白兎が魔王の義息なのは間違っているだろうか(細部設定訂正中)   作:クロウド、

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なんかアイディアが降りてきたので書いたのですが途中からきつくなってかなりグダグダなので勘弁してください。


【時系列遠征前】バグエルフ&バグ剣士誕生

「それで、ベル。レフィーヤの修行はどうだったんだ?」

「まっ、まだまだ教えたりないことはありましたけど、それでもあえて言います……強いですよ、今の彼女は」

 

 レフィーヤのいる地下トレーニングルームへと向かう階段を降りながらリヴェリアからの質問に答えるベル。

 やがて、彼女が待ち受けるトレーニングルームへとたどり着く。

 

ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!

 

『ッッッ!!?』

 

 ベルが【ロキ・ファミリア】を引き連れてトレーニングルームに踏み入れた瞬間、強烈な炸裂音が耳に響いた。この音に慣れているベル以外は、反射的に自分の耳を抑えた。

 

「何よ、今の音……!」

「うぅ、耳が痛い……。」

 

 ヒリュテ姉妹が耳を抑えながら文句を言う。

 そして、彼らが音の発生源の方を見ると……そこには、丈の長い白いコートに黒いスカート、黒いニーソという服装で鷹のように鋭い目をしたレフィーヤが立っていた。

 だが、彼等の視線はその手に握られた無骨な形の()()と10mは先にある中心の赤い部分に六つの穴が空いた的だった。

 

「ベル、あれって………。」

「あぁ、アイズさんとベートさんは一度見たことがありましたっけ。あと、ロキ様も知ってますよね?」

「まぁ、形はちょっと違うけど、ウチが借りた奴の漫画で見たことあるで? 銃やろアレ?」

 

 ベルがアイズとロキと話していると、レフィーヤが彼らの到着に気付き鷹のような目をいつもの優しげな目元に戻して駆け寄っていく。

 

「アイズさん、皆さん! お久しぶりです!」

「あぁ、元気そうで良かったが、なんというか……雰囲気が変わったな」

「はい、リヴェリア様! ベルやネメシアさんたちにビシバシ鍛えられましたので!」

「実際、レフィーヤ君は頑張ってたよ。すごくね」

 

(ベル君が無茶しないように、ちゃんと見張ってたから安心してくれ)

(そうか、神ヘスティア。感謝する)

 

 自信満々という様子のレフィーヤにリヴェリアは僅かな安心を覚える。以前のミレディゴーレム事件のせいでベルの指導には若干の不安を覚えていたからである。

 それもヘスティアが小声で伝えたことで安心する。

 

「それで、レフィーヤ。それが君のアーティファクトかい?」

「はい、団長。ベルが私にあった戦い方にはこれがいいって作ってくれたものです」

 

 フィンの質問に両手に持った拳銃を見せながら答えた。ベルやハジメが使うドンナーとシュラークを元にした無骨な形状の拳銃だ。ただし、色だけは黒では女性が使う武器として品がないと思ったベルがホワイトカラーになっているが。

 

「その銃? というものがどういう武器なのか僕はいまいち知らないのだが」

「そうですね。レフィーヤ、もう一発だ」

「はい」

 

 ベルがレフィーヤに合図するとレフィーヤは右手に持った銃を的に向ける。

 

 ―――瞬間、彼女の目が再び鷹のように鋭くなる。

 

「“雷掌”」

 

 短く呟いた魔法名に反応して彼女の掌を雷が纏った。

 

 ―――次の瞬間、再び響いた炸裂音とともに白い閃光が的を粉々に打ち砕いた。

 

「あれ? 威力込めすぎちゃいましたかね?」

「なっ!?」

 

 レフィーヤは的を粉々にしたことを気にするが、他の面々はいきなりのことに頭が追いつかなかった。

 

「あれが銃という武器です。本来は火薬を込めた薬莢の爆発による反発で鉄の弾丸を放つものですが、これは父さんのアーティファクトを元に僕が彼女用に改造したものです」

 

 ベルやハジメ、そして、新たにレフィーヤが使うことになった銃に使われているのは“燃焼石”という密閉した空間で点火すると爆発する鉱石を粉末状にしたものを薬莢のかわりにしている。

 弾丸は刃性と硬度を併せ持つ“タウル鉱石”、銃身は“タウル鉱石”に加えて“タウル鉱石”以上の硬度を誇る“アザンチウム鉱石”、魔力との親和性が高く魔力を流せば防御力を上げることができる“シュメル鉱石”を使ったこの世界に勝るものがない硬度を誇る。

