ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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非常に更新が遅くなってしまい申し訳ありません。

僻地に転勤!冗談じゃない!!
二人目の子供生まれたばかり、家も購入したのに!!

結局転勤するする詐欺にかかって精神がボロボロです・・・。
愚痴すみませんでした・・・。



海戦

オーガヒルの根城を制圧したシアルフィ軍はすぐ様海岸に移動しシレジア軍船の到着を待ち続けた、約束の日は過ぎ去り日が落ちようとした頃ようやく待ち続けている船はオーガヒルの残党に襲われている事に気付いた。

夕闇の中でチラチラと光る灯火が見えた事により、遠目が効く者の報告で明らかとなった。

しかしながらあちらの戦場は海上、オーガヒルの船を操舵する技術も戦闘訓練もないに等しいこの一団では参加する事は被害を大きくする事だけであり参加する事は無謀であった。

 

現在オーガヒルの根城に辿り着いた一団はもともと攻略に向かっていたベオウルフの傭兵騎団にアイラなどの混成部隊、アゼルの魔道士部隊、ミデェールの弓騎士部隊、シレジアの天馬騎士部隊に魔道士部隊、ジャムカのハンター部隊、そして後から追いつきつつあるシアルフィの騎士団である。

レックスの斧騎士部隊とキュアンの槍騎士部隊はマディノ周辺の村々を襲撃していたオーガヒルの海賊を打ち倒していた為まだこの地には到着していなかった。

 

レックスとキュアンの部隊はかなり奥地の村を救出したのでオーガヒルの根城に向かう事はできないでいた、それに今はマディノ周辺は戦場と化しており近づく事は危険である。どちらの軍とも接触すれば要らぬ緊張を生んでしまう為、やはりカルトの言う通り対岸までシレジア船を付けてもらい退避する事が良好と判断したのである。

この地は岩礁が多くあり下手をすれば即座に座礁してしまう、船を停泊する場所は無いに等しいが助けた村の情報を頼りにその地へと移動しているそうであった。

 

ベオウルフはどうしたものか、と海を眺めていたが頭上に羽ばたく一頭の天馬、マーニャを乗せて戦場へと向かうのであった。

さらにマーニャの背中にはクブリもいる、シレジア船の危機に彼らはいてもたってもいられないのであろう。後から続々とシレジアの天馬部隊は魔道士を搭載してマーニャに続いていく、その白い軌跡は夕闇の中でも映える光景であった。

 

「隊長さん、いいのか?独断で救援に向かって行ったのでは作戦も何もあったものではないぞ。」ベオウルフはアイラに言われ振り返る。今回のオーガヒルの攻略を任され、この混成部隊を指揮していた彼にとっては困惑ものである。

 

「いいんじゃないか、やっぱ俺たち傭兵者が指揮する立場なんて性に合わないさ。俺たちは勝手にドンパチやって、割に合わない仕事はしないが信条の傭兵・・・、国を慮っての彼らを指揮する事なんて滑稽な事はあってはならないさ。」

 

「しかし、その信条を逆らってまでよく今回のオーガヒル攻略の指揮権を受けたな。心境の変化か?」アイラは馬上のベオウルフを見る、彼の表情から答えを伺える事はないがその返答に興味を持った。

 

「別に・・・、気紛れさ。あのシグルドという男、以前まで敵側にいた傭兵に指揮権を与える彼のやり方に興味が出ただけにすぎない。」話は終わりとばかりに彼は馬の腹を蹴って駆け足をさせた。

背中を見送りつつ、アイラは後陣の非戦闘員の宿場が気になり振り返る、預けた子達は元気にしているだろうか。

もう少し、この窮地を脱したら今度こそあの子達を見守ろうと誓うアイラである。

「馬鹿野郎・・・。」ベオウルフは小さく呟いた。

先程のアイラの問いの真の答えを出しそうになった彼自身の戒めであった。

 

 

シレジア軍船と海賊の競り合いは厳しい戦いと化していた、地上戦と海上戦の戦い方は根本から違いがある。

当然の事であるがそれは海の上という事だ、海の戦いを熟知してしているのは海軍でも、漁師でもなく海賊のみである。

海軍は戦い方は知っているが、海を熟知していない。漁師は海を熟知しているが戦い方を知らない。海賊は縄張り争いで戦い合い、海を熟知している。

つまり、正面から同じ火力で戦えば海賊には勝てないのだ。

 

