 

「あれ? もう終わったんですか?」

 

「酷いよ、ベル君。ボクをおいてくなんて!」

 

「ハハハ、すみません。下手に女性に突っ込むとどうなるかわからないので……」

 

「一体、君は何を見てきたんだ……?」

 

 やけに大人びた目でそう答えるベルに、彼の主神は割と本気で心配した。

 

「この指輪って、ひょっとして最近《ヘルメス・ファミリア》で売り出されたものですか?」

 

「……ええ、まあ。」

 

 シルの質問にベルは生返事で返す。

 

 ベルが特殊なアクセサリーを生産していることはベルとヘスティア、そして、ヘルメスと《ヘルメス・ファミリア》の団長、あとはもう一人しか知らない。そんなものを作れるベルはファミリアの強化に喉から手が出るほどほしい人材であるからだ。自身とは関係ない連中のためにそんなことをしてやるほど酔狂な趣味は持ち合わせていない。

 

「私も欲しかったんですけど……買いに行ったときにはもう売り切れてたんですよ……」

 

 本当に落ち込んでいるように見えるシルに、ベルは右手をポケットに突っ込み宝物庫から取り出した指輪をまるでポケットから取り出したようにシルに差し出す。

 

「よければ、これどうぞ」

 

「え? いいんですか?」

 

「ええ、これを作っている人と個人的な付き合いがあるので、貰い物なんです」

 

「じゃ、じゃあ……。」

 

 シルは少し遠慮がちに手を差し出す。

 

(これは、嵌めろということか?)

 

 ここまで露骨にアピールされて、好意に気付かないと言えば嘘になる。だが、流石にお互いよく知らない相手と交際する気にはなれなかった。

 

 ベルはハーレム親父の背中を見てきたくせにそういうところヘタレなのだ。南無三。

 

 左手の薬指に嵌める度胸はベルにはない。取り敢えず中指に嵌める。この指輪は自動でサイズ調整される効果も付与されている。匠の仕事に抜かりはないのだ

 

「…………(むぅ)。」

 

「神様、無言で脇腹つねらないでくださいよ」

 

 テーブルの下ではご機嫌斜めのヘスティアがベルの脇腹をつねる。ベルにはさほど痛くないがこのままだと楽しい食事が台無しなのでどうにかしなければと考えを巡らせる。

 

(ん?)

 

 そこへ、ベルの気配感知が覚えのある気配を受信した。

 

「ご予約のお客様、ご来店にゃー!」

 

 猫人の女性が入り口で声を上げる、反射的に店の中にいたもの、ベルとヘスティアを含む者達がそちらを見る。

 

 赤い髪の女性を先頭に人族や亜人が店に入ってくる。

 

「ミア母ちゃん、きったでーーーーーえ?」

 

 独特な喋り方をする女性が声を上げると同時にテーブル席に座るヘスティアと目が会う、同時にヘスティアも目を見開く。

 

「「ああぁぁぁ!!!」」

 

 ヘスティアと赤髪の女性は示し合わせたかのように互いに指を指す。

 

「ドチビッ! なんでお前がこんなところにおんねんっ!? ここはお前みたいな貧乏神が来るところやないぞ!」

 

「余計なお世話だこの絶壁!! 万年金欠だと思うなよ!!」

 

「こんのぉ! 言ってはならんことを……今日という今日は決着つけたる!!」

 

「上等だ! 二度とその口開けないよう「はい、そこまで」ーーイタッ!」

 

 白熱した言い合いを繰り広げる二人、いや二柱の神の口論は後ろからヘスティアの頭を軽く手刀を落としたベルによって止められた。

 

 まあ、本人が軽くのつもりでもその威力は普通のゲンコツ並で結構強い、ヘスティアは涙目で頭を抑えている。

 

「な、何をするんだいベル君?」

 

「何をするも何も……ほら、アレ」

 

 ベルは厨房の方を指差す。つられてヘスティアと言い合いをしていた神もそちらを向く。

 

 そこには、鬼の形相をしたミアがフライパンを片手に持っていて今にも投げてきそうな勢いだった。ここは彼女のテリトリー、騒げば勿論それなりの制裁は受けることになる。

 

「僕のチョップとあのフライパン、どっちを喰らいたかったですか?」

 

「ベル君のチョップに決まってるじゃないか」

 

 ベルの質問に実に爽やかな笑顔で即答する主神。

 

 そこへ、先程ヘスティアと口論していた赤髪と糸目が特徴的な女性が苦笑いしながら礼を言う。

 

「いやあ、助かったわ。危うくミア母ちゃんの逆鱗に触れるとこやったわ」

 

「いえいえ、()()()こちらこそヘスティア様がご無礼を。今回は僕の手刀に免じて痛み分けということで」

 

「なんや? ウチのこと知っとるんか」

 

 そう、彼女こそオラリオにある二代派閥と言われる双璧に片割れ、《ロキ・ファミリア》の主神、女神ロキである。

 

「ええ、《ロキ・ファミリア》には少し縁がありますから。そこの二人、とかね」

 

 ベルは笑みを浮かべたままロキの後ろに連なる冒険者からある人物達へと目を向ける。

 

「テメェは……!」

 

「……………。」

 

 そこにいたのは昨日ベルがダンジョンであった、狼人と金髪の少女だった。二人とも、目を見張りベルを見ていた。

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