 ただし、今回は殺傷力を下げるために非殺傷用の硬性ゴム弾を使用している。

 

「あの雷はトータスの魔法か?」

「簡単な雷属性の魔法です。電気を銃身に流すことで電磁加速と言って電磁力……あ〜、この辺は専門的な知識になるので割愛しますが電気の力によって弾丸を更に加速して放つことが可能です。」

「的が砕けたのはそういう理屈な」

「ただ、銃っていうのは強力な分、反動が激しいもんです。特にあの銃は電磁加速の分もあるから、レベル3でも下手をすれば肩が外れかねない」

 

 ベルの説明にリヴェリア達は慌ててレフィーヤの肩を見るが、そんな様子はどこにもない。

 

「そんな顔しなくても、ちゃんと衝撃の逃し方も教えましたよ。

 さて、それじゃあそろそろ見てもらいましょうか。実戦形式で彼女の一ヶ月の成果を」

「実戦形式? 誰が相手をするんだ? レフィーヤと一緒に修行していたというリリルカという少女か?」

「いえ、リリはネメシアとフリージアと今買い出しです。帰ってきても二人にしごかれるんで無理です」

「では誰なんだ?」

「いるじゃないですか、おあつらえ向きの人が」

「あの、私も聞いてないんですけど?」

 

 ベルの言葉に疑問符を浮かべる一同。

 そんな様子にベルはニヒルに笑うと、レフィーヤの対戦相手に向けて視線を向ける。

 

「アイズさん、貴方です」

「えっ?」

『はあぁぁぁぁぁぁ!!!?』

 

 レフィーヤの間の抜けた声と、【ロキ・ファミリア】の面々の絶叫がトレーニングルームに響いた。

 

「なななななな何を言ってるんですかベル!? 私がアイズさんの相手になるわけ無いでしょう!? そもそも私何も聞いてないですよ!?」

「言ってないからね」

「だが、レフィーヤは本当にそこまで強くなってるのか? アイズはこの間ランクアップしてレベル6だぞ?」

「まぁ、余裕とは行かなくても勝てる可能性は十分ありますよ。ただ、“アヴァロン”の絶対防御はと“エクスカリバー”の開放は使わないでくださいね。アレ使ったら絶対勝てないんで」

 

 アヴァロンの絶対防御は゛空間魔法゛で空間そのものを断絶することであらゆる攻撃を封殺する反則級の防御アーティファクトだ。それを崩すには同じ゛空間魔法゛か、゛分解魔法゛くらいしかないだろう。

 “エクスカリバー”についても普通に広範囲で相手を殲滅する反則級アーティファクトなのでこれも使用不可。というか、下手をしたら地下室が崩れる。

 ハンデとしては十分だろう。

 

「ただ、だからといってそれ以外で双方手を抜いたりしたら……キレますよ」

『ッッッッ!!?』

 

 突如発せられた殺気に無駄だとわかっていても【ロキ・ファミリア】達は全員身構える。

 

「こっちは一ヶ月レフィーヤの修行を妥協せずに手伝ったんだ。なのに、その成果を見せる場で仲間に遠慮して実力を出さないって言うなら……いくら友達とはいえ、一ヶ月分の対価を払ってもらいます」

「―――一応聞くが、その場合戦闘時の傷は直してもらえるのかい?」

「当然、なんなら“再生魔法”を使ってでも治すと誓いましょう」

「そうか……レフィーヤ、アイズ君達はどうだい?」

「私は……いいよ? レフィーヤは?」

「私は……。」

 

 迷いを見せるレフィーヤ。レベル差云々よりも相手は憧れの先輩だ。その相手に本気で戦えるかが心配といった感じだ。

 ただ、それもほんの数秒。直ぐに覚悟の決まった目をフィンに向ける。

 

「私も問題ありません!」

「レフィーヤ……。」

「なら、僕から言うことはないよ」

「団長ッ、よろしいんですか!?」

「ティオネ。決めたのは二人だ。僕らが口出しすることじゃない」

「じゃあ、ちゃちゃっと準備しちゃいましょう」

 

 ベルがフィンガースナップをすると、的が立っていた棒が床にに収納されていき、トレーニングルームの一角に“聖絶”が展開される。

 

「さっ、二人以外は僕の作った結界の中に」

 

 ベルが先導すると、【ロキ・ファミリア】面々は大人しく結界の中に入っていく。

 

「それじゃあ、僕が合図をしたら開始してください」

 

