真っ暗な星空の下、ビデオカメラを背に置き私はとあるものを撮っていた
「日本の首都が東京から京都に移されたのは私が生まれるずっと前の話、東京は荒れ果て無法地帯となってしまったわ、一方今私の居る京都は科学技術が進歩し続けている、物理学の四つの力は統一されもう哲学の域にまで到達してしまったわ」
そういって私はビデオカメラの方に向き直る
「発達した合成技術によって創造できないものはない、治すことのできない病気は存在しない、どんなフィクションや幻想もバーチャルリアリティで再現されてしまう。そんな世界に生きてるんじゃつまらないと思わない?どんな人間でもなしえなかった偉業も、名探偵でも解けない謎も、人の手におえない不思議も、「全部ありえない」と決められた世界なんて」
私は予定していた言葉を何事も無い様に言う、完璧だ
「世の中にはまだ、誰も知らない、誰も見たことの無い、ありえないからこそ密かに封じられた何かがあるはずよ、私はそれを暴くための活動をしている。私はそのサークルを秘封倶楽部と名づけたわ、今のメンバーは私ともう一人、その二人だけど」
一呼吸置いてから私はまた話始める
「でも、それでも私は追い続ける、追い続ければきっと見つかるはずなの、ありえないのその先が、だから、もしこれを見た誰かが興味を持ってくれたら、京都に来なさい、私は待っているわ」
「何をやってるの?蓮子」
ドアを開ける音と共に、もう一人のサークルメンバーが入ってきた。
「全くもう、部屋暗くして何やってるかと思ったら、小型プラネタリウムなんか使って何してるのよ」
そう言いながら彼女、マエリベリー・ハーンは手際のいい動きで電気をつけプラネタリウムのスイッチを切る
「何ってこのビデオカメラで秘封倶楽部の宣伝映像を作っていたのよ」
私はビデオカメラの電源を切り映像を確認しながら言う
「そんなの撮ってどうするのよ、元々私達がやってるのは特殊な霊能サークルなんだし、ネットで流しても誰も参加しようなんて思わないわよ?」
「ネットに私の姿なんて流出させるわけ無いじゃない、これはタイムカプセルに入れるのよ、次の世代に私達の活動を継いでもらう為にね」
「次の世代って言っても、私とあなた以外にこの活動ができるとは思えないけどね、だって普通は、見えないんですもの」
確かにそうかもしれない、マエリベリー・ハーン、私はメリーと呼んでいるのだけれど、彼女は境界が見えるのだ、物体や空間の境目が、だから彼女は境界が歪んでいたりそこに間があったりするのを見ることができる、世界中にあふれるありえない事が見えるのだ。まあ、正直言ってしまえば羨ましい反面気持ち悪いけどね、でも彼女は私の眼を気持ち悪いというわ、私は月を見ただけでその場所を、星を見ただけで時刻がわかるわ、日本限定のGPS付時計と言った所かしら
「でもメリー、不思議なことを追い求めるのに誰でなければいけないという訳ではないわ、私だってこんな眼を持っているけどメリーがいなきゃ何の成果もあげられない、それでもずっと追っているわ」
「確かにそうかもしれないけど、元々法律で禁止されている行為なのよ?時代が変わって取締りが厳しくなるかもしれないし」
「そんな事恐れていては何の行動も起こせないわよ、それに逆の可能性だってありえない話ではないわ」
そう、私は生きた証を残したい、忘れ去られてしまうのは嫌なのだ
「まあ、撮っている理由については納得できたけど、どうして私を誘ってくれなかったの?私達は二人で秘封倶楽部じゃないの」
メリーが詰め寄ってくる、忘れていただなんて絶対に言えない
「えっと、それはその、何本か撮るつもりだったのよ、私単体で宣伝するのとメリー単体で宣伝するの、でもメリーに言ったら断られそうだったから、私のだけでも先に撮っていたというわけよ」
「ふぅん、まあいいけど」
少し呆れ気味に納得する彼女、多少の罪悪感はあるけど多分これが最善の判断だとは思う、なるべくならメリーとは揉め事を起こしたくない
「それで、タイムカプセルと言っても、どこに埋める気なの?まだ開発が行われているここじゃあ埋めて数年経ったらコンクリの中、なんて事になりかねないわよ」
「甘いわねメリー、見つかったら逮捕モノなこの映像を京都に埋めるはずがないじゃないの」
チッチッチ、と舌を鳴らし少しだけ挑発気味た感じで言う
「じゃあどこに埋めるっていうの?蓮台野?墓地に埋めるなんて墓荒らしみたいな事私は絶対に嫌よ」
「墓地に埋めるなんてしないわよ、それこそ死体なんかがでてきそうだし……まあ、それはそれで楽しいかもしれないけど」
「不謹慎なこと言わないでよもう」
そんな軽い会話をしながら私は床に落ちている手ごろな金属製の入れ物を拾い中にビデオカメラと予備バッテリーを入れてみる
「これならまだ何か入りそうね、私達の活動記録でも書いて入れておく?」
「それはいいわね、記録と一緒に写真なんかも入れておきましょうよ証拠として」
「そうね、そうしましょう」
それに同意した私はアルバムを本棚からとってくる、今ではアルバムというのも廃れたものだが、私は雰囲気作りとして使っている
「この写真なんかどうかしら」
「これは、蓮台野で活動した時の写真かしら?」
その写真には満開の桜が写っているがある部分を境目に紅葉が写っている、初めて境界を暴いた時の写真である
「この写真が一番私達のやっていることを表してるわね、桜と紅葉、普通は同時に見ることなんて不可能だわ」
「でも合成って思われちゃうんじゃないの?」
「逆よ、私達みたいな人はきっと、合成かどうか実際に確かめたくなるわ、ありえないかどうかね」
「確かに一理あるわね、それにもう見ることもできなくなった天然の桜だし、心惹かれる何かも絶対あるわ」
「じゃあ、この写真は決定ね」
そう言って私は写真を入れる、データはまだパソコンに残ってるし大丈夫だよね
「そういえば蓮子」
何かを思い出した様にメリーが私に尋ねてくる、まあ質問の内容なんて大体わかるけど
「結局聞いてなかったけど、タイムカプセル何処に埋めるの?」
「どこって、京都じゃなかったらどこかなんて決まってるじゃない、私の故郷……」
一呼吸置いてから私は答えを発する
「東京よ」