・胡蝶優月(こちょうゆづき)
この物語の主な主人公。胡蝶家の長男。
上には姉が2人いる。
容姿は姉2人に似た美形。
黒髪で、その髪は肩にかかるぐらいまでに長い。
その容姿から、女性に間違われることがしばしば。
自分は男として見られたいが故、女性に間違われると悲しくなる。
姉のカナエ同様呼吸は花の呼吸を主に使用。
普段は温厚で優しい口調だが、戦いになると少し口調が荒くなる。
鬼とは仲良くできるという、カナエと同じ考えを持ち、それを尊重している。
このお話はもしも胡蝶家に長男がいたらというお話です。
というにも、その長男が結構重要な役割というていで話が進みます。
なるべく原作に沿って話は進めますが、一部原作死亡キャラを生存させたいと思っています。まあ、それはおいおいに‥‥。
・オリジナル技
・ストーリー改変
・キャラ崩壊
が含まれます。
以上の事が大丈夫な方はどうぞご視聴ください。
キャラ紹介
・胡蝶優月(こちょうゆづき)
この物語の主な主人公。胡蝶家の長男。姉が2人いる。
容姿は姉2人に似た美形。
黒髪で、その髪は肩にかかるぐらいまでに長い。
その容姿から、女性に間違われることがしばしば。
自分は男として見られたいが故、女性に間違われると悲しくなる。
姉のカナエ同様呼吸は花の呼吸を主に使用。
普段は温厚で優しい口調だが、戦いになると少し口調が荒くなる。
鬼とは仲良くできるという、カナエと同じ考えを持つ。
時は大正ーー
僕の名は[[rb:胡蝶優月 > こちょうゆづき]]。
名前だけ見たら女性とも思うかもしれないが正真正銘の男だ。
僕は胡蝶家の長男で、上には姉が2人いる。
カナエ姉さんと、しのぶ姉さんだ。
カナエ姉さんは明るく、しのぶ姉さんは常に僕を気にかけてくれる。
姉さん達はとても優しかった。
父さん、母さんも常に明るく接してくれる。
僕はこの家族が好きだった。
一緒に過ごす日々、何気ない会話。
この幸せがずっと続く、僕はそう思っていた。
だが、その幸せはある日、突然崩れるのだったーー
僕はある日、姉さん達と買い物に出かけていた。
姉さん達との買い物は楽しかった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、気付けば日が落ち始めていた。
日が落ちる前に早く帰らないと行けない。
姉さん達はそう言い、少し小走りで家へと向かった。
いつもの家。家族が居るとても幸せな空間。
とても心地よいと思える場所。
だが、その場所は今、残酷な空間へと変化していた。
家に着いた時にはもう空は暗くなってしまった。
母さんに怒られるかなと、少し不安な気持ちで居ながら、ただいま。と、声を上げ、戸を開けたその時、目の前には気味の悪い生物が父さん達を食べている様子が目に映った。
後ろにいた姉さん達は大きな悲鳴を上げた。
僕は何が何だか理解が出来なかった。
目の前に血塗れの父さんと母さんがいる。
父さん達はピクリとも動かない。
これは‥‥'''死んでいる'''。
あまりにも残酷な光景を目の当たりにして、僕は理解するのに随分時間がかかった。
そんな僕達を見た血塗れの生物が、僕らの方へと向かって来た。
ああ、僕もここで死ぬのかな‥‥。
そう悟った瞬間ーー。
僕の目の前に誰かが来た。
背丈はとても大きく、僕の2倍ぐらいはある、男の人だった。
その人は
「嗚呼‥‥遅かったか」
と呟いた。
そして、次の瞬間。
血まみれの生物の首が落とされた。
その生物は何か言っているようだった。
だが、僕には聞こえなかった。
その生物はチリとなって消え、何も残らない。
残ったのは、無残にも手足が無い血塗れの両親だけ。
そして、後ろに居たカナエ姉さんが僕を抱き寄せた。
姉さんは頭をそっと撫でてくれた。
しのぶ姉さんも同様にカナエ姉さんに撫でられていた。
しのぶ姉さんの目からは大粒の涙が伝っていた。
そうすると、突然、さっきの生物の首を落とした男の人が話した。
僕はしっかりと聞くことができなかったが、断片的には理解することが出来た。
この人の名前は悲鳴嶼行冥。今消えて無くなった生物は鬼と言われ、人を食べているのだと言う。
この人は鬼殺隊という物に所属していて、鬼を殲滅するという目標でこの部隊はあるのだと言った。
この話を聞いたカナエ姉さんは何か決心した様子で僕たちの方を見た。
「しのぶ、優月。私達も鬼殺隊に入りましょう」
僕は目を丸くし、姉さんの方を見た。
僕達が鬼殺隊に入る? 多分、いや、きっとそれは危険なことになるのだろう。
僕はそう思い、賛成しようとは思えなかった。
だが、しのぶ姉さんの方も、カナエ姉さんと同様に決心したようだった。
「うん、姉さん。私も決めた」
