ソードアート・オンライン −電詞都市DT− 作:ラナ・テスタメント
今回は、ずっとバトル!
お楽しみにー。では、どぞー。
■「キリトのサイトモード継続『憲兵師団にて』」
――走れ!
字呼召喚と共にソードスキル発動。片手剣スキル、ヴォーパル・ストライクが、凄まじいエフェクトを撒き散らして赤街を撃つ。
だが、身体ごと突っ込んで来た俺の突きを、赤街は剣身の横に逸れるように拳を打ち込んだ。結果、俺は彼の横を抜ける形で逸れていく――直後、見えたのはニヤリと笑う赤街!
「っ……!」
「お?」
字呼召喚し、スキルキャンセラー! 無理矢理モーションを強制中断して転がる俺の頭上を旋風のような蹴りが過ぎていく。
あのままだったら、直撃貰うところだった。ゾっとしながらも、今度は足、膝を基点に字呼召喚し、身体を起き上がらせる。
今、赤街は蹴りを躱されたせいで身体が泳いでいる状態だ。そこを斬り上げれば、一本取れる。再び字呼召喚し、片手剣ソードスキル、バーチカル・スクエアを敢行しようとして――俺が見たのは、高速で回転する赤街だった。そして、スピンしながら左腕を伸ばしている。あ、マズイ――。
――薙げ、颶風の如く……!
次の瞬間、横面に衝撃が炸裂! ……バックハンドの打撃がぶち込まれた、と分かったのは床に転がされた後だった。
「っ……ぐっ」
「ようやく直撃したか。なかなか恐ろしい反応速度だったなぁ」
ぐらりと視界が揺れる――DTのフィードバックはここまでしっかり再現されるらしい。フレンジーボアの時も思ったが、やはりVRMMOと違うと認識させられる。アバターでありながら生身と同様だと。
悲鳴を上げる平行感覚に呻きながらも、何とか立ち上がる。赤街が追撃を掛けて来ないのは正直、助かるが実戦ではこうもいかないだろう。
無意識に構えたアニールブレードを見下ろしながら、考える。単発のソードスキルも、スキル・キャンセラーを併用した連撃も全て防がれた。なら、後使える手段は、それこそ二刀流か大召喚くらいとなる。
後、もう一手を除けば。それが通じなかったら切り札を切ろうと心に決め、俺は字呼召喚して待ち受ける赤街へと飛び込んだ。
――まだだ、まだ……!
片手剣スキル、デッドリー・シンズ。深紅色のライトエフェクトを纏って放たれる七連の斬撃が、赤街へと放たれ、やはり両の拳が弾く。
やはり、通じない。だが、それでも。
――まだ、上がる!
――無駄だ!
互いに字呼召喚! ソードスキルのモーション終了と同時に放たれる片手剣スキル、メテオブレイク。大振りの斬撃を繰り出し、タックル、更に大振りの斬撃を繰り返す大技だ。
これで赤街の防御を無理矢理こじ開けられるか――と期待するが、赤街は防げないと分かると、逸らし、弾きと攻撃を受け流す防御に切り替える。
これも通じない――”だが、これでいい”。
――もっと速く――!
――いい加減、諦めろ!
しつこくスキル・キャンセラーで追撃を掛ける俺に、赤街はつまらなそうに詞を飛ばす。さっきから全部防いでいるのだ。
堂々巡りを続けられては、苛立ちも募るだろう。”それが狙いだ”。
片手剣スキル、ヴォーパル・ストライクをメテオブレイク終了のモーションに乗せて放つ。しかし、先程と同じ赤街の拳が突撃を逸らさんと走る――ここだ!
――なぁんちゃって。
ヴォーパル・ストライク発動”直後にスキル・キャンセラー”! ソードスキルの発動をキャンセルし、ヴォーパル・ストライクのモーションが中断される。同時に、再びの字呼召喚! 強制的にソードスキルを発動する――!
「なに!?」
驚愕する赤街だが、空を切った左拳は引き戻せない。しかし、なんとすぐさま反応し、右拳で迎撃して来た。構うものか!
――返しは痛いぞ!
