ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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血戦

「ファラフレイム!」アルヴィスより、最大魔法であるファラフレイムが放たれる。

通常の炎とは違い、赤というより朝焼けの太陽のような色を帯び放射される炎・・・。シグルドは果敢に飛び込み、切り裂きながら突き進む。無傷ではないが最短を駆け抜けてダメージを最小に抑え、距離を詰めた。

「させるか!」さらに魔力を送り続けて放射される炎を吐き出し続けた。シグルドも聖剣を握り気力を振り絞る、宝玉が緑に淡く輝きシグルドの体を覆い、炎を弾いて護った。

 

「ぬあああ・・・・。」アルヴィスは魔力を

「ふううう・・・・!」シグルドは気力を振り絞る。

 

炎を突破し、シグルドは身体中から煙を放ちながら聖剣を上段に構えながら抜け出てきた。

 

「アルヴィス!覚悟!!」シグルドは火傷裂傷を追いながらも渾身の一太刀を入れる。

アルヴィスの肩口から胸元まで切り裂き吹き飛ぶが、これは自ら後方に飛んで刃の切り込みの深さを浅くし、致命傷は避ける事ができた。

またファラフレイムを持つアルヴィスには防御能力も上がる、そこも大きく作用した。

 

「ぐっ!・・・シグルドめ!」立ち上がると、リライブを施す。

 

「はあ、はあ、・・・。まだまだ!」シグルドは疲労で苦しい所にクブリのリブローが飛び、回復が促された。

 

「ちっ!」アルヴィスは不服そうにクブリを見るが、奴がこちらに攻撃してこないだけマシだと思い吐き捨てる。

シグルドも何度も無茶な特攻はしてこないだろう・・・。アルヴィスもシグルドにファラフレイムをもってしても致命打にならないとなるとそう何度も使えない、膠着状態に入った・・・。

 

「アルヴィス様を守れー!」バーハラから増援部隊がが丘を登り、アルヴィスに加担を始めた。

 

「シグルド、退がれー!!」カルトはなんとかラーナの大剣をしのぎ、ウインドを使って後ろに退避する。

激しい息切れと疲労でカルトも片膝をついて呼吸を整える。

 

(疲労はないのか・・・、高パフォーマンスがずっと続かれる方がきつい・・・。)

カルトはラーナの動きは見切り始めてなんとか凌いでいたが、疲労からくるミスは避けされない。魔力も気力も消耗していた。

対してラーナは息を乱す様子もなく、空っぽの瞳がこちらを見ているだけだった。

 

とうとう、増援が到着しシグルドとカルトに向かい出す。

クブリを温存していたお陰でクブリのトルネードで排除するが、数が多く後続の部隊がとうとうカルトに迫った。

 

「邪魔するな!」ライトニングを放ち、複数人を一気に打ち倒す。シグルドも聖剣を振るい、薙ぎ倒していくが異変はすぐに起こる。

 

「うわあああー!」

「な、なんだこいつは!!」

ラーナの凶剣はあたりの増援の兵士にまで襲ったのだ。

 

伝説に残る12魔将の狂宴、一人が一部隊をやすやすと沈めると言われるその力を垣間見る事となった。

漆黒のファルコンの爪が、嘴が無残に切り裂き、ラーナの大剣が一度に数人の人間を切り裂きあたりに首が撥ねられた兵士が血しぶきを上げて倒れだす。

 

「い、いかん!お前達は退がれ!そいつは見境がない!!」アルヴィは部隊に撤退を命じる。

その混乱にカルトはシグルドの元へより、リカバーを施した。

 

「どういう事だ、狂戦士のように荒れ狂っている。」

 

「おそらくあれが12魔将になれなかった原因だな。

あれだけ強くても同士討ちを始めるようだったら話にならない、アルヴィスだけはなんとか認識しているだろうが、乱入してきた兵士は敵味方の区別がつかないのだろう・・・。」

 

「なんという事だ・・・。」

 