シレジア軍船は主にガレー船、市民階級の低い男共を雇い人力でもって航海する。帆船の操舵には高い技術と経験が必要とされる為、今回のように時間が限られている時はガレー船の方が時間が読みやすい。

一隻の船は小さくなるが複数の船団でオーガヒルへと向かっていた。

 

対する海賊船は帆船とガレー船を複合した船である、それは彼は海賊は一人一人が高い技術を持っている為ガレー船のように船を漕ぐ事も帆船技術で操舵する事も可能な事を示していた。

シレジア軍船の人夫では、船を漕ぐ事は出来ても帆船技術を持っていない事がその差を示していた。

しかし海賊戦は一隻、小型の船を積んでいるとはいえ戦力としてはシレジア軍船に軍配が上がるように見えるが海上の戦いはそれを覆す不覚的要因がある。多少の戦力差など気にする事はないとばかりに海賊船はシレジア船に突撃の姿勢を崩さなかった。

 

シレジア船は主に投石器や大型の弩の射出による遠距離攻撃を主とした戦術を取る。長年海賊船との戦いで苦しんだのは衝角を船底に当てられ排水処理に追われてしまう事である、戦闘員ですら処理に追われると白兵戦も覚束なくなる。

それを恐れたシレジア船は近付かれる前に敵船を沈める事に技術を注ぎ、海賊船はいかにその攻撃をかい潜り敵船の船底に穴を開ける事に操舵技術を磨く構図となったのだ。

なぜそのように技術が明確に別れたのかは、海賊は敵船の積荷を奪う事に執着している事である。

敵船に乗り込めば戦いを常とする軍人がいる。まともに戦えば海賊の不利であるが衝角を当て余裕をなくしている状態ならば、海賊でも軍人を圧倒できるからである。

 

その違いが今回の開戦にも繰り広げられようとしていた。

シレジア船より、一斉に投石器から投石と固定式弩から巨大な矢が射出され始める。

すでに帆をたたみ、人力での侵攻に切り替えている海賊船はその見事な操舵で回避を始めていた。

シレジア船から射出される投石の角度をとくに目のいい海賊が捉え、船長が指示が伝声管にて動力部に伝えられる、略式化されたその命令に左右にいる海賊員はすぐさま漕ぐペースを各々変えていき船の進行方向を即座に変えるのである。

 

投石器や大型の弩は性質上大量に積み込めない。故に射出者も慎重にに計算し、先程の射出して着水した地点より誤差修正を行い次弾を射出するので連写出来ない。

海賊船はその間に敵船の計算を翻弄する為に不規則な動きを作り出す。出来るだけ直進しつつ、である。

 

お互いの緻密な計算と思考の読み合いにより戦場の第一線が始まっていく、シレジアの第3射出が終わった時にようやく船首部分に弩が当たり進行速度が幾分か緩んだ様に感じた。

しかしもう海賊船はすぐそこまで迫っており、先頭のシレジア船に正面から突っ込んだ。

 

船底に穴が開けられたのか甲板にでていた船員が船内に消えていく、すぐさま海賊船より橋が架けられシレジア船に乗り込んで行く。

 

「てめえら、手当たり次第奪え!抵抗する奴はやっちまえ!」

怒号を上げながら襲い来る海賊共にシレジア船員は彼ら行く手を塞ぐことは無かった。

衝角を当てられた時点でこの船はもう海賊の所有物である、無用な抵抗をして殺されない様に下船する事がシレジアのルールと化していた。排水しても無駄と踏んだ彼らは小舟を出して他の船に乗り移る作業を進め始めていた。

 

海賊船はその場に留まれば再び投石器の餌食になる、すぐ様制圧した船に海賊を乗せ終わると次の標的に目をつける為動き出した。

海賊船も多少の被害が出ているがまだまだ航海可能である、船首部に突き立てられた巨大な鏃は海に捨て近くにいる船へ突撃をかけだした。

船長は甲板でこの度の戦いは次の船の襲撃で潮時と捉えていた。

二隻の軍船から物資を奪えばそれなりの蓄えが出来る、後はオーガヒル周辺に夜から吹き始める大陸風を使って帆で逃走すれば追いつかれる事はないと踏んでいた。

後一隻・・・。彼の欲目に眩んで潮時を間違えたのか、相手の戦力を見誤ったのか、どちらにしても海賊船の良い所はここまでであった。

 

