ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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ようやくイザークへ到着します。
もう1人くらい明るいキャラを出したいなあ。


一章 イザーク編
リボーの町


今俺たちは峠の頂点付近いるが連中はその先の頂上にいるらしい。ホリンはこのような事に慣れているのか慌てる様子はなく進める歩みは一行に淀まない、まるで襲撃者がいないかのような足取りである。

違いがあるのは右手に携えた大剣のみ、敵襲を明らかに察知しており人数の不利があろうとも抗い戦う意思を見せるホリンに待ち伏せている襲撃者の方がが慌ただしくなっていく。

ホリンの歩みに狼狽していたが接近されれば危険と判断した襲撃者の中で、弓兵らしき男が2名前に出て弦を引き絞った。

 

 

それが合図となりホリンは一気に距離を詰めるべく走り出す、やつらに動いている者をピンポイントで狙う程の技量はない。それに万が一にも当たるようなら俺の風魔法が弓矢を弾くことも可能だ、実際にその命中率が低い弓にあえて風で明後日の方向に逸らしてやり弓での攻撃は無意味だとういう事を証明してやった。

 

瞬く間に弓兵の懐に飛び込んだホリンは見事な横一文字の一閃をたたき込み2名の弓兵は昏倒する。

一瞬の目線で弓兵の戦闘不能を確認するやいなや敵兵の中心に躍りでる、8名の襲撃者が各々の獲物を持ちホリンを取り囲んだ。

俺はホリンに追い付き遠目より目配せする、奴の目は変わらず穏やかであった。

(こっちは心配するな。)

と言わんばかりである、悟った俺はこれ以上ホリンに参加してくる襲撃者を増やさぬよう立ち回ると決めた。

ホリンの情報では後方に5名の襲撃者が残っている、振り返り奴らを一掃して挟み討ちさせないように立ち回る事とした。

 

後方ではすでにフュリーが5名を相手にうまく撹乱させていた。弓兵がいるので距離を保つ為の高度を下げるわけにはいかないがカルト達の元にも向かわせないギリギリの間合いを保っている。その高度で襲い来る矢尻を回避しつつ天馬に括り付けていた手槍4本の内1本使用して弓兵の大腿に命中し受けた者は戦闘不能となったいた。

 

「エルウインド!!」フュリーが上手く襲撃者達を一箇所に引き止めていた場に上位魔法であるエルイウンドを叩き込む、後方にいたと思われる残りの4名を手加減した上位魔法の攻撃を受け後方に吹き飛ばす。

 

「なっ!何なんだこいつ、魔法を使うぞ!」後方にいた一人はなんとか岩にしがみついたようで驚きの表情をしていた。

 

「この姿を見て魔道士と思わないとはな、貴様らの命運はここまでだな!」

俺はショートソードを構えて盗賊のような軽装をした男に切りかかり男はシミターにて迎撃に入る。上段同士で切りかかった二本の剣は力勝負に持ち込むと盗賊風の男も力で押し切るそぶりを見せるがフェイントであった、即座に切り替えて力の受け流し体勢を崩しにかかる。

上体を回しながら曲刀の流線形で持ってうまく捌いた、力の方向を失ったショートソードは俺の上体ごとつんのめるようになりバランスを崩す。

右手を地に付け上体を跳ね上げるがその視線の先は笑みを浮かべてシミターを上段に構える奴の姿であった。

この体勢では必殺の言える一撃をもらってしまう、カルトも即座に思考を切り替える。

 

「ウインド!」

 

左手を地へ降ろして溜めた魔力を風の術式にて自身を宙空に舞いあげる、盗賊風の男はそのトリッキーな動きに反応が一瞬遅れるがすぐに立ち直り空へ舞ったカルトの落下地点でシミターを構える。

今回の空中はホリンと戦った時程の上空へは飛んでいない、とっさの判断でもあるので溜めた魔力はホリン戦程ではない。

体勢を整えて空中から攻撃を繰り出す程の魔法攻撃も剣技を打ち込む時間は無かった。

 

