究極生命体カーズ 襲来   作:僕は悪いスライムじゃないよ

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 前回も誤字と不必要な言葉を探していただき、誠にありがとうございます!

 今更ですが、三人称視点や描写での「!」の文はジョジョのナレーターや某解説王に脳内変換すればオーケー。
 後、思ったよりも執筆速度が遅いせいで、ストックが残り少なくなりました。


第六話 夢路

 墓地。それは、生涯を終えた死者の霊魂が眠る場所。大小の墓石が間隔を開けて並べられており、中には長年の雨風により風化しているものも存在する。

 まさに、人生の終着点。ここには、人間の生者はいない。

 

 「おやおや、また人間()が来たようですね」

 

 抑揚のない声が、無人の寺の中で木霊する。声の元をたどると、一人の青年が胡坐をかきながら、座っていた。

 顔はまるで血が通っていないかのように青白く痩せこけており、髪も乱れている。しかし、最も印象に残るのは、どんな光をも呑み込むような虚ろな眼差しだ。

 

 腰を上げ、両扉へとゆっくり近づく。そして、腕にわずかな力を込め、木扉を開ける。

 解き放たれた扉の外は、月によって灯されている夜の世界が支配していた。深夜を過ぎたこの時間帯なら普段は、誰もいないだろう。

 

 今夜は違う。扉の前には、月明かりで照らされている一人の男が佇んでいる。この明治の世では、珍しい洋服を全身に纏いながら。

 

 「やはり、ここにいたか」

 

 低く澄んだ声が、夜風に乗って響く。

 

 

 

 

 

 

 左目に下弐の文字が刻まれている鬼。十二鬼月と呼ばれる者か……  おそらく、においや気配から察するに、喰らっている人間は数百……いや千は軽く超えていよう。

 人間を取り込んだ数に比例して、奴らはさらなる力を得ていた。ならば、この鬼もあの女の鬼と同様に妙な技を必ず持っているはず。それも原理はわからぬが、心に干渉するような異能をだ。

 

 

 カーズは、確信している。相手に備わっている能力が、精神になんらかの影響を及ぼすものである事を。

 町でもかなりの精神的ショックを受けていたと思われていた者が、ある日を境に急に立ち直ったという会話を耳に挟んだからだ。それも、このニか月の間に片手で数えられる程の人数ではあるが、同じような事が起きているらしい。

 加え、一部の民衆の中で噂をされていたが、行方不明者も急激に増加している情報も掴んでいた。もはや鬼がこの町や近辺にいるのは疑いようのない事実であったのだ!

 

 

 その技、見せてもらおうではないか……

 

 

 「貴様、鬼であろう。一応、聞いてみるが貴様の主はどこにいる?」

 

 「鬼殺隊の身なりをしていないというのに、なぜそのような事を聞くのでしょうか? それに貴方のような得体のしれない男に、あの御方の居所を私が教えるとお思いですか?」

 

 薄水の顔を覗かせている青年は感づいていた。この男からは、()()()()()がする。でも、弱者ではないことに。

 服の下からでもわかる鍛えられた筋肉。体軸のぶれをまったく感じさせない佇まい。何よりも、鬼と対峙しているのに、一切の恐怖がその目に宿っていない。

 

 

 

 

 たとえそれが常人を超えた鬼狩りであったとしても、鬼である私を前にしたら多少は怖気づいていましたね……

 ですが、この男は違うようですね。まるで、私たち鬼を自分よりも下等なものであるかのように見下している。

 

 「貴方、鬼と何度も遭遇し倒しておられるようですね。以前、出会った柱にどことなく雰囲気が似ています」

 

 感情が籠っていない声で、淡々と事実を述べるようにカーズへと語り掛ける。

 

 「もっとも、最後に勝利を手にしたのは私でしたが」

 

 「柱だと? それが何を指すかはわからんが…… このカーズをそこら辺の烏合の衆と一緒に扱うでない」

 

 「貴方もあの人間と何ら変わる事はありませんよッ!」

 

 

 右足に重心を置き、地面を蹴り上げる。地表の軽いひび割れと共に、圧縮された空気が巻き起こる。

 

