あれから何事もなく、学校の授業は終わり下校となった。みんなからは、『積もる話も有るはず』と気を使わせてしまったようで、今日は一人での下校。
零の携帯に連絡を入れて、校門に向かうと。
「お、終わったみたいだな」
「零だよね…?」
「そうだけど…、どうかした?」
「どうかしたとかじゃなくて!何にそれ!?」
真っ黒なパーカーを着た零が寄り掛かる後ろには、一台の真っ黒なバイクが停まっていた。ビックリして思わず、零かどうか聞いてしまった。
「あぁ、これ俺の愛車だよ。愛車?まぁ、良いや。名前はブラックスペイダー。このフォルム、色、もう最高でしょ」
愛おしそうに撫でているが、
「いつの間に、バイクの免許取ったの?」
「高校入ってすぐだよ?いや〜、憧れだったからさ」
「うん、憧れがあったのは分かった…。でも、こういうのって高いんじゃ…」
「え?あ〜、うん…まぁ…。そこはあれだよ、そうバイトして買いました」
凄い目が泳いでる、なんだか怪しい…。
「それより帰るんでしょ、それとも帰らないの?」
「帰るけどさ」
「うんじゃ、乗っていく?」
「ちょっと待って、二人乗りって心の準備が」
零の運転を知らないし、二人乗りって何かもうそう言うのじゃん…。
「ちょっとそこの生徒、一体学校の前で何をやっているの」
キリッとした声で、慌てふためいていた思考が収まった。この声は、
「紗夜先輩!えーと、これはですね…」
「沙綾、誰?この先輩?」
零はすでに私の背中に隠れ、紗夜先輩について尋ねてきた。しかし、私が答える必要は無かった。
「私は、氷川紗夜といいます。貴方、ここの生徒ですか?生徒でないなら、通報させてもらいますよ」
ポケットからスマホを取り出し、110を押そうと構えていた。
「え、あ…。暮宮零です、転校生で今日この高校に入ったばかりで…」
「転校生…」
その言葉を聞くと、氷川先輩は少し困った顔して考え込んでしまった。
「では仕方ないですね…、今回は厳重注意としておきましょう」
「良いんですか…?」
何故だか、あっさり許され帰されてしまった。
「だって、本校に転校して来たばかりの生徒ですよ。そんな人に、校則がどうとか言っても仕方が無いので」
「あ、ありがとうございます…」
「ですが、次は気を付けるように…。本校のイメージがありますので」
そう言って、氷川先輩は校舎の方に戻っていった。
何だか怖い人に見えたけど、意外と優しくて綺麗な人だったな。
結局帰る時、沙綾が『二人乗りをしない』という事になり、バイクを押して帰ることになった。そして話の話題は、先程の氷川先輩について。
「ねぇ沙綾、氷川先輩って案外良い人なの?」
「うん、態度はそっけないけど。本当は真面目で良い人だよ」
「へぇ〜、じゃあ頼れる先輩なんだね。あっ、あと氷川先輩すごく綺麗だったね。あんな綺麗な髪で、あの顔立ち…モデルさんみたいだったね。あれ沙綾?」
「……」
沙綾が急に黙っちゃった。何か不味いこと言ったかな?
「あの、沙綾さん?何か俺しましたか?」
「零の馬鹿…、スケベ…」
小さくだけど、俺に聞こえるように睨みながら言って、そのまま歩き始めた。
「あ、沙綾。待ってよ、ねぇ沙綾ってば」
バイクを動かし、隣を歩く。すると早足で歩き始める、追いつくようにすると更に早くなる。
「ねぇ…沙綾…。まって、お願いだから」
「……」
しばらく歩き始めて、ようやく止まってくれた。
「何をそんなに、怒ってるのさ?」
「紗夜先輩、そんなに綺麗だった…?」
どうしたんだ突然?
「まぁ、綺麗だったと言えば…綺麗だった」
「やっぱり零の馬鹿…」
「ちょ、何でよ。綺麗だったんだから、綺麗って言って何が悪いのさ」
意味が分からくて、すこしあたってしまった。
「はぁ…零はもう少し乙女心を学習しようか…」
残念そうにこちらを見つていた。
「それじゃあ、まずは私の機嫌を治すために協力して」
「わかった…。どうぞ、何なりとお申し付けください」
「言ったな〜、それじゃあ…。私と紗夜先輩だったら、どっちが綺麗か言って…」
その質問に、考える時間もなく即答で、
「え、沙綾だけど?何で、俺沙綾の方が、綺麗で可愛いと思うよ」
だって、一緒に遊んでいた沙綾を十年ぶりに見たら、背も髪も伸びて、大人びいた顔になっていて。でも、昔みたいに優しい面影が残っていて…。安心する…、沙綾と居ると安心する。
「……、何でそう簡単に…」
顔から火が吹き出しそうなくらいに、真っ赤にしてポカポカと叩いてきた。
「痛い、痛い…。だって本当の事だから、沙綾に対して嘘ついてどうするの」
今度は頬をリスみたいに膨らましていた。今日の沙綾は、感情表現豊かだな。
「むぅ…、零は卑怯すぎ…」
「え〜、また俺が悪いの?」
「そうだよ、零が悪い。ふ、あははは」
はぁ、こんなやり取り久しぶり…。本当に懐かしい…、零がこうしてまた隣に居ることがすごく楽しい。
「ねぇ、何か昔の私達みたいだね。こうやって、二人で話しながら帰るのさ」
「そうだね…、昔の俺達…」
まただ、零の様子がおかしい。こうして、過去に関する話をふると特に。
「昔の俺ってさ…、どんなだった…」
「え?昔の零、う〜ん…。そうだね、自分の好きな物にはすごく興味を示して、嫌いな物はとことん興味を示さなくて。よくヒーローごっこで危ない事して、先生に怒られてたし」
