ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

24 / 107
更新遅くなりました。
四月に入っても厄介な仕事が多くて、たまりません。


城内戦闘

カルト率いるシレジア軍とレックスのグランベル軍はジェノア城の北の森林を東から迂回するように回り込みジェノア城へ急いだ。

敵軍の前衛部隊が瓦解した瞬間を狙ったのでジェノア兵が森林から抜けてエバンスには向かっていないと推測している。

念のため一部の天馬部隊を森林をの北に待機しているが信号がこないことよりまだ問題がないことを意味していた、一刻も早くジェノア城にたどり着き城前決戦に持ち込みたいカルトはさらに騎馬部隊を急がせた。

ここでジェノア城での戦闘に持ち込めばマーファに向かったシグルド軍の背後にも、エバンスに向けて進軍は不可となる。シグルドの発案の大胆さは戦力を二分してしまう危険性と共に、どちらかの瓦解は全滅をも意味しているのである。

その状況下においてジェノア城決戦に自国ではないシレジアのカルトとグランベル内ではシアルフィ家と相当な軋轢を持つドズル家の公子を任命してしまうシグルドの胆力には驚くべきものがある。

 

マーファ決戦においてマーファ周辺はこのウェルダン国では珍しく平地が続いている、マーファ軍は数こそ多いものの連お中が得意とする奇襲攻撃は限られてしまうだろう。

シグルドが選出した自身の部隊とレンスターの騎馬部隊を中心とした陣形で臨めば、少数でも突破できると信じての部隊分けと思われた。

ジェノア城においては奇襲を察知する空中部隊である天馬部隊と多彩な攻撃方法を持つ魔法部隊、最大の攻撃力と防御力を誇るレックスの斧部隊が先陣突破をする清濁併せ持つこの部隊が相応しいとシグルドは判断したと思われた。

 

確かにこの部隊分けは適切ではあると思うが、カルトとレックスの軋轢は一切考えていない。カルトは正直苦笑さえしてしまう。

シグルドにももちろん二人のエバンスでの事は耳に入っている、それにも関わらずこの部隊分けをした理由は彼なりに私達への処罰でもあるのだろう。

 

カルトはレックスの動向を確認するように、ちらりと並走している彼を見る。レックスもその視線に気付き険しい顔をする。

「カルト公、とりあえず以前の件は後回しだ!忘れたとは言わないが貴様より武勲をあげて騎士として勝たせてもらうぞ!」

 

レックスはそういうなり速力を上げてカルトの前へ出て行く、その姿にカルトは苦笑ではなく微笑に変わっていくのであった。

彼もまた聖戦士の末裔、カルトのいう言葉を理解したのだ。

豪快なランゴバルト卿の性格が彼にはいい方向に伝わったのだろう。いや正確にはドズル家は大きくなり政治に介入した結果、あのようなに変化してしまったと思われた。

 

ジェノア城では再編成を終えた兵が我らを視認するや否や突撃に入る、まずは騎馬部隊と衝突し激しい怒号と蹄の音が交錯する。

初めのうちはシアルフィ軍優勢であったがジェノア兵は森林からも現れ、陣形を乱されて乱戦となる。

後方支援部隊が多いシアルフィ軍は後方部隊の機能が今ひとつ働かない為に今までのようにスムーズにジェノア軍を撃破できないでいた。

 

カルトにも敵兵が襲ってくることがあり、マリアンが下馬するなりジェノア兵と斬り結んだ。

ジェノア兵はマリアンと二度鍔迫り合いとなるが技量があるマリアンの前にすぐさま袈裟斬りをくらい倒れこむ、すぐさま主人の方を向き直り確認するが心配はない。

カルトに向かってきたもう一人はカルトの剣で血潮の溜まりに生き絶えており、さらに魔法の一撃の準備までしていた。

 

「ウインド!」左手より繰り出された風の刃は苦戦している者への援護するために射出され、まともに受けたジェノア兵は右腕を切り落とされてその場に倒れこんだ。

 

