生まれ変わったら世界七大美色のブルー担当でした   作:日本茶

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第二章:ハンター試験編
第四話:知らぬままにハンター試験


「アタクシは一人で生きていける人間だと自負しておりますけれど、でも、一人で幸せに生きていける人間ではないとも自覚しておりますの。それじゃ意味がないと思いません?」

「はあ……」

「でも一緒にいてくれるなら誰でもいいという大胆な神経も持ち合わせておりませんわ。人間、ある程度共通した部分のある人間としかつるめないようにできていますもの。アタクシの場合、この求める“共通した部分”というのが曲者でして、今までそんな相手と出会うことができなかったのですけれど」

「なるほど……」

「でも今この日、アタクシはあなたと出会いましたわ。オリヴィエ。これってある種の運命かなにかだと思いませんこと?」

「そうか……ところでオセロット」

「はいですの」

「その話は、私がここに連れてこられたことと関係があるのか?」

 

 意を決して問いかければ、にっこりと微笑んで視線をそらすオセロット。おもむろに口笛まで吹き始めやがった。どうやらほとんど突発的な行動だったらしいと理解して、嘆息。

 

 いま私がいるのは、謎のエレベーターの中だ。

 目の前には何故かステーキが置いてあり、じゅうじゅうと美味しそうに肉の焼ける音と香ばしさが密室で充満している。

 

 ……状況を整理しよう。

 

 私はさっきまでとある誘拐犯達に捕まっており、全員無事に脱出する方法を考えあぐねているところを、この女に助けられた。そう、それから食事に誘われたんだ。さっきぽつりとこぼしていた念というものについて教えてくれると言っていた。それを信じてほいほいついてきた先が所帯じみた定食屋だった。

 この時点まではまあ、ここで食事をしながら説明してくれるのだろうと考えていた。が、弱火でじっくりと焼くステーキ定食を二人分オーダーしたあたりから変な空気が漂い始めたのだ。他の客はみんなカウンターやテーブルで食べているというのに、私とオセロットだけ奥の部屋へと誘導される。中にはしっかりステーキ定食らしきものが置いてはあったが、ほかには窓も何もない殺風景な部屋だ。

 さすがに怪しさを感じて後ずさろうとした瞬間、オセロットの体型からは想像もつかないほどの剛力によって全身をホールドされ、部屋の中へと引きずり込まれた。

 

 音をたてて閉まる扉。上にあったものが下にいくとき特有の浮遊感。この時点で部屋の正体がエレベーターだということと、オセロットが私をどこかに連れて行くつもりだということに気付いた。

 

「……オセロット。いちおう言っておくが、私はこう見えても純潔なんだ。手を出すなら優しくしてくれよ」

「そ、そういう意図でここに連れ込んだんじゃありませんわよ!?」

 

 からかい半分で冗談を飛ばすと結構いいリアクションが返ってきた。赤面しているあたり向こうも処女だろう。ちなみに嘘はついていない。前世じゃその手の行為の経験回数なんて三ケタは軽いが、それはあくまで祝園踊子としての話。オリヴィエに生まれ変わってからはキスさえしたことがない。

 誘拐されたのだって今回が始めてではないが、そんな修羅場をくぐっていながら貞操は守り通してきた。前世の私なら間違いなく輪姦コース確定の状況に陥っても大丈夫だったり、ひょっとして今世の私はかなり運が良いほうなのかもしれない。このまま行けるところまで身の潔白を保ち続けてみようか。

 

 赤面状態から回復したオセロットが場を取り直すようにこほんと咳き込む。

 

 現在のオセロットの服装は、さっきまでのドレスではなくアラビアのダンサーめいた衣装だ。上はブラジャーに宝石をつけまくったような派手でいて露出の多いトップス、下はトップスと同じくじゃらじゃらと装飾しまくっているものの、露出は少ないマーメイドスカート。共にアゲハ蝶の羽に薔薇を散らせたような毒々しい色彩をしている。

 どうやらドレスという服装にこだわりがあるわけではなく目立てれば何でも良いようだ。この店に来る前に入った適当な服屋で「いちばん派手な服を頼みますの!」と叫んでいたから間違いない。

 

「とにかくですの。詳しい事情はあとで説明するとして、アタクシもあなたと同じで違う世界からここに来た身なのですわ」

「へえ、あんたも誰かに殺されて気づいたら生まれ変わってたのか」

「殺され……いえ、学校の帰り道に神様が降臨してきてそのまま連れてきてもらっただけですわ。失礼。あなたのほうは、アタクシよりよっぽどハードな事情がおありなんですのね」

「昔の話さ」

 

