絶望したヒーロー志願者と愛を望んだ少女   作:龍宮院奏

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ポテト好きの…、あの先輩が…。


第八話帰り道と風紀委員

 あれから何事もなく、学校の授業は終わり下校となった。みんなからは、『積もる話も有るはず』と気を使わせてしまったようで、今日は一人での下校。

 零の携帯に連絡を入れて、校門に向かうと。

「お、終わったみたいだな」

「零だよね…?」

「そうだけど…、どうかした?」

「どうかしたとかじゃなくて!何にそれ!?」

真っ黒なパーカーを着た零が寄り掛かる後ろには、一台の真っ黒なバイクが停まっていた。ビックリして思わず、零かどうか聞いてしまった。

「あぁ、これ俺の愛車だよ。愛車?まぁ、良いや。名前はブラックスペイダー。このフォルム、色、もう最高でしょ」

愛おしそうに撫でているが、

「いつの間に、バイクの免許取ったの?」

「高校入ってすぐだよ?いや〜、憧れだったからさ」

「うん、憧れがあったのは分かった…。でも、こういうのって高いんじゃ…」

「え?あ〜、うん…まぁ…。そこはあれだよ、そうバイトして買いました」

凄い目が泳いでる、なんだか怪しい…。

「それより帰るんでしょ、それとも帰らないの?」

「帰るけどさ」

「うんじゃ、乗っていく?」

「ちょっと待って、二人乗りって心の準備が」

零の運転を知らないし、二人乗りって何かもうそう言うのじゃん…。

「ちょっとそこの生徒、一体学校の前で何をやっているの」

キリッとした声で、慌てふためいていた思考が収まった。この声は、

「紗夜先輩!えーと、これはですね…」

「沙綾、誰?この先輩?」

零はすでに私の背中に隠れ、紗夜先輩について尋ねてきた。しかし、私が答える必要は無かった。

「私は、氷川紗夜といいます。貴方、ここの生徒ですか?生徒でないなら、通報させてもらいますよ」

ポケットからスマホを取り出し、110を押そうと構えていた。

「え、あ…。暮宮零です、転校生で今日この高校に入ったばかりで…」

「転校生…」

その言葉を聞くと、氷川先輩は少し困った顔して考え込んでしまった。

「では仕方ないですね…、今回は厳重注意としておきましょう」

「良いんですか…?」

何故だか、あっさり許され帰されてしまった。

「だって、本校に転校して来たばかりの生徒ですよ。そんな人に、校則がどうとか言っても仕方が無いので」

「あ、ありがとうございます…」

「ですが、次は気を付けるように…。本校のイメージがありますので」

そう言って、氷川先輩は校舎の方に戻っていった。

 何だか怖い人に見えたけど、意外と優しくて綺麗な人だったな。

 

 結局帰る時、沙綾が『二人乗りをしない』という事になり、バイクを押して帰ることになった。そして話の話題は、先程の氷川先輩について。

「ねぇ沙綾、氷川先輩って案外良い人なの?」

「うん、態度はそっけないけど。本当は真面目で良い人だよ」

「へぇ〜、じゃあ頼れる先輩なんだね。あっ、あと氷川先輩すごく綺麗だったね。あんな綺麗な髪で、あの顔立ち…モデルさんみたいだったね。あれ沙綾?」

「……」

沙綾が急に黙っちゃった。何か不味いこと言ったかな?

「あの、沙綾さん?何か俺しましたか?」

「零の馬鹿…、スケベ…」

小さくだけど、俺に聞こえるように睨みながら言って、そのまま歩き始めた。

「あ、沙綾。待ってよ、ねぇ沙綾ってば」

バイクを動かし、隣を歩く。すると早足で歩き始める、追いつくようにすると更に早くなる。

「ねぇ…沙綾…。まって、お願いだから」

「……」

しばらく歩き始めて、ようやく止まってくれた。

「何をそんなに、怒ってるのさ?」

「紗夜先輩、そんなに綺麗だった…?」

どうしたんだ突然?

