ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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4月に掲載間に合いませんでした、今月中にもう一話頑張ります。
かなりペースが落ちてますが、最後までやりきりますのでお願い致します。
このペースですと、終章までいくのに何年かかるのやら・・・。


槍騎士と竜剣士

キュアン王子率いるランスリッターは砂漠を縦断する・・・。

シグルドがグランベルに向けて蜂起すると情報が入り、キュアンはその決死の行軍に救援したのである。リューベックより南下してくるのは安易に予想できる、フィノーラ辺りで合流するつもりで北東へと進路をとっていた。

それを看破し情報を聞きつけたオイフェとマリアンは、高度を取らずにシュワルテは砂上を滑空していた。

 

「マリアン、こんな事したらキュアン様に後で叱られるよ。」オイフェのなんとも情けない声がマリアンの後ろから囁かれた。

 

「何いってるの、私達はレンスターにただの食客でいたわけではないのよ。あなたは騎士としての鍛錬、私も訓練を重ねてシグルド様やカルト様に報いる為にこの一年を過ごしたのよ。シグルド様の決死の蜂起にあなたはどう過ごすつもり?」マリアンの言葉にオイフェは同意をしているが、手段がどうにも賛成できないでいた。

キュアンが二人を連れて行くつもりはないのだが、その意向を無視するかのように尾行する事がオイフェには気掛かりである。

 

「カルト様が私達の参戦を避けているのはわかるわ・・・、今回の戦いはおそらく決死の物になる。だから大人は私達を巻き込まないように考えてる事も分かる。でもね、だからこそ私達は参加しないといけないと思うの。オイフェは何歳になったの?」

 

「え?15歳です。」

 

「私は16になったわ・・・、カルト様に拾われてそろそろ5年になろうとしてる。シグルド様の初陣は14歳と聞いたし、カルト様は10歳で初陣したそうよ。私達は十分に鍛錬したし、彼らより歳も重ねているわ。そろそろ保護される側ではないと思う・・・。」

 

「うん・・・、僕もそう思う。シグルド様に孤児になった僕を拾ってくださった恩に報いたい。でもねマリアン、カルト様は君を戦いで報いてもらおうとは思ってないと思う。

・・・カルト様が君に願っている事は、幸せになってほしい事じゃないかな?」

 

「え?」マリアンはその言葉にオイフェに振り返った。

 

「カルト様が見つめるマリアンへのまなざしは、まるで実の娘を見つめるようだった。そんなマリアンを死地の戦場で誘う事は僕には考えられないんだ。」オイフェの言葉が深く心に響き渡るが、マリアンは必死に心で否定する。首を振ってその甘い言葉に惑わされないが如くであった。

 

「オイフェ!それ以上は何も言わないで!!

私はカルト様へ忠誠を誓う一人の剣士なの!今更私はこの生き方を変えたくない!!カルト様がもし命を落とす事があれば、私は必ず身代わりにしてでもカルト様を救う!そう決めて生きてきたの、・・・なのにカルト様はわたしをいつも優しくしてくれていた。

どうして、私なんかの為に・・・。」マリアンは顔を塞いで胸中を吐露していた、オイフェは彼女の心に無碍に入り込んでしまっていたようだがここまで言って仕舞えば後には引けなかった。

 

「マリアン、君の忠誠心も痛い程わかる。君も僕と同じで孤独の地獄から救ってくれた主君に忠義を尽くしたいんだろう、でも死ぬ事がそれではないと思う。

主君と生き延びて、共に幸せになる事を考えようよ。」オイフェのなんとも言えない暖かな一言がマリアンの頑な気持ちに太陽を照らすかのように、陽だまりが差して行く。

 

「・・・私、自分が幸せになる事なんて考えてなかった。

生まれた時から愛情を注がれず、親に僅かなお金で売られそうになった私なんかが幸せになっていいのかな?」

 

