ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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今週は聖戦の系譜の話題がありましたね!

一つ目はヒーローズに聖戦の系譜が追加される事!
二つ目は本日出走の秋華賞で「ディアドラ」が優勝した事!
競馬を嗜む程度の人ですが、彼女を賭け続けて三連勝してます。
(願掛けで単勝百円だけですよ。)

月曜日にシグルド、ディアドラ、ティルテュに会える・・・、といいな♫
オーブあんまりないけど・・・(涙)


家族

シレジア城にてカルト同様に内乱処理に追われているレヴィンの元に一人の騎士が入室する。

レヴィンに来訪する者を執務室へ呼び、書類手続きと訪問者の用件を一度にしないと間に合わない程の多忙であった。できれば他国の王の様に玉座にどっかりと座り、訪問者への世辞を投げかける様な身分でいたいものだと無い物ねだりを内心思っていた。しかし今回の来訪者はついででこなしていけない、筆を戻して来訪者を歓迎すべく立ち上がる。

 

「今回はよく働いてくれた、シレジア王として礼を言う。」その一言にもその男は会釈をするのみで用件はそれだけではない事を示していた、その証拠に彼は騎士としての装いをしており城内用の儀礼服は着ていなかった。レヴィンの来訪者歓迎の笑みは消え、真顔へと戻る。

 

「行くつもりなのか?」

 

「ああ、もうここに戦争がないなら金食い虫の俺達は邪魔だろう。大きな戦争がありそうなシグルド隊の方へ編入させてもらう、あんたには世話になった。」

 

「ベオウルフ、よければこのまま我が騎士団としてここに止まってくれないか?給金の方も・・・。」

 

「いや・・・、俺たちは戦争請負人だ。国を護るだの国家の威信をかけるなどとは範疇外だ。戦争に生き、戦争で死ぬ・・・。」ベオウルフの言葉にレヴィンは信じられない生き様を垣間見る事となった。ベオウルフの言葉を、その続きを聞かんとしていた。

 

「戦いでしか自分を見出せない半端者だ。部下の連中も初めは国の騎士から失脚した奴、村から召集されて戦争に魅入られる奴、忌み嫌われて行き場を無くして身を戦争に投じた奴など様々いる。その行き場を無くした奴らの受け皿になっているのは確かだ、世間様からは鼻摘まみの厄介者だが、奴らの平和は軒下で泥水を啜って生きる俺たちがあってのものかも知れない。

俺たちは戦争に流れ、戦い死んで生き、また受け入れる・・・。俺で何代目の団長か分からんが、この騎士団は終わらないさ。

戦争になればまた会おう、レヴィン王」

ベオウルフは手を差し出してレヴィンと硬い握手を交わす。次の機会を無い物と誓い永遠の別れを惜しむレヴィンと、戦争があればいつでも駆け付けると約束したベオウルフ・・・。相容れない二人だからこそまた違う形での絆を築くのであった。

違いに健闘の意を表現する笑みにレヴィンは邪な物へと形を笑みを歪めた。

「ディーとやらによろしくな・・・。」その一言にベオウルフの顔はかつてなく歪な笑みへと変貌するのであった。

 

 

 

「あの人には敵いませんね。ベオウルフ様・・・。」苦虫を齧ったようなベオウルフを歓迎するディートバは、くすりと笑ってベオウルフを歓迎した。

彼女の与えられた城内の一室は部隊長が駐在する為に与えられた一室、ベオウルフとは対照的にチュニックに護身用の細身剣を帯刀する軽装であった。

 

「ああ・・・、そうだな。つくづく風の聖戦士様は掴み所がない。」ベオウルフは話の中でも寛ぐ事なく装備の手入れを行なう、ディートバは慣れたようにそのまま話を続けていた。

 

「レヴィン様はその中でも特別ですよ・・・、ベオウルフ様ももっとお話ししていればシレジアをもっと気にいると思います。」

 

「気に入ってるさ、飯も酒も美味いし、美人が多いし、なによりディー・・・、君に出会えた事が本当に良かった。」手を止めて言うベオウルフにディートバは静かに涙を流した。

