ヒーローに成りたかった…。そう思ったのは確かにヒーローの番組を見ていたから、それも理由として確かにあった。
でも実際は、もっと大きくなってからだった。人に絶望して、光を見ることを辞めた時に、もう一度見返した。
「あぁ…やっぱり凄いな…」
見ているうちに、涙が自然と頬を伝っていた。
目の前で涙をこぼす人を、苦しみに苛まれる人、絶望に歪んでしまった人を、救い出してしまう。本当は彼らの中で、様々な葛藤があってその中で助けようと必死に足掻いている。
「俺は…成りたかった…。俺も…貴方達の様な正義の味方に…」
誰かが言った、『英雄は目指した時点で、英雄に成れない』と。
じゃあ、俺は今何者なんだろう…。
EXAMシステムを発動したストライクフリーダム・クロイツェン。その力はこちらが発動したN・I・T・R・Oと互角の代物、いやそれ以上だった。
そもそもEXAMシステムはニュータイプを打倒・駆逐するために開発されたシステム。人の脳波を電磁波として検知し、検知した相手の脳波から『殺気』の識別を行う。識別された脳波に応じて、敵位置の特定・攻撃の瞬間を察知して回避するといった性能を持つ。
N・I・T・R・Oがニュータイプを再現するためのシステムに対し、EXAMシステムはニュータイプを打倒・駆逐と正反対の代物と言える。
しかし、ここに共通点を上げるとするならばまず一つ。EXAMシステムもパイロットとの親和性が鍵と成り、親和性が合えば驚異的な戦闘能力を引き出すのだが、親和性が合わないとなるとシステムの殲滅衝動に飲まれてしまうなどの危険性が備わっていること。
そして二つ目は、制限時間だ。ガンプラバトルでは機体に組み込まれた特殊システム(例・N・I・T・R・、EXAMシス テム)は、機体の性能を極地まで引き上げるために一定の時間制の中で可動する。それも、一度だけ。条件を満たせば再び使える特殊システムも有るが、今使われているシステムは一度きりの最終兵器でもあった。
明らかに押されている、そう思いながら自分の機体を操作する。
今には右手にオキツノカガミを持ち、槍のリーチを活かした連続突き攻撃。左手にはビームライフル持ち、オキツノカガミで作った隙間からの狙撃を。狙撃をシールドを使いビームライフルのビームを防ぎながら、ビームサーベルでオキツノカカガミに対抗する。ビームサーベルの刃から流れたオキツノカガミが、頭の横ギリギリ所を通り過ぎる。
避けると同時、に前のめりになった所に蹴りを入れる。ストライクフリーダム・クロイツェンとの間に距離を生み出し、シールドに備え付けられていたメガランチャーをライフルと合体させる。
「GNメガバスター・ライフル 発射」
高濃度に圧縮されたエネルギーを放出する。その砲撃を機体に存在する推進力を、フルに使い回避する。
「うおぉぉぉ…」
GNメガバスター・ライフルを撃ちながら、逃げるストライクフリーダム・クロイツェンを追うように傾ける。
「馬鹿な、あれ程の威力の砲撃を撃ち続けながら…。でも、そこが本当に面白い…」
加速を続けるストライクフリーダム・クロイツェン。フィールド上に存在する破壊されたコロニーの残骸に身を潜めた。
が、潜めた所がバレていたようで、ビームがコロニーの残骸を貫通し破壊していく。その場から逃げ切った頃には、跡形もなく破壊されていた。
砲撃で攻撃し攻め落とそうと思ったが、そう簡単にはいかなかった。メガランチャーをGNロング・バスターライフルから取り外し、三度狙撃体勢に切り替える。EXAMシステムを使っているために、そう簡単には当たらない。が、これまでの経験をここで…。
「また狙撃体勢に…。この状況で深追いして接近戦に発展するのを恐れたか?それとも、EXAMを使用した僕を狙撃できる自信が有るとでも言うのか…。全く、面白いよ!君は!」
ふいに笑みが溢れる。
その行動が吉と出るか凶と出るか、その勝負真っ向から受けさせて貰うよ。
『君の狙撃が上か』
『貴方の近接戦闘が上か』
『『ここで決着を付ける』』
先に動き始めたのはストライクフリーダム・クロイツェンだった。紅に染まった機影が彗星の如く、高速で宇宙を駆け抜け、残ったドラグーン、レールガン、ビームライフル、胸部のビーム砲で一斉に砲撃を仕掛けてきた。
絶え間なく降り注ぐ砲撃の雨、宙を駆け巡るビーム。
「行けビット」
