ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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まだうだうだする回となりました、申し訳ありません。
キャラの登場にもバラツキがありお気に入りのキャラが出てこない等がありましたら重ね重ねご容赦の程お願いいたします。

ここ数日、小説作成から離れた生活を送っていたのですがお気に入りと閲覧数が一気に上がっていました。
細々としていましたので、驚きと感謝です。
20年も経過した聖戦の系譜にここまで興味がある方がいらっしゃると思うだけで励みになります。

こんないい加減な小説を見てくださった方々、ありがとうございます。
ぞしてお気に入りにしてくださった方々、よろしくお願い致します。


発進

「くっ・・・、ここも駄目か!」レックスは先に見える紅蓮の炎を見て再び方向を変える。

遮二無二走り回るが火の手が複数から上がっているのか、逃れる先々の方向で先回りをされているような感覚に襲われる。

 

(奴らめ!火を放ったな!)

レックスは舌打ち混じりに言い捨ててまた方向を変える、もうすでに方向感覚は狂っておりどこに向かっているのかもわからなくなっている。とにかく森を抜けない限り打開する術はなく走り回った。レックスに従い、駆け抜けた部下も今や逸れてしまいいた。無事に帰還できている事を祈るばかりである。

レックスは数度となく危険な炎の中を走り抜け掻い潜ってきたが熱風により水分を失い、煙により酸素を欠乏させていく。そして自慢の体力も限界を迎えようとしていた。

 

レックスは最後の力を振り絞り、小高くなった山林に向けて駆け上がっていく。彼の走り回ったこの周辺ではこの地形は見た覚えがなく、この境地を打破できると信じて残数の少ない体力を注ぎ込んだ。

先ほどより熱気しか感じられなかったがこの先からは冷たい風を感じた、レックスは森を抜けられると確信し一層駆け足でその先へ視線を投げかけた。レックスの足は限界を迎えており最後は転がりようにその村林地帯の先へ潜り抜ける。レックスは倒れこみ、視線をさらにその先へ投げかける。

 

(・・・!)

森は確かにそこで終わっており紅蓮の炎は先に見えない、しかしその先には希望はなく絶望の現実を突きつけられる事となった。

そのすぐ先は崖であった、とても人が伝って降りられるような地形ではなく完全に行き場を失っていた。

その崖っぷちでレックスは絞るような声で誰ともなく言い放った。

「ここまで・・・か!」

ここに滞在し続けていればいつかは敵の遠距離魔法を仕掛けられる可能性もある、しかし退路はすでに炎で断たれている、手詰まりに陥ったレックスは手に持っていたハルバードをその場に落として大の字で倒れこんだ。

ここでようやく森林でまともにできなかった呼吸を大きく吸い込んで肺に新鮮な空気を送り込む、酸素が脳に行き届くと意識がはっきりしもう一度思考を張り巡らせ始めた。

そして荒い呼吸を整えたレックスはハルバードを握り直して立ち上がる、呼吸は整ったが消耗した体力はすぐには戻らない。足はガクガクと震えているが使い物にならないまでではない事に感謝した。

 

「グランベルの物だな!よく祖国を!!」レックスの背後より怒声が聞こえて振り返る。

その場にはヴェルダンのハンター部隊の残党と思われる男が弓を引き絞っており、レックスに怒りと共に射抜こうとしていた。

「よくも森に火をかけたな!どこまで卑劣な連中だ!」

「待て!この火はヴェルダンがかけた物ではないのか!!」レックスは質問を返す。

「当たり前だ!!この国の至宝は森と水だ、その大切な宝を自ら火をかける奴はこの国にいるはずがないだろう!」

「俺たちもそんな卑劣な手段を使う事はしない!俺も火に追われて逃れてきたんだ、火を放った側ならこんな事にはならない筈だ!!」レックスは手を上げて弁明する、ヴェルダンのハンターは警戒を解く事なく未だに標準をレックスに合わせていた。

 

レックスは崖の端にいるため矢の回避はできない、距離もあるので不意打ちも仕掛けられない。ここで戦闘となれば間違いなく射殺されてしまうだろう、矢を回避しても崖の下に真っ逆さまである。今のレックスにできる事は勝機を得るための時間稼ぎしかできなかった。

 