 視界にとらえた男が、どんどん大きくなる。敵である男を屠らんと、拳を強く握りしめながら急所をめがけて振り切られた。

 

 衝撃を受けた肉は無惨にも飛び散り、甲には生々しい血がこびりつく。

 

 

 ……はずだった。少なくとも鬼にとっては。

 

 現実は違う。

 拳は、最初からそこには何も存在しなかったように、ただ宙を舞うだけ。

 目の前には、放たれた衝撃波によって、ボロボロに崩された墓石しかない。

 

 (振りかざす瞬間は捉えたはずですが、視界にいませんね)

 

 口にあった唾が自然と喉奥に吸い込まれる。

 首筋に汗を伝わせ、文字が刻まれている目をせわしく動かす。視界に男を捉えることはなかった。

 

 「——貴様の目はなんのために付いている? ここだ」

 

 体全体を勢いよく、声のする方へと振り向かせる。

 

 両腕を組み、ひときわ大きな墓の上に両足をつかせ、男が立っていた。目は、冷たくこちらを貫きながら。

 

 

 

 

 ——攻撃される直前に、鬼の後ろへと飛び越えただけであるというのに、私を見失うとは……

純粋な身体能力では、私の足元にも及ばぬか。

 

 「十二鬼月と呼ばれ主に仕える存在なら、力を示すがよい! すべての能力を使わずして死ねば、ただの犬死になってしまうぞ」

 

 それは、圧倒的覇者によるーーまるで最後通牒のようなもの! もしカーズにとって、これ以上戦う必要のない存在と見なされれば、すぐに波紋の餌食となるだろう。

 

 「敵である貴方に言われるまでもありません…… 」

 

 青年の体の右半分が、沸き立ち始める。膨れ上がった物体は、少しずつ体積を横へと増し始め分離する。

 本体から分かれたと思われるものは、最初は輪郭が定まっていなかったが、わずかな時間で体を形成する。それはあの痩せこけた鬼から分離したとは思えない程、背丈が高く、全身に筋肉の鎧を纏っていた。

 

 おそらく本体と思われるもう一方もその姿を変えてしまう。顔は青白いままだが、体全体に肉が付き、先ほどよりも力強さを感じさせる風貌となる。

 両手にも変化が表れている。左手の平には、“夢”という文字が書かれている目が生えていたのだ。逆の手のひらには、“幻”の文字が刻まれている目が備わっている。

 

 

 

 「ほう、分離する能力も持つのか……」

 

 カーズは、己の敵が変化したのを冷静に確認する。

 

 ——分裂した鬼と戦うのは、初めてではない。……が、このように互いが全く違うものへと変位するのは今まではなかったな。

 

 視界に鬼を収めながら、冷静にモルモットを見ているかのように対象を分析する。表情には、余裕しか宿していない。

 

 十二鬼月と知ってもなお自分に向けるその態度。目の前の男の何もかもが気に入らなかったのだろう。

 細身の方の鬼は苛立ちのこもった声で怒鳴る。

 

 「わざわざ変化を待ってくれたその余裕。ますます癇に障りますよ!」

 

 叫声が合図であったかのように、筋肉が膨れ上がっている鬼はカーズに目掛けて、砲弾のように駆ける。

 

 「身体能力のすべてが先ほどよりも、かなり上がっているようだな。面白い」

 

 己の両手を顔の前にかざし、かまえの姿勢をとる。

 渦状の竜巻をまとった蹴りが、胴体めがけて愚直に向かってきた。勢いは、近づくほど速度を増す。

 

 (フッ、無駄なことを!)

 

 カーズは攻撃をさけることもなく、両腕を交差させ、正面から受け止める。

 体を微動だにせず受け止めるが、衝撃は腕から地面へと伝わり、細かなひび割れと共に地面が陥没した。

 

 余波が空気を伝わり、辺りにあったものを破壊しつくす。墓は小さな石片と化し、供わっていた花もいつの間にか消滅してしまう。

 

 

 

 渾身の攻撃を受け止められた鬼は、片足が地に着くと間を置く事なく攻撃を繰り出す。体を大きく右へと振り、まだ宙に浮いているもう片方の脚を相手の頭にめり込ませようとする。

 

 しかし、男の袖の先から見える剛腕で、いとも簡単に受け止められてしまう。

 

