さあやちゃんが呼んでいる、何だろう?
幼稚園を卒園して、また二人今度は小学生になった。
小学校でお友達もできて楽しいけど、やっぱりさあやちゃんと居るほうが楽しい。
「なに、さあやちゃん?」
「はい、これ!お誕生日おめでとう!れいくん」
さあやちゃんの手には、少し大きめの袋に包まれた箱と、手紙が添えてあった。
「え!ありがとう」
プレゼントを受け取り、手紙を読もうとする。
「手紙は……恥ずかしいから後で……」
と止められてしまった。
「なんで〜、気になるじゃん」
せっかくのプレゼントと一緒にあるのだから、手紙の中身が気になって仕方がない。
「良いの、後でちゃんと読んでね」
念を押されてしまった。
「むぅ、分かった。じゃぁ、プレゼントは開けてみても良い?」
頬を膨らませて、拗ねた様子で言うと、
「良いよ、開けてみて」
オッケーが出たので袋を開けてみた。
すると、そこにはプラモデルの箱が入っていた。
「これ?もしかして……」
「そうだよ、れいくんが前欲しいってれいくんのお母さんに『欲しい!』って泣いて言ってたやつだよ」
「さあやちゃん……」
嬉しさで涙が溢れかえった。そしてそのままさあやちゃんに抱きついた。
「さあやちゃん、ありがとう!すっごい嬉しい!」
「ちょっと、れいくん苦しいよ…。そんな大げさだよ」
それでも、抱きしめて離れようとしない。
「このガンプラ、大事に作る。それでもって、このガンプラでガンプラバトルを始めて強くなるね」
「言ったね〜、ちゃんと大事に作ってね」
笑いながら、抱きしめ返してくる。
「うん、絶対絶対大事にする」
まただ、また昔の夢を見た。この街に帰ってきてから、否あの少女と出会ってから。
「山吹沙綾、まさか……もう10年以上も前のことなんだから……」
そんな淡い期待なんて……もうしないって決めたんだから。
その後顔を洗い、簡単に朝食を済ませ早めに家を出た。今日は早く学校に行く必要があったのだ。
「行ってきます」
玄関に置かれた写真に挨拶を告げて。
学校に着くや否や、目的の職員実に向かった。
「おー、きたきた。よろしく零くん」
そうこの街に引っ越すことになった為に、学校も転校することになったのだ。
「いや〜、まさか純一郎の息子が私の教え子になるだなんて」
今話しているのは、これから転入することになった花咲川学園の教師の一人、紅葉谷秋葉先生。
僕の父・純一郎の高校時代の同級生だそう。それでいてどうやら僕の担任の先生だそうだ。
「よろしくお願いします……」
姉御感が強いなこの人、何か圧も強いし。
「それで、心の準備は出来てる?」
紅葉谷先生が尋ねてきたが、良く分からなかった。
「その顔はもしかして、知らないのか……。純一郎……、そこの説明はちゃんとしておけよ」
紅葉谷先生の背後から何とも言えない、ドス黒いオーラが一瞬チラついだが……怖いので見なかった事にした。
「えーと、あのそれで心の準備って?」
恐る恐る聞いてみると、心底楽しそうな笑顔でこちらを見ていた。
あ……、嫌な予感がしてきた。俺の中の第六感が、危険信号を爆音で鳴らしている。
「この花咲川学園はね、2年前までは女子学校だったの」
あ……、さらに危険信号が。
「それで共学になったのはつい最近の事で」
「何となく分かってきました……」
言いたいことの予想は、胃が痛むくらいにつく。
「この学校の男女比率っていうの?が、男子が2か3くらいで、女子が7か8って感じなんだよね」
あ、高校生活の終了のお知らせか。
「あははは……。終わった、コミュ障な俺にどうしろと……」
「いや、ちゃんと男子も居るから。1クラス辺り、えーと8人位?」
紅葉谷先生が急きょフォローを入れてくる。
「それでも女子が多い……」
心の本音がボソッと漏れる。
「仕方がないでしょ、ほらシャキッとして!頑張る!」
バシッ!と背中を叩かれた。
「はい……」
転校して早々に、頭痛がしてきた……。
「じゃぁ、ホームルームの時に一緒に教室入るから。それまでは、何か自由に校内を探索して良いから。私部活の朝練見なくちゃだから」