「あ〜、確かに怒られてた…」
「でも、一番は。男の子にイジメられて私が泣いていた時に、真っ先に駆けつけてくれた事かな。泣いて、怖かった所を助けてくれて…。本当に、格好良かったよ」
「だって、沙綾は俺の大事な人なんだから。泣いていたら、何処へだって駆けつけるよ」
「ありがとう、もしそうなった時には宜しくね」
「そうならないで欲しいけど、任せて」
こういうところ、変わらないね…。
そうこうしていると、沙綾の家である山吹ベーカリーに着いた。
「じゃあ、無事に帰ってきたということで。俺は帰るな」
ヘルメットを取り出す。
「無事にって、そんな護衛対象じゃあるまいし」
「これは癖みたいなもんなの、だから気にするな」
「変なの、それじゃあまた明日」
「おう、また明日な」
ヘルメットを被り、バイクを走らせて帰っていった。
家に着き、バイクを停めて部屋に上がる。
「淡い期待も、捨てたもんじゃないのかな……」
十年越しの再開、今の俺には沙綾が側にいてくれる。もう違うんだから…、だからここでは…。玄関の写真を眺め、決意した。
「ただいま〜」
「お姉ちゃん、おかえり」
「おかえり、姉ちゃん」
「沙南、純。ただいま、今日はどうしたの?」
「お母さんが、何だか嬉しそうにしてたから。だから私も嬉しくて」
「何か、『沙綾がお嫁に行く日が』と言ってたよ?」
沙南と純が何時もと違う理由は分かったが、
「何で私が、お嫁に行くことになってるの?」
あまりの事に、声が大きくなる。すると、奥から元凶である母さんが出てきた。
「あ、沙綾帰ってきてたの。おかえりなさい」
「ただいま、ってそれより、母さん。沙南と純に言った事、どう言う事なの?」
問いただすと、母さんはニコニコしながら話し始めた。
「あ〜、あれね。昨日お父さんがね『沙綾の機嫌が良い』って言うから、何か考えていたのよ」
「それで…」
「そしたらね、何時も学生さんが来ない時間に、見慣れない服の子が来てパンを買っていったの」
「それって…もしかして」
「もう、沙綾たったら。零君が、この街に帰ってきてるのなら早く言ってよ」
やっぱり早退した零だったか、それより家でパン買っていったこと何で言わなかったんだか…。
「明日は絶対お仕置きだ…」
「そう拗ねないの、向こうは気づいて無いみたいだったわよ。何かイヤホンで音楽聞いていたし」
「そうだったんだ、それで何買っていったの零は?」
「え〜と、チョココロネとクロワッサンでしょ。後は…それくらいね」
あ、りみのオススメ真面目に聞いていたんだ。
「そっか…、で、何で私がお嫁に行くって事になるの?」
「だって、昔零君のお嫁さんになるって、自分で言ってたじゃない。あれ、私の中では割と良いかなって思っていたんだけど」
「もうそれは、昔の話だから。はぁ、そんな事言って、父さんは大丈夫なの?」
「お父さんなら、『沙綾が、嫁に…』って言いながら、ショックで倒れたから、今は寝ているわよ」
あー、お父さんはもう倒れているのか、何故かもう諦め気味だった。
「で、零君はどうなの?同じ学校?」
「うん、同じ学校だよ」
「どう、久しぶりに会った感想は?」
「感想って…、そうだね…。何か、全然違った。昔の面影も有るけど、私の知ってる零じゃなかった…。何だか、凄く怖かった…。バトルの時もそうだったけど…」
「そうなの?確かに、一瞬見間違いそうになったけど。やっぱり零君は零君だったと思うわよ、それに沙綾がそう思うってことは、何かあったんじゃないの。沙綾が知らない十年の間で」
「そうだとは思う…」
「でも、沙綾は今までどおり、零君に接してあげなさい。きっとその方が、落ち着くだろうし」
「そうだね…」
「それと、付き合うんだったら早めに報告してね。お母さんは良いけど、お父さん泣いちゃいそうだから」
母さんは、また笑ってそう言った。
「お姉ちゃん、彼氏出来るの!」
「どんな人?ヒーローみたいに、かっこいい人?」
沙南と純が『彼氏』と言う言葉に、反応して騒ぎ始める。
「彼氏じゃないから、あとヒーローっていうのは合ってるかな…」
「「おー!」」
声を揃えてはしゃいでいる。
「そのヒーローさんに私も会える?」
沙南が零に興味を持ったようで、
「あ、ずるいぞ。沙南が会うなら、俺も会いたい」
沙南に対抗するかのように、純も会いたいと言ってきた。
でも、会わせる機会なんてそんなに無いだろうし…って、有った。零も、私の妹なら大丈夫な筈だし。
「良いよ、今度そのヒーローさんに友達と会いに行くから。そしたら、一緒に行こうか」
「「良いの?」」
「ちゃんと行儀よく、挨拶とが出来るなら大丈夫だよ」
「「出来るよ」」
ちゃんと返事も出来たことだし、
「じゃあ、土曜日にみんなでヒーローさんに会いに行こう」
「「お〜!」」
「あらら、零君は家で大人気ね」
微笑む母さんは、楽しそうに沙南と純を見つめ頭を撫でた。
最近アクセス数が、急激に伸びてびっくりしています。
あ、でも読んでいただいて何時も有難う御座います。
今回は、紗夜さんを出すという。これで、ppopin'party Afterglow Roseliaの
誰かしらは出てきました。
次は、そうですね。太陽の彼女を…。
今回もご閲覧有難うございました。