 何度も攻撃が必死で繰り出された。

 

 相手の急所に大木のような腕を振り切る攻撃。

 左で攻撃するかのように見せて、右で攻撃をするなどの陽動。

 墓地にあった大木を根元から抜き、腕に力を込め放り投げる攻め。

 力を一点にのみ集中させ、動きも必要最小限に抑え、相手へと畳みかける。

 

 だが、どこを攻撃しても、結局は受け流されてしまう。

 目の前にいるはずだが、残像ではないかと思う程、何も当てることができない。

 もはや、どうしようもないと本体である鬼は思ってしまっていただろう。

 

 あの血鬼術がなければの話だが……

 

 

 

 「どんなに強靭な肉体を持とうが、このカーズを打ち負かすことは不可能。いい加減それが、身にしみて理解したであろう!」

 

 出会った時の鬼と比べ、はるかに肉弾戦に優れている鬼であったが、この究極生命体には劣ってしまう。それも天と地の差を感じさせるようなもの!

 

 そろそろ、仕掛けてくるか…… そうでなければ、貴様の命が没する時だ。

 

 予測は当たる。先ほどまで戦闘を繰り広げていた鬼が、突如周りを荒ぶるかのように暴れだしたのだ。それはまるで、小さな子供が癇癪を起している状況を連想させるもの。ただし、背丈が七尺はある大の鬼がやると、みっともないとしか言えない。

 

 墓を縦横無尽に破壊し、乾燥している褐色の土を力を加えて、何度も蹴り上げる。普通の人だったら、少量の土埃しか飛ばないだろう。しかし、化外である鬼がやっているのだ。

 鬼だけではなく、カーズも含んだ周り一体が濃厚な土の霧に包まれる。一寸先も視界では捉えることは出来ない。

 

 (視界を奪っているつもりか。次はどう行動する、ヌ?)

 

 目の前から、風が流れてくるのを知覚する。鬼が又自分を攻撃しようとしているのを。大きな足音と息遣いを鳴らしながら、真っすぐと向かってくる。

 

 視界に、風圧と共に岩のような鍛え上げられた拳が現れた。

 

 右の上腕で受け止め、先ほどと同様に防ぐ。だが、攻撃を防がれたというのに、目の前の鬼は焦るような素振りはしていない。

 

 攻防によって生じた衝撃が、立ち込める濃霧をかき消される。と同時に。

 

 突如見計らったかのように、一つの人影が大鬼の背後から飛び出る。人影はカーズを視認すると、両手を相手へとかざしてきた。

 

 待ちわびたぞ——来い!

 

 大鬼の背後から現れた人影を両眼で見やる。空中を舞う存在。それは変化により、両手の平に目を宿した鬼。青白い顔からは、作戦がうまく行き、ほくそ笑んでいるかのような表情が写し出されている。

 

 長くは続かない視線が互いを交差する。

 鬼の手の目が脈動し、カーズと目が合う。次の瞬間、目に書かれている夢幻の文字が灯篭のごとく光り、カーズの体を硬直させたのだ!

 

 なるほど、強制的に相手を眠らせる事も出来てしまうのか……

 

 睡眠を必要としないというのに、自ずと視界が暗転してしまう。最後に目に入ったのは、口角を三日月のように広げて冷笑する鬼。

 

 

 

 

 

 

 (ここは何処だ?)

 

 鬼の血鬼術にかかってしまったカーズの視界には、のこぎりの歯のように連なっている薄墨色の山脈が捉えられていた。

 

 自分の今の状況を把握するため、首を動かし視線を変える。頭上には、真円の月が淡い光を発しており、葉のない木を照らす。

 それは、高層ビルの大きさを誇る巨大な枯れ木であったのだッ!

 

 私は、この場所を知っている……

 

 頭の中で呟くカーズ。無意識のうちにそこに向かって足が進んでしまう。

 

 傾斜のある山を土砂を巻き起こしながら、滑るように下り走り続ける。

 少しして、かなりの幅がある川が眼前に迫るが、それも強靭な足で飛び越えた。

 

 

 そして、岩盤の上に聳える巨木の前へとたどり着く。

 一帯は、いくつもの太い根によって岩盤が押し上げられ、凹凸に地上へ張り付いている。これ程の大きさを持つ根が地上に這い出ている光景は、珍しいと言えるだろう。

 

 しかし、それよりも目に付くのは、根元にある岩盤である。

 そこには、古代遺跡に存在するような模様が彫られ、周りには明らかに人の手を介して建てられた建造物が並んでいたのだッ!!

