あの後も、沙綾と話しをしていた。けれど、バトルで特殊システムを重複して使ったのが原因か、頭痛と吐き気が止まらなかった。
頭には突き刺すような痛みと、中から込み上げてくるような吐き気が襲ってくる。
沙綾に支えられトイレに駆け込む。込み上げてくるものを、胃の中身を出し切ったんじゃないかと云うくらいに、吐いていた。
「はぁ…はぁ…、これは流石にキツイ…。うぅ、ごめん…」
トイレから戻る時は、吐き気は少しは収まったがまだ少しふらついていた。
「なんで零が謝るの。まぁ、確かに零が無茶したから自業自得だけど」
「面目ない……」
「そんな暗い顔しないで…、ごめんって」
「うぅ…沙綾がいじめる…」
零は弱っているせいか、少し精神が幼くなってる。
「ほら、保健室着いたから。また、ベッドで寝ておきなよ」
「もう良い…、外の空気吸いたい…」
「え〜、寝てないとまた倒れるよ」
「さっき寝たから大丈夫…、だから外…」
これは完全に弱りきっていて、まんま昔の零だ。そんな悲しそうな目で見ないで。
このまま零を外に連れて行けば先生に怒られそうだし、かと言って連れて行かないと多分また体調の方が…。どうしよう…。頭の中で先生か零の二択で、ひと悶着が繰り広げられた。
「はぁ…、じゃぁ少しだけだよ」
結局この幼児退行化の零が、可愛くて面白いので連れて行くことにした。先生には、後でなんとかしてごまかそう。
「やった〜、沙綾好き」
分かってやっているのか、分かってないのか抱きつく零。もうこれは、私の負けだ…。
中庭に行くと、夏の風とはいかないが爽やかな風が少し吹き始めてきた。二人でベンチに座り、零に深呼吸をさせる。
「どう?だいぶ落ち着いた?」
「すぅ…すぅ…」
連れてこさせておきながら、私の肩に頭を置いて眠ってしまっていた。
「ちょっと零…」
「沙綾…」
私の名前を呼びながら、そっと手を握ってきた。零の大きな手が私の手を、優しく包み込んでくる。
「はぁ…困ったヒーローさんだ…」
香澄たちに中庭に居ることをメールして、私も零の方に寄りかかって眠ることにした。
『本当にこの子達は、仲が良いわね』
『もう実の兄妹って言えるくらいに、仲良しだもんね』
『大きくなったらこの子達、一体どうなるのかしら?』
『きっと、零くんが家の沙綾をもらってくれるでしょう』
『そうなったら、沙綾ちゃんも幸せかもね』
「……母さん」
何で母さんが…、ってここ何処?目が覚めると、今度は外のベンチに座っていた。
「何でこうなったんだ…」
微かな記憶を辿っていくと、虚ろな記憶が蘇って…。
「は、恥ずか死ぬ…」
顔から火が出そうなほど顔を真っ赤にして、錆びた人形の様にゆっくりと肩の方から感じる温もりに目を向けた。
「零…」
何で沙綾が隣で…、それに手、おもむろに恋人つなぎ…。昔はよく意味も知らずにやったけど、今は…。
取り敢えず、誰かに見つかる前にこの状況を何とかしなければ。
「あ、沙綾!」
終わった、行動開始0秒で誰か来た!あ、もう完全に積んだ…。
「えーっと、君は?沙綾が言ってた、幼馴染さん?」
猫耳のような髪型をした少女が、目新しいものを見るようにこちらを見つめてきた。
「え…あ、あの…」
そして今度は、
「おい、香澄。走っていくなよって…、そいつ誰だ?」
金髪のツインテールの髪型の少女が、不審者を見るような目で睨んできた。怖い…、沙綾起きて…。しかし、一向に目覚める様子もなく…。
「あれ〜、みんな固まってどうしたの?あ、謎の転校生?」
綺麗で長い黒髪を持ち、何かを背中に背負った少女が今度は現れた。それと何?謎の転校生?どゆこと?
