ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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エバンスの城内戦闘を描きました。

かなり、表現が難しく無理のある展開かと思いますが暖かい目で見ていただけたらと思います。


演舞

エバンスでの防衛戦は苛烈する。

クブリの指示の元でシレジアの魔道士部隊が空から侵入を試みるドラゴンナイトに風の魔法で迎撃し、ドラゴンの背に乗せられ城門から侵入を図るトラキア兵はジャムカの部隊が死守する。

 

ドラゴンナイトは約15体、その背に乗り降り立ったトラキア兵は40名程であるが空と地からの攻撃にさらに部隊を分断されてしまい苦戦する。

城内には負傷兵や、救護兵などの非戦闘員が多く戦えるものは少ない。この度のアグストリアの戦いはほぼ全軍を投入さなければいけない程、時間と人数の戦いだった。騎馬兵が圧倒し、徒歩部隊が制圧する形でアグストリアを進んだので守備に回す部隊が極端に少なくなっていた。

ノディオンの山林にいたジャムカの部隊だけでも戻り着き、守備に回れた事だけでも御の字である。

 

トラキア兵を弓で屠っていくがジャムカの部隊は先のヴェルダン戦にて僅か11名にまで減っている、いかに少数精鋭といえどもこの戦力差では地上戦はトラキア兵に軍配が上がるのは時間の問題であった。

 

「ジャムカ様、このままではここは落ちます。一先ず引いて城内で迎撃しましょう。」

 

「・・・・・・致し方がないな、城内なら狙いやすい。

撤退するぞ!」ジャムカの号令で弓を射掛けつつ、後退準備に入る。一気に雪崩れ込まれるとこの前線を突破する可能性がある、奴らに後退を見せない様攻めの姿勢を維持に努める。

 

 

 

城門付近ではその駆け引きがなされる中、とうとう辿り着いたホリンとアイラは剣を抜き放ちトラキア兵の群集に飛び込んだ。

「な、なんだ!」トラキア兵が突然の訪問者に戸惑う中、二人は一瞬にして三人を斬り伏せる。そのあまりの早業にトラキア兵は誰一人として反応出来ず、斬り伏せられた3名は痛みを感じる事なく絶命したであろう。

 

「なんとか間に合ったな。」ホリンは隣の相棒に囁く。

 

「ああ、ここからはおしゃべりは無しだ。ここを突破して、上に行くぞ!」

 

トラキア兵が構え出す時には二人は再び行動に移す。アイラの神速の疾さにトラキア兵は次々なす術もなく倒れ、ホリンの前に防御は無駄であり剣ごとトラキア兵を両断してしまう。

二人はヴェルダンの頃よりさらに剣に磨きがかかっており、トラキアの雑兵如きで二人を止める事はもはや不可能であった。

なんとか背後を取り、攻撃に移ろうとしても後方にいるジャムカの部隊が弓での支援を行い二人は目の前の敵にだけ集中できる。

 

「ホリン、ここは私に任せろ!上のドラゴンナイトを倒すにはお前の力が必要だ。行け!」

アイラは残りのトラキア兵、約20名を相手にすると宣言する。ホリンは逡巡するがアイラの実力はよく知っている、一つ頷くと城内へ飛び込んだ。

 

「同行しよう!」ジャムカもホリンと並走する。この場はジャムカの部隊とアイラに任せ、二人はバルコニーのドラゴンナイトを相手取る為に向かった。

 

最上階では魔道士部隊による牽制でドラゴンナイトがバルコニーに近寄る事が出来ずにいた、しかしトラキア側の動きには動揺はなく執拗に近づいては魔法を発動させると距離を取るを繰り返すだけであった。

 

ドラゴンナイトの面々にとって魔法による攻撃を嫌う、天馬と違い圧倒的な攻撃力を誇るが魔法防御は皆無に近い。

まともに受ければドラゴン諸共やられてしまう事もある、それ故に対処方も熟知していた。

今回に置いては、魔法を誘発させて魔力切れを狙っているのは明らかである。しかし魔法を使わねば侵入を許す事となる、そのジレンマがシレジア魔道士部隊を苦しめていた。

隊長であるクブリはその打開策にエルウインドにて一掃を狙ったが、一体ようやく撃墜できたに過ぎなかった。

 

