白兎が魔王の義息なのは間違っているだろうか(細部設定訂正中)   作:クロウド、

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黄昏の館

 ベルとヘスティアは《豊穣の女主人》の一件の翌日、同盟の答えを聞くために《ロキ・ファミリア》のホームへと向かっていた。

 

「ところでベル君その格好は?」

 

「黒スーツは男の嗜みです」

 

 ベルの今の服装はピシッとした黒いスーツ。向こうで見たらボディガードと間違えられそうな姿だ。

 

 または、芸能人達が賞金のためにする鬼ごっこをするテレビ番組に出てくる芸能人を追い回すやたら足の早いアンドロイドのような格好だ。

 

「じゃあ、そのサングラスは?」

 

「これは男のロマンです」

 

 そして、大して日差しが強いわけでもないのにサングラス。サングラスは男の少年心をくすぐるのだ。今のベルに実に似合っておりスタイリッシュである。

 

 この時点で完璧に逃○中のハンターである。

 

「……ハジメ君にあったら君の教育についてゆっくり語る必要がありそうだ。取り敢えず、そのつける必要のないサングラスを取るんだ!」

 

「嫌ですよ! サングラスを取るのは、相手方の前と相場は決まってるんです!」

 

「いいから早く取りなさい! イタイよ!」

 

「グハッ!」

 

 ストレートな言葉の刃がベルの心に突き刺さる。

 

「そ、そんな、ヘルメス様はカッコイイと言ってくれました! ほら見てください、一緒にサングラスつけてツーショットまでしたんですよ!?」

 

「何やってんだ君もあの野郎も!?」

 

 胸を抑えながらゆらゆらとする足取りでスマホを取り出す。そこにはベルと橙黄色の髪の軽薄そうな男がベルと一緒にサングラスをつけてカメラに視線を向けている写真が写っている。

 

 思わぬ伏兵にヘスティアは頭を抱えたくなる。

 

「それにこのサングラスはただのサングラスじゃないんです。罠発見や視覚強化、更に過去再生の能力が付与された立派なアーティファクトなんですよ!?」

 

「何という無駄なこだわり……。」

 

 無駄の何が悪い! ロマンは無駄からしか生まれないのだ!

 

(ああ、そうか。ハジメ君が言ってた『一途すぎる』ってこういう意味か)

 

 ヘスティアはハジメとの電話の内容を思い出し納得する。

 

 関係ないことだが、ベルが自分に憧れて育ったことが明白である故、ベルが厨二的奇行に走っているのは自分が原因なのでそれを見るたびにリアルに床を転げまわる魔王の姿を南雲家ではよく見られる。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「結局、外せなかった……。」

 

「代わりにライフはかなり持ってかれましたけどね……。」

 

「なんで、まだ何もしてないのにこんなに疲弊してんねん」

 

 《ロキ・ファミリア》のホーム、《黄昏の館》に辿り着いた二人は既に死屍累々であった。

 

 ヘスティアは自慢のツインテールがいつも以上にダランと下がり、ベルはサングラスが偏っていてネクタイは緩んでいる。

 

 そのあまりの光景に二人を出迎える為に待っていた三人、ロキ、フィン、そして、《ロキ・ファミリア》副団長、『九魔姫』リヴェリア・リヨス・アールヴの三人はなんとも言えない表情だ。

 

「ともかく。ようこそ、《黄昏の館》へ。歓迎するよ、ベル・クラネル君、神ヘスティア」

 

 しかし、そんな中でも余裕を見せるあたり流石は第一級冒険者だろう。昨日はベルの存在感に圧倒されたが、いまは落ち着いた様子で接する。

 

「歓迎ありがとうございます、フィンさん。ところで一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「なんだい? ああ、門番の二人ならしっかり罰を与えて謹慎中だよ」

 

「いえ、そんなことではなく」

 

 ベルはネクタイをしっかりと締め直し、襟をただし、サングラスをしっかり掛け直す。

 

「この格好について、どう思われますか?」

 

「え?」

 

 いきなり訳のわからない質問をしてくるベルにフィンは動揺する。

 

「僕の一張羅なんですがね、どうもヘスティア様には評判がよろしくないので同じ男性のフィンさんに感想をいただきたいんです」

 

 早口でまくしたてフィンの肩をガッするベル。

 

 フィン、いや、ロキとリヴェリアも『これから大事な同盟についての話し合いなのに、何言ってんだコイツ』みたいな目を向ける。

 

 しかし、声には出さない。サングラスの奥から輝くルベライトの目が中途半端な答えは許さないと言わんばかりの鋭い眼光が輝いている。

 

 しかし、フィンにはこういうパリッとしたスーツの良さはよくわからない。というか、なんで特に日差しも強くないのでサングラスつけてるんだ、という疑問が浮かぶ。

 

 フィンはロキとリヴェリアに『助けてくれ』という視線を向けるが、女性の彼女らの答えはヘスティアと同じである。二人は揃って目を逸らした。

 

「え、えっと、僕はカッコイイんじゃないかと思うけどね……。」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ベルはバッと振り返りヘスティアに『聞きました? ねぇ、聞きました?』というサングラスの下からでもわかるような輝きの目を向ける。

 

 しかし、ヘスティアはそれがフィンの方便だとわかっている。もう諦めたヘスティアは慈愛のこもった優しい視線をベルに向ける。

 

 その目はベルの弱点を抉る。

 

「あのすいません、その目は一体なんですか? なぜ、そんなに慈愛のこもった目を……わかりました、僕が間違ってました、ホラ、サングラス外しましたからその目やめくれません。ねぇ、お願いしますって……」

 

 ベルはヘスティアの慈愛の眼差しに屈した。厨ニ病の唯一の天敵は身近な人の優しい眼差しなのだろう。

 

 ロキ達は思った、こんなんでこれからの会合、大丈夫か? と不安になるのであった。

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