 全員が結界に入ったことを確認するとベルは二人に確認すると、二人は頷いて自分の武器をレフィーヤは銃をアイズはエクスカリバーを構える。

 

「それでは……始めっ!」

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!」

「“身体強化”! “雷掌”!」

 

 アイズは【エアリアル】を、大してレフィーヤはトータスの魔法を発動すると。

 

 ―――初手はアイズだった。

 

 彼女の十八番とも言える風を纏った鋭い踏み込みが迫ってくる。勿論、刃ではなく剣腹ではあるがアイズは本気の動きでレフィーヤを狙った。

 レフィーヤでは避けられないだろう。

 

 ―――一ヶ月前のレフィーヤならば。

 

ガキンッ!

 

「ッ!」

「すみません、アイズさん。……私、もう一ヶ月前の私じゃありません」

 

 アイズの横薙ぎはレフィーヤの体に当たる前に右手の銃の銃身で防御する。硬質の鉱石で作られた銃身はエクスカリバーの刀身すらも受け止めた。

 もっとも魔力バカエルフのレフィーヤの゛身体強化゛でなければレベル5の攻撃をレベル3の攻撃を受け止められるわけがない。

 

「ッ……!」

 

 レフィーヤは受け止めたエクスカリバーを上手く上に弾くと回し蹴りを放って牽制して引き離すと、左手の銃の銃口をアイズに向ける。避けるアイズをトレーニングルームの床に出来た弾痕が追いかける。

 

 ―――レフィーヤの動きにリヴェリア達は目を見開いていた。

 

「あれは何だ? 明らかに今までのレフィーヤの動きではなかったぞ」

「ガン=カタって言って、銃を使った近接格闘術みたいなものです」

「この短期間にその、ガン=カタ? とやらと射撃、魔法を習得させたのかい?」

「別に無理強いはしてないですよ。本人は自分の近接戦の弱さを気にしてたみたいですし。寧ろ―――」

 

 ベルは若干辟易した顔で憧れの先輩と果敢に戦うレフィーヤにこの一ヶ月間の修行の風景に思いを馳せる。

 

 レフィーヤはリリルカと並行して修行を行い。ベル、ネメシア、フリージアからこの世界では教授できないさまざまな技術を身に着けた。

 ネメシアとフリージアからは近接格闘術、ベルからは射撃術と魔法を教わっていた。短期間ということもありかなりハードだったのはベル自身自覚している。

 ベルは向こうが言えばいつでも休憩にしてもいいと思っていた。だが、彼女達からベルにかけられる言葉は助言を除き一種類のみ。

 

『『ベル(様)! 回復魔法を……私(リリ)はまだやれます……!』』

 

 結局、一ヶ月間、ベルが疲労による集中切れを見極めてストップをかけない限り、あのハードな修行を続けていた。

 

「―――寧ろ、やる気がありすぎてこっちが疲れましたよ」

「……そうか。君には世話になってばかりで申し訳ない。ただ、もう一つだけ聞いてもいいかな?」

「なんです?」

「彼女はもう魔導師ではないのかい?」

「それは……見てればわかりますよ」

 

 ―――再び一同はレフィーヤとアイズの戦闘へ目を向ける。

 

 二人は現在、レフィーヤが銃を使って遠距離からアイズを狙い撃ち、隙を見て攻勢に出ようとするアイズはレフィーヤの懐に入り込もうとするがガン=カタでいなされ再び銃弾を避けるために遠ざけることになる。

 

 ―――ただし、銃を使う以上必ず隙ができるタイミングがある。

 

 左右の銃でそれぞれ六発ずつ打ち終えるとレフィーヤは左右の銃のリボルバーを開く。

 そして、彼女の中指につけてある宝物庫が光だし新たな弾丸がリボルバーにセット、再装填される。

 

「……おい、なぜレフィーヤが“宝物庫”を持ってる?」

「いや、あれがなきゃあのアーティファクト成立しませんし」

「後で話がある」

「え〜〜〜!」

「え〜〜、ではない!」

 

 “宝物庫”の有用性を知っているリヴェリアはこのあとベルにタップリ説教をすると誓った。

 それはそうと、あの弾丸のクイックリロードはハジメが考案したものだ。“宝物庫”に弾丸を収納しリロードの速さを最大まで高めるための工夫だ。

 

(あの一瞬なら、攻撃が届くかもしれない)

 

 アイズはレフィーヤが次にリロードするタイミングに目をつけた。そのために直線的な動きを避けて蛇行しながら動き回る。

 

(左右の弾は確か、六発ずつだった……。)

 

 動き回りながらレフィーヤが弾を使い切るのを待つ。

 

「銃はその性質上、特殊な弾を使わない限り曲がったりはしない。レールガンなら尚更だ。ただ、彼女の本質を理解してない……いや、忘れてるようだ」

 

 ―――そして、ついにレフィーヤの両手の弾丸が尽きた。

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)】!」

 

 それに合わせて風の力で一気に加速してレフィーヤの懐に迫る。だが、レフィーヤは弾が入っていないはずの銃を向ける。

 

「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり。狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」

(詠唱!? しかも早い!)

