ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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カルトの秘密について少々出して行きます。



帰還

メンゲルに到着した四名は宿に泊まり、少女の目覚めを待った。

三人は口には出さなかったが疲労はピークに達しており、かなりほ手傷を負っている。ホリンに至っては胸骨が折れ激痛となっていた。デューが砦から盗んできた中にライブの杖を見つけ出しカルトが譲り受け、治療を施していた。

 

「まさか、聖杖も使えるようようになっていたのか。」ホリンは改めて驚く。

先に回復させたデューは痛みが消えるやいなや、ベットで泥のように眠りについていた。

 

「聖杖を見た時からなんとなく使える様な気がしていたんだ、本当に使えてびっくりだけどな。」

カルトは外見だけでその本質は変わっていない、ホリンも多少は驚いたが今や以前のように振舞ってくれて助かっている。

 

「二人で話しているうちに聞きたい。あの戦いで何があった、何が起きてそのように変化したんだ。」

「俺も、あの魔道書を燃やした瞬間に自分が理解したんだが・・・。これは母親の血がそうさせたんだ、と思う。」ライブの杖にてホリンの胸骨は及び、体力も癒し終わるとカルトは椅子に座り自身にも杖を使用する。

 

「俺は今まで魔法の才は父親から受け継いだ能力のみで戦っていたようだ。あの魔道書は俺の力を封じていたようで自身の魔力で燃やした時、俺の中にある母親から受け継いだ力を解放させる鍵だったと思う。」

 

「母親の力?」

 

「ああ、魔法の才能は血が大きく左右する。俺は父から傍系ではあるがセティの力を継承しているから風の魔法は生まれつき能力が高かった、それと同じように母親からも・・・。」

カルトは下を向いてそこから先の言葉を濁すようにつぶやく、ホリンでもその先の言葉の恐ろしさがうかがえる。

 

父親から聖戦士セティをついでいるにも関わらずその能力を凌駕する能力を母親から継承したのならその能力も聖戦士の力であることは明白であり、その性質上受け継いでいる能力はグランベルを統べる王族の親類である可能性が極めて高い。

 

「しかし、カルト・・・。お前の母親はグランベルの人間だったのか?ナーガの血筋の者が他国に嫁ぐことなどは考えられないぞ。」

ホリンの言うように聖者ヘイムの血筋は他の血筋と違い暗黒神に唯一対抗できる血筋であり、このユグドラル大陸の民より特別視されている。聖者の血と言うこともあり、婚姻には傍系であっても他国の人間と婚姻はできないし重婚も認められない。

その為、現在血筋の物は現在アズムール王とその息子のクルト王子のみとなっている。

血を絶やさないようにしたいが制約が強いので、おいそれと子供をこさえることができない。

聖者というのはなかなか厄介な存在である、くそ親父に爪の垢を飲ませたいものだ。とカルトは思ってしまった。

 

「確かに、お袋は自分の身の上を俺に話した事なかったから想像もつかないな。・・・でもまあ、よくわからんが光魔法と風魔法それに杖も扱えるようになった、苦手な魔法防御能力も上がっているようだ。あとはホリンから剣術を学べば言うことはない。」カルトのなんとも言えないその上昇志向にホリンはフッと笑みを見せた。

 

「ここまで来ても、なお目的を変えないとは・・・面白いやつだ。この子をリボーに送り返せば俺の依頼は完了になる、その後は俺もしばらく任務はないからソファラでカルトの依頼を承ろう。」

 

「頼むぜ、相棒!」カルトはビシッと指を立てて応えるのだった。

 

「う・・・ん?」

少女は小さい声を上げるとゆっくりと目覚めた、上体をゆっくりと起こし周りを見渡す。

「よお、目が覚めたようだな。

俺の事まだ覚えているか、武器屋で目的の剣が買えなかった時に話したろ?」

カルトはそう言うが、髪の色と長さが違っている為彼女は一瞬首を傾げたがあの口調と声は同一なのですぐに理解した。

ホリンは横に立ち事情を説明する、同じイザークの人間が話した方がいいだろうとカルトは思い。前面には立たなかった。

 