 

一番後ろに控えるシレジア船より出撃したファルコンナイトのフュリーと我先にとオーガヒルからここまで向かってきたドラゴンフェンサーであるマリアンが参戦し、その後続々とマーニャのシレジア天馬部隊とクブリの魔道士部隊が増援されて沈没する事となるのである。

 

マリアンは疾空するドラゴンから飛び降り甲板にいる海賊をクッションに剣で串刺しにしつつ降り立った、その衝撃に海賊は吹き飛ばされるがマリアンは剣を離さず着地の衝撃を全て海賊にぶつけたのだ。

その凄惨な殺害に、すぐ様周りの海賊共が色めき立つが彼女の目は冷ややかに見据えた。

たじろぐ漢共はなんとか数の優位を全面に立てて一斉に襲いかかるが、マリアンの実力からすると数で優位に立てる程の戦力を持ち合わせていないのである。

横薙ぎ一閃で数人の海賊が倒れる、跳躍すれば彼らの頭上を越えて距離を取り直せる。どれだけの数が襲ってこようともマリアンにとってはなんの不利でも無かった。

 

左手を上げると、頭上にいたシュワルテが大きく顎(あぎと)を開くと帆船の命である帆を焼いたのだ。

そのあまりの理不尽な炎に海賊達は戦意を失わせて行く、追い打ちをかけるように背後の空からは天馬の部隊。彼らは我先にと船から飛び降りていくのであった。

 

フュリーとの再会に嬉々とするマリアン、マリアンの成長に驚くフュリー、二人を見守るマーニャ・・・。クブリはカルトを中心としたシレジア部隊の成長に嬉しく感じるのであった。

 

クブリの魔法による伝心でオーガヒルで待機する軍に船がもうじき到着する事が伝えられた事と、シアルフィ軍がオーガヒル行軍中にシグルド公子が姿を消した報告が同時にもたらされたのであった。

 

 

 

アグストリア本土、本陣まで撤退したエルトシャンのクロスナイトを殲滅に息巻いたランゴバルドは朝日が出る前からマディノへ向けて出陣した。

レプトールは後陣の守備と称して悠々と待機している、魔法戦士の多いケルプリッターより屈強なグラオリッターの方が掃討は早い事もあるが何よりランゴバルドはある種の戦争狂であるのだろう。

軍部を担っている事は実益を兼ねている、レプトールはそう捉えていた。

 

「くくくっ!しかしランゴバルドはよく私の思う様に動いてくれる、しかし奴にこの資源豊かなアグストリアを与えて私が貧しいイザークに就くのは少々気に入らぬ所だ。そろそろ、何か手を打たねばならぬな。」出陣中というのに天幕内には豪華な食事が運ばれており、まるでここが戦場ではないかの様な雰囲気であった。

スープも肉料理にも湯気が立ち上り、優雅な動作で食事を採る。

 

「レプトール卿!報告です。川の水が、一夜にして干からびました。」

 

「なんだと?」レプトールは最近の気象を記憶に辿る、天災による干ばつは無く数日前にも雨は降っていた。

川の水が干からびる事など無い、それに一夜にしてなど人為的でしか浮かんでこなかった。

 

「上流を調べる必要があるな・・・、しかし何の意味がある?」レプトールはさらに思考を拡大し始める。

 

「報告します!」再び別の近衛兵が慌ただしく天幕になだれ込んだ。

 

「騒々しいな、次は何が起きた?」

 

「はっ!ウェルダン王国のキンボイス王がエバンスに軍を派遣しました。」近衛兵の更なる報告に驚きを隠せなかった、レプトール卿はその報告に焦りを覚えてしまう。

 

「一体なぜこのタイミングでエバンスに兵を派遣したのだ!今グランベルの庇護の下で王になった奴がこうも早く軍を派遣するつもりなのだ。」

 

「現在の所エバンスに軍を派遣しただけで動きはありません・・・。エッダの騎士団は細心の注意を払っているそうですが、キンボイス王は軍事演習と名目で兵を派遣している模様です。」

 