ビットをシールド状に展開し、回避行動を取りながら防御していく。攻撃の合間を見計らい、ファンネルでドラグーンを撃墜に向かわせる。それに気づいた工藤先輩は、ドラグーンの標的をファンネルに変更する。互いのファンネルがビームを放ちながら、宇宙で交錯する。その光景はまるで、妖精が踊っているようだった。
互いに特殊システムを使用しながら、機体を操作し相手を倒そうと奮起する。その中で、さらにはファンネルを自ら一つ、一つ操る。こんな戦い、今までしたことも無かった。胸の高鳴りが抑えられない、こんなに戦いが出来るだなんて。
GNロング・バスターライフルを再び構え時には、すぐ目の前に、手を伸ばせば届きそうなほど近くに居た。それでも迷わず引き金を引いた。ヘッドパーツを掠れて、左目を破壊する。その反動で、オキツノカガミがライフル貫き、スコープ越しの右目を破壊された。
「はぁ…、はぁ…。そろそろ限界じゃないかな…」
「先輩の方こそ…、もうヤバイんじゃないですか…」
お互いにこうは言っているが、両者ともに限界が近づいていた。先輩のEXAMが切れるまで後幾つだ…。いや、それより俺のN・I・T・R・Oの方が切れそうだった…。
なら、切れる前に…、
「ここで決める!」
GNロング・バスターライフルを投げ捨て、機体の全スラスターを吹かせ急接近する。
「遂に狙撃を辞めたか!」
近接戦闘に備え、全てのパワーを集中させる。
ホルダーからビームサーベルを引き抜こうとするが、
「でも、もうこれ以上はさせないよ」
引き抜く瞬間を狙って、実体剣・トツカノツルギの横一閃を喰らい遠くに払われてしまった。
「近接なら僕のほうが、有利だ!」
トドメの一撃と、右手のオキツノカガミで、左手のトツカノツルギで突き出してきた。それを貫通するギリギリで、両手掴んで止める。
しかし、
「君の事だ…止められることは、想定済みだよ」
手を離そうとするも、機体がストライクフリーダム・クロイツェンの加速に阻まれて離すことが出来ない。
「くはっ…」
宙に浮かぶコロニーの残骸の外壁に叩きつけられる。ファンネルとの戦闘を生き残ったドラグーンが、両肩の装甲を貫き壁に固定する。
「これで、最後だ!」
両手に握られたオキツノカガミのビームの刃がより紅く煌めく、そして両腕を動かせないアディルゲンの胸部に、振り下ろした。
「俺は…ヒーローだ…。だから、常に最後の手段を残して…」
小さく頬の端をつり上げる。
「何…」
胸部を覆うように、大型の盾が出現していた。
「ZEROウイングガン、シールドモード」
「あの右足の武装…」
「ZEROウイングガン、ウイングモード」
盾が鳥の形に変形し、ストライクフリーダム・クロイツェンに向けてビーム砲を胸部の中心に打ち込んだ。
しかし、打ち込まれた胸部には爆風も何も起こらない。
「一体何を…、って動かないだと!」
爆発は起こらない、その代わりに行動が出来ない。
「ZEROウイングガンのポイントシュート…、先輩。貴方とのバトルは、最高に楽しかったです。ですが、これでフィナーレです!」
両肩の装甲を壁に突き刺したまま、無理矢理に機体を動かし、損傷覚悟で引き剥がす。
「機体が動かない…なら、最後の足掻きだ。ファンネル」
両肩を貫いた2機のファンネルを操作する、
「ZEROウイングガン・LOST・ ENDモード」
鳥に変形したのを、今度は再び右足に接続させる。右足の膝上にVの字を型どったシールド状態、膝下を覆うレールガンの組み替える。さらにメガキャノンシールドを、バックパックに接続させる。
「これが俺と、相棒の必殺!」
残骸を足場に舞い上がり、
「トランザム・最大開放」
『トランザムシステム起動』
「もう一つの特殊システムだと…、そんな見たこと無い…」
漆黒に染まる機体が、所々青く・蒼く色づき始めた。
それと共にストライクフリーダム・クロイツェンの胸部から三角錐上のレーザーのトンネルが生み出されていく。そこから、まるでこちらを誘導するかの様に、一本の線が宙に引かれていく。ライン上にビットを正方形に三つ展開し、GN粒子を正方形内に張り巡らせる。
「インフェルノ・ブレイカー」
漆黒と蒼青、二種類の輝きを放ち、右足を突き出しレーザーを辿るように、ビット内に生み出されたGN粒子のを通っていく。GN粒子を右足のZEROウイングガンにエネルギーとして蓄積させ、胸部の三角錐上のレーザーのトンネルに機体が吸い込まれるように通り抜けた。
「終焉の一撃…」