「サンダー!」女性魔道士のエスニャもカルトに続いて魔法を放つ、雷の魔法は放たれた瞬間に光の速さで空気中に放電され狙われたジェノア兵は何が起こったのかわからないまま昏倒していく。

魔法で具現化された雷は自然現象で起こる雷とは違い、破壊力は微々たるものである。しかしエスニャほどの魔道士であればサンダーも強力な一撃となり、屈強な男であっても倒れてしまうにである。

 

「マリアン、気をぬくな。」

ホリンもマリアンの背後によったジェノア兵を一瞬で首を撥ねて危機を払う、簡単に人の首を飛ばすホリンの技量をマリアンが疑う余地はない。

ここまでの技量になるまでホリンがどれくらいの戦闘と訓練を積んできたかわからない、しかし自身が強くなるに従って目標となる彼までの道のりが遠く感じてしまうのであった。

 

戦闘が一時間を経過する頃、暗雲漂う事が予兆するように大粒の雨に見舞われた。

視界が思ったより悪く、天馬部隊も飛行を続ける事が困難となる、カルトは天馬部隊をエバンスに撤退を命じ、地上部隊のみでの戦闘維持をすることとなった。

 

レックスの斧騎士部隊とシレジアに魔道士部隊に被害が出たが敵兵はほぼ壊滅となり、捕縛する処理が続いた。キンボイスは不利と見るや場内に逃げ込んだとの情報が入り、すぐさま城内戦へと切り替えた。

 

 

「ちっ!城内戦闘とは、潔くない奴だ。俺の斧の錆にしてくれる。」

「確かに。しかしここは焦らないほうがいい、不利で逃げ込んだようにも思えるが城内戦を想定した奇襲を展開している可能性もある。」カルトはレックスを諌める。

「そんな連中が騎馬相手に平地で戦闘なんかするか?

時間がないんだ!とっとと奴の首をシグルドに差し出せばいい!!」

 

ジェノア城内の詰所を制圧したシアルフィ軍は兵たちの休息と、救助による作業を行いつつ軍議に入った。

ジェノアに入ったばかりで市街地では戦闘が行われており、市民たちは民家から出ないように声をかけつつジェノア兵の排除し制圧区域を広げていく作業に入っている。

 

市民たちはキンボイスに圧政を敷かれているようで、民家にジェノア兵の確認の度に押し入るが圧政者の始末を涙ながらに懇願する者がいたそうだ。孤立したジェノア兵は追い詰められ、自ら捕虜として進み出るものが横行し始めた。最後の戦いに臨もうとする者は少ないようだ。

しかし少数精鋭が背水の陣で臨む者達のみで構成される事になる、慎重に事を進めなければ余計な被害が出るとカルトは予測したのだが豪快なレックスは一気に攻め登らんと勇ましげに捲り上げる。

 

「レックス公子急ぐ気持ちも分かる、しかし今は先ほどの戦闘での被害を立て直すための時間と救援物資が必要だ。

この街に来たての私たちには救援物資はエバンスからの運搬しなければいけない、天馬部隊に命じているので今少しの時間が欲しい・・・、それに・・・。」

カルトは俯き加減にその先の言葉をかき消した、その行動に今この場にいる者は見張ってしまう。

今まで明快に答えを導き出し、グランベルの重鎮を前にしても一歩も引かないカルトが言葉を選んでいる光景は初めて見流もにでったからであった。

カルトのそばにいるマリアンやホリン、エスニャもクブリもその先の言葉に予想がつかずにいる。

 

「カルト公、どうされたのだ?」レックスはその先を促す。

「できれば、ジェノア内の方達にも救援物資を与えて欲しい。」

カルトは俯いた顔を上げてその先を伝えた。

 

「グランベルの防衛では自国の為から各村や町から救援物資や金品を譲ってもらったが、ヴェルダンに入ってからそのような物資供給は一度もない!ここで分け与えてはこれからの進軍が困難になることくらいカルト公も理解しているだろう!」レックスは強く口調で嗜める。

