ソードアート・オンライン −電詞都市DT−   作:ラナ・テスタメント

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なんとここまで戦闘なし。
どうした俺、何があった俺……!?
まぁ、そんな感じの回ですハイ。では、第一話後編どぞー♪


第一話「ようこそ偽物の街、DTへ」(後編)

■「キリトのサイトモード『DT憲兵師団にて』

 

「と……!」

 

 ボードモードからサイトモードに切り替えるといきなり視界がクリアになる。

 この感覚にはまだ慣れないなーと思いつつ、苦笑した。すると、テライ氏が立ち上がる。

 

「切り替える際の違和感はすぐ慣れるさ。君は明らかにマイナス側だしな」

「……? さっきも言ってたけど、そのプラスとかマイナスって?」

「ああ。我々が勝手にそう言ってるだけだが――人種の区別の事だよ」

 

 そう言いながら、テライ氏は顎を撫でる。たっぷりと肉が乗ってるなとか思うと、案の定ウインドウが表示されていたが、もう気にしない事にしよう……。

 

「プラスとは、奏荷(プラス)と読む。現実の中に真実を見出だす者達の事だ。リアルの方を重視する者――程度の認識でいい」

 

 そして。と言い、自らをテライ氏は指差し、俺にも指を向ける。まるで、自分達は同じだと言わんばかりに。

 

「マイナスとは、騒荷(マイナス)――架空の中に真実を見出だす者達の事さ。私や、君のようにね」

「俺や……貴方も」

「そう。元々私は、電話フリークのハッカーと言うマイナス主流者。つまり、騒荷主流(マイナスエリート)でね。外界が苦手なのさ。人に自我を奏荷されて誤解されるのが怖くてね。君もそうだろう! キリト君。私には、君がバリバリのマイナスエリートに見えるよ」

「…………」

 

 それに、俺は何も言えなかった。自分がマイナスエリートと言われ、思い当たるフシは山とある。

 けど、”彼女”の存在がそれを否定する――。

 

「安心していい。プラスもマイナスも、本来どちらも人にあるものさ。我々はどちらか極端に偏ってるだけ。それだけだよ」

 

 そう言って話しを切ると、テライ氏はこちらに歩いて来る。扉を指差すと、笑って見せた。

 

「さて行こうか。優緒君の元に。君のマウスも受け取らなければな――そう言えば、”彼女”はあれで良かったのか?」

「え……? 何の話しで――」

 

 そこまで言った、次の瞬間。憲兵師団団長室がノックも無く乱暴に開けられた。同時に、俺に向かって突っ込んで来るのは――!

 

「パパ!」

「ユイ!?」

 

 ALOでお馴染みのナビゲート・ピクシー状態の、俺とアスナの娘、ユイ!

 ユイは、ひしっと俺の顔に抱き着くなりほお擦りしだす……て、こしょばい。

 

「ゆ、ユイ……! ちょっと、こしょばいから。それに、何でユイがここに?」

「パパったら酷いです! また私にも、皆にも黙ってアバターをコンバートなんかして、こんな怪しげな事して! GGOの時のように置いてっちゃうつもりですかっ!?」

 

 う……っ! い、痛い所を……。

 だ、だって怪しげだからこそ、ユイや皆を巻き込みたく無かったんだけど、年頃の娘である所のユイはぷんすか怒り続ける。

 く……っ! これが、父の心、娘知らずと言うやつか!

 

「パパ! さっきからウインドウに全部表示されてますからねっ!」

「げげ!?」

 

 し、しまった。さっき気にしないようにしたのが、こんな所で裏目に出るとは……。

 しかし、いくら電子世界でオンライン上で繋がっているとは言え、何故に、れっきとした異世界にユイがいるんだろう? その問いに答えてくれたのは、次の来訪者二人だった。

 

《新しいお客様が二名、この頁に入状しました》

 

 :二人のPCの方々がいらっしゃいました。フーブリッキー・テライ・SYS(シス)様と、優緒・ナタス・WAV(ウェブ)様です。

 

「はいはい、旦那は元気ー?」

 

 そう言って入って来たのは、小学生くらいの娘だった。セミロングの金髪に、利発そうな顔立ちをしている。そして、左手にポテトとそれが載ってる大皿を、右手に二〜三歳時くらいの黒髪をポニーテールにした幼女を眠ったままぶら下げていた――て、旦那? い、いやそれに優緒って、確か協力者の……?