言い終わると共に、ストライクフリーダム・クロイツェンは胸部から爆発していった。
「Battle end winner Kuremiya Rei」
システムがバトル終了を告げ、フィールドは再び機械の表面だけになり破壊されたストライクフリーダム・クロイツェンとアディルゲン・RiderFormが蹴りから着地した状態で残っていた。
「勝った…」
勝利したことに安堵し、呆然としていた。
「お見事だったよ、負けたのは悔しいけど…。すごく楽しかったよ、今のバトル」
敗北した工藤先輩が歩いてきた。
「俺も…良かったです。先輩とこんなガンプラバトルが出来て、久しぶりに負けるかなって焦りましたけど…」
「後少しだったんだけどな…。あの変身といい、変形武装といいずるくないか?」
「良いじゃないですか、俺の相棒を最大限に強くする為なんですし」
「まぁ、ガンプラは自由だからね。それでも、暮宮君。改めて君とのバトルは楽しかったよ」
そう言って、手を差し伸べてきた工藤先輩。
「……」
その手を一瞬、握るか躊躇ったが。
「こちらこそ、有難うございました」
素直に先輩の手を握り返した。
「暮宮!お前は、初日から何してるんだ」
すると突如として、体育館の扉が勢いよく開かれ、眩い光が差し込む。その光の中から、明らかにこちらに向けての視線が痛かった。
「紅葉谷先生…」
目を細めて光の中を覗きこむと、先程のスーツ姿とは違い、スポーツジャージの紅葉谷先生が顔を真っ赤にして立っていた。
「確かに構内を回って良いとは言ったが、もう授業は始まっているんだぞ…。はぁ…、職員室に戻っても居なかったから…、はぁ…探し回っていたら…ようやく見つけたぞ…」
その目は獲物見つけたハンターの如く凶暴な目をしていた。
「暮宮君、逃げるなら今のうちだ…」
その凶暴な目を察知した工藤先輩は、顔を青ざめて、小刻みに震えていた。
「……はい」
工藤先輩の言葉を信じすぐさま、相棒を回収して近くの扉まで全速力で走った。
「あ、暮宮、待て逃げるな〜!」
すぐさま紅葉谷先生も追いかけてきた。
近くの扉まで全速力で走ればすぐにでも届く距離だったが、先程のバトルでかなり体力と精神を消耗し後一歩のところでこと切れた。というか、意識がまた薄れて倒れたのだ。考えたら、昨日の一見で医者から『急激に激しい運動は控えてね』と言われたばかりだった。
そのために、
「あは…、災厄の転校初日だ…」
相棒をしっかりと握りしめ、また暗闇に意識を持っていかれた。
「たく、転校初日何やってんだか…。本当に世話の焼けるやつだな…」
倒れた暮宮を見下ろし文句を言いながら、軽々と担ぎ上げる。
「ほら、残りの生徒も授業はもう始まっているんだから。早く教室に戻りなさい」
周りでここでしたいた事を見ていた生徒たちを、教室に戻るように指示をして、
「おい、工藤。お前は後で話を聞くからな…」
今回の件に大いに関わっているであろう工藤に、睨みを聞かせた。
「ひゃ…は…い…」
硬直した様子で返事をし、その場を去っていった。
それにしても、バトルシステムのある体育館に居たのなら…。バトルシステムの方に目を向けた。
「純一郎、お前の息子…まだやってるよ。お前が教えたガンプラバトル…」
誰にも聞こえない声でそっと言い残し、体育館を後にした。
「すごかった!あのプラモデルのバトル、すっごくキラキラドキドキした」
体育館から教室への道中、みんなで先程のバトルの話になった。
「うん、特にあのバーン!ってなって、ガシャーン!って変形した所とか」
「いや、全然わからぁ…無くもないな…うん。香澄やおたえが言うように、あれは本当にすごかった」
有咲が香澄とおたえの擬音語の表現に、ツッコミを入れないということは有咲の中でも余程すごかったんだろう。
「私は最後のあの必殺技がかっこよかったよ、空中で飛び蹴りを放ったあれ」
「あ〜、あの『インフェルノ・ブレイカー』だっけ?」
りみの言いたかった技名を言うと、
「そう、『インフェルノ・ブレイカー』」
「確かに、綺麗に相手の真ん中を射抜いていたもんね」
「それに、あの技名あこちゃんとかが好きそうだったね」
「確かに、あこは好きそうかも」
そんな風に笑い合ってみんなで教室に戻っていると、
「すまん、通るぞ」
「あ、すみませ…」
見ると、そこには先生に担がれ運ばれている零だった。
「え、先生。それに零!一体どうしたんですか?」