 

 ひどく懐かしい情景にとらわれるカーズ。

 それもそのはず。なぜなら、この光景は現在の地球からは完全に消え去り、二度と見れないはずだからである。

 

 肌を突くような夜風が頬を伝わるが、気にとどめず一望し続けた。だが、後ろから迫る複数の足音によって、意識を切り替えさせられる。

 

 (この私に近づくまで気配を感じさせぬとは。一体何者だ!)

 

 すぐさま、輝彩滑刀を腕から生やした戦闘態勢へと入り、足音のする方へと体を回す。

 

 「——貴様らはッ!」

 

 目に映るのは、自分と同じように額から角が生えている存在たち。動物の毛皮を剥製し、簡単に加工した服や石を削り彫刻した装飾品を纏っている。その服装は、どこか原始的なものであった。

 

 そう! カーズはこの者たちに見覚えがあったのだッ! しかし、その者たちはこの世にはいてはならない存在。なぜなら、この自らの手で斬殺した存在だからだッ!

 

 一瞬の驚きを見せるが、すぐに平常心を取り戻し己の前にいる存在を凝視する。

 

 すると、集団の先頭にいた一人の老婆がカーズの方に、赤い衣服を揺らしながら歩み寄る。その姿は、どこか貫禄があり、他の者たちよりも多くの装飾品を身に纏う。

 

 「カーズよ。なぜ、そのような所に突っ立ておるのだ? このような光景は見慣れておろう。もうすぐ、英雄であるおぬしを祝う宴が始まる。皆の者が首を長くして待っておるぞ」

 

 「この私が英雄だと?」

 

 「そうじゃ。おぬしのおかげで、我々闇の一族は新たな進化の過程へ辿りついたのだ。だから、感謝の意を込めて二千年に一度宴を開いているではないか。それも、すべての者を集め盛大にな」

 

 

 「そうだぞ、カーズ! お前は我ら一族の誇り。もし、お前がいなければ我々は太陽とは決して相容れぬ存在として人生を迎える事となっていただろう。その常識をお前は覆し、新た道を示してくれたのだ!」

 

 「然り! 然り! 然りッ!」

 

 野太い声が老婆の後ろから聞こえ、それに呼応したかのように賛成の意を表す連呼がカーズの耳を覆う。

 

 「もうすぐ、宴の準備も終わる頃だ。英雄であるお前を放置して、宴を始めてしまっては、族長としての私の立場がなくなってしまう。もちろん、来てくれるな?」

 

 「…………」

 

 しわがれた声に対して、無言を返すカーズ。だが、それは無言の肯定と捉えられ、勝手に話が進められる。

 

 「ならば、この私に付いてくるのだ。今回の宴はいつもよりも豪勢にしてある。きっと、おぬしも気に入ってくれよう」

 

 言葉を言い終えると、老婆は先導するかのように先へと進む。引き連れていた男たちも踵を返し、列をなして己の長に続く。

 その者たちからはカーズに対する殺気や敵意は一切感じられず、むしろ敬服しているようにすら見えた。

 

 両腕にある輝彩滑刀をとりあえず収め、集団の後ろを追う。だが、口は尖っており、目の周りは影で覆われている。

 

 夜空の下で、固く冷たい地面に何度も足を踏み進む。暫くすると、少し急な段差が現れそれを昇る。その先には、いくつもの絵画が描かれたドーム状の建物が大きな口を開いており、トンネルを突き進む。

 

 穴の先に見た光景。それは、等間隔に置かれた松明によって作られた道。その横には長い石机が配置されており、幾人もの人影が机に顔を向け座っている。

 

 道を進むと、まるで帰還した英雄を見つめるよう憧憬の視線が集中した。本来なら、絶対あり得ることのない……

 

 「こっちじゃぞ。カーズ」

 

 奥から手招きをしている老婆。それに従い、奥にあった石階段を昇ると、その先にあった敷物の一つへと腰を掛ける。

 

 英雄(カーズ)が座るのを見届けた老婆は、少しの間を開けてから、威厳のある声を響き渡たらせる。

 

 「皆の者。静粛にせよッ!」

 

 瞬間、いくつもの話し声で覆われた空間に静寂が訪れた。己の族長の話を聞くために、皆が顔を向けたのだ。

 

 「今宵は、我らが石仮面の力によって、新たなる進化を遂げて約六千年である! この進化は新たな可能性を導いてくれたのだッ!

