文学少女シリーズの三題噺をもとに制作しました。
宜しかったら、お読みください。


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文学少女シリーズより三題噺「初恋」「苺大福」「国会議事堂」

ある晴れた夏の朝、高校生になった少年は、なぜか国会議事堂の前に突っ立っていた。

そこで偶然にも、小学生の頃に初恋をした少女に出会った。

その少女は、髪が肩まですらりと伸びた黒髪で、清楚という言葉がふさわしいほど、おしとやかで、かれんで、やさしくて、誰からも好かれていた。

 

「なっ、なんでこんなところにいるんだ?」

 

「きみこそ、どうしてこんなところに? ここ国会議事堂だよ」

 

「お、おれは、そう! 暇つぶしだよ! 暇つぶし」

 

「 ふーん、そうなんだ。暇つぶしねーー。なんだか似合わない。ふふふ」

 

「そ、そんなことないだろ。そっちは?」

 

「わたし? わたしはねーー。秘密(笑)」

 

「はぁ? なんだよそれっ。教えてくれたっていいだろ」

 

「だって、教えたくないんだもーん」

 

「教えろよ」

 

「 嫌です(笑)」

 

「おれは教えただろ、そっちも教えるのが筋だろ」

 

「 ふーん、そんなこと言っちゃうんだ。女の子の秘密を無理矢理聴こうとするんだ。側から見たら、どう思うのかな?」

 

「側から見るとだって? そりゃ、男の方の印象が悪いだろうな」

 

「 でしょ? だから、教えてあーげない。フフフフフ」

 

「なんか変わったな、お前」

 

「そう? そんなことないと思うけど」

 

「変わったよ。前はそんなに笑わなかった」

 

「…………気のせいだよ。あの時だって笑ってたよ」

 

「そうか? そうなのか? 単なる気のせいか?」

 

「うん、気のせい、気のせい」

 

「そっか。気のせいか。あっ、あのさ。実は話があるんだ」

 

「なぁに?」

 

「じ、実は、お、お前の、こと…………」

「わたしのことがなに?」

 

「す、す…………」

 

その時突然、空から巨大な苺大福の箱が降ってきた。

巨大な苺大福の箱はなぜか、ピンポイントで少女の頭にあたり、少女はコンクリートの地面に叩きつけられた。

 

少女の身体は、コンクリートの地面に血がドバドバと流れていた。

すぐに少年は、救急車を呼び、事の次第をかいつまんで説明したが、空から巨大な苺大福の箱が降ってくるなんて奇怪な話を誰が信じるだろうか。

 

少年は叫んだ。

「こ、こんなことって……こんなこと、あるわけがない!!!! そうだ、これは夢なんだ。初恋の女の子に偶然出会って、告白しようとした瞬間に、その子は出血多量で意識不明になってしまうなんて、あるはずがない!

 

しかも空から巨大な苺大福の箱が降ってくるという摩訶不思議な出来事が現実に遭遇するはずがない!」

そうだ、夢なんだ……なんだ夢か」

 

しかし、これが現実でした。

密輸しようとしたヘリコプターがバランスを崩し、落としてしまったのが事の真相だった。

 

そんなことは誰も、露ほどにも思わない。

普通に考えて、ありえない出来事なのだから。



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