絶望したヒーロー志願者と愛を望んだ少女   作:龍宮院奏

1 / 9
「俺、大きくなったらヒーローになって、さあやちゃんを悪い奴らから守ってみせる」
小さな少年は無邪気にそう言った。
「うん!じゃあ、れいくんがヒーローになって私を悪い奴らから守ってね」
小さな少女は、その少年に無邪気に微笑み返す。
「うん!約束する、ヒーローは約束を守るから!」
「じゃあ約束だよ」
小さな指を絡ませて指切りをする。
「れいくんの事、私だいすき。だから、大きくなったられいくんのお嫁さんになる!」
少女は言う、心のままに。
「俺も、さあやちゃんの事だいすきだよ。さあやちゃんの旦那さんになる!」
少年は答える、心のままに。
 こんな綺麗な日々が俺にもあったんだ…ナノニドウシテ…。
 こんな笑い合っていた日々が私にもあったんだ…、ダカラモウイチド…。
 少年は進む、暗く深い憎しみの道を。少女は進む、脆く歪んだ愛の道を。


第一話再開と終わりの始まり

 なんでこんなにも全てが憎いのだろう。

「そ、そんな。うわぁ……」

爆発の荒波に飲まれ無残に消える声。そんな声を置き去りに、残骸を薙ぎ払い敵を狩る。

 

「いつの間に後ろに。けど、これでも喰らえ!」

降り注ぐ弾丸の雨。

 

「これがお前の最後だ」

ファンネルからの猛攻。

 

「あいつの仇……」

剣を構え突撃を仕掛ける者。

 

 様々な攻撃が同時に襲いかかるが、

 

「煩い……煩い……。あぁぁぁ、煩い!何だよ……本当に何なんだよ。早く消えてくれよ……、俺の目の前から早く消えてくれよ……」

見せつけるように輝く光、俺には失われた光。

 

 閃光が全てを掻き消した。勝利への希望も、信じた未来も、仲間からの思いも……。

 全てが光に飲み込まれた。

 

『battle end winner Kuremiya Rei』

システムがバトルの終了を無慈悲に告げる。

 

「だから言っただろ…、憎いって…。お前らみたいなのが、1番憎いって……」

そう言い残し、GPベースと愛機を回収してその場を後にした。

 

 憎い、憎い、憎い……、この世の全てが憎い…。

 何時、何故だったのだろうか。今となっては、憎みすぎてその理由すら忘れてしまった。

 

 そんな自分がまた憎い。どうして俺の心は、

 

「こんなに晴れないんだろう……」

眩しく輝く太陽の光が体を照らす。

 

すると、突然ゴンッ!後頭部に鈍い金属音が響き、痛みが後から襲ってくる。

 

「お前の方こそ何なんだよ!」

 

「憎い、憎いって。かってに逆恨みしてんじゃねぇよ」

声からしてさっき戦ったファイター達だろうと予想が付いた。

 

「お前のほうが消えてくれよ……」

吐き捨てるように残された言葉を聞きながら、地面に倒れ込んだ。

 それからは、囲まれて襲った奴らの気が済むまで体中を蹴られ続けた。

 それを只々、黙って耐え続ける。周りからは奇異の目で見られるが、誰も助けには来てくれない。

 持っていたカバンを腕の中に抱え込み、中に有る物のために体を盾にして耐え続けた。

 次第に意識が遠のき、蝋燭の火が消えるように、ふと消えた。

 

「あ、あの大丈夫ですか?」

 

 襲った奴らとは違う声に、事切れた意識が目覚める。

 その声へと意識を向ける。少し視界が紅く霞んでいてよく見えない。多分頭のどこかから、出血した所為だろう。

 しかし、俺への憂さ晴らしは終わったらしい。

 

「だ、大丈夫だ……」

返事をし、立ちあがる。その場を一刻も早く離れようとするが、思ったように体に力が入らずに再び意識を失った。

 消える瞬間、

「ちょ!今救急車を呼びますから」

僅かながらに聞こえた。

 

 目が覚めると、真っ白なカーテンに覆われた部屋に居た。

 どことなく消毒液の匂いが立ち込めている。

 俺はさっき……、

 

「あ、目が覚めたんだね」

まだ少し朦朧とする意識の中で、聞き覚えの有る声の人物がベッドの隣に座っていた。

 

「お医者さんが言うには、『傷は多いけど、安静にしていれば大丈夫』だって」

山吹の髪の毛をした少女は笑顔で言う。

 

「あの……誰ですか……?」

 