 

「……ど、どう言う事なんですかテライさん!? これは通報ものじゃないんですか!?」

 

 旦那って! 旦那って!

 もし、優緒とか言う娘の母親がフーブリッキーって娘なら、明らかに犯罪だろう!?

 そんな俺の問いに、テライ氏はゆっくりと頷くと。

 

「うむ。――私の高尚な趣味だ」

「事案発生――――! てか、旦那あんたかよっ! この犯罪者め!」

「な……! いきなり何を言うのかキリト君。このくらいのサイズの方が捗るだろう!?」

「気にする所が間違ってる――!」

 

 そこまで叫んだ、次の瞬間。いい音がテライ氏の腹から鳴った。

 見るとフーブリッキーが蹴りを容赦無く、テライ氏の突き出た腹に突き入れてた。

 

「ちゃんと、詳しい説明をなさいよ!」

「う、うむ……! ちなみに、彼女は私の妻で、今は高機能(SD)化で五等身になってるだけだ」

「へ……? SD化……?」

 

 そう言えば、入市案内に何か書いてたような……?

 すると、ユイがひらりと顔の前に来て、「これですパパ」っとウインドウに入市案内と詳しいヘルプを見せてくれた。

 

《ヘルプ:SD化について。DTは百倍速の世界です。なので、百倍外界より備蓄熱量(カロリー)を消費します。ボードモードではかなり熱量消費を抑えられますが、サイトモードだと、熱量消費がかなり上がります。また、字呼召喚、大召喚を行うと熱量消費が更に上がる事になります。備蓄熱量の残存が少なくなると、生命維持に熱量を優先する為に、PCデータからプログラムを抜き、PC自体もSD(サイズダウン)化します。また、任意にSD化する事で消費熱量を減らす事や、外見を変える事も可能です》

 

 ――つまり、フーブリッキー。い、いやフーブリッキーさんは、SD化してるだけなのか。て事は優緒さんも、そうなるのか……?

 

「ああ。優緒君は、君のコンバートして来たアバターをこちらのPCにしたり、彼女――ユイ君だったかな? を、君のマウスにしていたんだ。しかし、忙しかったとは言え、またSD化したか優緒君は。青江君にからかわれるぞ」

「当の本人は全く働かない癖にねぇー」

 

 なんか、めちゃめちゃ優緒さんが働いてくれてたらしい。俺のアバターや、ユイをマウスとやらにしてくれてたのか。て、マウスって……?

 

「私はパパの常駐端末って事になってます。メールとか、DT内の処々の事を担当出来ます。後、熱量補給も、パパと共有出来るんですよ」

「熱量補給って言うと、飯の事か。どんな風になるんだ?」

 

 気になって聞いてみると、ユイはウインドウを出して設定変更し、ポテトが山盛りになった大皿に飛ぶと、一つ両手にとってパクリと食べた――て、口の中に広がるこれは!?

 

「ぽ、ポテトの塩味……!」

「ああ、そうそう。×2設定でポテト揚げて貰ったのよ。優緒もこれだし、一応食べときなさい」

 

 そう言って、大皿を机に置こうとするフーブリッキーさん。……確かに、お腹減ってる感じあるし、食べとくかな――と、そこでフーブリッキーさんの右手にぶら下がっていた優緒さんが目を開いた。……そういや寝てたっけ。

 

《優緒様が再起動します》

 

「ふぃ?」

『『あ』』

 

 直後、起きた優緒さんが身じろぎした動作で、フーブリッキーさんの体勢が崩れた。それは、大皿を傾け、彼女の手から滑り落ち――。

 

「パパ、お皿を掴んで下さいっ」

「お? おう」

 

 娘に言われるまま、反射的に手を伸ばす。おそらくサイトモードが俺だけだったんだろう。

 大皿が落ちるまでに掴める――筈が、まだサブプログラムは最適化してないらしく、掴めない。なら、どうするか――と考えた時点で、先程のテライ氏の字呼召喚を思い出した。

 

 ――食べ物を粗末にする事は許さない。

 