「誰が信じられるか!!火がお前たちでは無かったしてもジャムカ王子は貴様達が殺したんだろう!!」

彼の怒りがますます膨れ上がっていた、レックスはその瞬間に覚悟を決めた。

ハルバードとは違う、背中に括り付けてあったもう一つの斧。投擲武器として使用できる手斧に切り替えてハンターに対峙した。

ハンターはすでにレックスに標準を合わせている、その不審な動きに先に射かける形となった。

レックスはその矢に毒が仕込まれている事を忘れていない、崖の不安定な足場だが跳躍してその矢の回避に成功し手斧を投げつける。

レックスの斧はハンターの弓に当たり破壊する、重量のある武器なので弓だけではなく利き腕を負傷しハンターは恨めしそうにレックスを睨みつけた。しかしヴェルダンのハンターは恨みの眼を驚愕の眼に変化する。

 

「く!・・・。」レックスの足場が先程の跳躍で崩れたのだ、そのままレックスは崖の下へと落ちていくのであった。

ハンターは駆け寄って崖を覗き込むが落下したレックスを確認する事はできない、下にも広がる森林の深緑に飲み込まれていた。

ハンターはその場で嘲笑うのだが、サンディマの誤認識により暗黒魔法を受けてハンターももうじき絶命する運命をまだ知らないでいた。

 

 

《起きなさい》

混濁した意識に語りかける声がする。

《起きなさい》

再度声がして、レックスは目を覚ます。

一人と寝かされていたレックスは周りを見渡すと不思議な光景を目の当たりにする。自分の立っている足元は水面であった、そして足元の向こう側は森林が見える。水面にたいしてレックスは逆さに立っており上を見上げると水底が写っていた。

 

しばらくその光景を見て呆然としていると目の前の水が水流となって人の形となりレックスの目の前に現れる、純白のドレスを着込んだ美しい女性がレックスを慈しむように見つめていた。

 

「あんたは誰だ?」女性に語りかける。

「私は人間ではありません、あなたは私の住む世界に迷いまこれたのです。」

レックスは意味不明な言葉に黙り込み必死に考え込む。ここはヴェルダンの精霊の森といっていた、そんな突拍子な事があって不思議ではないと思い込事にした。

肝心なのはここさら先に彼女の言う事が信憑性を左右する事になるだろうと結論する。

 

「世界が違う?なら俺は元の世界に戻りたい、どうすればいい?」

彼女はレックスの後方を指差すとその場が光だした。

「その光に飛び込むと元の場所に戻れますが、その前に質問させてよろしいですか?」

「・・・俺に答えるものならお答えしよう。」

彼女はすっと笑顔になって、紡ぎ出す。

 

「今、精霊の森が燃えています。これはあなた達が行った行為ですか?それともあなたの敵対している者が行った所業ですか?」

女性の言う言葉にレックスは少し間を置き思考する、その上で答えを述べたのであった。

 

「わからないが、私たちではない。」

「では、敵対している者の所業というのですか?」彼女はレックスに答えに更に述べるように促す。

 

「それも違う、と思う。

俺たちグランベルの中にそんな卑劣な作戦を使うような奴はいない!それだけは神に誓ってでも断言しよう。

そしてヴェルダンの連中もそんな事はしない、彼らは自国の森や水を愛おしく話していた。精霊の森の存在も理解し敬っていた。」

 

「では、レックス殿?この所業はなんだというのですか?」

「わからないんだ、でもきっと俺の仲間が森を焼いた者を見つけてくれる。俺も見つけるように努力する。

だから、答えが出るまで少し待ってくれないだろうか?」

 

「・・・・・・レックス殿、あなたの精神と志しを確かに感じました。素晴らしい物であったと評価いたします。このままここを出てもまた火の手に遮られてしまうでしょう、これを持って行ってください。」

彼女は右手を天に掲げると、水底より斧がレックスに向けて降りてくるのであった。

手に取ったレックスは一振りして見上げる、片刃の斧でハルバードよりリーチは短いがその流線形のフォルムは風の抵抗がなく見た目に反して軽い。なにより初めて持ったにも関わらず手に吸い付く感じは以前から使用していたかのような馴染みがあった。

 

「その斧があなたを安全に導くでしょう、火を放った者の対処はあなた達に委ねます。」

「ああ、見つけて罪を償わてやります。では・・・」レックスは一礼をして元の世界へ続くと思われる光へ進むのであった。

 

