ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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雷閃

レプトール率いる重装歩兵で固めたフリージの軍は再び窮地に立たされた。前線に投入されたシアルフィ軍はシグルドを先頭として怒涛の反撃にあっている、最後尾に鎮座するレプトールに芳しくない報告が飛び交いだした。

 

ジグルドの駿馬が戦場を駆る!白銀に輝く聖剣の一閃に重装歩兵の鎧が胴切りされ、鎧も中身も上半身と下半身が別れた。

シグルドの突撃に誰一人シアルフィの騎士団も追いつけない、シグルドが切り捨てていき浮き足立つ前線になだれ込むようにシアルフィ軍が続いていった。

 

「止めろー!奴をこれ以上進ませるな!!」パイクに持ち替えてその長いリーチからシグルドを止める作戦に出るが、シグルドはその穂先寸前で騎馬をジャンプさせるとその長いリーチは逆にデメリットとなる。着地するとその前線を無視して突撃をする。

 

「お、追えー!」前線のパイクを持つ重装歩兵は反転しようとするが、シアルフィ軍と共に追い上げてきたアゼルが魔道士隊を置き去りにジグルドのフォローに来ていた。

 

「エルファイアー!!」魔道に共鳴した騎馬を駆るアゼルの機動力はジグルドの軍では大活躍であった、他の魔道士では追いつかない機動力戦でも即座に駆けつける事ができる。

前線のパイクを持った部隊は、シグルドに翻弄されアゼルの魔法で殲滅した。

 

後方では混戦となっているが、体勢を整えたアーダン将軍が徐々に追い上げが始まり彼の部隊を盾に魔道士隊とジャムカのハンター部隊とアゼルの魔道士隊が押し上げ始める。混戦部が徐々にアーダンの部隊が支配していくとフリージ軍の後退が始まっていく。

フリージ軍が固まりだした時、カルトの大技が炸裂した。

 

「オーラ!!」天空から一筋の光が注いだ方思った時、あたりに凄まじい衝撃が走り一帯のフリージ軍が飲み込まれていた。

 

「手前ら!もっと前線を上げろ!カルトを援護だ!!」ベオウルフの号令に傭兵達も勢いづいた、アイラは遊撃としてすでに前線近くまで上っていた。彼女の剣の前では装甲が固い事など関係がないかのように切り裂いた。

 

時間と共にシアルフィの混合部隊は、素晴らしい程の連携をみせレプトールの一枚岩の部隊を追い詰めていった。

その怒涛の進軍の前に殿の部隊は徐々に後退を始めていく・・・。

 

先陣を切るシグルドとシアルフィの聖騎士部隊にアゼル単騎の魔道士、追い上げる傭兵騎団達と徐々に殿から登ってくるアーダン将軍の重装歩兵と魔道士部隊・・・。その豊かな混成部隊はシアルフィの一旗の元、一丸となっていた。

その怒涛のようなシアルフィ軍にレプトール率いるフリージ軍の後退する速度が上がっていく・・・。

 

進撃めまぐるしいシグルドが前線の重装歩兵をなぎ倒し、その先にいるレプトールと視線がぶつかった。

 

「レプトール!覚悟!!」先制の手槍を一閃する、シグルドの手槍は確実にレプトールに放物線を描いて迫った。

レプトールはその手槍を右手をかざすとその瞬間に雷が迸り、手槍を炭化させた。

 

「シグルド!聖地を犯すとは恥を知れ!!」レプトールの怒号にシグルドは聖剣を再び引き抜いて馬を飛ばす、遠距離はレプトールが有利・・・。次の魔法の準備に入ると感じて距離を詰め出した。

 

「エルサンダー!」レプトールは大魔法よりも速攻を優先する、魔法のランクを落としてシグルドに放った。

シグルドは聖剣を前に構えてエルサンダーを斬るかのように振りかざすと、エルサンダーの発光する光の矢は散り散りとなり霧散する。

 