声を聞いた先生は顔だけ振り返り、
「あれ、山吹はこの馬鹿の知り合いなのか?」
先生…生徒の事を馬鹿って…。
「そうですけど…もしかして?」
「こいつ、さっき私から逃げようとしたんだがな。あそこで何をやっていたかは大体想像がつくが、その影響で無理に走って気絶したらしい」
「零が…」
「あぁ、だから今から保健室に連れて行く。とは言うが、私も授業があるから長くは付き添えないんだ…」
「じゃぁ、私が付き添います」
零がこんな状態に有るなら、私がついてなきゃ。
「でも、山吹。授業はどうする、休講か?」
「零が目を覚ました時に、知っている人がいれば楽だと思うんですけど」
先生は少し悩んだ様子でいたが、
「わかった、特別に許可しよう」
「あ、ありがとうございます」
「その代わり、君達はすぐに授業に出ること良いね?」
「「「「はーい」」」」
「それじゃあ、山吹少しついて来てくれ」
「じゃあ沙綾、あとで様子見に行くからね」と香澄。
「私も授業休みたい…」とおたえ。
「あとで、今日の授業の分のノート見せるね」とりみ。
「ちゃんと起きたら、戻ってこいよ」と有咲。
「うん、分かった。それじゃあ、また後で」
みんなとここで一旦別れ、先生と担がれた零と共に保健室へ向かった。
保健の先生は今日出張で居ないようで、零をベッドに寝かせるとすぐさま、
「それじゃあ、後は頼んだ。あ、二人だからって変なことするなよ」
と言い残して、先生は保健室を出て行ってしまった。
「ちょ、先生…」
先生の発言に少し残念がりながら、ベッドで寝ている零を見つめる。
「本当に格好良かったよ…零。私のヒーロー…」
そっと頭を撫でる。すると、零の安心しきった寝顔が見えてきた。撫でられるの気持ちいいようで、撫でるたびに笑顔をこぼす。
「可愛いな…零は…」
今この二人だけの瞬間が、続けばいいだなんて思っちゃ駄目だよね…。
心の中でちょっとだけ、モヤっとする感情が何処かで渦巻いていたが、今はそれ程気にするものではなかった。それでもこの瞬間を残したいと思って、持っていたカメラを起動して…。
「目、覚めたかな?ヒーローさん」
「痛っつつ…、何とかな沙綾」
気がつくとまた見知らぬベッドの上で、隣には沙綾が座っていた。
「思い出してくれた?」
「あぁ、十年越しに帰ってきたよ」
「もう…、ずっと待っていたんだから」
昨日の病院で見た時と同じように、頬を膨らませる沙綾。
「待たせたな…本当…。ただいま、沙綾」
「おかえり、零」
ベッドから体を起こし、沙綾と抱きしめあった。その時に感じた沙綾の温度と匂いが、本当に懐かしかった。
「ちゃんと帰ってきたよ…」
「うん…」
それからしばらくの間、何も言わずに抱きしめあっていた。
互いに落ち着きを取り戻した後、
「零、ずいぶんとイメージ変わったね」
「そうだな…、引っ越したときからもう十年は経っているからな」
「いや、そうだとしても。やっぱりずいぶん変わったね…、雰囲気もそうだし…バトルも…」
「別におかしい事はないだろ、人は変化していくんだから」
「うん…、そうだよね」
やっぱり、昔の零とは何かが違う…。さっきから話している時もそうだし、目つきあんなにキツかったけ…?
「それに沙綾も変わっただろ?この十年間で」
「あ、私?そうだね…、私今友達とバンドを組んでるんだよ」
「へぇ〜、バンドか…。今度曲聞かせてよ」
沙綾の所属しているバンド、どんなのだろう。
「じゃあみんなに聞いてみるよ、多分即答でオッケー出ると思うよ」
バンドってそんな簡単にライブするのだろうか?そういうのを知らない俺からは、良くは分からなかったが、聞けるのなら良いかな。そう思って、深くは聞かないことにした。
「そっか、楽しみにしてるよ」
屈託のない、あの頃と同じ笑顔をする零。
あぁ、こういうところは変わってないんだ。
「うん、楽しみにしててね」
私もあの頃と同じように出来たのかは分からないけど、笑顔で零に答えた。
え〜と、タグの仮面ライダーは…あの、必殺技を少々参考にさせていただき…。
まぁ、単純にカッコいいからやりました!(開き直り)
今回で長かった、長く続けてしまった一章を完結とさせていただきます。
次回からはそれぞれのバンドとの交流を書きながら、また熱いガンプラバトルをやっていきたいと思っています。
今回も閲覧いただき有難うございました。感想がどんどん言ってください。