 

 

 

上空を疾走する天馬に向けてフェンリルの発動されたのは3度目であった、二体のペガサスナイトが直撃を受けて大きなダメージを受けるがカルトの遠隔治療魔法であるリブローが彼女達を支える。

リライブほどの効力はないのでマーファに帰還する事になるがシレジアの天馬騎士団結束は固い、屈する事なくヴェルダン城へ突き進んでいた。

 

森林の火災は一層火の手が増し、天馬部隊のいる高度にも熱気が襲いかかりシレジアの者はその暑さに苦しんだ。煙も立ち上っており呼吸も苦しく、そこは人よりも天馬の方が参っている様子であった。

 

「カルト様、上空の気流が大火の所為で乱れております。このままでは被害の方が大きくなります。」

クブリの指摘の通りである、上空を見上げるもヴェルダンの城に到達できておる者はおらず暗黒魔法を地上部隊から気をそらす事で精一杯であった。

 

「くっ!誤算だった。皆、すまない。」

カルトはそれでも歩む事は忘れず、負傷した者を回復させながら迂回ルートを突き進んだ。

 

ディアドラの提案を聞いたカルト達は足早に迂回ルートを進む、城を時計方向に回るようにして進むため、城は見えているのだが近づいて行く様子はなく、歯痒く感じる。その間にも我が国の至宝である天馬騎士が負傷する様は見るに堪えない物であった。

 

天馬は非常に繊細で、シレジアで安定して天馬を蓄養できているのは最近である。先人の知恵と弛まぬ努力、挫折と進展に一喜一憂してようやくその成果が花開き安定した供給ができるようになったのだ。

天馬を乗りこなし騎士として昇華する人材はもっと難しい。天馬は女性にしか懐かないので背を跨ぐ騎士は当然の事ながら女性、騎士として幼い頃から素養を身につけさせてもその中から天馬騎士になれるのは20%にも満たない確率なのだ。

そんな貴重な人材を預かっているカルトは魔力切れを恐れる事もなく乱発している、クブリは心配をしての言動であった。

 

「しかしこの炎は誰が放ったのだろうか?ヴェルダンの国力を支えているのはこの森と水の筈、勝つためとは言えその代償が大きすぎます。」クブリはそう呟いた。

 

「ああ、防衛戦というのはなんせ金がかかる。攻め込んだわけではないから領地も手に入らないし、防衛に成功しても敵から資金を奪えるわけでもない。そんな防衛戦に数百年もかけて育んだ森を捨てるような真似をする奴はヴェルダンにはいないだろう。」

「では、やはり・・・。」側に控えるマリアンが口にする、彼女は慣れない森での移動に一切の言葉を発していなかったのだがここでクブリとの会話に口を挟む。

彼女は一度ロプと教団の供物にされかけた身、その忌まわしき教団の存在に敏感になっていた。

カルトは頷いて肯定の意を示す。

ロプト教団は暗黒神ロプトウスの復活を切望している、その為の犠牲など意にも介さないだろう。

 

「その為にも一刻も早く奴を倒さねばな、消火活動を行うにしても奴を倒さない限り無駄な被害が出る。」

カルトの言葉にそばに控える者達は歩速を早めていく、炎が行く手を遮る道無き道を切り開く様はこの国の行く末にも繋がることをカルトは胸に刻み込む。

 

 

 

 

天馬騎士団が必死にサンディマの暗黒魔法を回避しながらヴェルダンに向かう、ここで術者の注意を地上部隊に向けられれば魔法防御の乏しい部隊に大きな被害が出る事は副官は充分理解はしていた。

陽動の為にも自身の部隊は派手に動かなければならない、しかし動けば魔法の直撃を受ける可能性があるがこれだけは何としても避けたい。下は火の海と化している、森に堕ちてしまえば二度と空中に舞い戻る事は出来ず焼け死ぬ事になるからだ。彼女達はその決死の思いでシアルフィの部隊を支えている、副官の彼女は統率して絶えず指示を送り続けていた。

数度魔法攻撃の直撃を受けた者がいたが、地上にいるカルトの遠距離回復魔法でなんとか死者を出さずにマーファに帰還できた。しかしこれからも助かる保証はない、彼女は自身に叱咤を送りながら部隊を預かる身として常に思考を切らさずに集中し続けていた。