「ば、馬鹿な!儂のエルサンダーを・・・。これがティルフィングの力か・・・。」聖剣ティルフィングを持つ者は圧倒的な魔法防御能力を誇る。その能力は不死身の代名詞、ネールの聖斧スワンチカをも凌駕する。

シグルドはそのままレプトールに単独突進して行く、それを阻むフリージの親衛隊もいるがシグルドの執念が彼らを聖剣が縦横無尽に振りかざして薙ぎ倒す。

それでも数度、エルサンダーが飛ぶがシグルドも騎馬も止まらない・・・。聖剣の加護に守られた人馬はすでに一体となっておりレプトールに肉薄した。

しかしレプトールも先ほどの自身のエルサンダーを霧散させたシグルドの能力を見切り、修正していた。

 

「死ね!シグルド!!」レプトールの雷の最大顕現であるトールハンマーが放たれる。至近距離故に自身にもダメージ覚悟での一撃であり、その衝撃に側付きの騎士達も吹き飛んだ程である。レプトールも吹き飛ばされるがかろうじて足を大地に強く張って転倒はしないものの、数メードルは後退した。

 

神の鉄槌は間違いなくシグルドを直撃し、その紫電の閃光はあたりに放射されて巻き添えを食らった自軍の騎士すらもなぎ倒して黒炭へと変貌する。衝撃で巻き上げられた粉塵にあたりはホワイトアウトするかのように視界を覆ってしまった。

手応えあり!レプトールの確信に大声で笑い声をあげる、それは狂気にも近く近くにいた自軍の騎士達にすら畏怖を与えた。

 

「あーはっはっはっ!まともにくらいおった!!のこのこやってきて無駄死にするとは、父親同様馬鹿な奴よ。」

 

いまだ灰煙漂う中で叫ぶように高笑いするレプトールだが、砂埃の変化にとっさに大楯を掲げる。それは長年の経験からか、挑発する言葉からの反応を知るためかは定かではないがとっさの大楯が命を繋ぎとめた。激しい剣戟が響き、その衝撃でレプトールは再び足を大地に根付かせる。

 

「貴様、まだ生きていたか!」必死に大楯で防ぐレプトールはシグルドを見据える。

たしかにトールハンマーは命中しており、シグルドの体には多数の火傷の裂傷を負っていた・・・。聖剣の加護に守られていたとはいえ聖遺物の力をまともに受けて無傷ですむはずがない、それどころか決まりどころが良ければ即死であってもおかしくない。

それをシグルドは耐え、反撃する気力まで持っていたのである。レプトールに与えたショックも大きかった。

 

「はあ、はあ・・・。聖地を侵しているのはあなたの方だ、私はそれを正すために戻ってきた。覚悟の時だ、レプトール!」ティルフィングの宝玉が緑に淡く輝き出す、シグルドの純然たる願いに呼応するように・・・。

大楯が押され出し、シグルドは左手でその大楯の端を掴むと一気に跳ね除けた。力の向きを急激にいなされたレプトールの体は一気に崩れ、聖剣が貫いた。

 

「レプトール、終わりだ・・・。エルトシャンに許しを乞いに行け。」

 

「ぐうう・・・。まさか儂が、トールハンマーが破れるとは・・・。だがシグルド、まだ終わってはいないぞ!」

体を仰け反って貫かれたティルフィングから抜く事ができたレプトールは自身の傷口に手を当てる。

 

「リライブ!」出血が酷いが場所は致命傷ではなかった、心臓を狙ったシグルドだがレプトールもとっさに体をずらして左手肩に近い場所を貫いたので肺も免れていた。

 

「ちっ!リライブ程度では傷口を塞ぐくらいまでだ・・・、左腕は使えぬな・・・。」地に投げ捨てた大楯をちらりと見ながら回復を急ぐ、対してシグルドは先ほどの一撃が渾身であったのだろう。トールハンマーの受ける前に下馬して退避させてレプトールに突っ込み、今騎馬が主人の元に帰ってきたが乗り込む事も出来ず体を預けて自然回復を待つしかない状態であった。

