ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻) 作:Edward
(ヴェルダンでもキンボイスを生存させるなど、既に変えていますが・・・。)
カルトの拘束はクブリの伝心魔法によりレヴィンに報告されシレジアに衝撃が走る。
大使を拘束まで行うアグストリアはもう大陸協定にすら規律違反を行っているのだ、レヴィンはカルトなら転移魔法で逃げ帰るかと考えていたがそれは浅はかな事と後悔する。
カルトは誰よりもシレジアに忠誠的な男であったのだ。例え協定違反した相手でも大使が任務放棄をする事はしないだろう、転移をせず状況を見定めている筈である。
「カルト、すまない・・・。」フォルセティの魔道書を握るレヴィンは自信に怒りをぶつけるのであった。
クブリとマリアンはエバンスに戻り状況の報告をシグルド達グランベル軍へ伝える事となった。同盟軍とは言え、両国に対して盟約を行っているシレジアはここでは不利でしかなかったのた。
ある者は勝手な行動を起こしたカルトを罵る者もいれば、アグストリアとグランベルの間を蝙蝠のように取り繕う者に手を差し伸べる事は出来ないと嘲笑いを交える者もいた。
マリアンはその侮蔑に肩を震わせて剣の柄を何度も握るが、その中でエスニャは毅然とした態度で持ってその言葉を受け続けていた。
その姿にマリアンは共感し、クブリに続いて甘んじて受ける事となった。
「そこまでだ。」シグルドの一言で場は静まり返る。
そこには各諸侯は立ち上がり、場の収拾に入る。
グランベルの騎士達にはシレジアの裏切りに見えるがそれは政治的な一面を見ない者達である、内外の事情に明るい諸侯達はその一面も見えているがおいそれと彼らの意見を聞かないわけではない。腹の中を出し尽くした頃合いを測りシグルドは私罪の紛糾になる前に止める形にしたのであった。
しかしこれを思いついたのはシグルドではない、アグストリアに囚われになっている問題のカルトである。
クブリの伝心により予想される事を予め説明し、対処を見出したのである。
ここで議論を間違えば反グランベルを表明したアグストリア軍と真っ先に剣を交える事になる、士気の低下は致命的になるだろう。
前回の戦闘は統率の怪しいヴェルダン軍であったが、アグストリアは大国であり優秀な騎士団を有している。
些細な綻びも許されない状況であるからこそ、カルトは体勢の立て直しを進言した。
「確かに、シレジアのカルト公はシレジアの大使を担ってアグスティに向かわれた。それはシレジアにはアグストリアとの同盟を結んでいたからだ、その確認の中で捕縛されただけで決してグランベルに対しての裏切りではない。
しかしながら、残念だがアグストリアとグランベルは同盟ではなくなった今カルト公を助ける事は出来ない。
と、いうのが普通である。」
場がざわめく、この先何を言い出すのか友であるキュアンは想像が出来ていた。彼には騎士道精神よりも大切な物を持ち合わせている、それがカルトを救出に向かわせるのである。大国のアグストリアと戦争になり、隣国にいるエルトシャンと対峙する事になってもその決意は揺るがない。
「カルト公には恩義がある。
彼のした事はグランベルにとっての不利があろうとも、彼の恩義を無にする訳にはいかない。
私はアグスティに向かう、一緒に戦ってくれないだろうか?」
シグルドはその一言を言うと場から翻し城外へ向かう。マリアンとクブリ、エスニャにフュリーも続いていく。
各諸侯も加わり、あたりは混乱するものの参加に反対した者も最後には加わっていくのであった。
「お待ちください!陛下!」願いも虚しくグランベルに進軍を諫めようとしたエルトシャンはシャガールの怒りを買い、地下牢に幽閉される事となる。
ラケシスの言葉を思い出すが、騎士であるエルトシャンは正面から王に進言する事しか出来ないでいた。
さらに事態は悪化してしまう。アグストリアには穏健派はエルトシャンだけであるが為に玄関口であったノディオンは空き家状態になっていた。主力であるクロスナイスはアグストリアの北部に駐留し、海賊掃討の任務についていたのでエルトシャン投獄の報を聞く事は無くノディオンは孤立してしまうのである。
ノディオンに残された僅かな兵と、エルトシャンの妹君であるラケシスが投獄の報を受けて隣国のハイラインに警戒する。
ハイラインのエリオットはウェルダンのいざこざにてノディオンと交戦し敗走した事を根に持ちラケシスに対して異常な固執を持っている、攻めてくる事は目に見えていた。
「エバンスに駐留しているシグルド様に救援を求めてはいかがでしょうか?」
困惑するラケシスに助言する剣士、イザークのホリンは提言する。
「そうしたいのは山々ですが、アグストリアはグランベルに対して反抗勢力として明言したばかり。シグルド様にお願いして兄様の立場が一層悪くなればその場で処刑されてしまいます。」