片手剣スキル、ハウリング・オクターブ! 高速の五連突きが放たれ、赤街の拳が真っ向から迎撃開始。しかし、さすがに右拳一つでは突きまでしか防げなかった。五連目の突きで、ついに右拳を弾き、そこからの上下上段の連続斬撃が赤街の身体を捉える。とった……!
「っ……!」
苦悶の息を漏らし、崩れ落ちる赤街。後は一撃でも加えれば勝てる。そう確信して、アニールブレードを持ち上げる、瞬間。
――来い、流星の拳よ……!
そんな、詞を聞いた。同時、くっきりと背に紋章を背負う赤街! これは!
「大召喚……!?」
「甘く見てたよ、キリト君。だから――」
――だから、俺の本気を見せよう。
《電詞空間内、100メートルの遺伝詞達に展開許可を与えます》
《召喚紋章:『流星』展開開始:詞速(ラン)》
幾百もの表示枠が、赤街の周囲に一気に展開。それら、全てを承認し、赤街は立ち上がる。
「来い……!」
■TYPE―AA00822:帝級(インペリアル):MeteorStrike(メテオストライク)■
《赤街様の脊髄反射関係を中心に大召喚発動:全遺伝詞召喚、精密反応速度の上限を解除します》
そして、ついに赤街は大召喚を果たした。召喚基部は脊髄。背に紋章が翼のように展開している。
静かにこちらを見据え、来いとばかりに手を振ってみせた。ぐっと息を飲むと、俺は一気に駆け出す。
どのような紋章かは知らない。だから、まずはぶつかってみる!
――行け!
字呼召喚と共にソードスキルを発動、アニールブレードがライト・エフェクトを纏い。次の瞬間、”スキル発動前にアニールブレードは弾かれ”、俺は万歳する形で赤街の前に身を投げ出していた。これは!?
「返しは痛い、だったね」
そう言われたと思った時には、既に打撃が叩き込まれていた。いつ放ったのか、どのような攻撃だったのか、まるで見えなかった。
床に叩きつけられた所で、ようやく自分が倒れてている事を自覚する。なんて速さだ……!
「これが、俺の大召喚だ。キリト君」
「ぐ……!」
痛む横面に――多分、顔面にも拳を入れられたのだろう――呻きながら、俺は何をされたのか考える。
赤街は防御主体のカウンター型の戦闘スタイルだった筈だ。そして大召喚でのリミッター解除は精密反応速度の上限解除。
つまり、最初のソードスキルは発動すらさせて貰えずに弾かれたって事だ。いくらスキル・キャンセラーでフェイントを掛けようにも、発動すらさせて貰えないなら意味が無い。それは、字呼召喚ではもはや勝てない事を意味する。なら……!
「……ユイ、剣をもう一本くれるか」
「パパ……分かりました」
一瞬だけ躊躇いながらもユイは頷いて、DT憲兵師団の剣をインストールする。
《兵装展開:憲兵師団正式長剣:詞速》
現れたのは、いつか握った直剣。DTでの最初の戦闘で握った剣だ。アニールブレードと、その剣を左右の手で掴む。
「二刀流……それが、君の?」
「まだだ……!」
二刀流をDTで完全に――ソードスキルも含めて使うなら、字呼召喚では足りない。赤街の大召喚なら尚更だ。だから!
――この手に剣を、ただ速く、どこまでも速く。誰よりも速く――!
《電詞空間内、200メートルの遺伝詞達に展開許可を与えます》
《召喚紋章:展開開始:詞速》
詞を飛ばすと同時、赤街と同じように周囲にメッセージウィンドウが大量に展開。その全てをやはり承認しながら立ち上がった。
この偽物の世界に、本物の自分を、潜在能力すらも含めて百パーセント召喚する。あの時は一瞬だけだった大召喚を、再び行う……!
■TYPE―AA0777:神級(ゴッド):BlackSword(ブラックソード)■
《キリト様の反射神経関係を中心に大召喚発動:全遺伝詞召喚、反応速度の上限を解除します》
直後、アバターと生身の差異が無くなり、意識がどこまでも冴えていく。
肘から拳にまで展開した紋章が、煌々と輝いた。行ける……!