今回はこれで十分だった、待ち伏せる男を尻目に俺の体は真っ白な天馬の背に乗せられ再び大空にまいあがった。

 

「やっぱりまだ正面から剣でせめぎ合うのは無理があるな、ホリンと戦ったから少しは自信がついたつもりだったけどあれは時の運かもしれないな。」

 

「ふざけてないで!そんな事してると命取りよ。」フュリーの叱咤を受け、カルトはショートソードをちらりと見て項垂れてしまった。

 

フュリーは一度旋回し細身の槍で盗賊に向け滑空した、対する盗賊は上空から襲いかかる天馬に耐性はないらしく逃走を始める。

無理は無い、飛空する天馬騎士に盗賊は対抗する術はないのだ。フュリーは肩透かしを喰らうがすぐに意識を切り替えてる。

再び旋回してホリンの元へ向かった。戦意をなくした者には手を加えないフュリーに満足する、出来れば彼女には無用な人殺しをして欲しくないのがレヴィンとカルトの願いである。

 

 

現在ホリンは残りの1人となった者と対峙していた、やはりホリンに心配は無用であったのだ。9名の襲撃者は絶命はしていないが大剣の強撃を受け意識を失っているか、激痛により呻きを上げて助けを求めていた。

 

ホリンも無事ではなく多少の傷を負っているようだがその身体能力は落ちてはいなかった。

相対する剣士は・・・とても剣士のように思えない程で、体格は俺より劣っており脆弱のように感じるが目付きだけがホリンと同様の剣士としての鋭さがある。

この男は油断できない、ホリンもそれを肌で感じているのか構えを保ち出方を伺っていた。

ホリンの精悍な顔つきとは違い少年と呼べるほどに幼くあどけない、持つショートソードはホリンの大剣に比べて頼りなく感じる。それでも数回か打ち合ったのかお互い多少の息の乱れがあった。

 

ホリンが動く、少年剣士はその襲いかかる大剣に砕かれないよう捌くように受け止めを繰り返す防戦一方だった。逃げ回るような仕草でまともに戦うようには見えない。

それは一見であった、ホリンが欲を出した大振りの攻撃を見切り、針の穴を狙うかのような緻密な一撃がホリンを襲っていた。ホリンはその身体能力から体の上体をそらして回避するがかわしきれずにかすり傷を受ける。

 

ホリンはそこで一度距離を取り直そうと後ろに下がった瞬間、少年剣士は打って出る。

その体重を乗せた刺突は彼の勝機を見出した一撃であった、ホリンはこの戦闘で始めて見せた防戦であった。大剣で併せるが体勢が崩れる、少年も体当たりに近い攻撃にその場で足がもつれるように転倒した。

 

 

俺はそのタイミングで二人の間に割って入る、ショートソードを構えて少年に語る。

 

「なあ、あんた!他の仲間は逃走したぞ、認めて撤退したらどうだ?」

少年は一瞬で目付きが穏やかになり、ショートソードを鞘に収めた。

 

「たはー、きつかったー。お兄さん強いね〜。」

先ほどとは一転した彼の言動に拍子を抜かれたホリンは背中の鞘に大剣を収めた。

 

「貴様は一体何者だ?連中とは明らかに違うように見受けるが?」ホリンは鋭い眼光で威嚇にも近い口調を投げかける。

 

「ああー、おいらもう行かないと!せっかく盗賊団に入って奴らの財宝を取り返そうとしたのに、計画が変わっちゃったよ〜。じゃあまたね、ホリンさん!」

煙に巻くようにさっさと退場する少年に三人は深追いできなかった、何よりその撤退する速度に足で追いつくのは不可能とさえ思った。

 

「変わった子ね?さっきまでホリンさん凄い剣戟していたのに、あの元気さは何でしょうね?」

からからとフュリーは言うが俺はあの数回の立ち回りでホリンはほぼ全力だったと思われる、ちらりと見る彼から立ち昇る湯気は単に暑さから来るものではないと思った。

 