 右手が黒い光を一瞬纏い、硝子が割れるような音が鳴る。同時、手の甲の表面に黒の光で紋章が一つ展開。黒の剣が二つ重なったシンボルだ。

 これが、俺の紋章――そう思った時には軽い衝撃と共に右手が皿を確保していた。よしっ。

 

「パパ……その詞(テクスト)はちょっと情けないです……」

 

 なんだとぅと思うが、いきなりそんなカッコイイ詞なんて思い浮かばないって。

 

「貴方器用ねぇ、来たばっかりなのに字呼召喚するなんて」

「いや、まぁ……」

 

 い、言えない……。テライ氏が字呼召喚したのを見た時からやって見たかったから、ちょっとイメージしてたとか恥ずかしくて言えない……!

 

「……あー、キリト君? 忘れてはいないだろうが、今の君は犯罪者設定なので、思考が……」

「は……っ!?」

 

 し、しまった……! あ、穴があったら入りたい。だって、ネトゲユーザーなら、こんなおもしろカッコイイの、試してみたいって思うのが普通だろ。

 

「だからパパ、思考が……」

「だー! もぅ、なんだよこれ!」

「犯罪者設定だから仕方ないでしょ。早く赦免してもらいなさいな」

 

 しくしくと座り込む俺に容赦無いお言葉。くそぅ……。そんな風に落ち込んでいると、新しい人が扉から入って来た。

 

「なんじゃ、騒がしいと思ったらこのカオスな状況は」

《新しいお客様が一名、この頁に入状しました》

 

 :一人のPCの方がいらっしゃいました。青江・正造様です。

 

 扉をくぐって現れたのは、黒髪を短く刈り込んだ、痩躯の男性だった。とは言え、俺のように痩せっぽっちな訳じゃない。徹底的に余分な肉を削ぎ落としたかのような、見事に筋肉質な身体だ。……う、羨ましい訳じゃないぞっ!

 

「む……? お前は――」

「あ、はじめまして。キリトって言います」

「む。礼儀正しいのは良い事じゃ、青江・正造と言う。よろしく頼む」

 

 ――分かり合う為の初歩は、触れ合う事じゃ。

 

 直後、青江さんが字呼召喚。がしっと五割の本物の手で、こちらの手を握ってくれた。

 

 

「さて……で、優緒は、また縮んどんのか」

「せんぱいー?」

 

 手を離し、青江さんが見る先に視線を移すと、床に置いた皿からポテトをひょいぱく、ひょいぱくっと食べる優緒さんが居た。

 

「ははは、相変わらずバカみたいじゃの――」

「せんぱいー」

「て、こらこら! ポテトを掴んだまま、よじ登ろうとすんな!」

 

 油でベタベタになりつつ、青江さんの半ズボンにしがみついてよじ登ろうとする優緒さん。まさか叩き落とす訳にも行かず、青江さんが引き剥がそうとする。こ、これは……?

 

「SD化中は色んなプログラム沢山外れるから、堪えも何も無くなるのよ。ああなると、ただの幼女ね」

「ああ。……どうだろう、フーブリッキー。今度試しに二等しぐふぅ!?」

 

 再びいい音がなるテライ氏の腹――て言うか脇腹。

 ……気をつけよう。SD化には、マジで気をつけよう……!

 

「パパの幼児化……ちょっと見てみたいです」

「ええぃ、んなもん見なくていい!」

「せんぱい、おそといこう、せんぱい!」

「なんか、デジャぶるのぅ。おっさん、坊主連れて行くがいいか?」

「あ、ああ。構わない。アカラベスの所に連れて行って、赦免させてやってくれ」

「さっすがテライさんっ、だてにおなか、でっぱなしじゃないですよね!」

 

 一瞬の沈黙、そしてテライ氏のお腹回りに集まる視線。……うん、確かに太っぱらだ。

 

「……あの時も言ったが、事実じゃが叱っていいぞ。そこの坊主も一緒にな」

「そうしよう」

 

 ……犯罪者設定なんて嫌いだい。

 そう思いながら、正座させられる俺であった。

 

 

(第二話に続く)

 




そんな訳で第一話でした♪
DTの犯罪者設定で涙を流すキリト君。ええ、厨二病なら必ず通る道ですええ。
実際、思考だだ漏れだと間違いなく自殺しますね俺(笑)
では、第二話こそバトルあるといいな♪ ではではー♪
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