「クブリ様!一部の魔道士が魔力切れを起こし始めました、あと数分と持ちません。」部下の魔道士が息も絶え絶えにクブリに報告する。

 

「先程階下にホリン殿とアイラ殿が入城してくださった。あと少し持ちこたえるだけでいいんだ、皆最後の魔力を振り絞れ。シレジア魔道士の意地を見せるんだ!」

クブリは珍しく大声を張り上げる、彼はここにカルトが来ない事を知っている。いや、ここに来ない様に言ったのは他ならぬクブリである。

 

今この場で運命として諦めた者はいない。非戦闘員でさえも武器を持ち、癒し手でない者も命を必死でこの場に繋ぎとめようとして重傷者の看病をしている。

頼りないかもしれない、この地を奪われるかもしれない。しかし今は一刻も早くアグスティを攻め落とし、この醜い内乱を終わらせて欲しい願いが皆にある。カルトを前線で活躍させる事が出来れば、シグルドを助け早期解決に結びつくと信じていた。

 

《ここは、この地にいる者で防衛して見せる!》

この気概に水を差す事は出来ない、クブリはそう感じカルトにそのまま前進を願った。

 

 

 

城内の謁見の間ではエーディンとディアドラが次々と運ばれてくる怪我人の看護に当たっていた。もともと負傷兵の治療に加えこの度の戦闘にてさらに負傷者が続出する、エーディンは連日の治療にて気力を失い魔力も枯渇しようとしていた。ディアドラの魔力はまだ残っているらしく、リライブを続行している。

 

(なんて魔力量をもっているの、クロード様と同じ?いえ、それ以上かも・・・。)

エーディンは感嘆する。彼女も聖痕を持つ聖戦士の末裔であるがウルは魔法に秀でた者ではない、言えば魔法の才は常人と変わりないのだ。

クロードやアゼルの様に魔法の才が聖戦士からくる者を凌駕するディアドラの魔力にエーディンは疑問を持つのであった。

 

「重傷者です!エーディン様、ディアドラ様お願いします!」さらに一人瀕死の者が運び込まれる、エーディンは枯渇する魔力を振り絞りリライブを放つ。

 

(もう少し、もう少しだけでいいから。お願い!)

彼女の願いも虚しく、リライブの光はもうライブ以下の効力となる。儚い光は今にも消え失せ、彼女の心を折ろうとしていた。

ディアドラも今瀕死の者の治療に手が離せない、エーディンの絶望はこの者の命運に直結する。彼女はもう一度高らかにリライブを放つ、僅かな光が再び重傷者を照らすが搔き消えようとしていた。

 

この絶望的な野戦病院に全くそぐわない状況が訪れる。突然の歌声が謁見の間に広がる、エーディンはその声量の方へ向く。

謁見の間にある玉座の前に一人の少女が立っていた、とても外で歩けない露出の高い衣装を纏った少女が歌を歌い踊りを踊り始めていた。

不謹慎と思えるその行動だが、エーディンを始めその場にいる者全てに変化があった。

 

それは『心』である。

絶望的なこの状況下でも勇気が湧き、挫かれた心が癒されていく。重傷にて呻き、苦しんでいる者達までその歌を聴き静まりかえる。

 

そして『精神』

尽きかけた魔力が徐々に癒されていくような感覚、エーディンのリライブは息を吹き返し淡い発光を取り戻す。

 

当初は不謹慎極まりないと思っていたエーディンはいつの間にかその歌と踊りを続けて欲しいと思うようになっていた。

 

(彼女は一体?)