「フレイヤの魂は、あのサークレットの中に封入されていて、あれを装着した者の体と精神を乗っ取る。それが死体だろうとなんだろうとな・・・。フレイヤと共に12魔将の試験魂を封入し、フレイヤの意思でそれを切り替える事ができように制御させたんだろうな。」

 

「これがロプトウスの力で成せる業なのか・・・。」

 

「ああ・・・。奴らの力は人の精神から、魂までに及ぶ・・・。

ディアドラ様はおそらく記憶を消されているだろう、記憶を初期化されアルヴィスにあてがった。ディアドラ様は卵から孵った雛のように、初めて懐いたアルヴィスに惹かれたんだろう。」

 

「そ、それでは!アルヴィスに話をすれば!!」

 

「だめだ・・・。以前ヴェルダンで言ったことがあるよな?

人と人は話だけでは本当の意味で理解し合える事はない、と。

今のアルヴィスに話をしても聞いてもらえる事はない。」カルトはリカバーを終えるとシグルドの腕を引いて立ち上がる。

 

「では、カルトはどうしたらわかってもらえると言うのだ。」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・まずは正面からぶち当たってみる!やつと本気で戦えば答えはあると思う。」カルトは両手の拳をぶつけて笑う。

 

「・・・そうかも知れない、エルトシャンと拳と拳を突き交わした事を思い出した。

よし、ラーナ様は私がなんとかしよう。カルトはアルヴィスを頼む。」

 

「お!おい!」

 

「大丈夫だ、聖剣にかけてラーナ様を助ける。」

 

「・・・・・・。」

 

「どうした?カルト・・・。」

 

「見ろ、あのラーナ様を・・・。」

黒いファルコンに乗り、大剣を操って逃げ惑うバーハラ兵を追うラーナ。体にはバーハラ兵が傷つけ、まだ折れた剣すらもそのままに攻撃を続けていた。

 

「それだけではない、関節のあちこちからも出血している・・・。生身の体で12魔将の力を酷使されているラーナ様は、助け出してもただでは済まない。魂は砕かれているかも知れないし、目覚めても指一つ動かせる身体になっているかどうか・・・。

もともと俺のせいで戦えない身体なのに、あんなに酷使されている。

だからシグルド、ラーナ様を救う意味でも、斬ってくれ・・・。」

カルトの言葉にシグルドは一度目を瞑り、息を吐き出す。

ひと時の時間をおいて目を開けたシグルドは聖剣の様子を確かめ、笑った。

 

「聖剣に、善者を斬る剣はない。私に任せてくれ・・・。」シグルドの背中を見たカルトは全身を震わせた。

聖騎士シグルド、その名を再びカルトは認識するのであった・・・。

 

 

バーバラ兵を目につく限り惨殺した後、再びシグルドとカルトに狙いをつける。

アゼルが新山を作らなかったら奴は北の戦場を目指していたのかも知れない・・・、そう考えただけでも寒気がする。

それはアルヴィスも同様だろう、あんな化け物が周知に知れればアルヴィスの立場も危うくなるだろう。

先ほどのバーハラ兵は全滅したので、その危機は免れたのだが・・・。

 

「くるぞ!カルト!!アルヴィスを頼む!」

 

ラーナは急上昇したかと思えば急降下して迫る、大剣をさばいて初撃を流れるが恐ろしい速さで旋回して連続攻撃をかける。

だがシグルドの反応は素晴らしく第二撃を止めた!後ろに飛ばされそうになりながらも、転倒せず全身のバネとバランスで受け止める。

体幹と身体の力の入れ方がなせる技であった。

ファルコンの爪がシグルドに迫るが聖剣を引き、大剣をいなすとファルコンの胸元につき入れる。

 

「ぐぎゃあああ!」ファルコンは狂ったように翼を羽ばたかせて暴れ、シグルドも流石に飛ばされる。その離れる瞬間に聖剣を振り抜いてファルコンは再度悲鳴をあげた。

 

「さすがシグルド・・・。」カルトもファルコンを狙った攻撃はしていたが、シグルドのようにはいかなかった。

それを二度の剣戟でなしてしまうとは・・・、カルトは感心する。

ラーナは機動力が失われ、これで少しは優勢になるかと思ったがそれは大きな間違いであることを知る事となる・・・。

 