「ウェルダンの自国とはいえ、エバンスに軍を派遣されれば我らは退路を断たれた状態に等しい。

・・・ヴェルダン国の軍は貧弱な蛮族共に等しいが、あの数は圧倒的だ・・・。」

 

「レプトール卿・・・。」近衛兵の言葉は既に頭に入ってきている様子はなかった、数々の不測の事態にレプトール卿ですらその思考処理は追いつかなくなってきていたのである。

しばらくの思考の末の結論は

 

「ランゴバルドの軍に追いつき早々にエルトシャンを片付ける!後方待機していればいつキンボイスが襲ってくるかわからない以上ランゴバルドと離れるのは厄介だ。」

 

「はっ!では出陣の準備を急ぎます。」

 

「川の件は如何したしましょうか?」

 

「その件は後だ!今はランゴバルドに追いつくぞ!」

レプトールは早朝の食事もそこそこに出陣準備を急ぐのであった。

 

 

 

キンボイスはエバンスの地よりアグストリアの地を一望する城の最上階のテラスにいた、手には地酒の酒瓶を持ち豪快に呷ると再びかの地を見続けるのであった。

 

「しかし無茶をされましたな、エッダの役人共の引きつった顔は忘れることできませんぞ。」

キンボイスが振り返った先にいるのは幼少から見守り、快楽者に身を落としてもなお側近として居座り続けた老兵が今は参謀としてなお付き従ってくれている。

カイルの尽力により極刑は免れ、一年以上グランベルの監視下に置かれてもキンボイスはその屈辱に耐え続けてようやく王として国民をまとめる事ができて早々の出陣である。

軍事演習とはいえエバンスに出陣して、大々的なこの行軍はエッダの役人は卒倒物の衝撃であっただろう。

 

「いちいち大げさな連中だ、攻め込んだって勝ち目など微塵もないのにな。」

 

「ほっほっほ!なかなか言いなさる御仁になられましたな。

・・・有事における挟み撃ち、さらに退路を断たれたストレスは相当なものでしょうな。」

老獪な参謀はキンボイスの横まで歩み寄ると懐から杯を取り出した、キンボイスはフンと鼻をならすと杯に持っていた酒を注ぐ。

 

「あんたに酔われたら俺が困る、これ一杯で我慢してくれよ。」

 

「私のような老人にこれ以上の頭脳の協力は酷というものです。これは王が決断した事・・・、私は後押しをしただけですよ。」参謀はその杯をひょいっと掲げるとゆっくりと、しかし一気に飲み干す。

キンボイスはそれに微笑み、習うとばかりに再び呷った。

 

「カルト、俺のできる事はすまねえがここまでだ・・・。後は貴様次第だ。」

 

「そうですな。これ以上の刺激はかえって逆効果・・・、彼らの天運に任せましょう。」

 

「ああ・・・俺には俺にしかできねえ事がある、このウェルダンを豊かな国にしてあいつらの支援してやることが最大の恩返しになると思ってる。

そして奴が提案するシレジアと貿易ができれば、この国はもっとよくなる筈だ。」

 

「王はすっかりカルト殿の夢に当てらてしまいましたな・・・。私も老い先短い身でありますが少しでもその夢の実現に近づけるよう粉骨しましょうぞ。」

空になった杯に掲げて豪快に笑う老いた参謀にキンボイスは感謝する、そして更生するきっかけとなったカルトの身を案じ続けるのであった。

 

 

ウェルダンの地は大規模な火災にて多くの森林資源を失う事となった。気の遠くなる時間をかけて作り出された自然の尊さを痛感する事がこの一年で起きた、大雨による水害と土流石による2次災害はその表れである。

それでもなおこの地で生きる民の為にキンボイスは活動をやめることなく再生に尽力する、始めは王に舞い戻るためのパフォーマンスとも言われていたが一向にその姿勢を崩さないキンボイスに人々は集まり手を差し伸べる者が出てきたのである。

彼らに2度と悲しい思いはさせない。キンボイスの誓いは今尚継続中であり、その為の夢の実現に協力を惜しむつもりはないのであった。

 




ベオウルフに未亡人、人妻属性はありません。
あくまでホリンへの仁義です。

彼はつらいマディノから一刻も早く出立させたい思いで先頭に立ってアイラを出立させたのです、漢だねえ・・・。

あれ?解釈間違えたらやっぱりNTRって奴ですか?

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