「それが君の大召喚か……! しかも神級と来たか!」
赤街が歓喜するように笑みを見せ、吠える。俺は一つだけ頷くと、両の剣を構えた。
SAOで、ALOで、GGOで、幾度もそうしたように。両の剣が、ライトエフェクトを纏う――。
「行くぞ……!」
「来い……!」
叫ぶと同時に、俺は再び赤街へと飛び掛かる。先程の踏み込みとは段違いの速度でだ。赤街の肩がぴくりと動き、直後、拳が発射される!
だが、今度は見えていた。大召喚し、上限解除された俺の反射速度は赤街のそれに追い付いたのか、右のライトエフェクトを纏ったアニールブレードを拳へと叩き込む!
拳と刃が、炸裂したかのような音を立てた。二つの力が弾かれる――まだだ! 俺のソードスキル、二刀流ソードスキルはここからなのだから。
二刀流重突進技、ダブルサーキュラー! 間髪入れずに、今度は左の直剣がライトエフェクトを纏い、時計回りに旋転して叩き付けられる。
「く……!」
最初の一撃で体勢を崩し掛けていた赤街は呻きを上げ、しかしそれでも迎撃してのけた。再びのパリィ。本来のゲームなら、ここでディレイを課されるが、ここはDTで俺達は大召喚中だ。まだ、止まらない。
「「おお……!」」
全く異口同音に吠え、身体を前進させる。スキル・キャンセラーを使ったように、両剣はライトエフェクトを継続。次のソードスキルを引きずり出す。対し、赤街はその全てを迎え撃たんと、両の腕を構えた。上等……! 真っ正面から倒す!
二刀流十六連技、スターバースト・ストリーム――大召喚で放たれたそれは、SAOで放った時の数倍の速度にもなった。
脳が焼き付くような知覚で、次々に回転しながら剣を叩き込む。だが、恐るべき事に赤街はこれに追従してのけた。DTの描写限界を超え、霞む程の速度で迫る刃を正確に弾く! 流石だ――だが、まだ……!
――まだ、終わりじゃない!
――そうだろう! そうだろうともさ!
二刀流最上位二十七連技、ジ・イクリプス!
ヒースクリフとの戦い以来となる二刀流最上位の技をスターバースト・ストリームから間を置かず放つ。大召喚により反射速度と知覚速度が加速していくのに任せたまま、太陽コロナの如く全方向から赤街へと超高速で刃が迫り、赤街は迎撃を開始する。
凄まじいまでの反射と速度のぶつかり合いの果てに、それは起こった。
ガシャンと音を立てて、直剣が破砕したのだ。二刀流による連続技と赤街の迎撃に耐え兼ねたのか。しかし、ジ・イクリプスも、後は右の突きを残すのみ。赤街は、耐えてのけていた。これが終われば、負ける。”あの時と同じように”……! そう直感すると同時、閃いた。今なら、あれが出来る――!
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――!」
――届けぇ!
「何――!?」
ジ・イクリプス最後の突きに”合わせて”放たれる、ヴォーパル・ストライク!
一気に加速された一撃が、ついに赤街の迎撃を跳ね退けた。しかし、優緒さんとユイが作ってくれたアニールブレードは、そこで役目を果たしたように先と同じくガシャンっと音を立てて破砕した。構うな!
砕けた左右の剣の柄を握ったまま、俺は飛び上がった。赤街へと攻撃を打ち込めるのは、今をおいてない――!
体術スキル、弦月。真下から跳ね上がった蹴りを、赤街は迎撃する事が叶わず、顎に着弾する。空気が破裂したような音と共に、赤街はノックバックし、俺は床に背中から倒れ込んだ。今、反撃されたら負けるなと確信して赤街を見る。彼はフッと笑い。
「見事……」
ずしゃり、と床に倒れ込んだ。それを見て、ようやく息を吐き出す。大召喚も、いつの間にか終了していた。
「勝ったぁ……」
そのまま大の字になって寝転がり、まさかまたSD化しないだろうなと戦々恐々としながらも、意識を一時手放したのだった。
(第六話に続く)
はい、第五話後編でした。
赤街とのバトルは、ヒースクリフ戦をちょっと意識してみた感じになってます。
キリトにとって、あれも一種の後悔なんじゃないかなと。結局、ヒースクリフにまともな攻撃当てられてない訳で。
そんな感じで一つ(笑)
では、次話でままたお会いしましょう。ではではー。