「確かに、仰る事は分かりますがここで後手を踏めばノディオンはハイラインに制圧されてしまいます。
まずは救援を求めましょう、エルトシャン王は隠密を出して秘密裏に救出しましょう。」
「そんな事が可能なのですか?」
「私の友人に可能な者がおります、それに賭ける価値はあると思われます。
それに、あの城にはもう一人私の友人が囚われています。
あの者も救出しなければなりません。」
「シレジアのカルト公ですね。あの方も、シャガールに囚われてしまっていると聞いてます。
私もホリン様の提案に乗らせて頂きます、このまま手ぐすねを引いていても何も始まりません。ここは攻めなければなりませんね。」
「さすがエルトシャン王の妹君、ご理解頂けて恐縮です。
すでに隠密の者はアグスティに向かっております、いい報告をお待ちしましょう。」
使者として来訪した者を牢に放り込む事は出来ないアグストリアは客室であろう一室に歩哨を立たせ、罪人とは違う対応が取られていた。
カルトはここに入室して丸一日になるが食事は定期的に運ばれ、排泄も歩哨に要求すれば拒否される事は無かった。
カルトは再三レヴィンから伝心魔法にて脱出するよう忠告されるがまだ命の危険はない、情報を少しでも得ようとこの地に留まっていた。
イザークでの反乱から始まり、ヴェルダンの裏切り、そしてアグストリアの体制の反転。各地で出会った暗黒教団の暗躍にカルトはようやくその最前線に辿り着いていると判断した。
今は少しでも情報がほしかった、今シグルドの妻であるディアドラにはマイラの血が流れている。その血の渇望はカルトにも納得がいくが今動いても暗黒神の復活は成し得ない、彼らも算段があるから動いているはずなのだが一向に読めないでいた。
カルトは与えられた部屋で風の魔法を応用して城内の空気の振動を傍受していた。静かな場所で精神を統一し一定の魔力を放出し続ける為、普段は使用できないがここでなら使用可能である、一般の兵士がが見ても瞑想しているだけと判断するだろう。
その傍受にてエルトシャンの投獄の情報が入り、カルトは行動に移す事を決める。
「さて、どうしたものか。」カルトは集中を解きつぶやいた。
単純に脱出するだけなら容易いが、歩哨している兵士に気付かれずに行動する事が重要であった。
歩哨の兵士は一定時間置きに扉を開いて俺の存在を確認してくる、それ以外にも食事の配膳や差し入れもある。
あれを試してみるしかないか・・・、次は心の中でつぶやく。
カルトは魔力を発し、再び集中を始めた。
光と風の魔力を応用すれば可能と判断したが実際効果を発揮できるかどうかは疑問符であった、光の魔法で一定空間の光の屈折を捻じ曲げるプリズムを作り出し、風の魔法でその一定空間の空気濃度に変異を付け幻を作り出すという複雑かつ高度な作業にかかりだした。
光魔法で一定空間に盲点とも言える場所を作り出し、蜃気楼を応用して自身を投影し続けるという事である。
それにより違和感なく、自身があたかもそこにいるという錯覚を作り出す事ができるとカルトは思いついた。
複数の属性を同時に使用する作業は熾烈を極め、一度では成功しない。
カルトは何度もそれに挑戦し、ようやく成功できたのは4度目であった。魔力を無駄に消費し、行動中に魔力切れになる可能性もある。
覚悟を持って、そっと城外の窓を開くのであった。
エバンスから一気に躍り出たシアルフィ軍はアグスティへ急ぐべく、騎馬部隊を全速させる。
カルトを救出するという決断をした以上手遅れになる訳にはいかない、アグストリアの諸国が動き出す前に一気に攻め上ると決断したシグルドは考えたのである。
一番の杞憂はノディオンのエルトシャンであった、彼はシアルフィの軍勢を見てどう判断を下すのかシグルド一番の懸念材料となっていた。彼とは戦いたくない、それはキュアンも同じである。
シグルドはノディオンに差し掛かった時、先陣はレックスやキュアン、部下のアレクとノイッシュに任せて単騎でノディオンを目指さんとさらに速力をあげた、本隊はここでアグスティへと向きを変える。
手には戦いの意思がない白い旗を上げ、エルトシャンと会談を求めんとしていた。
そこにシレジアの天馬騎士団も続く、フュリーはクブリとマリアンを乗せシグルドの後を追い始めた。
カルトの命によりアグストリアと戦う事を禁じられたシレジア軍はノディオンに赴いて、エルトシャンの答えを頂きこうとしていたのだった。
ノディオンに到着する前にシグルドはその異変に気付く、シグルド単騎と飛空単騎とは言えノディオン側からの警戒は薄くここまで接近しているにも関わらずノディオン兵が出てくる事は無かった。
ノディオンでも何かあったのか、シグルドは疑問に思った時ようやくノディオン側より数騎の騎士が出てシグルドの前で馬を御して地に降り立つ。そこにはラケシスも連れ添われていた。いよいよ只事ではないと感じる。
「ラケシス、どうした?ノディオンに何かあったのか?」