 

「シグルド、友に会えるのは貴様の方だな。この砂埃がまだ残ってる間に始末してやる。・・・シグルド、恨むなら政治の力のなかった父バイロンを憎むがいい。」レプトールはリライブの回復をそこそこにトドメとばかりに再びトールハンマーの準備に入った。

 

「政治の力、そんな物に頼って人々の上に立ってどうすると言うのだ。我々は聖戦士の末裔、正しい行いで人々を導く事が使命だと父は常々言っておられた。」

 

「だからバイロンは失脚したのだ、その父の教えは役立ったのか?」レプトールの魔法はほぼ完成に近づきつつあった、魔力が膨れ上がりあたりに静電気が放電するかのような音が立ち込め出した。

 

「そのおかげで多くの戦友と巡り会えた。悲しい別れはあったが、彼らの意思を引き継いでここに立っている。

私もまた、ここで倒れようとも戦友たちが私の意思を引き継いでくれるだろう。だから悔いる事など何もない!」

 

「ならば、死ね!シグルド!!」

 

「トールハンマー!」

「エクスカリバー!」

 

神の怒りの顕現と言われる極大の雷は聖剣の名を冠する断罪魔法により切り裂かれてシグルドを中心に二つに割れた。

シグルドは直撃を免れ、その両端にいた運の悪いレプトール軍が被弾する事となる。

 

「リカバー」シグルドの体が強く発光し、またたく間に火傷が癒されていく。それはレプトールのリライブの比ではなかった。

 

「遅くなった、すまない。」

「来てくれると信じていた、カルト。」差し出された手を握ると力強く引き上げるカルト、穏やかな眼差しで微笑するシグルド。

二人はレプトールを見据えて相対する、風はみるみるうちに灰煙を飛ばしていき辺りからも視認できるようになる。

 

レプトールの乱発するトールハンマーで敵味方が焼き爛れていた、いやほとんど自軍の方が被害が多かった。

 

「酷いな・・・。」あたりを見渡したシグルドがその凄惨な光景に息を飲む・・・。

「アゼルにはここに来ないように言ってある。おそらくこちらには被害は少ないだろうが、早く決着をつけたい。

俺のエクスカリバーで先ほどの初撃はなんとかなったが、全力のトールハンマーは切り裂けないだろう。」カルトは先程のトールハンマーは瀕死のシグルドに向けたもので次に放たれるトールハンマーを正面から防げるものではないと見切った。

 

「レプトールを討てるのはシグルドだけだ・・・、援護するから奴を倒してくれ。」

 

「ああ、わかった。」リカバーで体は回復したが疲労はどうしようもない、気力を入れ直して聖剣を握る。

一方のレプトールもリライブを重ねがけを行なって止血が完全となり、未だ左腕に違和感があるものの邪魔にならない程度にまで回復していた。

 

「また邪魔をしに来たか、貴様だけ儂の手で殺したかったところだ!シグルド共々まとめて殺してやる!!」レプトールの怒りにカルトの目は穏やかな顔になる。

 

「お義父上、もうこの戦いは引き返せないのですね。」

 

「・・・黙れ!娘をたぶらかした貴様に言われたくないわ!」意外な言葉にレプトールは激高する、カルトはその怒りの眼差しを真っ直ぐに受け止めていた、その目は悲しみにあふれている。

 

「・・・・・・・・・いえ、これはエスニャからの伝言です。・・・確かに伝えましたよ。」そういうとカルトは再び険しい目を向けて魔力の放出を始める、レプトールも少し狼狽しながらも魔力を集中し始めた。

 