これは怒りではない、正当な意見として最もである。軍の維持を第一とするならばレックスの発言は意にそうものである。

「レックス公子の言うことは最もだ、しかしヴェルダンにきてから救援物資を頂けることを拒否され続けている理由があるんだ。」カルトは重々しく伝える。

 

レックスはヴェルダンの人々が我々に救援物資を拒否されてきている事は自国を守るために、侵略するグランベル軍を助けるような連中はいないと安易に考えていた。しかし、カルトは救援物資を拒否される理由を見つけ出していた事に驚きを見せる。

 

「この国は豊かな土地で食料も豊富な国だ、他国に輸出できるくらいなのだがバトゥ王の二人の王子による無理な徴税で村々には十分な食料はないらしい。我々に救援物資を渡したいが、渡す余力もない村々ばかりだった。

さらにこの辺りでは疫病が蔓延しているようで床に臥せっている子供や老人が教会に押し寄せている。

我々はエーディン公女の救出する為で、単なる侵略者でないのならば支援するべきだろうと思う。」

 

レックスの考えた安直な考えではヴェルダンの村々は自国に押し寄せるグランベル軍に対しての嫌がらせ、としか考えていなかった。いかに大義があるからといっても自国を制圧するかもしれない連中に金品や物資を渡す民なんているわけがないと思い込みもあってその思考になっていたのだ。

貴族であり、騎士としての素養を受けてきたが他国の戦力とは違う情報の中から相手の状況を掴み取りここで支援をしようと考えるカルトの思考は自身には全くなく愕然とした。

 

カルトと先日の言い争いからレックスは綺麗事を言うだけの気に入らない連中の一人として扱っていた。

ここまでの戦闘の運びから有事におけるここまでの配慮にレックスは感心してしまう。

自身の部隊からレックスの部隊までの戦闘状況に合わせた魔法の支援、回復の徹底。天馬部隊の支援と、隊列変更。城内にもつれ込む前の詰所での打ち合わせ場所の確保と、各村々の状況と支援物資の提供の指示。

 

レックスには細部における状況判断から、発令のタイミングまで全て一人でできるようには思えなかった。

いや、わかっていても思考を切り捨てて出来ることしかしなかったのではないかと判断した。

カルトという男は気付いた事は決して切り捨てない男なのだ。レックスはそう判明した時、自然と笑顔が出ていた。

 

「カルト公いいだろう、あなたの言う通り支援物資の提供をしようではないか。

しかし!条件はある。この城内戦闘で、キンボイスを捉える事を条件とする。」

レックスの意見に皆一堂に固唾を飲んだ、その条件は簡単な事ではない。いつどこで襲われても敵将を殺さずに捉えて連れ帰ることは殺す事より難しい、その条件をレックスは突きつけてきたのである。

 

一同はカルトに再度見張った、城外へ逃げられても殺してもアウトなこの条件を普通の者は受けるわけはない。下手をすれば自身の部下に命を奪われる危険もある。

 

それを見越してレックスはこの条件をつけたのだろう。

部下の命を優先にするか・・・、自国でもない民の命を優先するか・・・。

それは以前の啀み合いであった、エーディン公女と市民の命を天秤にかけたカルトにたいしての真偽を問う事にもつながっている事になるのだった。

 

「わかった、やるだけの事はやってみよう。キンボイス王子を捉える!」

カルトは高々と宣言するのであった。

 

 

 

「なんという体たらくだ!」

キンボイスはテーブルに手を打ち付けてあたりの部下どもに強く当たる。

長年付き従った部下もシアルフィに投降し、生き恥を晒して生にしがみつく者が多く反撃の機会を失いつつあった。いまもなお城下では投降が続いており戦力が軒並み低下しつつあった。

キンボイスの重鎮のみがかろうじて残っており軍議を開くことができる状態ではあったが対抗策など思いつく者がおらず、先ほどのくだりとなった。

 