シグルドは馬に降り立つなり、ラケシスの元により挨拶などは一切なく質問する。
ラケシスはここまで気丈にしていたのだろう、彼女から頬を伝う涙が溢れ出す。
「シグルド様!エルト兄様がアグスティに囚われました。
お願いします、兄様をお助け下さい。」
「なんだって?なぜだ、なぜあれ程の男が囚われなければならないんだ。」
「兄様は真面目すぎるのです、単身アグスティに赴いてシャガールを諫めようとして怒りを買ったのでしょう。」
「そんな事があったのか。私もシレジアのカルト公がアグスティに囚われたので進軍しようとしていたのだ、ノディオンに攻撃の意思が無い事を伝えようとしたのだが・・・。」
「シグルド様」さらにラケシスの配下の騎士が進み出る。
「エルトシャン王の不在を狙ってハイラインのエリオットがこちらに進軍してきています。
今ノディオンのクロスナイツは遠征しており兵力がございません、ご助力願う事可能でしょうか?」
「ノディオンも危機が迫っているのか・・・。
ラケシスそんなに泣かないでくれ、君に何かあればエルトシャンに顔立てが出来ない。彼と私にはいかなる時でもお互いの窮地の時は助けに行くと約束している。
君もノディオンも、エルトシャンも、必ず助けて見せる!」
「シグルド様・・・、ありがとうございます。」彼女は笑みを浮かべてシグルドの助力に感謝する。
気丈に振舞っていたがその重圧に潰されていたのだろう、足元が覚束なくなっていた。
「ラケシス様、申し訳ありません。シレジアはこの度の進軍にてアグストリア軍と戦う事は出来ません。しかしながらここでじっとする事も出来ません、何か私達にできる事はありませんか?」
「あなた達はシレジアの?心中お察しします。ですが今あなた達にできる事は・・・。」
「そうですか・・・。」フュリーは落胆したけた時、相棒が語りかける。
《フュリー、北の方に森がある。そこで人間の叫び声が風に乗って聞こえてくるぞ、助けを求めているように聴こえた。確認してくれ。》
《う、うん。分かったわ。》
「ラケシス様、ここから北の方に街があるのでしょうか?そこで、救援を求めていると情報があるのですが・・・。」
「北ですか?
北の台地と呼ばれる開拓の村々が点在してます、イムカ様が国力を取り戻す事に成功した地です。まさかあの地を荒らしている者が!」
「ラケシス様!私達にその地へ向かわせて下さい。台地でしたら私達飛空部隊ですぐに向かえます。」
「お願いします!あの地が荒らされれば民が飢えてしまいます。フュリー様、アグストリアの民を代表してお願いします。」
ラケシスの懇願にフュリーは笛を吹いて一団に知らせる、フュリーは相棒に飛び乗って向かおうとする、その後ろにマリアンは飛び乗る。
「マリアンはクブリと一緒にここに残って・・・」
「私も行きます!台地に着いたら自力で降ります。」
「馬鹿な事を言わないで、地の利はあちらにあるのよ。ここは飛空部隊の私達に任せなさい。」
「賊には弓兵もいるかも知れません、私が地上から援護します。」
二人は意見を譲らない、睨み合いは続くが相棒は時間が無い事を理解している。背中に二人を乗せているのでそのまま飛空を始めた。マリアンは微笑み、フュリーは落胆する。
「マリアン、絶対に無理をしないでね。」一言釘をさすので精一杯であった。
シグルドは本隊を呼び戻しノディオン城北西に陣を張る、騎馬部隊の全速でここまで来たので徒歩部隊はまだ到着していない。相手の規模は不明だがここで足止めを中心に交戦し、徒歩部隊の到着を待つ事にする。
シアルフィの騎馬部隊に、キュアンの騎馬部隊、レックスの騎馬部隊は隊列を組み待ち構える。
「フィン、ここから正規兵との戦いになる。気を抜くな。」キュアンは隣にいる部下であるフィンに話しかける。彼は腕はいいのだが実戦経験は浅い、遠縁の親戚にあたり面倒を見ていた。
「はい!」
「騎馬同士の戦いにおいて相手の獲物に気を付けろ。槍なら突撃をさせるな、剣なら距離を取って戦え。訓練通りに動けば大丈夫だ。」
「わかりました、ハイラインに我らの力を見せてやります!」フィンはぎこちないが自身を鼓舞し、笑顔を見せるのであった。
数刻の後、ノディオンでは蹄の怒号が飛び交う戦場となる。ハイラインの騎馬部隊と混成部隊は激しい攻防の後、互いに後列にあった歩兵部隊も加わり混戦と化す。
優劣を付けたのがアゼルの魔道士部隊であった。
ハイラインの後続部隊は重装歩兵のみで構成されていたので魔法攻撃を受けたハイライン軍のエリオットは敗走する事となった。
ノディオン城陥落の危機を救ったシグルドはノディオンから賞賛を受ける事になるが、アグスティではシグルド討伐に乗り出す事となるのであった。
カルトとエルトシャン救出
フュリーとマリアンの北の台地の活躍
ハイライン城でボルドー、エリオット攻略
ここに、オリジナルアレンジを入れて書いたら何話かかるのだろう・・・。