ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻) 作:Edward
ここからは少しずつですが進めていくように努力します。
リューベックより南下して数時間、夜の闇は終わりを告げる。東の空より太陽が徐々に昇り始め、空が白け始めてくる。
俺は視界が明るくなってきた眼下に見る、あんなに豪雪地方のシレジアも南に下れば一気に砂漠の不毛地帯が現れだす。
シレジア領はすでに抜け出ており、追っ手がやってくる様子は無い。とりあえず一安心したのだがここから他国での行動となる、さらに引き締めて行動する必要があると感じた。
期待と不安が入り混じったなんとも言えない気分となっていた、昂ぶる思いから冷静になる為に一度思考を断つように頭を振り打ち消した。
このまま何もせずにシレジアにとどまっているといるとどうしても親父と叔父貴により内戦により国力の消耗が先か、他国の侵害によりシレジアは窮地に追いやられると思っている。
最近自国も含め、近隣諸国の動きがおかしい・・・。
現在は戦争をしている国はなく、各国に多少の緊張はあるもののそれなりの平和は保たれていた。
しかしながら、その危うい緊張状態が各国が悩みを抱える危険な爆弾となっており、一つが破裂すると連鎖的に誘爆しかねない所にまで来ているのではないかと危惧している。
グランベル王国のバーハラには聖者ヘイムの血を継ぎ、暗黒神ロプトウスを打ち倒せる唯一の血族が興した地、現国王のアズムール王には優秀な王子クルトがおり盤石とも言えるのだが諸侯の中にはそれを良しとしない勢力もいる。
斧戦士ネールの末裔であるドズルのランゴバルド卿や、魔法騎士トードの末裔のフリージのレプトール卿などがあからさまである。
クルト王子の全幅の信頼を受けているシアルフィのバイロン卿は高潔な人物で、この2名の槍玉に上がっておりさぞ疎ましく思われているのだろう。
トラキアとレンスターも隣国ながらどちらもトラキア半島の統一の為に躍起になっている。
レンスターはトラキアを攻めるにも厳しい荒野の為に騎士団を派遣しても馬が足を取られてしまい攻め切ることはできず、トラキアは慢性している食糧難と人材不足がありレンスターを攻め切れる体力がないのである。
このどちらにしても、この均衡が策略で崩れた時は一機に状況が変化してしまうだろう・・・。
アグトリア王国はグランベルの隣国にある大国、賢王イムカにより私利私欲の強い諸侯を抑えているが、彼の崩御があればどう転ぶかわからない不安定な状況になっている。
ウェルダン王国も同様に国王のバトゥ王がどうにかなってしまえば、あのバカ息子達は暴走してしまうだろう。
シレジアは内戦一歩手前の事は俺自身がよく知っているので除けば、現在の所不安要素が少ないのはイザークのみである。
イザークは東方の独自性の強い国で、内部から漏れてくる情報は極端に少ない。
もしかしたら不安要素があるかもしれないが、安全な可能性も考えてイザークで剣術を学びたい。
かの地には秘伝とも言える剣技があるらしく、この目で見てみたいこともあった。
「おいフュリー、日の出の方向で南に向かっているのはわかるが、どこで俺を降ろすつもりだ!まさか考えていないとでも言わないよな!」
「えっ!・・・・・・・・・。」フュリーから小さい声が聞こえてきた、明らかに動揺している。
「おっ!おい・・・。まさか本当に何処で降ろすのかも考えてなかったのかよ・・・。」俺はフュリーの天然思考ならそれくらいやってくれそうな気がしてきた、開始早々より頭痛がするぞ。
「まっ!まさか!ちゃんとレヴィン王子から手筈通り、降ろす場所は決めてますよ・・・。」視線が泳いだ末にさらに南の方向を指さした。
「あっ!あの町です!あそこに降ろそうと考えてました!」
「・・・ダーナの町か、偶然にしてはいい所に飛んでいてれた、いいだろうあそこで降ろしてくれ。」
「カイト様!ちゃんと考えてましたよ、ただ少し道に迷っていただけです。」フュリーはここで正直な感想を述べた、こいつはかわいい奴だよ・・・。
二人はダーナに向かう為、高度を下げていくのであった。