あのままいけば一撃必死な攻撃を受けて一気にホリンに傾いたはず、でも結果は至らなかった。

体力も体躯もホリンが上なのにホリンの方が明らかに疲弊している。

 

「あのままいけばどうなった?」俺はホリンにポツリといった。

 

「次に戦えばわかるさ。」彼はそういって疲れを隠して歩き始めたのだった。

 

 

 

イザークに入った俺たちは一度リボーに立ち寄る、彼の故郷であるソファラはここからさらに北にあるらしく今日はここで一泊することになった。

 

久々の湯浴みと食事で元気になった俺は早速リボーの町を物見遊山でふらふらと歩いていた。

さすが剣聖の国、珍しい剣があり見ていて飽きなかった。

 

今現在使用しているショートソードははっきりいって気に入らない、軽さは魔道士向きだがリーチもなくダメージもショボい。魔道士の中ではある方の体格にあう武器が欲しかった。

 

細身の剣?駄目だ、防御には向かない。

鋼の剣は、俺には重いな・・・。

 

「兄ちゃん、兄ちゃん!剣が欲しいのかい?白銀の剣があるよ!買わないか?」

 

俺はその剣を持ち上げる、鉄の剣よりも軽い!それにこの輝き!切れ味も凄まじそうだ!これこそ、俺の理想の剣!

 

「親父、これは!」

 

「3500Gだ!」

 

「・・・じゃましたな、短い付き合いで悪かったな!」

 

「兄ちゃん!そりゃないよ、手持ちはいくらだい!多少は頑張るからよ!」

 

「2000Gなら、なんとか」

 

「いらっしゃい、いらっしゃい!そこのナイスガイな兄ちゃん、白銀の剣はどうだい!安くしとくよ!」

 

「お〜い!」

 

その瞬間からその親父から俺は見えない存在になったようだ、恨めしげに俺は睨んでいると視線を感じて振り向くと。

 

「ふふっ!」一人の少女が見ていたのか?口元に手をやって笑っていた、その瞳は楽しげであり儚げな感じがして何か胸を締め付ける。

 

「嬢ちゃん、目上の失態を見て笑うたあいい趣味してるじゃねえか。」

なにか釈然としない気持ちを押しのけて明るく振る舞う、その笑顔にできるだけ優しく応えるように話しかけた。

 

「ご、ごめんなさい、そんなつもりでは・・・。」

10歳に見たない様にに見える少女は俯き加減に答えた。

当方独特の黒髪だ、艶やかで真っ直ぐの髪で後ろで結われている。

その愛らしい風貌に目を奪われる、あと十年後に是非お会いした時思ってしまう程だった。

 

「まあ、いいさ。金なし才能なしの俺には白銀の剣は縁がないのかもな。」

 

「・・・ううん、お兄ちゃんは才能があると思うな。」

 

「そうか、・・・嬢ちゃんに言われたら元気が出たよ。ありがとな。」

 

俺は懐から一つの品を取り出すと彼女と同じ高さになるように膝を折り、少女の髪に飾りをそっと取り付けた。

 

「これは心ばかりのお礼だ、瑪瑙の髪飾りって言ってなシレジアで取れるとっておきの逸品だ。君の髪によく映えるよ、風の加護があらんことを。」

少女はその髪飾りをそっと触れてから、わずかに綻んだ。

 

「じゃあな!」俺は踵を返して立ち去った。

後にして俺は思う、なぜこの品を彼女に贈ったのか?それは彼女に一つの憂いを感じたからだ。

俺の直感が彼女と自分は同じと感じ取り、あの品を渡した事の意味を確信したのはそれから少し先の未来であった。

 

 

 

少女はお世辞でも発破を掛けたわけでもなかった。

カルトから溢れ出す、雰囲気から彼には何かしらの秀でるものがあるとふんで口がそう発したのだ。

 

だが今は何かは分からなかった。でもいつか、それを見出した名もなき青年にまた会いたいと思ったのだった。

ほのかな思いと共に少女はその後ろ姿を目で追いかけていくのであった。


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