「【アルクス・レイ】!」

「ッ!?」

 

 ()()から放たれた閃光が駆け出したアイズに向かって迫っていく。

 既に駆け出している以上、簡単には止まれない、が。

 

「くっ! うぅぅぅ!!」

 

 アイズはエクスカリバーを地面に突き立てて無理矢理加速を殺して向かってくる閃光を咄嗟に回避する。しかし。

 

「曲がれっ!」

「っ!!?」

 

 閃光がレフィーヤの叫び声と同時にアイズに追尾するように曲がる。

 

「くっ!」

 

 アイズはレフィーヤの魔法から逃れるために蛇行しながら駆け抜ける。だが、光は一切途切れる様子はなく、寧ろ彼女の動きに連動して蛇行しながら追いつこうとしていく。

 

「ッ!」

 

 必死に逃げるアイズに一発の弾丸が放たれる。

 

(私が逃げてる間に装填した!?)

 

 弾丸はエクスカリバーで受け止められたが、その一瞬の停止にレフィーヤが放った魔法が追いついた。

 

「ぐっ!」

 

 レフィーヤの魔法がアイズの体の背後から直撃した。背中に受けた傷は“アヴァロン”の効果で即座に治癒される。

 

「まさかあの銃、()なのか?」

「その通り。あの銃はレフィーヤ専用のアーティファクト。彼女はあくまで魔導師、あれは銃でありケリュケイオンの技術を元に作った()でもある。だから、あれはいわば魔銃杖(ガンロッド)というわけです」

 

 そう、あれはベルなりに考えたレフィーヤ専用のアーティファクト。魔導師でありながら、魔導師としての弱点を補えるように考え、授けたのが゛“魔銃杖”二丁によるガン=カタ戦法というわけだ。

 

「ただ、あれはどういうことだ? レフィーヤの【アルクス・レイ】はあそこまで蛇行したのは見たことがないぞ?」

追尾式(ホーミング)にできないかって聞いたらなんか出来ちゃいまして、まぁ最初は一、二回曲げるくらいしかできませんでしたけど、魔銃杖を使った“魔力操作”ならあのくらいはできるようになったわけです。他の魔法も確実に威力や効果が上がっています」

「結局のところあの銃はあといくつ秘密があるんだ?」

「えっとあとは、“思考加速”による並列詠唱もできるので…」

「常に遠距離から敵を狙撃しつつ、彼女の【エルフリング(魔法)】によっては、高範囲攻撃に回復、はては防御も可能にできる……ということかい?」

「さすがフィンさん、飲み込みが早い」

 

 フィンが冷や汗を流しながらした立てた考察にベルは対象的に軽いノリで返す。

【ロキ・ファミリア】の幹部達は、アイズを追い詰めながら戦っている妖精と魔王の息子を見比べがら、全く同じことを考えていた。

 

 ―――こ、こいつ。なんてとんでもないものをあの魔力バカエルフに与えてんだ!?

 

「なるほど、だから相手はアイズなのか」

「どういうことだ、フィン?」

「アイズの戦い方は今までのレフィーヤの戦い方の真逆だ。彼女の修行がそれを補うためのものなら、アイズを倒せればその弱点を克服したことになる」

 

 アイズは至近距離で戦う魔剣士、対してレフィーヤは遠距離から魔法を放つ魔導師。前衛職がいることが大前提。

 

「あとは……ランクアップもできればしてほしかったですかね」

「……確かにアイズ以上の適任はいねぇな」

 

 レフィーヤにとってアイズは憧憬だ。それを乗り越えることはまず間違いなく【偉業】と言えるだろう。

 しかも相手は同じアーティファクトを持っている条件としては十分だ。

 

「レフィーヤ……強いね」

「あ、アイズさん……!」

 