ダーナはかつて120年程前に暗黒神ロプトウスに対する反乱軍が壊滅の危機を迎え、最後の抵抗に立てこもってた地である。
ここで12の神が降臨し、その力を与えて12の聖戦士が誕生。その大いなる力がロプト帝国を打ち倒した伝説発祥の地でる。
その発端となったダーナの砦はいまなお存在しており、この地をどの国も属国とせず中立都市としている一因としている。
その一因を利用しているのか治安は芳しくない。ならず者や奴隷商人、もしくは暗黒神を祭る集団もいるとの噂が立つ程である。
ダーナからイザークはそれほど遠くない。イード砂漠を通行する事にはなるが道は比較的整備されている為、準備を怠らなければ決して悪い道中ではない。
フュリーと俺はとりあえずダーナの町につくと比較的外れた場所で宿をとることにした。
天馬は他国では非常に珍しく高額で売買されしまうので町はずれの小さな森で放ち休養を取らせた。ダーナの町は大きなオアシスになっており、周辺には多少森林も存在するので天馬連れでも休息がとれたのである。
俺は浴室で埃を落とし、階下で食事をとりながらフュリーを待っていた。浴室と言っても水の貴重なこの地で入浴は出来ない、清拭のみで湯船に浸かる事は出来なかった。
フュリーは明日一番に国元に帰らせれば俺の責任も晴れだろう、あいつは天然だから同行するといいかねない。
フュリーになにかあればレヴィンに合わせる顔もなくなってしまう、それだけは回避したいところだ。
考え事をしながら席に着いた時に置かれていったコップに口を付ける。その水は砂漠地方特有の質が悪く、砂が混じった水を飲み慌てて果実酒を注文する。
「カルト様、お待たせして申し訳ありません。」フュリーは軽装なチュニックにて階下へ降りてきた。マーニャにしてもフュリーにしても、シレジアの女性はきれいどころが多いときたもんだ。目のやり場に困り、愛想のない返事をしたのだった。
主人もその美貌にとらわれたのか、俺の時はぶっきらぼうに出してきた食事だったがフュリーが食事に降りてきた途端にその対応は急展開して俺の気分を損ねさせてくれた。
食事もそこそこにフュリーは俺に質問を投げかけてくる。
「カルト様はここからどのように行動される予定なのですか?」
「ん~?そうだなあ、イザークに向かう予定なんだが砂漠を越えるからそれなりに資金が必要なんだ。数日は滞在して費用を捻出してからになるなあ。」
「そうなんですか?カルト様は王族なのに費用は持ち出しておられないのですか?」
「あのなあ、許可なく国をでているのに金まで持ち出せば国内が一層もめる元になるだろ?レヴィンにこれ以上の負担はかけられねーよ。」
「ふふっ、私にはよくわかりませんがレヴィン様があなたの手助けをしたお気持ちはよくわかります。」
「レヴィンには大きな借りがある、返すまで奴に不幸にはなって欲しくねえからな!」
「カルト様ももっと素直にレヴィン様にお伝えすればいいのに。」フュリーはくすくす笑う。
俺は硬直した、性格がひねくれている俺にフュリーのような純な感情は居心地が悪い。返す言葉を失ってしまった。
「ばっ!バカな事言うな!俺は・・・。」ここで正直に言葉を返す事もバカらしくなり、ひねくれ者らしい回答をする事にした。
「・・・フュリー、じゃあ素直な気持ちをぶつけようレヴィンにではなく、お前に。」フュリーの手を掴み、真剣な顔をしてヒュリーの顔に近づけていく。
「えっ、えっ!!」硬直したフュリーはこの場で顔を真っ赤にしていた。
俺は真剣な表情のままフュリーの顔に俺の顔を近づけていく・・・。
彼女は眼をきつく閉じて俯いた。俺はその顔に少し、ずらして口を耳元に持っていくと、こう言ってやった。
「実は、ここの宿代を払う金もなかったりして~♪」
彼女の顔は真っ赤になった後、真っ青になった。その後再び真っ赤にして叱責が始まるのだった。
叱責の後、本日の宿代と食事代はフュリーが支払う事になりカルトは再びお叱りを受ける事となったのは言うまでもない話である。
ダーナで少し滞在する予定です。
ゆっくりで申し訳ありません、ここからは定期的に更新するように致しますのでよろしくお願いいたします。