 

「ご、ごめんなさい・・・、涙なんて見せるものでもないのに・・・。あなたの花道に水を差してしまうなんて・・・。」ディートバは背を向けてベオウルフに謝罪する、ベオウルフは彼女の肩に手を当てて抱き寄せる。

 

「いや、いいんだ・・・。俺みたいな流れ者を受け入れて、涙して見送ってくれるなんて男冥利に尽きるって物だ。

・・・別れは辛いが、俺は戦いにして生きられない男だ。」

 

「ええ、あなたの生き様に私は惹かれたのですから・・・、後悔なんてしていません。ベオウルフ様、ご武運を!」敬礼する彼女の表情は柔らかく、そして悲しい・・・。ベオウルフは初めてシグルドの軍に入る事を後悔する程てあった。

 

「ディー、この剣を預けておく・・・。」差し出される剣は魔法剣、特殊な力が封入され使い手次第によっては強力な魔力を発現させる事ができる代物であった。

 

「これは雷の剣だ、何度となく使ったが俺程度では大した力は発揮しない俺には過ぎた剣だ。ディーならこの剣の力を使いこなせるだろうし、行く行くは君の子供にも有効に使える剣になるだろう。お守りの代わりにこれを預ける。」ディートバは受け取ると反射的にまだ張っていないお腹をさする、悪阻が彼女に新たな命が芽吹いていることをベオウルフには伝えてもいないのに・・・。ディートバは目を丸くしていた。

 

「じゃあな、ディー・・・。迷惑をかけるが、・・・後は頼む。」

 

「ええ・・・。いってらっしゃい・・・・・・、あなた・・・。」

悲しき別れがまた一つ、執り行われていた。

 

ベオウルフの鉄鋲が床を弾く音が物悲しく泣いているように感じる、城内の長い廊下に冬を迎えつつある冷たい空気がその音を響かせた。

 

「残っても、いいのだぞ。」壁を背中と長剣をもたれさせ、腕組みをする麗しき女性剣士がベオウルフの胸中を抉るが、ベオウルフはその皮肉をお返しとばかりに受け答えた。

 

「あんたこそ、物騒な物を持たずに子供を可愛がればいい。」

 

「・・・すまない、少し意地が悪かったな。」アイラは剣を帯刀しベオウルフの横へ続いた。

 

「おいおい、しおらしく謝るなよ。・・・・・・お互い重い荷物を背負っているが、それが生きる糧になる。アイラ・・・、お前は死ぬなよ。」

 

「ベオ?どうした、お前らしくもない・・・。」

 

「どうしちまったんだろうな、俺たち雇われの身が死地へ行くなんてな。どうだ?半分くらいになったか?」ベオウルフはアイラに部隊の事を伺う、これからグランベルとの戦争になるので多少なりとも離れていくだろうと思いアイラに伺ったが、アイラは少し口元を緩めて答える。

 

「いや・・・、脱退者は今の所はいないぞ。・・・いい部隊だな、お前の傭兵騎団は。」

 

「俺は何もしちゃいない、あいつらが有能なだけさ。それにお前までいるのだから俺が必要ないくらいだ。ヴォルツにはまだ届いていないだろうな。」

 

「ヴォルツ?確か前の部隊長だったな。強いのか?」

 

「ああ、馬上の大剣捌きで右に出る者はいなかったよ。あのエルトシャン擁するクロスナイツですら欲しがった逸材だからな。」ベオウルフが遠い目をする中、アイラは是非手合いしてもらいたかったと剣を握り直す。

 

「お前は元クロスナイツだったんだろう、そのヴォルツに魅せられたのか?」

 

「俺は国に仕えるのは性に合わなかった、それでも国の騎士として戦う事が剣を磨く唯一の方法と思っていた。そんな中で国の為ではなく自分の意思で戦いを選び、型破りな自由の剣を持つヴォルツの強さに憧れたかもしれん。気付いたら俺は奴の部隊について行っていたよ。」

 