「ちょっと、助けた張本人に対しての第一声がそれなの?」

苦笑した後、ぷくっと頬を膨らませる少女。その姿が素直に可愛かった。

 

「あ、ありがとう」

感謝の礼を言うものの、どことなく気恥ずかしで顔を見ることが出来ない。

 

「良いよ、困っている人をほおっておけないの。それに君は、頭から血を流して倒れていたんだから尚更だよ」

 

「そうなんだ……、それで病院に……」

 

「最初はかなり焦ったんだからね」

無事に俺が目を覚ました事に安堵したのか、ほっと胸を撫で下ろしていた。

 

「そうだ、自己紹介がまだだったね。私は山吹沙綾」

助けてくれた少女は、思い出したように自分の名前を名乗った。

 

「俺は……、暮宮零」

 

「暮宮零……、じゃぁ零だね。よろしく」

友好の印と、手を差し伸べてきた。

 

「よろしく、山吹さん」

 

彼女の差し出された手を握り返す。

 

「沙綾で良いよ、私は名前で呼んでいるんだから」

 

「分かった……、沙綾」

名前で呼ぶと、満足したのか満面の笑みを浮かべていた。

 それと名前を呼ぶと、どこか懐かしい感じがした。けれど今は、まだお思い出せなかった。 

 沙綾とこうして話していると、意識がだいぶハッキリしてきた。それ故にある事を思い出した。

 

「あの、カバン!あの、カバンは?」

 

「カバン?あ〜、ちょっと待ってね」

椅子から立ち上がりどこかに向かう沙綾。あのカバンには……。

 戻ってくると、沙綾の手には望んでいた物があった。

 

「はい、これでしょ零が今言っていたのって」

 

「そう、このカバン」

少し大きめのアタッシュケースの様なカバンを沙綾から受け取る。

 そしてすぐに中を開ける。

 

「零が倒れている時に、それを凄い抱きしめて倒れていたから。一緒に持ってきたの」

沙綾が横で話しているが、今は耳に入らない。今一番大事なのは……。

 

「相棒、生きてたか……」

中に大事にしまわれた、ガンプラのセットだった。

 

「何それ?」

横から覗き込むようにして中を見る沙綾。顔が近いのは、正直恥ずかしかった。

 

「俺の相棒」

カバンから取り出し、どこか異常が無いか確かめる。腕も足も問題なく可動する。装甲はさっきの戦いで少し傷があるから直さないと。

「問題なし、良かった……」

安心して溜息が出る。

 

「そんなに大事なんだね。その相棒?が」

俺の相棒をじっと見つめながら。

 

「俺が、俺たる為のガンプラだから」

ぽつりと言葉を紡いだ。

 

「そうなんだ……、何だか本当に大事なものなんだね」

「まぁ……」

そんな会話をしていると、部屋の扉が開き看護師が入ってきた。

 

「あ、目が覚めたみたいね。ほんと、彼女が居なかったらもっと酷かったんだから。幸い、通報が早くて良かったけど」

 

「はぁ……」

そんなに酷かったのか?自分ではもう良く分からなかった。

 

「起きて話せているのなら大丈夫だと思うけど。一応、最後に検査だけするから。そこで異常がなければ退院して平気よ」

看護師は手に持った資料を見ながら言ってきた。

 

「わかりました」

隣にいる沙綾の方を見ると『大丈夫だよ』と言ってくれている気がした。

 

「じゃあ、検査をお願いします」

 

「はい、じゃあこちらにどうぞ」

看護師に連れられて、検査に向かった。

 

 それから検査をしたが、特に異常は無く無事に退院することが出来た。

 

「そういえば、零は家どこなの?」

 

 病院からの帰り道、沙綾は『心配だから』とついて来た。

『心配は無い』と言ったのだが、

『怪我人が何言ってるの、良いからここまで来たんだから。付き合わせてよ』と説得されてしまい、結局負けた。

 そのため沙綾と二人、自宅の帰路を歩いている。

 

「ここから、少し行った所。近くにあの何か大きな遊具の有る公園の」

 

「あ〜、あそこか。何となく分かってきた気がする」

それから黙々と歩いていくと、自宅に着いた。と言っても、アパートの一室なのだが。

 

「零、もしかして一人暮らし?」

 

「そうだけど?」

 

「ふ〜ん、そうなんだ」

何でそんな事を聞くのだろう?