「私はホリン、こっちはカルトだ。君はさらわれて、イード砂漠まで運ばれたんだがこの男からもらった髪飾りの魔力を探知して君を救出することに成功した。

君が元気なようなら故郷まで送ろうと思うのだが、体調の方はどうだろうか?」

 

「私はマリアンといいます、助けていただいてありがとうございます。体調は、大丈夫です。」

 

「そうか、何事もなくて何よりだ。君の意識が戻ったようなら四人部屋のベットでは不自由だろうから隣の一人部屋を使うといい。」

 

「あ、すみません。何から何まで・・・、あの・・・私・・・。」

彼女は赤くなり下に俯く。ホリンは彼女の先の言葉を待つが一向に返答はなく、最後には困り果てていた。

 

「あ~!ホリンわかってやれよ!」

俺はフォローにでようとおもった時にはもう遅かった。

おそらく彼女はすぐに儀式に使われる身、つまり食事もろくにとらせていなかったのだ。

彼女のお腹から大きな空腹の訴えが部屋に響いた。

 

「・・・・・・腹が空いたな、そろそろ食事としようか。」ホリンは自身の腹の音と無理矢理にしたてあげて、階下へと降りていく。

いつの間にか起きていたデューと共にカルトは口をあけて間抜けな姿をさらしてしまうのだった。

 

 

 

「デュー。」ホリンは彼を呼び止めた。

食事を終え、カルトとマリアンは疲労が多いのか部屋ですでに就寝している。デューは夜の町を散策して戻って来たところであり、ホリンは日課の修練を終えての宿の中での事だった。

「あっ!ホリンさん。いいものが見つかったよ、僕値切りが得意なんだ。」彼は背中の袋を叩いてあっけらかんとしていた。

 

「君は、初めて私と剣を交えたときに俺の名前を知っていたな。なぜだ?」

 

「・・・そうだったっけ?覚えてないや。」

 

「はぐらかさないでもらおう、君は私を知っていたんだな?」ホリンには確固たる確信があるのか話を変えることもできない。

 

「・・・・・・。」

 

「君はあの時、秘剣を使っていたな。

あれがなかったらとっくに私が倒していたがそうはならなかった。」

 

「・・・ばれちゃったか~、さすがホリンさん。

そう、あれは秘剣太陽剣だよ。」

 

「!」

デューの発言にホリンは驚きを隠せなかった。

太陽剣はガネーシャの一族でごくわずかな剣士のみが扱える闘気を応用した剣技である。

 

「デューはガネーシャの剣士だったのか。

すまない、辛い過去を引っ張り出してしまった。」

ホリンは頭を下げて謝罪した。

ガネーシャの一族と我がソファラの一族、そしてイザークの一族にはそれぞれ奥義を持つ剣士が族長として存在していた。

 

ガネーシャの太陽剣

ソファラの月光剣

イザークの流星剣

 

この3つの部族は昔よりお互いの力を認めつつもお互いの領地を守り牽制をしていた。

百年前、かの聖戦でイザークの一族は神剣を持つ聖戦士となりこの地に帰ってきたときそのバランスは崩れ去った。

 

神速の剣技を扱う流星剣の使い手が誕生した瞬間、残りの部族達はイザークの一族に従うしか選択肢は残されていなかった。

ソファラの一族の他大多数が最終的にイザークの一族と共同を進めたが、ガネーシャだけは最後まで強硬な姿勢を貫いた。

 

孤立したガネーシャは、他の部族よりも文化も豊かさものびることなく以前よりひどい貧困と空腹が蔓延する一族となった。

一族は徐々に理性的ではなくなり、他の部族より略奪を行うようになった為十年ほど前にイザークとソファラでガネーシャを攻略し、壊滅させた。

 

 

 

