とある熟語生成アプリで出てきた単語をもとに一個書いてみたやつ
駄文乱文御目汚し失礼しますよっと

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皆さんは使ってましたか?めくるタイプの単語帳
私はアレを完成させて満足してしまうタチでした。
そして英単語テストで赤点を取って地獄の書き取りが・・・



物欲英単語帳

「欲望ってさ、大事だよね」

 

「いきなり何言ってんだ?」

 

 

隣の席に座る女子、井上がいきなり何だかよくわからない話を投げかけてきたから、窓の外から視線を外すこともせずに反射的に当然の問いを投げ返した。

教室から見える景色は代り映えの無い雨模様だ。ここに来た当初は色々と目新しい感じはあったものの、こうも変化が無いと正直見飽きてくる。

 

 

「あ、腹減ったとか?」

 

「違うよ!いや確かに小腹は空いてきたけどさ」

 

 

違わないじゃないか、とか言うと話が進まないから言わない。

ついでにさっき飯食ったじゃん食いしん坊かよ太るぞとか言うと殴られるからもっと言えない。

暴力系女子とか何世代前の流行りだよ…

 

 

「いやさ、欲望っていえば人の生きる原動力みたいなものじゃん。食欲だけじゃなくてさ、あれが欲しいとか、これがしたい、こうなりたいってさ。何もなかったら何もしないじゃない?特に和田君みたいな無気力ボーイはさ」

 

「誰が無気力ボーイだ。てか無気力ボーイって何だよ」「和田君」

 

 

こいつ即答しやがった…自分だって毎朝歩きたくないだの何もしたくないだの言うくせに

 

 

「だからさ、コレに色々と書き出して無気力ボーイ和田君の気力を盛り上げてあげようなんて思ったわけですよ!」

 

 

そう言って井上はポケットから何かを取り出し、無い胸を張りながらドヤ顔でそれを掲げた。

 

 

「じゃーん!単語帳!」

 

 

それはたくさんのカードがリングでとめられているタイプの単語帳だった。白紙の。

 

 

「なんでそんなもん持ってんのさ」

 

「いや私たち中3でしょ。今年受験だったんだし何もおかしくないよ?」

 

「いやまぁそうだけども。にしたって受験生の持ち物なら白紙じゃなくてちゃんと書かれているものがあるべきなんじゃないか?」

 

「細かいことは気にしないの!とにかく、私がこれに英語で欲望を書くから和田君は一個一個英文読んで日本語に訳して読み上げてね!」

 

 

そう言うと井上はどこからか取り出したシャーペンで単語帳に色々と書き始めた。

なんでわざわざ英語なんだとか今更勉強したって意味ないだろとか色々言ってみたものの

 

「細かいことは気にしない!」

 

の一言が返ってくるだけだった。

 

仕方なしに見飽きた景色を眺める。相変わらず空は鈍色だが雨脚は気持ち弱まった気がする。

気がするだけじゃないといいんだけどな…さすがにこうも連日雨だと気が滅入るってもんだ。

 

 

ちらと井上の方を見遣ると、単語帳を前に頭を抱えていた。

あぁそういえば井上はそこまで勉強が得意なほうではなかったな…というか苦手なほうだったな。かなり。

 

 

「おーい、詰まってるみたいだけど大丈夫か?無理して英語にしなくてもいいだろそんなん。明日知恵熱で動けませんとか言ったら笑うぞ」

 

「うぇっ!?う、うるさいな!詰まってないし!全然詰まってないし!大丈夫だよ私そんなあたまわるくないもん!」

 

 

どうやら図星だったようだ。顔を真っ赤にして必死に否定する姿は…うん。

とりあえずこれ以上からかうとまた殴られそうだし、黙って観察するだけにとどめておくか。

 

それから十数分後、まだ顔を薄赤くした井上が書き終えたのであろう単語帳を渡してきた。

本当に知恵熱とか大丈夫だろうか…受験生だったと自称してはいるが、最近井上が勉強してるところなんて見たことがない。自分もしてないけど。

 

 

「ほらほら読んだ読んだ!」

 

「はいはい、えー、I want to eat a whole cake.…私はホールケーキ、ケーキを一個丸ごと食べたい、か?」

 

「そうそう。甘いもの食べたい。クレープとかでも可!」

 

「ケーキ丸ごと一つとか気持ち悪くなりそうだな…」

 

「そしたら和田君にも分けたげるよ」

 

「半分とかじゃないんだな」

 

「だって満足するまで食べたいんだもん」

 

 

半分じゃ満足しないんだな…甘いものは別腹とは言うが実際にそうなのかもしれないなんて思った。

それと同時に井上にケーキとかをおごる場面が来なくてよかったとも少し思った。

 

 