「カルト様がそれを一番に想っているよ。カルト様だけではなくエスニャ様も、僕も願ってます。マリアン幸せになってね。」オイフェの一言にマリアンは涙が溢れた。

 

「馬鹿・・・。少しの間、泣かせてもらっていい?」

 

「尾行は僕がしておくよ、シュワルテ。わかってくれるかい?」シュワルテは不服そうであるが一鳴きして従ってくれた。

 

 

 

ひょんな事より二人の雰囲気は気まずくなる中、オイフェは先に見えるランスリッターの距離を気遣いながら見据えていた。

暑い・・・、オイフェは再び竹筒から水を飲むと徐々に高く上がって行く太陽を疎ましげに見上げる。そして滴る汗を拭い一息をつく・・・。

あれ・・・?再度太陽を見上げた・・・。

 

「マリアン・・・、上空の太陽なんだけど。光に溶けてるけど、何かいない?」オイフェの言葉にすぐ様彼女は臨戦態勢に入る。

両の手を太陽を絞るかのように光を遮って小さな隙間から覗き込んで凝視すると、彼女の目にはとんでもないものが視認できたのである。

 

「ドラゴンよ!ドラゴンの飛べる高度一杯でこちらを監視している!!」

 

「トラキア軍だ、やつらはずっとレンスターを狙っていたからこの機を突いたきたんだ。早くキュアン様にお伝えしないと!!」オイフェの言葉より早くマリアンは従者の位置につき鎧に足を掛けていた、その瞬間にシュワルテは最高速度を目指して翼を羽ばたかせた。

 

「ここは足を阻む砂漠だし。頭上を抑えられたらひとたまりもない。早く何処か戦える場所へ先導しないと・・・。」

 

「わかってる!オイフェ!!しっかりつかまってて!

・・・あなたならこの戦局はどうする?」

 

「この辺りは特に砂漠の砂が深い!もっと東へ誘導するんだ。この辺りよりは随分ましだと思う。」オイフェの提案にマリアンは思案を組み込んでみる、シアルフィ軍は今北西の位置で戦っているのでそこから離れてしまう事は自ら孤軍となってしまう事が危惧された。

オイフェの目を見る、彼はそれも承知の上だろう・・・。

どのみち機動力の落ちた騎馬では援軍を呼ぶのは不可能である、例え私達が援軍の要請に向かってもシアルフィ軍に飛空部隊がいない以上こちらに援軍を出しても間に合わない。それなら幾分にでも戦える場所を指示する方がいいと判断したと考えたのである。

 

2人の意見があってからの行動は迷いなかった。

シュワルテに命じたマリアンは一気にキュアン率いるランスリッターの元へと飛んだ。ここからは時間の勝負になる、オイフェが自身のマントを振りかざしながら敵意がない事を証明しつつ近づいた。マリアンに至っては両の手を水平に伸ばしていた。

不意に頭上のドラゴンライダーに視線を送る、乗り手はこちらの動きに察知された事を悟った様子で太陽を背にはしていなかった。おそらく攻撃態勢へと移行しているのだろう、見つかったところで事態は変わらないといったところか・・・、マリアンはそう思案する。

 

先方のランスリッターへの2人の接近に緊張が走るがキュアンは一瞬で見極めてそれを制し、2人を出迎えた。

 

「キュアン様!頭上を!!ドラゴンライダーが太陽に紛れて尾いていました!!」マリアンの指差す方向、かなりの上空で霞んで見えるが確かにそれはドラゴンの陰影であった。

 

「なんだと・・・、トラバントめ読んでいたな・・・。

以前から奴はレンスターを狙っていたが、エスリンが嫁いでくれてからシアルフィやグランベルと事を構える事になると恐れて積極的には攻めてこなかった。

だがシアルフィは勢力を失い、グランベルはイザークやアグストリアといざこざで国内の戦力は落ちている。

・・・・・・、それにシグルドが戦いに乗り出せば我らは必ず出陣すると奴は踏んでいたんだろう。これは私のミスだ・・・。」キュアンは苦虫を噛み砕いたかの様に渋い表情を浮かべた。