 尊敬する先輩からの素直な称賛にレフィーヤは感動するが決して引き金からは手を離さない。

 故に、アイズも狙いを定められないように動きながらなので実に忙しない光景だが。

 

「“身体強化”使えるの、いいな……。」

「あっ……。」

「そういえばアイズって……。」

「……未だに“身体強化”使えないんですよね」

 

 アイズは魔力の操作が恐ろしく下手なので未だに“身体強化”使えない。アイズからみたらそれをやすやすと使いこなすレフィーヤは羨ましく見えるだろう。

 

「でも、なんとなくわかった、気がする」

「え?」

「………“身体強化”」

 

 ―――瞬間、アイズの姿が掻き消えた。

 

「え?」

「アレ……? 勢い、つけすぎ、た?」

 

 突然の出来事にレフィーヤは目を白黒させるが、()()()()()アイズの姿を見て、何が起きたか無理矢理理解させられた。

 

「ハハハッ……この土壇場で使えるようになるのかよ……。」

 

 ―――トータスの“身体強化”魔法を。

 

「あ、アイズさんも“身体強化”使えたんですか!?」

「使えなかった、よ? でも、レフィーヤが使ってるのを見て、わかったん、だよ?」

「おい、それってまさか……。」

 

 普通、魔力の流れなんて目に見えない。それを使ってるのを見たということは……。

 

「ま、“魔力感知”? なるほど、それなら魔力の使い方がわかるのも納得できる」

「うん。こう、体の中にある力をぐっとためて、ドンッと解き放つ、みたいな感じが見えたんだ」

「…………。」

「「べ、ベル君(たん)?」」

 

 ―――ベルは虚無顔になった。 

 

 悟ってしまったのである。というか、どこかの誰かと重ねてしまったのである。

 

「あんたユエ義母さんタイプかよぉぉぉぉ!!」

 

 ―――かよぉ! かよぉ! かよぉぉ!

 

 ようやく理解した、なぜベルの理論指導をアイズは理解できなかったのか。答えは天才すぎるためだった……。

 

「それじゃ、そろそろ行くよ」

 

 瞬間、爆発と聞き違うようなゴウッという轟音とともにアイズの姿が再び一瞬でかき消える。

 

「ッ!」

「クッ……! うわぁっ!!」

 

 一瞬で目の前に現れたアイズが放った突きを、レフィーヤは間一髪のところで魔銃杖で防御して受け止める。

 だが、“身体強化”によって上昇した腕力により衝撃を殺しきれず後ろに向かって弾き飛ばされる。

 

(体制を……ッ!)

 

 受け身を取るために体制を整えようとするがそれ以上に早く、暴風を纏ったエクスカリバーを構えるアイズが眼前に現れた。

 

(速すぎッ……!)

「……こなくそぉ!」

 

 レフィーヤは咄嗟に右手の“雷掌”の威力を高めアイズ……ではなく、全く的はずれな右方向に放つ。

 レフィーヤは反動によって空中で軌道を変えることに成功する。

 

(いったぁい……! でも、肩は外れてないみたい。まだ銃は撃てるけど、これじゃ絶対勝てないじゃないですかぁ!?)

 

 眼の前の無自覚天才先輩の土壇場の覚醒に泣き出したくなる山吹妖精だったが、あれだけ大見えきって降参なんて恥ずかしい真似なんてできない。

 

(となると、賭けに出るしかないですよね……。)

 

 レフィーヤが覚悟を決めると彼女の両手の雷が更に大きくスパークする。

 

「ッ!!?」

 

 さっきより速い速度で放たれた弾丸。電磁加速により、速度も威力も上がったレールガンがアイズを追いかけて放たれる。

 しかし、既に“身体強化”によって見切られている上に、“魔力感知”によって弾丸に乗った魔力を感知できるようになったのか、回避力も上がってる。“エクスカリバー”の強化も相まって完全にジリ貧である。

 

「【誇り高き戦士よ―――」

(また、詠唱……!?)

