ソードアート・オンライン −電詞都市DT− 作:ラナ・テスタメント
そんな第三話後編。どぞー♪
■「キリトのサイトモード」『DT王城内にて』」
「あらあら、賑やかね。優緒、正造。その方が?」
DT王城の、一番荘厳な部屋。その奥まった場所に、一人の女性がいる。
赤紫のドレスに白髪交じりの髪の女性だ。そうか、彼女が――。
「ええ、私がDTの代表、十三亜神のアカラベス・チューブズリーブです。キリト、異世界からの来訪者よ。歓迎しましょう」
そう言って、椅子から立ち上がり出迎えてくれるアカラベス女王。そんな彼女に、優緒さんが近寄りながら頬を膨らませる。
「もー聞いて下さいよ、アカラベスさ――じゃなかった義母さん。まーた、先輩がセクハラするんですよ全く。キリト君もちょっと染まってきて、もー」
な、何を言うかな優緒さんは! 断じて誓って言うが、染まってなんかないぞ! って、ああ、ユイまで頷いて……!
「だって、パパ。明らかにDTくる前と後じゃ変わってます。ちょっと変態ちっくになってます」
「な、なってない!」
「おやおや。なら、赦免はしないほうがいいかしら?」
「ちょっとぉ!?」
ここまで来て赦免されないのは、さすがに困る。冗談だとは分かってはいるが、この設定に散々泣かされた身としては焦ろうと言うものだ。
そんな俺の肩にポンと乗せられる大きめの手、青江さんだ。彼は、む。と一つ頷き――あ、嫌な予感。
――男とは、常に変態(ろまんちっく)なのだと言わんか、キリの坊……!
――ぜってぇ、嫌です……!
「……二人とも、字呼召喚で遊ばないで下さいって。燃費使うんですから」
盛大に字呼召喚して硝子の破砕音と共に叫び合う俺らに、優緒さんが深々とため息を吐く。いや、だって、こう、ノリって大切じゃないか。
「はいはい、分かりました。キリト君も立派な変態さんって事で」
「ひどい冤罪だ……!」
「む。それは、わしも変態と言われとるように聞こえるんじゃが?」
『『うん/はい/ええ/』』
「……即答しおったな貴様ら」
いや、だって何を今更。青江さんが変態でエロいのは、もう分かりきってる事だし。
「キリの坊。貴様、ふっ切れおったな……?」
「事実ですんで」
「じゃあキリト君が変態さんなのも事実って事で」
「それについては断固否定します!」
「もう、パパ。ちょっと騒ぎすぎです。迷惑になりますよ」
ユイに嗜められて、思わず閉口してしまう俺。そして、俺達を見て、アカラベス女王がコロコロ笑っていた。
「ふふっ。申し訳ありませんね。異世界からの来訪者と聞いてましたが、私達とあまりメンタリティは変わってないようで」
「パパの場合、ちょっと影響受けすぎですけど」
そんなに染まってるかなぁと思いつつ、DTに来てからの行状を思い浮かべようとして、即座に取りやめた。
人間って認めたくない事あるよなぁ……。
「さて、雑談はここまでにしましょう。キリト。貴方をDT女王権限で、赦免いたします。その後で優緒から設定された犯罪者管理プログラムを切って貰いなさい」
「え……? 優緒さんが、俺の犯罪者設定を組んだんですか?」
じゃ、じゃあ去勢も――? そう思って見る先、優緒さんは気まずそうに笑っていた。
「犯罪者設定にする際の最条件なんですよー。私は悪くありませんよぉ」
む、そう言われると何も言えない。けど、納得も出来ないなぁ。
そして、アカラベス女王が設定ウインドウを展開すると《キリト様を赦免いたしますか? Y/N》の表示が出た。……ここで、隣にいる変態さんやら、前にいる小悪魔さんだったらNを押しかねないけど、そこはさすが女王。Yを押してくれた。よかった……!
「キリト君? 犯罪者管理プログラム切って上げませんよ?」
「……す、すみません」
「わしには謝らんのか?」
「青江さんのはただの事実ですから」
睨み合う俺達男二人にため息を吐いて、優緒さんも設定ウインドウを展開。次々と犯罪者設定が解除され――。
「あ、思考ウインドウも出なくなった……!」
頭上に浮かびまくっていたウインドウが出なくなった。よかった、本当によかった……! それに――ある。
「キリの坊。どうじゃ?」
「ええ……! ちゃんと戻った感覚があります!」
ある意味、思考ウインドウより遥かに嬉しい。もう少しで、男としての自分に疑いもつ所だったし。
「やっぱりパパ、ちょっと影響受けてます」
ここでなにおぅと言い返さなかった自分を褒めたい。ともあれ、これでようやく俺は犯罪者の立場から脱したのだった。
《キリト様のサイトモードを終了します》
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
●「キリト様のボードモード『DT憲兵師団にて』」
:DT憲兵師団入市ロビー前です。
:キリト様の前に、テライ様、フーブリッキー《設定変更、以下フービー》様、青江様、優緒様がいらっしゃいます。
キリト「それじゃ、俺は向こうに戻って、菊岡さんに事情を説明しておきます」
テライ「ああ。済まないな、小間使いのような扱いで」
テライ「ネットワーク上のゲーム世界とは言え、我々がそちらに出現したのは事実だからな。ヒースクリフの対応も含めて、話してくれると助かる」
フービー「犯罪者設定は次から該当されないから、安心してこっち来なさい。ああ、そうそう優緒。彼のプログラム、凍結封印して上げた?」
優緒「はい、やっておきましたよぉ。二刀流を始めとした、いくつかのスキルを凍結封印しておきました。向こうでは、前と全く同じのアバターになります」