レプトールは二人まとめて倒す必要がある、余力など考えず最大魔力をこめ始めていた。対するカルトは先程の言ったようにエクスカリバーでは押し負けられてしまう、シグルドはどうやってカルトはあの一撃を受け止めるつもりなのだろうか・・・。

今は信じるしかない、シグルドはカルトを信じてレプトールの隙を待っていた。

 

「さあ、最後だ・・・。死ねカルト!」レプトールはすべての魔力をトールハンマーに変換する作業を終えていた。

カルトも魔力を最大限放出し、懐から一振りの杖を取り出した。

 

「トールハンマー!!」紫電の閃光が走った同時にカルトも繰り出した。

「マジックシールド!」杖の先端を大地につきたてると虹色の防御壁が現れた、神の雷はシールドの結界面に当たると激しくあたりに放電する。シールドは瞬く間に亀裂が入るが連続してシールドに魔力を与えて二重、三重と作り出す・・・。

以前、ヴェルトマーでアルヴィスと対峙した時に使った手法である。

破損して使えなくなった秘術であるが、オーガヒルを攻略した最中に偶然見つけた魔法防御の杖。今再び神器に対しての対抗手段として用いたのである。

トールハンマーの破壊力は凄まじい勢いでシールドを破るが、カルトの魔力も負けていない。アルヴィスが加減をしていたとはいえ、ファラフレイムを受けたことのあるカルトはこのシールドに賭ける価値はあった。

 

「ま、まさかトールハンマーを受け止めようと考えるとは・・・。」レプトールも驚きを隠せない、まだ魔力の消費が全て終わっていないとはいえこの瞬間までシールドで耐えていた。歯を食いしばってレプトールはさらに魔力を込めて勝負をかける。

紫電の放電はさらに膨れ上がりあたりは磁界の嵐が吹き荒れた、砂地に含む磁性体が渦を作り吹き荒れる。

カルトのシールドをことごとく破り、最後の薄皮一枚の虹色のシールドで耐えている。

杖に巨大な魔力とシールドの負荷がかかり、アルヴィス戦同様に破損が始まった。カルトもまた一気に魔力を送って破損する前にシールドを強化して、果てた。杖は乾いた音と共に砕け散る・・・。

カルトのシールドは強化され、相殺されるようにレプトールのトールハンマーを削っていった。いや、レプトールの魔力が尽きてトールハンマーの魔力が急激に弱っていっている状況であった。

だが、惰性で残ったトールハンマーの威力が強化されたシールドを破壊して二人を襲うが、前に立っていたカルトは手を広げてシグルドを守り、トールハンマーを一身に受けて吹き飛んだ。

 

シグルドのすぐ横を吹き飛んだ時、シグルドはその一瞬の表情を見た。口にわずかな笑みを作っていたのだ。

シグルドはその瞬間に飛び出していた、カルトが命をかけて作ったこの瞬間を逃すわけにはいかない。レプトールはすべての魔力を使い切ったと思われるが、逃せば次にこんな勝機が訪れない。シグルドはすかさずレプトールに一刀を入れる。

 

「うおおお!」シグルドらしくない、気合いを入れた袈裟斬り。

左肩口から入ったティルフィングは心臓を突き抜けて腰まで深く切り裂き、必殺の一撃と呼べるほどのものであった。

血飛沫が激しく舞い、レプトールは即死したと思ったが・・・。

 

「アルヴィス、一体何を・・・。」レプトールの最期の言葉は絞り出すように残し、首がうなだれて地面に伏した。シグルドは聖剣を胸元に上げて正中の構えを取り、聖剣に語りかける。

 

「エルトシャン、君が力を貸してくれたんだな・・・。ありがとう。」一筋の涙が頬を伝うのであった。

 

「・・・カルト!」シグルドはハッとなり、後方に吹き飛ばされたカルトを目で追う、彼は倒れてはいるが手を上げて無事を伝えていた。

ホッと胸を撫で下ろし、駆け寄っていくのである・・・。

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