「ヨツムンガンド・・・。」たちまち丘から邪気が立ち込め、生ある草が途端に萎れ出す。邪気は形を纏うとシグルドに襲いかかった。

 

「!」シグルドは聖剣の力をかりて邪気から対抗するが、第一波の攻撃に耐えている間に既に第二波を繰り出したのだ。

 

「は、早い!フレイヤ以上だ!」カルトはシグルドに歩み寄ろうとするが、アルヴィスはエルファイアーを繰り出す。カルトは冷却を伴うエルウインドで相殺する。

 

「ほう、とうとう俺のエルファイアーに同等魔法で相殺できるようになったか。強くなったな、カルト。」

 

「アルヴィス・・・。」

 

「さあ、見せてみろ!」

二人は魔力を解放させ、集中する。

 

 

「ボルガノン!」アルヴィスは上級魔法を溜めずに打ち込む!

「エルウインド!」カルトは大地のエネルギを感知し、とっさに飛び上がる。

大地が裂け、亀裂から炎が立ち昇るがカルトが難を逃れる。

 

「ふっ!メティオ!!」

カルトは天空から落ちる炎にかわしきれず、命中し地面に叩きつけられた。

 

「ぐはっ!」受け身も出来ないカルトは血反吐をはいて悶絶するが、アルヴィスの単独コンビネーションはさらに続いていた。

 

「ファラフレイム!!」眩い閃光の後に高音がカルトを襲った。地面に叩きつけられたカルトは躱す暇もなく直撃する。

 

「カルト様ー!!」クブリの悲壮な叫びが響く。

 

「カルト、炎の魔法は天と地に対して応用が効くのだよ。

ヴェルトマー留学の時に学ばなかったか?」

アルヴィスの三魔法で大地は裂け、天より降り注ぐ炎で丘が焼け、ファラフレイムの閃光で丘の地形が変わり果ててしまう。

何よりアルヴィスは高位魔法であるボルガノンとメティオの威力をギリギリまで押さえ込んだ為、低出力でかつ速攻を実現したのだ。

魔力の緻密なコントロールと集中力が可能とする高度な技術、カルトはその才能の一端に驚嘆する。

 

「こっちだ・・・。」カルトの言葉にアルヴィスは振り返る。

カルトの姿が約10体、光と風の応用魔法で屈折を作りだしたオリジナルの分身魔法。

 

「ぬっ・・・。ふざけるな!!」アルヴィスは炎の熱を放射する。

途端に、カルトの残像は陽炎となりふっと消えていく・・・。

 

「そんな子供騙しにかかるものか!光の屈折と空気の濃度変化は繊細!炎の熱で簡単に解けるわ!!」勝ち誇るアルヴィスだが、全てのカルトは陽炎と消えたので狼狽える。アルヴィスは辺りを振り回すがカルトの姿はなかった。

 

「ど、どこに?」

 

「ここだあ!!」カルトはアルヴィスの下、地面から飛び出てアルヴィスの顎に突き上げるように拳を繰り出した。

 

「ぐおっ!」ぐらつくアルヴィスにカルトはそのまま連打を入れる。

腹部に、頰に、そして頭部に打ち下ろしの肘を入れてアルヴィスを地面に伏せさせた。

 

「ぐはっ!・・・まさか、ボルガノンの地割れから入り込むとは・・・。さっきの分身は時間稼ぎか・・・。」

 

「ちっとは目が覚めたか!それともまだ殴り足りないか?」カルトはアルヴィスの胸を掴んで無理やり起こす・・・。

鼻血を吐き出しているアルヴィスだが、その顔には笑みをたたえていた。

 

「お前には、何もないな・・・。こんな拳いくら貰っても俺は倒れない。」

 

「な!なんだと!!」

 

「届かないのだよ、お前の拳など・・・。俺の心には届かん!」アルヴィスの体からまとう魔力はすぐさま炎に変換される、掴んでいた手を離して距離をとった。

 