 

「どうかしたか?」

 

「ううん、なんでもないよ」

沙綾がそう言うなら、何も無いだろう。沙綾に対しては、何故だか会ったばかりなのに、凄い安心感が持てていた。

 

「今日はありがとう、助けてもらったうえに家まで送ってくれて……」

頭を深々と下げる。それを見かねた沙綾は、

 

「良いって大げさな、だからもう顔を上げて」

慌てて顔を上げるように言うので、顔を上げる。

 

「あ、そうだ。折角知り合えたんだから、また何か困ったことがあったら連絡して。これ、私の連絡先」

ポケットから連絡先が書かれた、小さな紙を受け取る。

 

「うん、ありがとう……」

「どう、いたしまして。それじゃ、またね零」

挨拶を告げ去っていった。夕暮れに照らし出される山吹色の髪が幻想的に見えた。

けどこの姿を……何処かで……。

 

「あ、沙綾」

 

「?どうかした?」

あまりの事につい引き止めてしまった。

「あ、いや……。俺と沙綾って、昔何処かで会っていたりした?それもかなり小さい頃に」

 

「……」

沙綾の顔が一瞬だけ驚いたようにも見えたが、すぐに、

 

「そんな事無いよ、今回が初めてだよ。それに小さい頃の記憶じゃ曖昧だから、きっと零の思い違いだよ」

苦笑いで返されてしまった。

 

そだよな、今日出会ったばかりで。それも助けてもらった事できっと何かを覚えたのだろう。

小さい頃の記憶なんて曖昧なものだもんな……。

「変なことを聞いたな、悪い……。じゃあな」

 

「うんん、じゃぁね。零」

 

沙綾を見送り部屋に入った。

 

「ただいま……」

誰も居ない部屋に自分一人の声が木霊する。

 玄関に飾ってあった写真をふと手に取り見てみた。

「やっぱり、他人の空似だったのかな。ヒーローになるか……」

その写真には、幼い頃の零と山吹色の髪をした少女が笑顔で写っていた。

 

 あの頃は……、この子が居たから笑えていたんだ……。

 

 夕暮れに染まる道を一人歩く沙綾は、何処か嬉しそうだった。

 それもそうだった、しかしこの事はまだ沙綾しか知らない。

 

「ただいま。お父さん、お店の方大丈夫だった?」

家に着き、お店の入り口から入ると丁度片付けをしているところだった。

 

「おかえり、沙綾。こっちは大丈夫だよ、それよりそっちの方が大変だっただろ」

 

「あー、大丈夫だったよ。最初は頭から血を流して倒れていたからびっくりしたけど。すぐ救急車を呼んで、病院で見てもらったから。安静にしていればすぐに治るって事で退院して、家まで送ってきた」

 

「そうか、そうか」

割と心配してようで、話を聞くたびに頷いてくれた。

 

「それにしても、一体何があったんだろうな?そんな怪我をするだなんて」

考え込むお父さん。

 

「わかんないよ、でも元気そうだったから。これからまた様子見に行くよ」

 

「わかった。それと沙綾」

 

「何お父さん?」

 

「何か良いことでもあったのか?さっきからずっと楽しそうな顔してるぞ?」

 

「そ、そんな顔してたかな?」

言われて自分の状態に気づいた。でもあったのは事実だ。

 

「こ、今度教えてあげるから」

と、言い残しお店から上がり自分の部屋へ向かった。

 

 部屋に入るとクローゼットの奥の方から、一つの小さな箱を取り出した。

 

「あった、あった」

蓋を開けて中を見てみると、幼い頃の私と満面の笑みを浮かべる少年が並んでいる写真が出てきた。

 写真を手に取り、そのままベッドにダイブした。

 

「やっと帰ってきたね、零……」

 

零はまだはっきりとは思い出してはいないようだけど。名前を聞いた時に気づいたんだ。

 親の都合で零はこの街を離れちゃったけど、約束してくれたもんね……。

 

「はぁ〜…、零……」

写真を抱きしめ、誰かに言うのでもなく、ただ一人天井に向かってその名前を呼ぶ。

 そして、

「今度は、こんどこそは。零、かなえさせてもらうよ……。アノトキノネガイヲ……」




始めまして、龍宮院奏です。え〜と趣味でもともと小説は書いていたのですが、この度このハーメルンさんの?様かな?のサイトでネット小説を始めることにしました。
文章の描写や、内容では力が及ばないところが有るかもしれませんが、どうか一つよろしくお願いします。
 アドバイスや、感想をお待ちしております。改めて、よろしくお願いスます。

私が一番好きなガンダムは、ガンダムデスサイズヘル(EW版)です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。