「えーと次は、I want cute clothes.…かわいい服が欲しいと」

 

「ぷふっ和田君がかわいいとか言うとなんか変だねっ」

 

「おい読ませといてそれは無いだろ」

 

「ごめんごめん!実際に和田君がかわいいって言ってるの初めて聴いたし…まぁほら気にせず次読んでよ」

 

「わかったわかった。I want ………」

 

 

それからしばらく英単語帳の音読は続いた。

アイス食べたいとか、アクセサリーが欲しいだとか、マンガ読みたいだとか。そんな物欲をつらつらと音読していった。

外は少しづつ暗くなっていく。陽の光は見えないくせに日は暮れていく。物欲にまみれた英単語帳の残りも段々と少なくなってきた。

 

「I want to eat a big beaf stake.食いたいねぇステーキ」

 

「だよねー。しばらく食べてないもんねぇ」

 

「まぁどうにもならんことを嘆いたって何にもならないしな。次は…I want to get a good patner.私は良いパートナーを手に入れたい。…良いパートナーじゃなくて悪かったなおい」

 

 

なんだかんだ悪い仲ではないと思ってはいたんだが、良いパートナーってほどの仲ではなかったらしい。

若干ショックを受けている自分に気づいて自意識過剰だったかと少々凹んでいると

 

 

「あ、あれあれ~?もしかして和田君、私の良いパートナーになりたかったりしたの?ん~?」

 

 

とからかわれてしまった。決して、決して図星を突かれたからという訳ではない。不意にからかわれたせいで顔が熱い。

 

 

「え?んん~?和田君顔赤いよ~?も、もしかして本当に」

 

「うっせうっせ自分も顔真っ赤なくせに!ってかこれ単語帳じゃねーじゃん!短文帳じゃん!」

 

「ああ、あ、赤くないし!それにそんな細かいこと気にしないの!」

 

 

井上の細かいことのカテゴリというか範囲というかは絶対一般の感覚より数段大きいに違いない。あと今の井上の顔は絶対赤い。

 

 

「ほらもう暗くなってきてるし次読んで次々!」

 

「はいはい次ね、えーとI want to be happy.幸せになりたい…まんまだね」

 

「結局それになるよねー欲望って。おいしい物食べるのも、欲しい物買うのも、本読むのも…うーん、私たち幸せになれるのかなぁ…」

 

「さてなぁ…今の時代幸せになりたいと思ってもうまくいかないことのほうが多いだろうしなぁ」

 

「そんな弱気なこと言わないでよ和田君…無気力ボーイな上にネガティブボーイとかいよいよ救いようがないよ?」

 

「だれがネガティ」「和田君」「ブボーイって即答にしても早すぎないか?」

 

「和田君はツッコミがワンパターンなんだよ。もっと変化球投げていかなきゃお笑いグランプリ出られないよ?」

 

「いやそんなもんないから。あっても出ないから」

 

 

会話を続けるびにどんどん話が脇道に逸れていく。もう随分と暗いのに単語帳一つ読み終わらないのはこれのせいだろう。

 

 

「次ともう一枚で最後か。単語帳一つで随分と時間をくったな…I want to get married …結婚したい?」

 

「う、うん…ほら、女子は大体一度は憧れるっていうか、なんというか、その、そういうやつ!」

 

「あー将来の夢はお嫁さん的な?…すごい意外だ」

 

「い、意外って何よ!私だって女の子なんだしそういうこと考えてたって…」

 

「あー悪い悪い、ちょっと想像つかなかっただけだよ。次、最後の一枚いくぞー」

 

「想像つかないって…あ、ちょ、最後の一枚はまって!ちょっとまって」

 

 

そう言うと井上は俺の手から単語帳を奪い取った

読まれたくないなら初めから書かなければいいのに

 

 

「なんだよーよませろよー」

 

「もう暗くなるから!ほら準備準備!」

 

 

そう急かされて席を立つ

窓の外に広がる鈍色はいつの間にか藍色になっていた

 

 

「お、晴れたぞ」

 

「あ、ほんとだ」

 

「今日は暖かいものが食えそうだな」

 

「やったー!連日冷たい缶詰じゃぁ気が滅入るってもんだよねぇ」

 

「とりあえず薪と着火剤、はアルコールランプとかでいいか。屋上集合で」

 

「じゃあわたしアルコールランプとマッチ持ってくるねー」

 

「いってらー」

 

 

井上を見送った後、俺はその辺に散らばっている比較的に乾いた廃材を集めて屋上へ向かう

こんな感じの役割分担はもはや日常の一部だった

 

しかしそんな日常にも、ひとつ新しいページがあった

 

 

「with you か…」




普通のラブコメだったはずがいつの間にか世界滅んでたでござる
性癖が発露してしまったやーつ


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