「ううん、悪いのはやっぱりガネーシャの族長一派だよ。

変化する世の中に対応できない一族は淘汰されて当然だと思う。それにあのあとガネーシャの民に食料支援をして助けたのもあなた達なんだから。」

デューは相変わらずの笑顔で苦しい過去を話続けた。

 

「僕は弟達を安全なところまで運んでいる最中に少年剣士だったホリンさんに見つかったんだ。

僕達は族長の子供だったから殺されるのかと思ったけど、ホリンさんは僕達を切らずに逃がしてくれた。

あの時は嬉しかった。

弟達を食べさせていくために盗賊まで身をおとしたけど、僕はいつかホリンさんにお礼を言うまで生き延びる一心でここまできたんだ。」

 

「そうだったのか。」

確かに私はあの時、あの戦闘に参加し彼の言うようにデューらしき子供を助けた記憶がある。

あの時の私は一緒に参加した、イザークの姫君に心を奪われており記憶が曖昧であった。デューやカルトには絶対に言えない内容である。

 

「だから、ホリンさん。疑っていることもあると思うけど見ててほしい、僕の盗賊としての能力は役に立つから。」

 

「わかった、疑ってしまい申し訳ない。

ただ、悪いことに使うなよ。」

 

「あはは、気を付けます。」デューは笑って部屋に戻っていった、その足取りは軽く憑き物が落ちたかのようだった。

 

その瞬間、ドアをけたたましく開かれた。中からカルトは廊下側の窓を開いて天空を見上げた。

 

「どうした、カルト。」

ホリンの言葉にも耳を傾けることはなかった。

ホリンもデューも同じように窓から身を乗り出して見上げる。

真っ赤な隕石と思われる飛来物が北の方角に落ちていき、地上を赤く染めた。

 

「あっちはダーナだぞ、一体何が・・・。」ホリンは絞るように囁いた。

 

「あれは、メティオ・・・。ロートリッターか!」カルトの紡ぎだしたその内容は大きく不吉とするものであった。

 

「ロートリッター?」デューはのぞきこむように聞き返した。

 

「ヴェルトマー家が持つ炎騎士団の精鋭軍だ、メティオを扱うような連中はやつらしかいない。」

 

「ダーナで誰と戦っているんだろうか?まさか・・・。」

ホリンは恐ろしい憶測が浮かぶ、地理と位置関係を見ればイザークが絡んでいる可能性がある。ホリンは冷たい汗が流れ出ていた。

 

「ダーナが戦争状態にあるならおそらく交通も閉鎖されてイザークには通してもらえないだろう。明日はここで情報を収集してから判断しよう、ホリンそれでいいか?」

 

「ああ、そうだな・・・。」

彼の言葉はここまでがやっとであった。

 

 

翌朝、自治団の滞在する詰所にて詳細を確認するがやはり事態は最悪の方向であった。

リボーのクラウスがダーナを襲った事、即座にヴェルトマーの精鋭が対処して一夜のうちに制圧したことを聞いた四人は流石に驚きを隠せなかった。

 

「クラナド様はどうされたのだ、あれほどの御仁が短気に走ってダーナを侵攻するとは考えられない!リボーはどうなってしまったのだ!」興奮するホリンは珍しく悪態をついていた。

 

「確かに、それもあるが自国にでない自治区に短期間で準備を整えて精鋭部隊を送り出したヴェルトマーのロートリッターも少しおかしい。裏で何かが手引きしたように見える。」

カルトはそのように分析し、指摘した。

 

「カルト、それではこれはイザークとグランベルの戦争を望んでいる連中がいるとでもいうのか?」

 

「恐らく、な。それを確認する為にもイザークに戻りたいのだが、ホリンなにかいい方法はないのだろうか。」

 

「アルスターに行ってそこから海路という方法もあるが、時間がかかりすぎる。正直お手上げだ・・・。」

 

「そうか、じゃあ・・・最終手段をつかうしかないな。」カルトは少し緊張した面持ちでホリンに体を向けた。

 

「なにか方法でもあるのか?」

 

「ああ、しかしこれは賭けなんだ。うまくいかなかった場合、予想がつかない場面に出くわすこともあるがうまくいけば早くにリボーへたどり着ける。」

 