 オセロットの顔が少し曇る。私は私で、さらりと放たれた言葉に内心かなり驚いていた。私以外にもここを異世界と認識している人間がいたのか。神様がどうのこうの言っているあたり細部はかなり違いそうだが、そうとわかれば親近感が湧いてくる。この親近感に突き動かされるまま、オセロットは私をここまで連れ込んだのだろう。

 

 ん? そういえば、けっきょく私をどこに連れて行くつもりなのだろう。

 

 私の疑問に応えるようにして、ずっと続いていたエレベーターの浮遊感が停止した。ちん、と音をたてて入ってきた入口が開く。

 扉の向こう側には、幾人もの屈強な男たちがたむろしていた。私よりも弱そうな奴らばかりだが、何人かはヤバそうなのも混じっている。何より数えられる程度しか女がいない。……むさ苦しい!

 

「あら、もうついてしまいましたの。お話はまた今度ですわね」

 

 到着したことに気付いたオセロットは、私を放ってさっさとエレベーターを降りる。ここでじっとしている訳にもいかないので私も後を追った。

 

 周囲の人々から、何なんだこいつらはとでも言いたげな視線がちくちくと刺さってくる。あまりにも場違いなファッションのオセロットとどこからどう見てもひ弱なガキな私の組み合わせは、この猛者集団の中ではかなり悪目立ちするらしい。

 いや、さっきちらりと見えた銀髪の少年は私よりも年下だった。ならばこの視線の原因は十中八九オセロットに違いない。

 

 当の本人はいといえば、なんだか豆によく似たスーツの男から二枚のナンバープレートを受け取っている。その二つをじっと眺めて、一枚をぽいっと私に投げ渡してくる。片手で受け取れば、そこには『333』と書かれていた。

 

「ゾロ目のほうが覚えやすいでしょう? アタクシは332番ですの。お譲りいたしますわ」

「ありがとう。ところでオセロット、いい加減ここが何処だか教えてくれ。どう見てもアンタの家とかではねーだろ」

「それはもちろん。アタクシ家に住まわせるなら美男美女に限りますもの」

「アンタの性癖は今どうでもいいんだ」

 

 どうにも扱いづらい女だった。全て演技でやっているならともかく、どこまで本気かわからない。もしかして全部本気なのか……厄介なことこの上ない。下ネタで少しは意表を突けることが唯一の救いか。

 

「まあまあ、もう少しお待ちなさいな。この世界の主人公があと数時間で到着するはずですわ」

「主人公……?」

「あ、言い忘れてましたのね。この世界、アタクシたちが元いた世界で発売されていた漫画の世界なんですのよ」

「はあ!?」

 

 小声で耳打ちしてくるオセロットの言葉に思わず叫ぶ。それとなんだか四角い鼻をしたおっさんが話しかけてきたが、いまはそれどころではない。

 

「なあきみ、新人だろ? 俺はトンパって言うんだが……」

「本当かよ。この世界が漫画? いやまあ、そりゃ盗賊団がどっかの部族を襲ったとかいうニュースが平然と放送されてるし、日本とかアメリカとか存在しねーし、別世界だとは思ってたけどよ……」

「あのー……もしもし?」

「ひょっとしてさっきすれ違った顔面に鋲を刺しまくった変な男とかつるっぱげの忍者も漫画の登場人物なのか? どういう内容の物語なのか分かんねーけど、そうと分かったとたん周りの奴らが妙に強く見えてくるよ……」

「あー……ごめん。とりあえずジュースここに置いとくから飲んでくれよ。ははっ。じゃあな」

 

 独り言をぶつぶつと呟いていたら、気味の悪い奴だと思われたのかおっさんはどこかに去っていった。足元にジュースの缶がオセロットと私で二本分。よく見れば一度プルタブを明けてからはめ直したような跡があったから、飲まずに放置することにした。

 

 気を取り直してオセロットの姿を探す。が、後で話すの宣言通りにいま会話する気は無いのか、オセロットは数少ない女の一人に絡みに行っていた。

 

「ポンズちゃーん! お姉さんとお話しましょうですわー!」

「きゃっ!? ちょっと、急に帽子ひったくらないでよ!!」

 

 女の被っていた大きな帽子の中から大量のハチが飛び出してきて周囲が混乱している。そんな状況で溜まっていた疲れが再び湧き出てきた私は、壁際で静かに眠ることにした。体育座りになって目を閉じる。

 

 それじゃあ、おやすみなさい。

 

 

 

 




必要ない裏情報。
オセロットのスリーサイズは峰不二子と同じだが、峰不二子よりも身長が高いぶん体重が重い。
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