「まぁ、綺麗だったと言えば…綺麗だった」

「やっぱり零の馬鹿…」

「ちょ、何でよ。綺麗だったんだから、綺麗って言って何が悪いのさ」

意味が分からくて、すこしあたってしまった。

「はぁ…零はもう少し乙女心を学習しようか…」

残念そうにこちらを見つていた。

「それじゃあ、まずは私の機嫌を治すために協力して」

「わかった…。どうぞ、何なりとお申し付けください」

「言ったな〜、それじゃあ…。私と紗夜先輩だったら、どっちが綺麗か言って…」

 

その質問に、考える時間もなく即答で、

 

「え、沙綾だけど?何で、俺沙綾の方が、綺麗で可愛いと思うよ」

 

だって、一緒に遊んでいた沙綾を十年ぶりに見たら、背も髪も伸びて、大人びいた顔になっていて。でも、昔みたいに優しい面影が残っていて…。安心する…、沙綾と居ると安心する。

 

「……、何でそう簡単に…」

顔から火が吹き出しそうなくらいに、真っ赤にしてポカポカと叩いてきた。

「痛い、痛い…。だって本当の事だから、沙綾に対して嘘ついてどうするの」

今度は頬をリスみたいに膨らましていた。今日の沙綾は、感情表現豊かだな。

「むぅ…、零は卑怯すぎ…」

「え〜、また俺が悪いの?」

「そうだよ、零が悪い。ふ、あははは」

はぁ、こんなやり取り久しぶり…。本当に懐かしい…、零がこうしてまた隣に居ることがすごく楽しい。

「ねぇ、何か昔の私達みたいだね。こうやって、二人で話しながら帰るのさ」

「そうだね…、昔の俺達…」

まただ、零の様子がおかしい。こうして、過去に関する話をふると特に。

「昔の俺ってさ…、どんなだった…」

「え?昔の零、う〜ん…。そうだね、自分の好きな物にはすごく興味を示して、嫌いな物はとことん興味を示さなくて。よくヒーローごっこで危ない事して、先生に怒られてたし」

「あ〜、確かに怒られてた…」

「でも、一番は。男の子にイジメられて私が泣いていた時に、真っ先に駆けつけてくれた事かな。泣いて、怖かった所を助けてくれて…。本当に、格好良かったよ」

「だって、沙綾は俺の大事な人なんだから。泣いていたら、何処へだって駆けつけるよ」

「ありがとう、もしそうなった時には宜しくね」

「そうならないで欲しいけど、任せて」

こういうところ、変わらないね…。

 

 そうこうしていると、沙綾の家である山吹ベーカリーに着いた。

「じゃあ、無事に帰ってきたということで。俺は帰るな」

ヘルメットを取り出す。

「無事にって、そんな護衛対象じゃあるまいし」

「これは癖みたいなもんなの、だから気にするな」

「変なの、それじゃあまた明日」

「おう、また明日な」

ヘルメットを被り、バイクを走らせて帰っていった。

 

 家に着き、バイクを停めて部屋に上がる。

「淡い期待も、捨てたもんじゃないのかな……」

十年越しの再開、今の俺には沙綾が側にいてくれる。もう違うんだから…、だからここでは…。玄関の写真を眺め、決意した。

 