 

そんな不思議な踊りをディアドラは知っていた、精霊使いのごく一部の者が使用できる踊りの中にマジカルステップと言われる心身に影響を与える魔法がある事を・・・。

この踊りを使える者は魔法の才と、踊りとして表現できる才能を併せ持たないと出来ない特殊魔法である。あの年で扱える彼女には特殊な能力を別に秘めている事を感じ取っていたのであった。

 

 

トラキア兵のドラゴンナイト、今回の隊長に任命された男は魔力の枯渇を狙ったヒットアンドウェイを繰り返しここらが攻め時と感じ取る。

先程まで勢いよく飛び出してきた風の魔法は現在途切れ途切れであり、威力も数段弱まってきていた。もはや至近距離で受けても防御可能と判断した隊長は全員に総攻撃を命じた。

 

前衛の五体のドラゴンナイトが滑空してバルコニーの縁に鉤爪をかける、魔道士共は室内に逃げ込んだと隊長は思い後続のドラゴンナイトにも前進を命じようとした時、事態は一変する。

 

「トルネード!」

前衛五体のドラゴンナイトは地上から伸びる竜巻に巻き込まれた。その凶暴な風にドラゴンですら逃げ延びる事は出来ず、ただきり揉むように内部で蹂躙されている。

そして竜巻内には無数の真空の刃が飛び交い、ドラゴンはずたずたに切り刻まれていく。

 

クブリの最後の力を振り絞った悪足搔きであった、半数のドラゴンナイトを屠ってもまだ半分残っている。魔道士を抹殺するには充分な数である。

しかし、ここで半数倒せば後に訪れるホリンとアイラが有利になる。彼等ならきっとここを護ってくれる、その想いを胸に最後の力を使った攻撃であった。

クブリは魔力の枯渇で立っていることもできず、その場に倒れる。トルネードを使用中に部下を階下にも撤退させてある、血を流すのは自分だけでいい。薄れゆく意識の中彼はそれに満足し、瞼が閉じられていった。

 

(カルト様、ご武運を・・・。)

 

 

トラキア兵ドラゴンナイトの隊長はその後に魔法の追撃は無くなった事で最後の攻撃と判断する、半数を失いトラバント王より厳しい叱責を受けるであろう。

 

これ以上叱責を受ける訳にはいかない、隊長は我先にとバルコニーに向かう。やはり追撃の魔法は来ない、この怒りを敵兵に向かわせるべく速度を上げる。

 

 

バルコニーに到着した隊長は、すぐ内部で倒れているクブリを見つける。

 

「貴様か!よくもここまで我が兵を殲滅させてくれたな!」ローブを掴み持ち上げる。クブリはまだ15になったばかりの少年、隊長はその重みでまだ成人ではないと判断しローブの頭部を破る。

 

「まだ子供ではないか、あの魔法をこいつが?

・・・子供だが容赦はせん、死ね!」

隊長は鋼の剣を喉元に突き立てんとするが、その動作を止める。背中に冷たい金属を突き立てられ、恐ろしい殺気を放つ存在がいたのである。

 

「よく止めてくれた、感謝する。」

「貴様、何者だ。」隊長は背後の者に、少年を渡すと一気に後退し仕切り直した、受け取った者は兜を脱ぎその姿を表す。

 

「我が名はホリン、イザークの剣士。」

「イザークの?まさか、残党がこの地にいるとはな。」隊長は飛び込み、剣を交える。

 

ホリンはその力比べを難なく受ける、力の差が歴然でありトラキア兵は両手で押しているがホリンは片手で止めており空いた左手で拳打する。

隊長は強かに右頬を打たれるが、後退しバルコニーに戻る。待っていたドラゴンに飛び乗ると空に戻り、追ってきたホリンに突撃をかける。

 

「我はドラゴンナイト。卑怯とののしるなよ!」長槍を装備してせまる。

ホリンはその突撃に対応する、ホリンも走り距離は一気に詰まる。

 

長槍を突き出す隊長、ホリンはそれを下に躱す。上体を後方に逸らして槍を躱し、そのままドラゴンの下へ潜り込む。

 

