架空戦記~東洋海戦争1941~   作:鈴木颯手

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第二十三話「東洋海海戦・3」

~神星ルドワ帝国side~

「敵艦隊を視認!数は戦艦10、空母4、重巡19、軽巡30以上、駆逐多数!内数隻が大破の模様!」

 

神星ルドワ帝国の連合艦隊司令長官にして第三皇女ミリアは見張り員の報告に漸くか、と心の中で呟く。

 

航空機による打撃を与え続けていたが敵を葬るには艦隊決戦が一番早い。しかし、それは同時にこちらにも被害が出る可能性があり場合によっては全滅するかもしれない。

 

「…全艦隊に通達!これより砲雷撃戦を開始する各々の判断で敵を葬れ」

 

「了解!」

 

ミリアの指示に従い神星ルドワ帝国の連合艦隊が一斉に動き出す。神星ルドワ帝国の最新鋭戦艦バグナ級がその主砲41cm連装砲三基をアビン合衆国とイハワ王国艦隊へと向け放った。

 

しかし、初弾と言う事とお互いが移動していたと言う事もあり当たる事は無かったが前方を航行中の駆逐艦の極めて至近に着弾した。その駆逐艦は爆発の影響で横へと押し出され大きく傾いてしまう。幸い直ぐに立て直したが神星ルドワ帝国の実力を見せつけていた。

 

対するアビン合衆国もキンメル大将が乗艦する戦艦ノースカロライナを筆頭に砲撃を開始する。駆逐艦や軽巡洋艦は敵艦隊に接近し魚雷攻撃を目指し行動する。それをさせまいと神星ルドワ帝国の艦載機がまとわりつく。両軍入り乱れる海戦へとなりつつあった。

 

「メルバ級第三駆逐艦大破!」

 

「ルベルトス級第一巡洋艦被弾!」

 

「ジャッグトス級第五巡洋艦撃沈!」

 

神星ルドワ帝国の艦艇の被害も増えていきミリアの元に様々な被害状況が来るがそのどれもが小型艦艇でありルベルトス級の重巡洋艦の被弾報告以外は大型艦の被害は今のところなかった。しかし、アビン合衆国やイハワ王国は明らかに大型艦も沈んでおりどちらが優勢であるかは火を見るよりも明らかであった。

 

 

 

 

~イハワ王国side~

「くそっ!このままじゃ全滅だぞ!」

 

タツミは砲撃で揺れるワイアルアの中で必死に物に掴まり耐えていた。イハワ王国の艦隊は悲惨な事になっていた。唯一生き残った戦艦も沈み重巡洋艦も大半が大破や撃沈した。残ったのは非力な軽巡洋艦や駆逐艦のみ。幸い、敵艦載機はアビン合衆国の船にまとわりついているためにこちらには少数しかいない。それでも少しづつ被弾し沈む感が増えてくる。

 

「…艦長、我々に出来るのは三つです。一つ目は継戦し撃沈される。二つ目は味方を見捨てて撤退する。最後は降伏する事ですね」

 

「二と三はないな。かと言って一もあり得ない。死にたくないし売国奴になるのもな」

 

「しかし、このままではいずれ…」

 

副艦長のジョージの言葉にタツミは返事できなかった。タツミもこのままではいずれ砲弾があたり乗艦するワイアルアが沈むであろう事は予想できた。しかし、降伏など出来るはずもなく、

 

「…我が艦は最後まで戦「艦長!」」

 

タツミが命令を下そうとした時、見張り員から突然の報告が響く。

 

「…どうした?」

 

「四時の方角より多数の艦が近づいてきています!」

 

「何だと!?何処の国の物か分かるか!?」

 

タツミは一体何処の国なのか分からなかった。いや、一つだけあった。今なおこちらに向かってきている東の島国が。

 

「!船首に菊の紋様!葦原中国です!」

 

それはまさにこの劣勢の状況における福音であった。

 


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