「急に走らないで…。お弁当の中身崩れちゃうよって…?この人は…?」
まだ増えるのか、今度は黒髪だけど短くボブカット?髪型はよくわからないが、単髪の優しそうな少女が現れた。それと、そんなに怖がらないで…。逆に傷つく…。
完全に囲まれた。知らない人…、しかも女子…、怖い…恐い…コワイ…また何か…。どうしようトラウマが…、嫌だ…嫌だ…。沙綾、起きてよ…。沙綾…。
「あ、あの〜」
猫耳の髪型の少女に、話しかけらた。
「ひゃ、はい…」
ビックリして声が裏返ってしまった。
「もしかして、貴方が沙綾の幼馴染さんで良いのかな?」
「え、あぁ…はい…そうです…」
「やっぱりそうだ、ほら朝のバトルの人だよ」
バトル?じゃあ、この人は今朝のバトルを見ていた人の一人…。
「え、嘘だろ。全然雰囲気違うぞ」
「でも有咲、この人から聞こえるの朝の人と同じだよ」
長い黒髪の少女はそう言うが、聞こえるって何が?
「んんっ…」
「あ、さーやちゃん起きたよ」
この騒ぎでようやく、沙綾が目を覚ましてくれた。
「あれ、りみ。それにみんなも、もうお昼休み?」
「そうだよ、はいこれお弁当持ってきたよ」
このボブカット?の子はりみと呼ばれる人から、お弁当を受け取る沙綾。
「ありがとう、りみ。あ、零…」
「やっと起きた…、誰?この人達…」
起きて早々に零は、絶賛人見知り発動中だった。もう、高校生なんだから。
「大丈夫だよ、私の友達だよ」
「あ…友達…、オーケー…一回落ち着くから待って…」
隣で深呼吸を始める零。
「どうしたの、謎転校生くんは?」
「おたえ、それまだ言うの?」
「なんだか気に入ってきたから」
「まぁ、気に入ったなら…。あれだよ、人見知りだから。軽くウォームアップだよ、ほら丁度終わったみたいだし」
呼吸を整えたようで、
「えっと、暮宮零(くれみや れい)です…。あの…ファイターをしてます…通り名は絶望の…旋律者です…」
「お、ちゃんと言えたじゃん。でも、もうちょっと大きく言おうか」
「お願いだから、それはやめて…」
これ以上は耐えられないから。
「暮宮零、なら零くんだね。私は戸山香澄」
猫耳の髪型の子は、戸山さんか。
「よろしく…戸山さん」
「良いよ、香澄で。私だって、零くんって呼ぶんだから」
「じゃあ、香澄。よろしく…」
「あ、じゃあ次は私。花園たえ、夢は理想の花園ランドを作ること」
長い黒髪の子は、花園さん。てか、花園ランドって何?あの、某ネズミが支配しているところみたいな感じかな。
「花園ランド?はぁ、頑張ってね花園さん」
「おたえがいい」
「あ、はい。じゃあ、おたえよろしく」
「零って、この状態だと何かうさぎっぽい」
「え、うさぎ…初めて言われた…」
「あ、私、牛込りみって言います」
この人も人見知りかな、
「よろしく、牛込さ…りみの方が良いのかな」
流石に3人目だ、俺だって学習はする。
「うん、りみでいいよ。さーやちゃんの幼馴染さんなんだよね?さーやちゃんの家のパンで何が一番好き?」
「え、クロワッサン…。あとは、メロンパン」
「そうなんだ、チョココロネも美味しいよ!」
何だ、この謎の気迫は…。
「今度食べるよ…」
「うん!さーちゃん家のチョココロネは絶品だから」
「りみ、いつもありがとう」
あ、常連さんなのかな。すると残りは…、まだ睨まれてる…。
「有咲、顔怖いよ。ほら、せっかくの可愛い顔が台無しだよ」
「うっせー、そういうこと言うなし」
この子はツンデレなのかな?