職員室のソファーに1人残され、何処かへ行ってしまった。
「じゃぁ見て回るかな……」
さすがに職員室に1人で居るのは気まずかったので、校舎を見て回る事にした。
が、それも結論から言うと失敗だった。
転校してきた初日、何処に何があるのか分からずに学校内を散策するなんてした為に、現在、絶賛迷子状態である。
「ここ何処だよ〜、もう分かんないし。俺の通っていた所より広いし……」
辺りを見回しながら、さらに歩き進めた。
すると、ある教室の前で足が止まった。
そこの教室の名札には、『模型部』と書いてあった。
「開いていたりするのかな?」
冗談半分に扉に手をかけると、あっさりと扉が開いた。ここの部活、不用心過ぎるだろ……。
「失礼しまーす」
一応挨拶をしておく、もしも誰か居た時の為に。
朝ではあるが、カーテンで閉ざされたせいで部屋は夜の様に暗かった。電気のスイッチを探して、スイッチを入れるとその世界は広がっていた。
明かりがついて部屋が見渡せる様になり、見えなかった棚からこの部で作られたであろう作品が並んでいた。
その中でも、特にガンプラの種類は他の模型とは比べ物にならない量だった。
最初に見に留まったのは、機動戦士ガンダムに登場するジオン公国軍のドムだった。ドムは重量感のあるボディがすごく好きで、それでいて足にホバーシステムを搭載する事で高い機動性を持っている。黒い三連星のガイアが言った、「俺を踏み台にした!」の台詞も好きで、とてもお気に入りの機体。
次に目に留まったのは、これまたジオン公国軍の高機動型ザクだった。その中でも、白狼と呼ばれたエースパイロットのシン・マツナガ専用機であった。
ザビ家の三男である、ドズル・ザビ中将直結の部隊に所属していた、その白いボディはジオンの白い悪魔と言えるだろう。今まで見てきた物の中でも1番綺麗だった。
「こっこれは……アナタは!」
今までのイメージをひっくり返し返してきた、伝説の機体。
ガンダムデスサイズヘル(EW版)が、鎌を振りかざすポーズで置いてあった。
死神であるこの機体は、パイロット、デュオ・マクスウェルの
『俺を見た奴は、みーんな死んじまうんだぜ!』の死神らしからぬ台詞で敵を殲滅するのが印象的。
その他にも、ジム・カスタム、ガンダムF91、バウ、ギラー・ドガーなどにも見入ってしまった。
「それは去年のコンテストに参加した作品でね。これでもあと少しで優勝だったんだよ」
振り返ると男子生徒が怪訝そうに、こちらを見ていた。
「あ、すみません。模型部って書いてあって、気になって……、そしたら扉が開いてて……」
慌てて勝手に入ってしまったことを謝罪する。
「良いよ、基本的にこの部屋は作品の展示の部屋だから。ケースには鍵が掛けてあるから」
ケースの傍を指差し、そこを見ると鍵が付いてあった。
「そうなんですね……」
「だから、全然見てくれて構わないよ。むしろ大歓迎だよ!」
そう言って男子生徒は、楽しそうに笑っていた。
「ねぇ、もしかして君もガンプラを作ってたりする?」
「作ってますけど…」
「じゃあ、バトルはするのかい?」
男子生徒の目がキラキラと輝いていた。
「昔はしていました……、今はしてません……」
「そうなんのかい?残念だよ、君からは強い何かを感じるのに……」
悲しそうに項垂れていた。
「あれ、誰かもう来てる?」
すると他の生徒、ここに来るから部員かな?が入ってきた。
「あ、おはようございます。部長は、今日も早いですね……」
あ、この人がこの模型部の部長なんだ。と、感心していると来たばかりの生徒に、こちらの顔を見るや鬼の形相で睨んで近づいて来た。
「お前が……、お前がなんでここに居る」
「えーと、突然なんですか……?」
見ず知らずの人で、記憶にも無いので尋ねると、どうやら向こうの何かいけないものに触れたらしく火に油を注いだ状態だった。
「昨日のバトルを思い出せ……、4対1でのバトルを……」
胸ぐらを掴まれながら、昨日のバトルについて思い出す。
えーと、何だっけ?バトル……バトル……。