「――に森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ。同胞の声に応え、矢を番えよ。帯びよ炎、森の灯火。撃ち放て、妖精の火矢。 雨の如く降りそそぎ、蛮族どもを焼き払え】!」

 

 真紅の魔法陣が空中に展開され詠唱が完成すると同時に、

 

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!」

 

 ―――無数の炎の矢が放たれた。

 

「なっ!?」

「ハハハ、もう笑うしかない……前見たときの三倍はあるじゃないか……。」

 

 驚愕するリヴェリアをよそにもはや諦めの境地に至ったフィン。

 レフィーヤの魔法【ヒュゼレイド・ファラーリカ】は無数の炎の矢を放つ殲滅系の魔法。ただ、“魔銃杖”を使ったそれは、通常が100ならフィンの言う通り三倍……300はあった。

 即ち、物理的な回避はほぼ不可能。

 

「ちょっ、いくらなんでも止めたほうがいいんじゃない!?」

 

 ティオナは流石のアイズもこの数の矢を回避できるとは思えず中断を進言する。しかし、そんな彼女の言い分は。

 

「ッ!」

 

 ―――またしても無自覚天才の手によって粉々に打ち砕かれた。

 

 爆速的に加速したアイズが()()()()()()()()暴走列車の如く突き進んでいく。

 

「魔法を……斬っとる、じゃと?」

「もう、やだ……あの無自覚天才……。」

「おいベル、いつまでも心折れてないで説明してくれ。こっちは何も理解できてない」

「あの人……風の鎧が意味ないと断じて全魔力を“身体強化”と加速力用の風。あとはエクスカリバーの刀身に向けてる」

 

 どのみち、風の鎧ではレールガンは軽々貫通する。ならそんなものに割くより当たらないようにすれば良くない? 的な理論で防御を捨ておった。

 

「おまけに“魔力感知”で矢が一番少ないルートを瞬時に判断してやがる……。」

『…………。』

 

 ベルの説明に皆が思った。

 

 ―――何あの子? トータスの魔法の才能ありすぎない?

 

 その時点で【ロキ・ファミリア】の面々はレフィーヤの負けを革新した。確かに彼女は強くなったが自己進化を続ける無自覚チートの前に倒されるのだと。

 

 ―――ベルとレフィーヤ本人以外は。

 

(多分、レフィーヤは、この魔法で私を誘い出して、そこを狙うつもり……だけど、今の私なら至近距離でも反応できる)

 

 “雷掌”を使ってレールガンをパワーアップしたことから、レフィーヤの最後の策を読み切ったアイズが最後の【ヒュゼレイド・ファラーリカ】を切り裂く。

 だが、次の瞬間見えたのは空中に投げ捨てられた二丁の“魔銃杖”だった。

 

(武器をっ!)

((((((自分で投げ捨てたっ!?))))))

 

「ッ!」

 

 突然のレフィーヤの行動に理解が追いつかず、アイズの視線は空中の魔銃杖に釘付けになる。

 

 ―――よって、その一瞬。アイズは文字通り、完全な無防備となった。

 

「ッ!?」

「フンッッ!!!」

 

 レフィーヤはアイズの腕と襟首を掴み、そのままアイズの体を背負い上げて肩越しにアイズの体をトレーニングルームの床に投げて叩きつけた。

 その衝撃で握られていた“エクスカリバー”は地面を滑る。

 

(あれはタケのやつが前に使ってた)

 

 ロキはその動きに見覚えがあった。いつだったか、夜会で悪酔いをした神に向かってタケミカヅチが使っていたものと同じだ。

 ただ、違うのはタケミカヅチが使うのは【極東流】。対して、レフィーヤが使うものはネメシアとフリージアが教えた【日本流】のものだということだが。

 

 ―――柔術の代表的な技の一つ、【背負投げ】。

 

 背中に伝わる衝撃は凄まじいが、アイズはすぐにでも立ち上がろうとした。が、それよりも先にレフィーヤがアイズの両腕を、自分の足で踏みつけて動きを封じる。

 そして、落下してきた二丁の魔銃杖をキャッチするとその銃口を足で腕を拘束されたアイズに向けた。

 

「―――アイズさんが回避に風を回さず風の鎧を纏ったままなら、私の負けでした」

「そっか、あの魔法は……そのため、じゃああの雷も」

「はい、ブラフです……。」

 

 確かに才能はアイズのほうが上だったかもしれない。だが、いや、だからこそ……格下が勝つために策を考えた結果がこの勝利だ。

 レフィーヤは足を退けるとアイズに手を貸して立ち上がらせる。 

 

「凄かったよ、レフィーヤ」

「あっ、アイズさぁぁぁぁぁん!!!」

 

 アイズからの心からの称賛にレフィーヤは泣きながらアイズを抱きしめてしまった。

 

 ―――パチパチパチパチ。

 

 そして、その戦いを見ていた者たちからの心からの称賛を込めた拍手が送られる。

 

 ―――その日、【千の妖精】レフィーヤ・ウィリディスはレベル4へとランクアップした。




連載復活は……どうしよう、マジで……。
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