「あ、そうか。私は市ヶ谷有咲」
「よろしく、市ヶ谷さ…有咲」
ここも名字で呼びそうだったが、何とか名前で言えた。
「あのさ、零だっけ?」
「あ、はい?」
「いつまで沙綾と手を繋いでいるんだ?」
「え?あ…」
言われて、思い出した。慌てて手を離そうとすると、沙綾の方が握ってきた。
「私と零、10年以上会って無くて…。それで無意識に、昔みたいに私から握ったの。有咲も零の手、握ってみたい?」
「別にそんなじゃねぇし、ただ単に何時までなのかなって思っただけだ…」
「そっか…」
すると沙綾の手から力が次第に抜けていき、お互いに手を離した。
「ねえ、零くんもお昼ご飯一緒に食べようよ」
香澄がここに集まった目的を果たしに来た。
「あ、良いの…。俺が居て…」
「何で?嫌なの?」
そんな捨てられた子猫の様な目で見ないで…。
「良いなら良いけど…、じゃあお弁当取って来るから…」
「何処に有るの?」
お弁当が無いのを察知したおたえが聞いてきた。
「職員室、あそこにカバン置いてきたから、お弁当もあそこに…」
それに相棒の保健室に有る、相棒の回収をしなくてわ。
「じゃあ、一緒に行く。何だか、面白そうだから」
「いや、そんな大した事は無いよ…」
「それでも行く、だってまだ場所覚えてないだろうから」
「それは…、そうだけど…」
「じゃあ、しゅぱーつ!」
おたえはいきなり走り去っていってしまった。
「あ、ちょっと待って…」
その後をふらつきながらも必死に追いかけた。
「おたえちゃん、零くんを連れって居ちゃったけど大丈夫かな?」
心配そうにりみが呟く。
「まぁ、多分おたえの事だから。大丈夫な…」
「沙綾、そこは大丈夫だと思うぞ…」
有咲と二人で、心配しながら零を待つことになった。
「ただいま…、もう限界…」
何とか相棒と、お弁当の入ったカバンを職員室から回収することが出来た。疲れ切っていたが、何とか沙綾の近くに座り込む。
「どうしたの、さらにげんなりして?」
「私は普通に学校を見学させただけだよ?」
さも平然と答える犯人。
「色々見たよ、生徒会室とか、音楽室とか、被服室とか、調理室とか、図書室とか」
「おま、まさかこの短時間で校舎内一周してきたのかよ」
「おたえ、すごい!」
「いや、香澄。そこ感心するとこじゃないから」
「それで、零くんはこんなにげんなりしきっているんだね」
りみが心配して声を掛けてくれた。
「はぁ…あぁ…、いきなり一周…」
足がもう動かない…。
「でも、場所覚えられたでしょ?」
「何とか…」
ひたすらな迄に各教室について説明してくれたから。
「あ、あとね。零、紅葉谷先生に怒られてたよ」
「おたえ、それは言わない約束…」
「それってバトルのこと?」
沙綾の質問に、頷き答えた。
「そうだよ…、『勝手にシステムを使うな』ってのと、『授業が始まっているのに』とかこってり絞られた…」
「零、絞り出されたの?」
おたえが不思議なことを言ってきた。
「いや、怒られたって意味」
「あ〜あ、そういう事」
「そういう事」
それ以外に何が、有ると言うんだ。
「それじゃあ、みんな揃ったからお昼ご飯食べよっか」
「「「「「いただきます」」」」」
香澄の掛け声と共に、一斉に食べ始めた。
「いただきます…」
少し遅れて、食べ始めた。昼食を取り終えると、先程のバトルの話になった。
「ねぇ、零って何時もあんな感じなの?」
「え、まぁ…うん」
「じゃあ、バトルの時だけ、あんなに性格が変わるの?」
やたらとおたえに質問される。
「バトルの時は相棒が居るから、相棒が居れば強くなれる…」
「あ、零くんその相棒さん、見せてよ」
「良いけど…、今かなり酷いよ…。修理しないとバトルできないし…」
そう言いながらカバンから、相棒を取り出す。
「すごーい、近くで見るともっとすごいよ」
目をキラキラと輝かせる香澄。
「ガンダムアディルゲン、今はRiderForm。これが、俺の相棒の姿」
「こんなものが作れんだ、すげぇーな」
「ありがとう、有咲。あ、こんなのも有るよ。昔の作品だけど…」
スマホに保存してある写真を見せる。
「どれどれ…、うわぁ!何だこの数、えーと二千枚だと!」
「そんなに作ったの?零くん」
りみが写真の枚数に驚いているようだが、
「実際に作ったのは軽く…あれ、幾つだったけ?作りすぎて分からないや。あははは…」
「いや、お前どうやったらそうなるんだよ」
有咲が呆れ気味に言ったので、
「え、だって俺友達いなかったから。放課後と休日はひたすらに作って、戦っての繰り返しだから。そしたらこうなった」
「おう……そうか……」
あれ?何か変なこと言った?