 我々は、今までは暗闇の中でしか生きられない存在であった。たとえ、他の動物には降り注がれる暖かな光でも、我々が浴びてしまえば体は燃え上がり消えてしまっていた。

 今やそれは過去のもの! 

 石仮面によって、我々は日の光を当てられても死ぬことのない体を手に入れたのだッ!

 いつの日になるかはわからないが、我々はいずれ手に入れるだろう。太陽を完全に克服した体を! 我々の英雄であるカーズにこれからもついていけばッ!」

 

 抑揚のある声で、カーズの成果を褒めたたえる演説が繰り広げられる。聴衆は皆真剣な眼差しで傾聴し、終わりが近づくにつれ相槌や喝采が場を支配した。

 その光景はカーズが望んでいたものである。

 

 かつてならば……

 

 

 ——くだらんな。実にくだらん……

 

 両腕を組みながら、(まなこ)に写る者たちを心の中で冷笑し、蔑む。

 涙を浮かべ、嬉しそうな顔をする生みの親たち。

 両手をたたきながら、カーズ(英雄)の名前を復唱する男たち。

 隣で高々と褒めたたえる族の長。

 

 己の功績を称賛するすべての者が、ただの張りぼてにしか見えないでいた。

 

 

 ……私は、かつてさらなる力を得るために石仮面を作り出した。それにより、体に秘められた力の一部を開放することに成功したのだ。より多くの生命エネルギーを必要とする体になったが、この力を手に入れるためには仕方のないことよ。

 そして、私は石仮面の力を隠す様な真似はしないでいた。この素晴らしい力を望むのであれば、一族と共有しようとすらも考えていたのだ。

 だが、この私の考えに賛同したのはエシディシただ一人のみ。他の者たちはこの考えを拒み、それどころかこのカーズを恐れていた。

 

 やつらの表情からは、日に日に恐怖と義憤に駆られるのが見て取れた。やがて、一族の者すべてを集めさせ、この私の抹殺を企てるまでに至ったのだ。

 

 「奴が存在するのは危険だ!」

 

 「あいつをこの地球から消してしまわなくてはならない!」

 

 「やつを殺してしまわなくてはならない!」

 

 次々と己を殺そうとする雄叫びが聞こえてくる。右手に握る石仮面が軋む音を気にかけられない程、(はらわた)が煮えたぎる感情で被われてしまう。

 

 「馬鹿者どもがッ! 太陽を克服したいと思わないのか!」

 

 (貴様らは、日の光が決して差すことのない……暗闇しかない世界を永劫に彷徨えと言うのか)

 

 「何物をも支配したいとは思わないのかッ!!」

 

 (何物にも束縛されることのない生き方を夢見ないのか!)

 

 心の声とともに、己の考えを拒否するものに自分の胸懐を切実に吐露する。

 

 「あらゆる恐怖をなくしたいとは思わないのかッ!!!!

 

 大気を揺さぶらせ、ひしめき合う感情が混じった怒号を放つ。

 

 しかし、やつらが殺意を収めることは終始なかった。現状を当然のものと受け止め、さらなる変化を求めることはせず、不変に甘んじたのだ……

 

 貴様らには同族としての最後のチャンスを与えてやった。 ……が、それを蒙昧にもはねのけたッ!