 

「固まらないで、常にヴェルダン城の警戒して!くるわ、全員回避!」

地上が燃え盛る中で禍々しい漆黒の矢を回避する純白の騎士団、絵師がその場に居合わせたならその情景を描かずにはいられないくらいに絵画に出てくるような空中の攻防は美しくそして苛烈なものである。

 

「今よ、全速!!1分経過したら一度停止して回避準備!」

魔法と魔法の射出間隔時間を確認していた副官は指示を出して距離を詰める、そして回避準備を取らせて警戒に当たらせた。

「距離が短い分着弾時間と命中精度が上がる、気をつけて!」

二人を負傷させてしまった失策に修正した作戦を考慮して確実に距離を詰めていく、副官はさらに引き締めながらヴェルダン城に注意を払う。

 

暗黒魔法を感じた天馬達は怯えているのか首元の筋肉が萎縮する、それを感じ取った副官は号令を出す。

「また、くるぞ!」

 

彼女達はすでに回避行準備に入っている。今回も同じように回避すればいい、そう思っていた。

人は慣れると注意力が散漫になる、ルーチンワークに潜む影を副官は忘れていた。

 

暗黒魔法を感じた天馬が萎縮する事は分かっていたがそれが全弾すぐにこちらに向けられるとは限らない、相手も人間である。何度も回避されれば、敵も修正してくる事を考えに入っていなかった副官は我に帰ってしまう。

 

回避行動のタイミングを外され、さらに今回の魔法の着弾速度は先ほどより速い。いや数回前からの魔法から速度を少しづつ落としていて今回元の速度に戻していたのか体感速度と距離の短さもあり一層着弾が早く感じた。

副官は隣の部下たちに向けられていた魔法攻撃を飛び込んで自ら受けた。

受けた途端、矢による物理的な痛みと共に全身にまるで猛毒が回って体の内部から外部にその毒が飛び出す痛みを受ける。

「ああああああ!」

気付けば、彼女と天馬は全身から血が吹き出して激痛を伴う。

 

「副官!」部下の悲痛な叫びが上がるが、彼女は意識を失ったのか天馬の首に体を預けたままピクリともしない。天馬も羽根に重傷を負ったのか、高度と速度がみるみる落ちていき大火の森に誘われるように堕ちていく。

 

カルトから遠隔魔法の回復がなされるが、天馬の傷が思ったより大きくて浮力を取り戻す時間はない。

天馬騎士団が必死に彼女の天馬に追いすがり、救出を試みるが失速した二人を持ち上げる事など出来ない。彼女の意識があれば彼女だけの救出が可能であるが、今の状況では不可能であった。

 

とうとう副官を乗せた天馬が大火の森にまで堕ちてしまい、その姿を確認できなくなる。

指揮官を失った天馬部隊はどうすればいいのか判断できず、空中に静止する。

《何をしている!回避準備!!》

カルトの送る伝心魔法で間一髪魔法の回避には成功するが、このままでは第二の被害がでる。

カルトは撤退の指示を出す為、伝心の魔法を発動させる。

 

《まだよ!全員全速!》

カルトとは違う伝心が天馬部隊とカルトに逆伝心が響く、それはつい先日の事なのに久々に聞く声に部隊は高揚する。

 

副官が堕ちた地点より再び浮上する存在に部隊は見張る、先の戦闘で天馬を失い戦線を離脱した部隊のトップであるフュリーが副官の天馬ごと大きな怪鳥の背に乗せて部隊に舞い戻ってきたのであった。

 

地上から見たカルトはその光景に笑みを浮かべて笑い出す。

彼女は以前より大きな存在となり、ヴェルダン攻略に大きな鍵となるであろう予感を確信に変えていくのであった。




ようやくフュリーを復活できました。
彼女の怪鳥捕獲も本件にいれようとしたのですが、ボリュームが大きすぎたので外伝を作って表現してみたいと思います。
またジレジアに帰ったカルトがセイレーン公になるまでのお話も外伝として制作したいと思います。
すみません、制作時期は未定です。親世代が終わった辺りがベスト、かな?
誤字、脱字修正と大変ですが少しづつ進んで参りますのでお願いいたします。
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