「でも、この写真に関してその中で特に気に入ってるやつだよ。そう、俺の親衛隊!」
「ごめん……、私が悪かった……」
え、なんで俺謝れてるの?そんな憐れむような目で、肩に手を乗せて見ないで。
「なんで有咲が謝るのさ、別にこうなったのは自業自得だった……」
頭の中が真っ黒になるように、あの事が蘇ってくる…。やめて、ヤメテ、もう終わったんだ…だから…。来ないで…コナイデヨ…。
「零くん、大丈夫?」
香澄が心配そうに声を掛けてきた。
「はっ…、うん…。ちょっと…ね。今は平気だから…」
そうだ、今ここにアイツらは居ないんだから。
「ホントに?もう平気?」
「大丈夫だから、ほら」
会って早々に迷惑は掛けられい、そう思って写真の一枚を見せる。
「これ俺の親衛隊の中でも、一番の最高傑作」
「す、すごい…。綺麗な色…、ねぇ何ていうの?」
「あぁ、MS-06R-0W サイコザク・ヴァイス」
「あれ?これは『ガンダム』って言わないの?」
「りみ、こういうのが全部が全部、ガンダムじゃないよ」
「さすが沙綾、覚えててくれたんだ!」
「だって散々、零が懲りずに話してくれたんだもん。覚えてるよ」
「散々って…そんな言い方無いよ〜」
「冗談だよ、楽しそうに話してたの覚えてるよ」
颯爽と笑顔になる零。
「でも、これ何だか動きにくそう…」
りみの指摘を不敵に笑う。
「そう思うだろ…」
「違うの?」
みんなから疑問の視線が向けられる。
「全く違うね。コイツの動くところを見れば、きっと驚くぞ」
「じゃあ見たい!この子が動くのを見たい」
「香澄、零はさっきのバトルでだいぶ疲れてるんだから」
「あ、そうだよね。でも、有咲も見てみたくないの?」
「それは、気になるけど…」
「私はみたいな〜」
「私も、どんなものか見てみたい」
「ちょっと零、すごい言われてるけど。どうするの?」
沙綾が顔を覗き込む。
「良いよ、見せてやる。このサイコザク・ヴァイスの本領を」
「良いの?」
本当にみんな良い笑顔をするな…。
「でも、今日じゃなくて休日で。今日が木曜日だから、土曜日空いていればそこで面白いものを見せてあげられる」
「面白いもの?それって何をするの?」
「それを言ったら意味がない。でもヒントを上げる、沙綾」
「ちゃんとわかる奴でね」
「分かってる、じゃあヒントね。工藤先輩や俺はビルダーでありファイターである。そんな俺達みたいなのが、その実力を出しているのは何でしょう?」
「ビルダーでありファイター?」
「これがヒントだから、みんなで考えてね」
荷物をまとめ始めた、
「ちょっと零、どこ行くの?」
制服の上着の裾を掴んだ。
「さっき職員室で先生と会った時、この体調じゃ今日は無理だって言われて。
『今日は帰って休め、それで明日大器晩成の状態で来い』ってさ」
振り返り、
「だから今日は早退だよ。転校初日でこれじゃ、まずいけど」
苦笑いを浮かべる。
「じゃあ、今日はもう…」
沙綾の声が暗くなる、やっぱり見たくないんだよな…。
「でも、帰っても一人だから。何処かで時間を潰してから、帰りに迎えに来るよ」
「え、良いよそんな、二度手間じゃ」
「十年だ…、俺にだって長かったんだよ…。それじゃあ帰る時に連絡して、校門の近くにいる」
そう言うと、カバンをも持って去ってしまった。
「零くん、面白い人だったね」
香澄は楽しそうに笑う。
「バトルの時は怖かったけど、普段はあんなに優しいんだね」
りみは何処かホッとした様子。
「でも、沙綾が居たからじゃないの?だって沙綾が起きる前は、もっとビクビクしてたよ」
おたえは少し不思議そうだった。
「そこはあれじゃないのか、幼馴染だったからって言うのもそうだし。零だったけか…あいつの名前」
有咲が怪訝そうに、去り行く零の背中を見つめながら、
「あの零ってやつ、きっと何か相当なモノを抱えてる気がする…」
有咲は昔の自分と似たを感じたのか、心配そうに見つめていた。
お昼休みの終わりを告げる、予令のチャイムがなり、それぞれの教室に帰った。
私の中で、あの有咲が言葉は胸に違和感を残していって。
今回は集まれポッピンパーティー!的な話でした。
みんながちゃんと零と関わりを持ち始めました。それそうと…零の沙綾に対してのデレが…何かギャップがあり過ぎて、何かもうね…。
新たに出てきた、『MS-06R-0W サイコザク・ヴァイス』これは一体どうなるのか。
そしてあの事、有咲が言う『抱えているものとは』…。
今回も閲覧いただき、有難うございました。
今後とも、よろしくお願いします。