「自由の剣・・・か。なし崩し的に入隊させて貰ったが、私もその気概に当てられたのかもしれないな。

共に生き残るぞ、お前は私が守ってやる!」気合を入れてベオウルフよりさきに進み出す彼女にベオウルフは頭を掻いて溜息をつく。

 

あの殺戮人妻王女が気合をあげれば辺り一面死体の山が築かれるだろう・・・、その光景がリアルに再現されてしまう。

既にアイラの持つ愛剣は血を吸い続けて魔剣の領域に達している、ベオウルフの背筋から上がる悪寒は辺りの寒さも助けて凍り付きそうであった。

 

「無茶、するなよ。」ベオウルフは先を歩くアイラに小さく囁くのであった・・・。

間違いなく、この戦いは死傷者が多く出る。それでも尚向かわんと、突き進もうとしているのはなんの意思だろうか。ベオウルフはまだ見出せないその不可解な意思に従っていくのであった。

 

 

「い・や・よ!!ぜーったい、に!!いくんだからあ〜!!」城内にシルヴィアの大声が響く、両耳に手を当ててその騒音を消そうとするが全く声量は落ちない・・・。クブリは困り果てていた。

 

「今回ばかりは駄目です、駄々をこねないでください。」

 

「いや!!」

 

「シレジア軍はグランベルにはいきませんが、・・・私は暇を取りました。もはや賢者でもなんでもなくカルト様の従者クブリです。カルト様もシレジアを去る今、私も運命を共にするつもりです。

だからシルヴィアさん、あなたはここを去って下さい。勝っても負けても・・・私達はここには戻らないでしょう。」

 

「いや!!」

 

「シルヴィアさん!!」堪忍袋の緒が切れたクブリは珍しく怒気を露わにする。シルヴィアもその怒気に負けず、クブリの眼を見据えた。

二人の視線が切れる事なくにらみ合いが続き、廊下を歩く衛兵はそそくさと二人から遠ざかるようにすり抜ける始末である。

 

二人の睨み合いが続くなか、声をかける人物がいた。

最高位の修道服とローブを着込み、先程の戦いで失ったバルキリーの杖の代わりの聖杖を持ったクロードである。その事態を収拾しに来たと感じたクブリは仲裁に来たと安心する。

 

「こんにちはシルヴィアさん、そんなに荒だててどうしたのです。」

 

「あ!クロードさん、こんにちは!聞いて下さいよ。クブリったら一人でグランベルに行くっていうからあたしもついて行くって言ってるのに聞いてくれないのですよ。」

 

「ですから、今回ばかりは駄目ですってば。」

 

「戻ってこないというなら尚更ついて行くわ!あたしは身寄りもないし、どこでもついていける。だからいいでしょ?」シルヴィアは懇願する、クブリは困惑の極地でクロードに視線を投げかけた。

 

「でもシルヴィアさん、身重では従軍する事は出来ないでしょう。今は大人しくしてた方がいいですよ。」にこやかに言うクロードの言葉にシルヴィアは固まる、クブリは杖を落として廊下に樫の杖の乾いた音が響いて行く・・・。

 

「え・・・?確かに少し前から気分が悪かったりしていたけど、まさか・・・。」シルヴィアは静かにお腹に手を当ててしまう、クブリはまだ固まったままで完全に思考停止していた。

 

「ですのでシルヴィアさんはシレジアに残ってお腹の子供の為にも静養なさって下さい。そしてかわいい双子を産むのですよ。」クロードの次々と語る言葉にクブリはもう固まったままピクリとも動かない・・・、ようやく動き出したクブリであるが

 

「な、な、な、なぜ双子と、わかるのですか?そもそもなぜ本人も自覚していない妊娠を・・・。」思考は混乱の着地となっていた。

 

「なぜか、と言われればうまく言えませんが直感がそう思いました。双子である事も同じです。クブリさん、おめでとうございます。」

 