 

「キュアン様、まだ諦めてはいけません!今のうちに東へ向かいましょう。今の時期ならここより東は時折雨が降って地面が固まってます、ここの深い砂漠よりから幾分かの勝機はあります。」オイフェの策にキュアンはゆっくりと頷いた。

 

「そうだな少し思案しすぎた。私は諦めるわけにはいかぬ、シグルドやエスリンの為にもな。」キュアンは少し笑みを送ってエスリンへ投げかけた。

 

「あなた・・・。」

 

「マリアン、エスリンとアルテナを乗せて飛べるか?君達は先にシグルド達の元へ行ってくれ。」キュアンはマリアンに2人の保護を申し出るが、その答えをオイフェが否定する・・・。

 

「キュアン様、トラバント王は狡猾な策略家です・・・。おそらく逃すまいと挟み込むでしょう、その前に少しでも地の利が働く場所で迎え撃つべきです。

頭上を抑えられてますがこちらを狙う時は接触します。迎撃に集中すればこちらの攻撃が届きますし、マリアンにはシュワルテがいます。制空権をとらせず、マリアンと連携すれば勝機も見えてきます。」

 

「・・・シグルドが自信を持って私に預けた気持ちがよくわかった。君達を生死に携わる戦には参加してほしくないが我が軍の勝機を担う二人だ、すまないが助力を頼む。」

キュアンは一礼するとすぐさま軍を西へと舵を切り出したのであった。

 

トラキア半島の攻防を他国であるイード砂漠で雌雄を決する事となるのである。圧倒的に不利なレンスター軍の勇戦は、後の人々に語られる程の逸話となる。それはシグルドとエルトシャンが、アグストリアでランゴバルドとレプトール両名を退ける語りと並ぶ程、詩人達の語り歌となっていくのであった。

その語りでエルトシャンを忠と呼び、シグルドを義と語り、キュアンを信と詠う・・・、三人の心構えを一言で紐解く物と後世に伝えられるのである。

 

 

空を舞う・・・、鉄と獣の匂いが混じる自身の一団にトラバントは感慨深く笑った。ようやく・・・、トラキアの悲願である半島の統一の足掛かりになると思うとトラバントは笑みを隠しきれない。

反吐がでるような愚物の代理戦争を請け負い、大切なトラキアの竜騎士を失って来るたびに襲う焦燥感と喪失感・・・。それらの辛酸を嫌という程味わってきて初めて手応えのある半島統一の実現に近づいたのだ・・・、これを笑わずにはいられなかった。

 

「マゴーネ、準備はできているか?」横を並走するマゴーネはトラキアの中でも指折りの騎士、すぐさま求める答えを返してくれる。

 

「はっ!三点より急襲できます。ただ、西だけはどうにもできませんでした。」西はフィノーラ方向、下手にグランベル領に近づけばいらぬ戦いに接触する恐れがある。トラバント王も若き策謀家であるアルヴィスを過小評価しておらず慎重であった。

 

「致し方あるまい、今はまだグランベルとは事を構えたくはないからな。ここでトラキアがレンスターの主力を打ち取ったと分かればいらん食指を伸ばしかねないからな・・・。

シグルドか・・・。もう少し賢く生きるのならば、奴の軍ごとこちらに亡命すれば助かっただろうにな。」

 

「ご冗談を、もしそれを受け入れたとしてもシグルド殿をそのままトラキアに地位を与えて止まるような御仁ではないでしょう。」マゴーネは不遜な笑みを浮かべて答える。

 

「はっはっは!そうだな、奴のようなグランベルの貴族ではトラキアの魑魅魍魎な国家では生きていけぬだろうしな。それよりもキュアンの敵対する国家に亡命などある訳がないか!」トラバントは大きく笑う。

 