隊長は取り敢えず、今回の突撃は躱しただけと踏んだ。

ドラゴンナイトを相手にする場合、ドラゴンではなく騎士を狙うのがセオリー。下に潜り込んでは騎士を狙う事など出来ない、そう思い込んだ。

しかし、隊長の思惑は間違いであった。今まで経験豊富であった彼もホリンの様な男を相手にしていなかったのだろう、彼の規格外を計算する事は出来ない。

 

「ぐはああ!」隊長はドラゴンの背から生える大剣を胸に受ける。ドラゴンはその一撃にバルコニーで咆哮をあげてのたうちまわり、動かなくなる。隊長はそのままバルコニーに叩きつけられ再び吐血する。

 

「なぜだ、硬い鱗を持つドラゴンを一撃で・・・。それも俺ごと・・・。」

 

「悪いな、俺の剣の前では硬さなど関係なくてな。」

ホリンは血で濡れた剣を二度振って落とすと再び背に掛ける。

 

「イザークの、秘剣というやつか。」

「卑怯とののしるなよ。」

 

「ふっ、見事だ。貴様にドラゴンスレイヤーの異名を贈ろう。」隊長は頭を床に落とす、そしてその頭は二度と上がる事はなかった。

 

ホリンは周りを見渡す、十数体いたドラゴン姿を消しており今や上空には一体のみとなっていた。

そのドラゴンも攻撃を仕掛ける様子はなく、上空に停滞している。一体状況はどうなった、ホリンは見上げて警戒を続けるのであった。

 

 

 

時を少し遡る、トラキアの隊長がホリンと戦いを始めた時残りの4体は後に続いた。

しかし、それを止める者がもう一人いた。

ヴェルダン国において右に出る者がいない弓の名手、サイレントハントの異名を持つジャムカである。

足音を殺して、ホリンと隊長の戦いをすり抜けた彼は後続のドラゴンナイトに狙いを定めた。

バルコニーにいるドラゴンの存在に気付き、跳躍で隣の小さなバルコニーに飛び移ると先頭で滑空する騎士に無慈悲な一撃を見舞う。

 

心臓を撃ち抜かれた騎士はドラゴンの背より落ち、ドラゴンは野に帰っていく。

 

残り三体は一度旋回し、敵襲に警戒する。

それでいい、ホリンの邪魔をしなければ無理に矢を放つ必要はない。ジャムカは再び跳躍して同じ場に残る事を止めた。

 

残り三体は矢に射抜かれない様にとどまる事を止める、作戦の立て直しを考え始めていた時に事態は動く。

 

一体のドラゴンに突如少女が乗り込んだのだ、騎士は不意を突かれ腰の剣に手を当てるが少女はそれよりも早く一閃する。騎士はその一撃を交わすがドラゴンの背より落ちていく事となる。

 

「な、なんだと!」2体のドラゴンナイトは驚き、攻撃する事も忘れてしまう。その間少女は野に帰ったドラゴンが暴れ出し始めてその背から飛んだ。

どこに飛ぼうとするのか、もちろん少女の飛ぶ先は真っ逆さまの地面のみである。

その瞬間に上空より滑空するドラゴンが少女の足元に追い付くと背に乗せる。

 

「な、あれは・・・パピヨン様のシュワルテ!」

「ま、まずい。あのドラゴンは・・・。」

彼らが恐ろしい事を口走る前にその事が起こる。

少女のドラゴンは顎を開くと、燃え盛る火炎が彼らに浴びせられた。

ドラゴン諸共、直撃を受けた2体のはそのまま地面に落ちていくのであった。

 

「あれは、確かカルトのとこにいる女だったな。」

ジャムカはつがえていた弓を元に戻し、安全となったこの地を示す信号弓を空に放つ。矢尻の代わりに穴の空いた特殊な先端の矢は「キュー」という音を立てながら勝利の合図を送るのであった。

 

それは、ホリンが隊長を倒し終え上空を見上げて間も無くの事であった。




すべてのドラゴンが炎を吐けるわけではありません。
飛竜は本当のドラゴンから飛ぶ事に進化し、本来のドラゴンから見れば劣化種とされております。

一部のドラゴンにかつての能力が残っている種もいます、今作ではパピヨンの飛竜がそうなります。
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