優緒「ただ、ユイちゃんはこちらと同じマウス設定で、そちらに送りますね」
キリト「え? そうなのか、ユイ?」
ユイ「はい。マウスのままの方が便利ですから」
ユイ「マウスとしての機能は向こうでも使えますが、滅多な事じゃ使わないで下さいね、パパ」
キリト「分かったよ。GMにバレない事を祈ろう」
優緒「あ、そうだユイちゃん。これ」
《優緒様からメールが届きました。プログラムトライゴンが送付されてます》
ユイ「これ……。パパの、字呼召喚と大召喚のシュミレートプログラムですか?」
優緒「はい。練習用に使って下さい。さすがに完全再現は出来ませんが」
キリト「いえ、助かります」
テライ「君がこちらに来て10時間程――現実世界では、360秒。6分程だ。向こうに戻ったら十分に身体を休めてくれ。また君がここに来るのは、向こうで半日以上先となるかな?」
キリト「はい。向こうの半日――12時間だと、こっちでは1200時間、50日も経つんですね……」
テライ「外界との時間の差異は仕方ないさ。こちらではその間にヒースクリフの情報について集めておこう。ついでに、菊岡氏がこちらにこれるようにも取り計らっておく」
キリト「ありがとうございます。……やっぱり、来ると来ないじゃ分からない部分がありますし」
キリト「その時は、やっぱり犯罪者設定で?」
テライ「いや、今回は急ぎじゃないので何とか大使設定プログラムを組むさ。手間が掛かるが仕方ない。君の場合と違って、予定が決まってる分。なんとかなる。……さすがに、思考ダダ漏れはまずいだろうからな」
キリト「ですよねー」
フービー「あなた。今、心の中で舌打ちしてるでしょ」
キリト「……そんな事はないですとも」
ユイ「ボードモードでも、パパは分かりやすすぎです」
キリト「む……」
優緒「まぁまぁ、それじゃ――ほら、先輩からも何か」
青江「とくに何もないわい。……それに、すぐ来るんじゃろ? キリの坊」
キリト「はい」
青江「なら、今度は稽古ぐらいはつけてやる」
キリト「よろしくお願いします」
青江「そして、男児のあるべき姿を見せてやろう……!」
キリト「それについては遠慮します!」
優緒「……ボードなのに、よく先輩が変態発言したのが分かりますねぇ」
ユイ「パパ……」
キリト「だー! 最後の最後まで! 稽古の時は、絶対、泣かせますからね青江さん!」
青江「受けてたってやるわい。……じゃあな、キリの坊」
優緒「また半日後に、よろしくお願いしますね」
フービー「気をつけなさいね」
テライ「くれぐれも、菊岡氏にはよろしく頼む。ではな、キリト君、ユイ君」
キリト「……はい。では、また!」
ユイ「また、お会いしましょう♪ では♪」
《キリト様とマウスのユイ様が入市ロビーから出られました。コンバート機能起動。キリト様、ユイ様の全状態をリアルに復帰します》
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「……はっ!」
次の瞬間、俺は自室のベッドの上から跳ね起きた。
キョロキョロと部屋を見渡す。――DTに赴く前の、部屋のままだ。……いや、時間だけが僅か6分ほど進んでいる。それを確認して、ため息を吐いた。
思わず夢だったのかと疑いたくなるが、DTで感じた痛みがそれを否定する。
「電詞都市DT……か」
そう呟いて、ナーヴギアを頭から取り外した。
今までのVRMMOワールドとは似てるようで全く違う世界。戸惑う事も多かったが――焦がれる想いがあるのは、どうにも否定出来なかった。
まるで、SAOへと最初に踏み込んだような感覚。ゲームですら無い、異世界に焦がれる自分がいる。
――茅場、あいつも同じ想いだったのか。それは、直接聞いてみるしか無い。
ともあれ、まだ日付も変わらない内に菊岡に事情説明しておこうと、スマホを手に取り。
「おにーちゃーん」
扉の向こうから聞こえて来た声に思わず飛び上がった。こ、この声は疑いようも無い。義妹の直葉!
まさか、こんな短時間に無断でコンバートした事などわかろうはずも無いと、息を飲む。
「ど、どうしたんだスグ? ノックせずに呼ぶなんて」
「あのね、お兄ちゃん。さっき、ちょっとした用件があって。私、ALOにログインしてたんだー」
「…………」
――冷や汗が背を伝う。ま、まさか。いや、確か前も……!
「そしたら、何故かフレンドリストからキリト君が消えてたんだよねー。で、エギルさんに聞いてみたら――」
「ごめんなさい」
無断コンバートがバレてるのを察し、即座に謝る俺。だが、二度目となるこれにスグは容赦しなかった。
「向こうで皆、説明待ってるから。すぐ来るように」
「え、でも今からって――」
「メールしたら、皆すぐに集合したよ」
直後、鳴り響く俺のスマホ。メールだった。送り主は、恋人のアスナ。……メールを見るのは、果てなく勇気がいったが、震える手で開き――。ひぃぃと、悲鳴を上げかける。
そこには、たった一文だけがあった。
『三分以内』
何を、どう三分以内なのか分かってしまうあたり、ツーカーだな俺――とか言ってる場合じゃない!
慌ててナーヴギアをかぶろうとして、間違えたとアミュスフィアを手に取るのだった。
(第四話に続く)
はい、第三話後編でした♪
この後のキリト君の行方については合掌と言う事で(笑)
いや、次話で書きますが(笑)
次回はキリトのDTでの設定を前文に載せるかな?
ではでは、次話もお楽しみにー♪