「願望は無理もありませぬ。トラキアは人材不足・・・、シグルド殿の様な御仁は是非とも受け入れたいですが、所詮我らはハイエナ・・・。誰も来るものはいないでしょう・・・。」マゴーネは厳しい表情でトラバント王の胸中をくんだ。

 

「それも我が国が選んだ道だ、我らが悲願は我らで為す。」トラバントは力強くマゴーネに返した。

 

「はい、全軍トラバント王の命を今か今かと待ちわびております。

奴らは我らの罠にかかった哀れな子羊ですがパピヨン様から奪ったシュワルテがいます、気をつけなければなりません。」その言葉にトラバントから憤怒が吹き出してその先へと向けていた。

 

「まさか我が国のドラゴンが他国に奪われるどころか、その場で乗りこなしてしまうとはな・・・。エバンス奪還戦での部下からの報告には耳を疑ったくらいだ。」

 

「私は、未だに人事られません・・・。ですが報告では確かにドラゴン乗りの剣士がこの先にあるという報告は受けております。

奴らにも空で戦う術がある以上こちらも気をつけなければなりません。それにシュワルテは我が国でも珍しい炎竜の古代種、それにまだ幼生なのが末恐ろしいです。」

 

「幼生だからこそ、まだ主人としてパピヨンとの結びつきが完全ではなかったのだろう。それを差し引いてもシュワルテの主人には気をつけねばならんな・・・。

おしゃべりはここまでだ、見えたぞ。」トラバントは眼下を見据えると、そこにランスリッターと話題のドラゴンフェンサーが目視できる場所まで迫ってきたのであった。

 

 

 

「手槍にて構え!!ドラゴンは構うな!狙いは乗り手だ!!」キュアンの言葉に手槍は放たれる、放物線を描いた手槍は迫るドラゴンの頭を越えてから頂点から落下し乗り手の頭上に降り注いだ。

ドラゴンナイトもその戦略を読んでおりドラゴンを巧みに旋回させながら回避行動を取りつつランスリッターへと迫る、不運にもその手槍の犠牲になった者はいるが作戦に支障をきたす被害はなくランスリッターの懐まで入り込んで騎馬ごとドラゴンの牙により噛み砕かれた。

ドラゴンナイトが通過した場所には甚大な被害がでており、その攻撃力の高さに戦慄する。

 

「怯むな!反撃は接触の時しかないぞ!!」キュアンの激が飛ぶ。彼のゲイボルグは血を滴らせており、言動の通り一匹のドラゴンが地響きとともに墜落する。

神器の一撃はドラゴンすら屠っており、ランスリッターに大きな希望を呼び込んだ。

さらに続いてドラゴンナイトが一人かなりの高さから落ちてきたのか凄まじい速度で砂漠に激突する、その死体には首がなく落下による墜落死ではない事が伺えた。

キュアンは上空を見上げると竜から竜へと飛び移り、その乗り手を切り結ぶマリアンの姿を小さく目撃する。

 

「マリアン・・・、無理だけはしないでくれよ。」誰にも聞こえないように呟くのであった・・・。

 

 

 

一人を切り落としたマリアンは、野に帰らんと荒ぶるドラゴンの背からジャンプする。シュワルテはすぐさまマリアンの落下地点に向かい、高度を下げながら彼女を受け止める。

そして手綱を取ると、側面から襲いかかるドラゴンナイトにブレスを吐きかけた。

 

「ぐあああー。」ドラゴンにはブレスの効果は大きくないが乗り手の人間は別である。魔法とは違うドラゴンの炎は魔法使いであっても魔法防御では防ぎきれない別種の物、焼かれた乗り手は墜落していく。

マリアンはすぐ様逃げ延びたドラゴンに跳躍して敵ドラゴンへ飛び乗って乗り手を切り倒した。

この人間離れしたマリアンの戦術にトラキア自慢の空中戦王者も戦慄する、ドラゴンフェンサーとして完成されたマリアンとの制空権の争いはこの戦場の重要点となるのである。

 

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