「あわわわ・・・。なんたる事だ、まだ未熟な私に子供を授かるなんて・・・。こうはしていられない!私が退役した後の待遇をお願いせねば・・・。あっ、シルヴィアさん!!」クブリはようやく現実を取り戻し出すと慌ただしく思考が後の事を意識し出した、そして彼女に贈る言葉を導き出す。

 

「は、はいっ!」シルヴィアは咄嗟に呼ばれ、クブリの言葉を恐る恐る聴く体制に入った。

 

「シルヴィアさん、こんな時ですがそのお腹の子を産んでくれますか?レヴィン様には産後もここで子供を育てられるようにお願いします。だから・・・。」

 

「わかったわ・・・、あたしだけの体ではないのなら我儘なんていってられないわね。あたし頑張って可愛い子供を産んで待ってるね。だから帰って来てね、クブリ・・・。」逆に戻ってくるように嘆願するシルヴィアを抱いて約束する、そしてクブリは各々に報告は奔走するのである。

 

残されたクロードとシルヴィアは互いに目が合うと、クロードは彼女に深々と頭を下げた。

「シルヴィアさん、この間私を助けてくれてありがとうございます。

あなたが発破をかけてくれたお陰で立ち直り、そしてマーニャを助けてくれた時もあなたは私を支援してくれた。マーニャの命の恩人です。」

 

「そんな・・・。私は大した事はしていません、あれはクロードさんの力で出来た事よ。」シルヴィアは焦り、身振り手振りで返す。クロードはにこやかであった顔が少し真剣な面持ちになり話を続けた。

 

「マーニャに蘇生魔法を使っていた時、私の聖歌と踊りが完全に同調していた。・・・あなたは身寄りがないと先程の言っていましたが、ご両親は?」

 

「分からない・・・、物心がついた時には私はある楽団に育てられながら働らかされていたわ。そこそこ大きくなったら踊りの練習で間違える度に鞭でうたれる毎日で、数年前にバーハラで大興行があった時に抜け出したの。辛かったけど、この数年間自分の好きな街に行って酒場で踊る毎日は楽しかったわ。」

 

「そうだったんですか、すみません立ち入った事を聞いてしまいまして・・・。辛い毎日だったかもしれませんが、あなたのその踊りで私達は救われたんですからあなたに踊りを教えた人々に感謝をしたいです。」クロードは再び深々と頭を下げた。

 

「そうだね!あたしもそう思ってる。私の踊りには魔法がある事がわかってから嬉しかった、それがいろんな人に役に立つなんて思ってもなかったよ。」嬉々としてシルヴィアは話す、彼女は底抜けに明るくしているがどれだけ辛い人生だったのかよくわかる。だからこそ人を励ます事ができるのだろう、クロードは彼女の尊さに感謝していた。

 

「少し話が逸脱してしまいましたね、単刀直入に言いますね。

・・・私には妹がいたんですが、賊に侵入され人攫いにあってしまいました。両親が手を尽くして探したのですが、最後まで見つける事ができなかったのです。

・・・シルヴィアさん、あなたはおそらくですが私の生き別れた妹がだと思ってます。」

 

「あ、あたしが・・・?あははは!こんな時に冗談だなんて・・・。」

 

「いえ、私は真剣です。先ほども言いましたがマーニャを救った時の同調を思い出してください。魔法を融合させる事など息のあった者でも成功するに難しい、その上あの魔法はブラギの血に連なる者しか扱えない神の魔法・・・。シルヴィアさんが私と同調してできたという事は、あなたにもブラギの血が流れています。となれば自然と行き着く答えなのです。」クロードの言葉にシルヴィアから涙が溢れる、彼女から流れるその清らかな涙なクロードは自然と彼女を抱き寄せた。

 

「今日は、なんて日なの・・・。生まれた時から肉親がいなかったのに、子供が出来てお兄ちゃんまで出来るなんて・・・。嬉しくてあたしまだ実感がおいつかないよ。」ローブを濡らすシルヴィアの頭をそっとなぞった。

 

「ブラギ神よ、我ら兄妹に与えたあなたの試練に感謝します。我らを正しく導き給え。」二人はこの運命に感謝の意を述べるのであった。


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