「な、なんだって。」

 

「賭けてみるか?」

カルトのその表情にそれなりのリスクを孕んでいることは十分に理解したが、イザークの動向が気になるホリンは首を縦に振っていた。焦燥に駆られてるが、全員万全でない状態で飛び出すのは無謀を超えている。今は一つ自身を抑え、休息に入ることにした。

 

 

 

翌朝、四人は体調と物資を確認してカルトの言う最終手段を待った。

彼が言うには転移の杖というアイテムを手に入れていたデューに事情を話して譲り受け、初めてなのに実際に使ってみるということであった。

はじめは二人づつ分けて使用することも考えて見たのだが転送先で簡単にお互いを確認するのは難しい為、一度に四人を転送する道を選択した。

転移の杖の文献をシレジアで読んだことがあるが人数が多ければ、距離が長ければ比例して魔力の消耗と、精度が悪くなるらしい。

聖杖を使えるようになって三日のカルトにはどのような反作用と効果が発揮できるのか、どれくらいの消耗に見舞われるのか皆目見当がつかない。

 

「いいか、始めるぞ!全員どのような場所に転送されても身構えてくれ。」

カルトの号令とともに三人はおのおのの準備に入る。

 

「俺のイメージはイザーク国境付近でデューたちと出会った丘だ。・・・・・・転移!!」

地面に七色に輝く魔法陣が現れ四人を包み込む、幻想的なオーロラが立ち込めて身体が浮き上がるような感覚になった瞬間、まるで暖炉で温めた空間に極寒の外部の風を引き込んだかのような空気を一気に入れ替えたような錯覚を覚えた、あたりを見渡すと風景は一気に変わり街の一角であった石造りの建物は消え失せ低木の茂る草原に場所を移していた。

 

カルトはその場で蹲り荒い息をたてていた、おそらく一気に魔力を消耗したのだろう。

精神力も一緒に削り取られて、へたり込んでしまったのだ。

 

「ホリン、デュー・・・・・・。どうだ、最悪でもダーナよりはイザークよりに転移できたか?」

 

「す、すごいよ!カルトさん!!ピンポイントだよ!ここはあの時ホリンさんと戦った丘だよ!」

 

「うむ、凄まじい魔法だ。一瞬でここまで運ぶとは・・・。カルトはもう一介の魔道士ではないようだ。」

おのおのが賞賛の言葉をかける中、マリアンは微笑んでカルトに寄った。

 

「カルトさん、やっぱりあなたはすごい人だったんだね。」

手を差し出した少女は嬉しそうにカルトを見つめていた。

 

「ああ、これからもっともっと腕を上げて見せるよ。マリアンは俺を買ってくれたんだ、期待は裏切らないつもりだよ。」

カルトはその小さな手を掴み立ち上がる、彼女は初めてリボーに会った時俺を褒めてくれた。あの微笑みを失わずに助けられた事を嬉しく思い、そして幸せに暮らしていけることを切に願ったのだった。




だんだん、カルトはなんでもありに見えるかと思います、しかし私の見解では魔力と精神力に限りがある為万能ではありません。
転移はできましたが大魔法に分類され一日一回が限界、かつこのあとまともな戦闘はできない状態になります。

あえてファイヤーエムブレム風にステータスをー作るなら。

カルト LV12
マージファイター(に近い)

HP 28 / 28
MP 35 / 35 ※ゲームには存在しないです、あくまで私の主観。
力 6
魔力 14
技 9
速 12
運 7
防御 6
魔防 11

剣 C
光 内緒
火 B
雷 B
風 A

スキル

追撃 連続 見切

母親の力にて魔力と魔法防御が上がりました。
以前だと 魔力 11 魔法防御 6 MP 25 のイメージでした。

魔法名 MP消費量
ウインド 3
エルウインド 5
ライトニング 4
オーラ 9

ライブ 3
ワープ ※ 人数と距離による、今回のMP使用量は27くらい。

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