「ただいま〜」

「お姉ちゃん、おかえり」

「おかえり、姉ちゃん」

「沙南、純。ただいま、今日はどうしたの?」

「お母さんが、何だか嬉しそうにしてたから。だから私も嬉しくて」

「何か、『沙綾がお嫁に行く日が』と言ってたよ?」

沙南と純が何時もと違う理由は分かったが、

「何で私が、お嫁に行くことになってるの?」

あまりの事に、声が大きくなる。すると、奥から元凶である母さんが出てきた。

「あ、沙綾帰ってきてたの。おかえりなさい」

「ただいま、ってそれより、母さん。沙南と純に言った事、どう言う事なの?」

問いただすと、母さんはニコニコしながら話し始めた。

「あ〜、あれね。昨日お父さんがね『沙綾の機嫌が良い』って言うから、何か考えていたのよ」

「それで…」

「そしたらね、何時も学生さんが来ない時間に、見慣れない服の子が来てパンを買っていったの」

「それって…もしかして」

「もう、沙綾たったら。零君が、この街に帰ってきてるのなら早く言ってよ」

やっぱり早退した零だったか、それより家でパン買っていったこと何で言わなかったんだか…。

「明日は絶対お仕置きだ…」

「そう拗ねないの、向こうは気づいて無いみたいだったわよ。何かイヤホンで音楽聞いていたし」

「そうだったんだ、それで何買っていったの零は?」

「え〜と、チョココロネとクロワッサンでしょ。後は…それくらいね」

あ、りみのオススメ真面目に聞いていたんだ。

「そっか…、で、何で私がお嫁に行くって事になるの?」

「だって、昔零君のお嫁さんになるって、自分で言ってたじゃない。あれ、私の中では割と良いかなって思っていたんだけど」

「もうそれは、昔の話だから。はぁ、そんな事言って、父さんは大丈夫なの?」

「お父さんなら、『沙綾が、嫁に…』って言いながら、ショックで倒れたから、今は寝ているわよ」

あー、お父さんはもう倒れているのか、何故かもう諦め気味だった。

「で、零君はどうなの?同じ学校?」

「うん、同じ学校だよ」

「どう、久しぶりに会った感想は?」

「感想って…、そうだね…。何か、全然違った。昔の面影も有るけど、私の知ってる零じゃなかった…。何だか、凄く怖かった…。バトルの時もそうだったけど…」

「そうなの?確かに、一瞬見間違いそうになったけど。やっぱり零君は零君だったと思うわよ、それに沙綾がそう思うってことは、何かあったんじゃないの。沙綾が知らない十年の間で」

「そうだとは思う…」

「でも、沙綾は今までどおり、零君に接してあげなさい。きっとその方が、落ち着くだろうし」

「そうだね…」

「それと、付き合うんだったら早めに報告してね。お母さんは良いけど、お父さん泣いちゃいそうだから」

母さんは、また笑ってそう言った。

「お姉ちゃん、彼氏出来るの!」

「どんな人?ヒーローみたいに、かっこいい人?」

沙南と純が『彼氏』と言う言葉に、反応して騒ぎ始める。

「彼氏じゃないから、あとヒーローっていうのは合ってるかな…」

「「おー!」」

声を揃えてはしゃいでいる。

「そのヒーローさんに私も会える?」

沙南が零に興味を持ったようで、

「あ、ずるいぞ。沙南が会うなら、俺も会いたい」

沙南に対抗するかのように、純も会いたいと言ってきた。

 でも、会わせる機会なんてそんなに無いだろうし…って、有った。零も、私の妹なら大丈夫な筈だし。

「良いよ、今度そのヒーローさんに友達と会いに行くから。そしたら、一緒に行こうか」

「「良いの?」」

「ちゃんと行儀よく、挨拶とが出来るなら大丈夫だよ」

「「出来るよ」」

ちゃんと返事も出来たことだし、

「じゃあ、土曜日にみんなでヒーローさんに会いに行こう」

「「お〜!」」

「あらら、零君は家で大人気ね」

微笑む母さんは、楽しそうに沙南と純を見つめ頭を撫でた。




最近アクセス数が、急激に伸びてびっくりしています。
あ、でも読んでいただいて何時も有難う御座います。
今回は、紗夜さんを出すという。これで、ppopin'party Afterglow Roseliaの
誰かしらは出てきました。
次は、そうですね。太陽の彼女を…。
今回もご閲覧有難うございました。
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