「しかし、なんとか城内に逃げ延びて命を拾いましたがここから脱出してマーファに向かうには無理があります。我らも投降する事が賢明かと・・・。」

「黙れ!ここまでグランベルの連中にいいようにされてマーファに逃げ帰るなどできるか!」

キンボイスには多少のプライドがあるのだろう、彼の唯一の頭脳とも言える老兵の言葉に聞く様子もなく一喝する。

「しかし兄貴、このままじゃあ俺らの首がすっ飛ぶのは時間の問題だぜ。」

「わかっている!残された方法は奴らをギリギリまで引きつけて抜穴から城外に脱出する方法しかない。

部下に命じてタイミングを見て城と城下に火を付け、そのゴタゴタに乗じて抜穴から城外へでる。」

正気とは思えない方法を思いついたキンボイスの目にはもはや正気とは思えぬ光を宿していた。

 

「しかし抜け道を通ってもそこから追っ手がくれば抜け道の出口と挟み撃ちとなります、抜け道に殿を務める者が必要です。」老兵は進言する。確かに抜け道は城外へ抜けられるが、町の外まで抜けられるわけではない。町の外にはグランベルの軍がいる上に抜け道を辿って来られれば挟まれてしまうことなど明確である。

殿を務める強者などヴェルダンには王子たち以外には存在しない、数での勝負がヴェルダンの唯一の勝利方法なのだからである。

 

「わかっているさ、俺に一つ策がある。貴様らは何も考えなくていい。」

キンボイスは不敵な笑みをたたえて部下に伝令していくのであった。

 

 

グランベルの混成部隊がジェノアに入ったその日の夜にジェノア城攻略に向けた。早めに休息をとらせた入城選抜部隊を引き連れ強行突破に入る。

 

ジェノア側に余計な時間を与えるとプレッシャーからどのような凶行に及ぶ事かわからない、シグルドのマーファ攻略にも迅速に合流したい事も踏まえた結論であった。

カルトが一番に無事に得たいものはジェノアには近隣から徴収した大量の食料、おそらく奴らは敗戦が濃厚になれば敵に渡らないように火にかける恐れがある。

これだけは絶対に死守する事がカルトの密かな想いである、いくらレックスが約束で食料援助を行ってもここの食料が得ることが出来なければ今年の収穫までに餓死する者が出てしまうだろう。シグルドの進軍がヴェルダンの民にとって悪い結果にならない為にもここは踏ん張りどころと捉えた。

 

城門にいた警備兵を切り崩して一気に中へ躍りでる、途端に鋼と鋼が撃ち合う音と漢共の怒号が響き渡る。

レックスの斧騎士部隊も全て下馬し徒歩での入城によりジェノアの思惑は的を得ていると分析する。

追い込まれているとはいえ、機動力を使えない状況に持ち込んだキンボイスの策はそれなりに効果がありジェノア兵は一進一退の攻防を見せた。

 

「エルサンダー!」エスニャの強力な上位魔法が前線の一角を切り崩し、クブリの回復魔法が前線から離脱する者を再び前線に復帰させることにより徐々にジェノア兵を後退させ、中庭を突破し入城に成功するのであった。

中庭にはまだ残党が残っているのでさらに部隊は分散する。レックス、ホリン、エスニャと精鋭の少数部隊が城内に入りキンボイスの掃討に移ってゆく。




マリアン

ソードファイター
LV6

剣B

HP 27
MP 0

力 9
魔力 0
技 13
速 15
運 5
防御 6
魔防 0

スキル 追撃

鉄の剣
リターンリング
カルトの髪飾り 《スキル 祈りが追加》
こっそり通っている闘技場と戦闘でLVアップしています。

ゲームでは闘技場で連続してラウンドを戦うとLVアップの変動値がおかしくなるそうですね。あれだけ戦ったのにLV時にHPアップだけとか、思い当たる節があります。(怒)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。