 

 「では…… 滅びろ」

 

 自分に襲い掛かる愚劣な者たちに慈悲などない。あらたに収得した光のモード、輝彩滑刀でやつらを切り裂く。

 力の差は語るまでもなく歴然ーーものの数分もせずに大地は血に染め上げられ、夥しい骸のみが横たわっていった。

 

 「愚か者どもが……」

 

 自分が皆殺した者を最後に睨みつける眼差しで見やる。

 

 その後、私は己の仲間と事実を知らぬ二人の赤ん坊と共に究極の力を目指して長い旅に出たのだ。

 

 

 

 

 目をつぶり、過去を思い返すカーズ。やがて、静かに目を開ける。

 眼光は先ほどよりも鋭く。まるで、すべてを凍てつく波動のようなもの!

 

 このように、カーズは今見えている光景が現実ではないことを認識していたのだッ!

 

 それは、ひとえにカーズの強すぎる自我にもよるものであったが、もう一つの理由がある。

 実は、鬼の血鬼術にかかる前にとある仕掛けを体内に残したのだ。

 

 なんと、自分の体内にもう一つの脳とそれに繋がっている五感を備える器官を作り出していたのであった! つまり、司令塔である脳をうまく使えこなせなくても大丈夫なように、予防線をはっていたのであるッ!

 

 日本の食卓で時々見られるタコ。その体は驚異的であり、体の中には九つの脳と三つの心臓を宿している。それをカーズは応用したのだッ!

 

 カーズは視覚を通して、鬼の技にかかってしまってしまい、夢を見せられていた。

 だが、もう一つの脳と感覚を共有していた別の視覚器官は血鬼術にはかからず、外界の情報をつねに脳にインプットしていたのだ! つまり、カーズにかけられている能力は不完全であったと言えるッ!

 

 そのことにより、夢を見ているが自我ははっきりとし、これが夢であるという事に気づく。まるで明晰夢を見ているかのようであっただろう。

 

 (この茶番を終わらせなければ……)

 

 カーズは己の意識を集中して、興醒めするような幻に終止符を打とうとする。

 

 

 

 傍にいたであろう二人の人影が目に入り込むまでは。

 

 

To be continued>>>

 

 

 




*闇の一族

 見た目は人間とあまり変わらないが、人間とはまったく別の進化を辿った生物。人間が文明を持つより遥か太古から生きているが、闇の中でしか生きることができず、太陽に当てられたら消滅してしまう。
 代わりに、無惨が比喩なしで赤ん坊に見えるかのような超長寿の生命体。カーズより明らかに年配の一族って何歳だろう?

 カーズはこの一族の生き残りが鬼を創造し、支配下に置いているのでは? という仮説を前提に行動している感じです。(第三話)


*柱の男

 ジョジョや一部の関係者の人間たちが、無機物の壁や柱で眠っていたカーズたちに勝手につけた呼称。
 人間達にこのように呼ばれている事を知っているであろうカーズであったが、自分たちが活動していない日本と時代が異なることもあり、鬼が柱について言及しても別の者を指しているという判断を下しています。
 ですので、カーズにとっては何を言っているんだこいつ? 状態。
 ただ今回の戦闘により、鬼がわざわざ言及したので、柱という存在が何か重要な意味を持つ事をカーズは知りました。


 この小説では区別化のため、闇の一族が石仮面を被ることにより新たな進化の段階へと進んだ形態を表す際に使わせてもらいます。
 太陽の光に当てられても死ぬことはなく、石になるだけで済んでしまう。加え、闇の一族よりも強力な力を持ち、「流法(モード)」という戦闘術を身につける。(アニメ版より)

 二千年の眠りにつくだけで、いつまでも生きられてしまう。食物連鎖の頂点に君臨する生物。
 一部の鬼と同じで、全身が消化器官である事。
 一定以上の強さの波紋でなければ、傷すらつけられないなどの能力を持つ。
 カーズを含め四人しかこの世に存在していなかった。カーズが究極生命体になったため、もうこの世からは潰えた存在たち。
 
 
 *作者の余談

 ①今回の十二鬼月が最後のオリジナル十二鬼月になる予定です。順番はこの十二鬼月の後に轆轤が下弦の弐になった感じ。

 
 ②輝彩滑刀に関する話。
 明らかにこの刃のリーチが届いていないはずなのに、敵を切り裂く場面が原作にありましたが、作者は真空刃でも放ったのではないかと勝手に考えております。(ロッジの中にいたドイツ軍を切る場面)
 もしくは、輝彩滑刀自体が伸びたのかも。




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