「あ、『俺たちに敵う奴なんて居ないな』って言って、その後実際には手も足も出ずに殺された……」
「お前……」
胸ぐらを掴む力が強くなっていく。
「おい、もうやめないか」
部長さんが、危険とみなして止めに入ってくれた。
「いいか2人共落ち着け」
「分かりました、部長……」
大人しく部長さんの言う通りに引き下がった。
「それと君は、さっき『ガンプラバトルはしてない』と言っていたよね」
部長さんがこちらを見る目が変わったのが、簡単に分かった。
「うちの部活でも、かなりの実力を持った彼を倒したんだろ。それ程の実力が有りながら、何故バトルを辞めたと嘘をついた」
「あなたには関係無いです……、失礼しました……」
部室から、早足で立ち去ろとするのを止められた。
「待って、確かに君がバトルを辞めた理由には関係無い。が、昨日君が戦った彼と僕は関係がある」
「だから何ですか?」
「僕と、ガンプラバトルをしよう」
真剣な眼差しで見つめてくる。
「嫌だと言ったら?」
「その時はその時だけど、君は申し込まれたバトルは拒否しないだろ」
口元に笑みを浮かべいてた。
「その根拠は?」
「根拠なんて無いさ。あるのは、1人のファイターとしての直感が、そう叫んでいるんだよ。それを信じてるだけだ」
この人、言っている事はめちゃくちゃだけど……。
「そうですか……良いですよ。やりましょう、ガンプラバトルを……。今の内にあなたを殺しておいた方が良さそうですし……」
「ありがとう、戦ってくれて」
最初の頃の笑顔を見せていた。
「それじゃあ、体育館に移動しようか。バトルはそこのバトルシステムで行おう」
「体育館にバトルシステムが?」
教室を出て、体育館に向けて歩き出す。
「そう言えば、君の名前を聞いていなかったね。名前は?」
「暮宮零(くれみや れい)……」
「暮宮零……何処で聞いたような。あ、僕は工藤烈(くどう れつ)。3年生だよ」
「工藤先輩ですね、覚えました」
「先輩って事は、歳下なのか」
「そうですね……僕は2年生なので」
「それじゃぁ、宜しくね暮宮零君」
体育館に着くと、既にバトルシステムの用意はされていた。
さっきの人がやってくれたのか?準備万端の状態でいつでも開始できるようになっていた。
「あははは……、これまた盛大に準備されたな……」
苦笑する工藤先輩。それもそうだ、観客?見物人がビッシリ居たのだ。
「あのこれは……?」
「って暮宮君、大丈夫?顔を真っ青をだよ」
「ちょっと人が多くて酔ってきたかもです…」
重度のコミュ障と過去のある事件以来、人が大勢の場所が無理になっていたので、この場所はまさに地獄だった。
「え、そんなに!でもまだ100人位しか居ないよ?」
流石にこの状況で酔えば驚かれるのも当然か……。
それでも深呼吸して心を落ち着ける。
「大丈夫です……、もう平気ですよ……」
先程に比べれば、全然マシだ。
「なら、良かった。それじゃぁ始めようか……」
バトルシステムに互いのGPベースを取り付け、相棒をカタパルトに乗せる。
「やっぱり持っていたんだね、自分のガンプラ」
「先輩、分かったてたから、ガンプラを貸すか聞いてこなかったんですね」
嫌味をふんだんに込めた声言ってみると、凹んでいた。
「まぁ、もういいですけどね。それじゃぁ、ルールについては?」
「ルールは、単純にどちらかが降参するか、どちらか一方が戦闘不能になったらで。時間無制限、ダメージレベルは公式大会のやつでいいかな?」
「お好きにどうぞ、どんなバトルでもやる事は変わらないので」
「そうか。じゃぁ、始めよう!
工藤烈 ストライクフリーダムガンダム・クロイツィン 空を舞う」
「暮宮零
ガンダムアディルゲン 絶望を汝に」
こうして今、2機のガンプラが戦場へと飛び立った。
初投稿ながら、皆さん読んでくれてありがとうございます。
お気に入り登録までしてもらって、本当にありがとうございます。
今回はバンドリ感があまり無く、ガンダム要素が強かったですが、
次回は沙綾をメインにポピパのみんなも出そうと思ってます。
本当に読んでくれてありがとうございます。