「カルト!お前も俺と同じ筈だ!!親を失い、裏切られ、誰も頼りにせずに生きてきたお前がなぜ今になって人を信じる!いや、信じる事ができる!!」

 

「それがお前の本心だな・・・、ようやくお前の口から出てきたな・・・。」カルトは少し笑う。

 

「何がおかしい!」ファイアーの炎を6つ作り出すと弾丸のように飛ばす、カルトはそれを避けようとはせずに受け止めて炎上する。

 

「お前の炎はそれくらいか、もっと俺にその昏い本性を曝け出したらどうだ?」

アルヴィスは、体に炎を纏うとカルトに飛びかかる。右ストレートの拳を繰り出すがカルトは左手で受け止めて、その手を握りしめる。

 

「ぐあああ!放せ!」アルヴィスは蹴りをカルトに加えるが、カルトはどうじない。さらに握力を込めてアルヴィスに苦痛を与える。

 

「お前は世界を変えるのだろう、その前に俺の心を変えてみろ!それくらい出来なければお前の言葉は稚拙なだけだ。」

カルトの言葉にアルヴィスは激高し、炎をで自身を燃やす。

カルトはその熱気に拳を外され、さらにその炎をカルトにぶつける。距離を取れたアルヴィスは激しく息切れし消耗していた。

 

対するカルトは消耗以上に精神が漲っていた。アルヴィスに気持ちを伝えるカルトと、その言葉に逃げるアルヴィスでは気力の充実が違っていた。それは魔力に現れ、身体の動きに出てくる。

 

「立て、アルヴィス!決着をつけてやる・・・。」

 

「カルト・・・、つけあがるな。聖戦士の血だけでは俺には勝てん!」

二人は魔力を吹き上げ、互いに全力を注ぎ出す・・・。

 

 

 

ヨツムンガンドの波状攻撃から這い出たシグルドは聖剣を横薙ぎする、ラーナは大剣でその横薙ぎをピタリと止めてみせる。

肘から血が吹き出すが構う事なく昏い目はシグルドを捉えていた。

 

「ラーナ様、私です!シグルドです。

あなたが私達を受けいれてくれた事に感謝しています。・・・あなたと切り結びたくない、起きてください。」シグルドの呼びかけにも全く反応がない、だがシグルドは必死にラーナに呼びかける。

 

力勝負に持ち込んでも、ラーナの怪力はシグルドを押し始める。

痛みを感じず、リミッターを外された彼女の力の前にシグルドは為すすべがない。

それでも彼女に語りかける。片膝が地に伏し、奥歯が割れそうになるくらい歯を食いしばりながらシグルドは抵抗し続けた。

 

「カルトの心を救ったあなたが、今ここで・・・。カルトを悲しませてどうするのです!

もう一度カルトを救いたいでしょう!」

ラーナの目から涙が溢れる。表情は暗く瞳も生気が戻っていない、だがシグルドの言葉に反応を示したのだ。シグルドは少し笑みを出すが、ラーナの左拳をモロに食らって吹き飛ばされる。

 

「いつつつ・・・、エスリン並みに効くな・・・。」シグルドはそれでも笑みをたたえながら起き上がる、ラーナ様の魂はまだそこにいる。今はそれがわかるだけでよかった・・・。

 

「さあ、来い!ラーナ様・・・。」大剣を引きずるように持っていたラーナ、シグルドの心臓にめがけて飛び出した。シグルドはそのラーナをそのまま受け止めた。

大剣を最小限でかわし、ラーナの腕を脇で挟み込むようにして押さえ込みラーナの両の手を掴んで拘束する。

 

暴れるラーナ、シグルドは必死にその四肢を抑え込み話しかける。

今一度呼びかけに応じてくれれば・・・、シグルドは諦める事なく語りかけていた。

 

「今のも、あなたが加減してくれているから避けられたのです!もう少しです!もう少しで自分を取り戻せるはずです!」シグルドの語りかけにラーナの力は少しづつ緩んでいるように感じる、シグルドは確信していた。

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