しのぶ姉さんはそう言った。まだ涙が目から流れているしのぶ姉さんからは強い意志が感じられた。
僕はまだ決断出来なかった。
確かに、両親が殺されたということに関しては非常に怒りを覚えた。
でも、危険な目に合うのではないか、という不安が僕の中から断ち切れなかった。
そんな僕を見て察した姉さんが言った。
「優月は無理しなくても大丈夫なのよ。優月が無理なら私達が頑張るから」
姉さんは励ますつもりで言ったのかもしれない。
だが、僕からしたらそんなことは絶対にして欲しくない。
両親が居なくなった今、僕の家族はこの2人だけだ。
この2人が居なくなったら、僕は1人。
そんなの‥‥耐えられない。
こうして、僕は決断した。
「‥‥僕も、僕も入る。その鬼殺隊に」
そして、この日から僕達は鬼殺隊に入った。
鬼殺隊に入ってからの訓練は凄く大変だった。
呼吸を習得する。これがとても難しい。
姉さん達は難なく習得していたが、僕は姉さん達の2倍ぐらい時間がかかった。
それもそう、僕の年齢はまだ12歳。
しのぶ姉さんとは3歳離れていて、カナエ姉さんとは5歳も離れている。
さらに、僕は一般的に見て身長が低く、力もあまりなかった。
だが、それでも僕は諦めようとはしない。
僕はカナエ姉さんに聞いた。
どうして鬼殺隊に入ろうと思ったのか。
姉さんはこう言った。
「優月、それはね、自分達と同じ思いを他の人にはさせたくないからよ」
その考えは、姉さんらしい優しい考えだった。
姉さんは鬼とも仲良く出来る、なんて考えを持っていた。
しのぶ姉さんはその考えを否定はしないものの、肯定もできないという様子だった。
僕は姉さんの考えを許容した。
鬼とも仲良く出来れば、犠牲者なんて出ない。
みんな平和に暮らせる。だが、そんなことは夢幻に過ぎない。
という考えの人が多かった。
でも、僕はいつかその夢を叶えたい。
その一心で血反吐を吐くような訓練にも挑んだ。
そして、鬼殺隊に入ってから数年が経過し、僕も姉さん達も相当の実力をつけた。
カナエ姉さんに至っては、鬼殺隊の中でも上の位の柱になるほどに。
そんな中、僕は休憩時間ということもあって家の縁側でお茶を啜り、寛いでいた。
そうしていると、入口の方から姉さん達の声が聞こえてくる。
何かしのぶ姉さんの気の強い声が聞こえてくるが、何かあったのだろうか。
そう考えていると、僕を見つけたカナエ姉さんが小さな少女を連れて僕の方へと向かってきた。
「優月。今日から新しく家族が増えるわよ」
「え?新しい家族?もしかしてその子の事?」
「そうよ。この子はカナヲ」
僕はいきなり家族が増えると言われ、少し驚いたが、姉さんの事だ。
事情のあった子を連れてきたのだろう。
そう考えて、僕はカナヲと言う少女に近づいた。
「僕は優月。これから家族として宜しくね、カナヲ」
僕はカナヲに向けて微笑みながら挨拶をした。
カナヲの方は僕の事をじっと見て何も話さない。
「カ、カナヲ?どうかしたの?」
何も話さないことに少し焦りながら、僕はカナヲに問いかける。
だが、それでもカナヲは何も喋らず、僕の方をじっと見ている。
僕はカナヲの視線に耐えきれず、カナエ姉さんの方に視線を送り、助けを求める。
「ごめんね〜まだカナヲは上手く話せないのよ。後でもう一度来るから」
「う、うん。わかったよ」
そうして、カナヲを姉さんが連れて行こうとした時、ようやくカナヲは口を開けた。
「お、女‥‥?」
瞬間、僕は思わず脳に電気が伝わったようにハッとなる。
カナエ姉さんは苦笑いをしていた。
最近間違えられる事は無くなったので、久し振りに間違われた事に少し悲しくなった。
確かに、僕の容姿は初めて会う人から見ると女性に見えてもおかしくない‥‥のかもしれない。
そして、僕は訂正する。
「ぼ、僕は‥‥男だよ」
カナヲは目を丸くして驚いたような表情をしたが、すぐに戻ってしまった。
姉さんは僕の心の中を察したのか、早々とカナヲの手を引き、家の中へと入っていった。
1人となった暖かい風が吹く縁側で、僕は落ち込んでいた。
僕には昔から悩みがあった。
そう、この容姿だ。
昔から姉さん達と町を出歩くと、店の人から
『可愛い姉妹だね』
『姉妹揃って美人とは凄いなあ』
などと、僕達姉弟は姉妹に見られ、僕は女に見られることがとても多かった。
確かに僕の容姿は一般的に見て普通の男の人よりも低いし、髪も少し長い。
顔は姉さん達と似ていることもあるからか、男だと知った人たちからは美少年と言われるぐらいだった。
僕はこの容姿に悩んでいた。
だって、僕は男に見られたかったから。
か弱い男よりも、かっこいい男の方がいいだ
ろう。
誰しもがそう思うと僕は思う。
僕は格好の良い男になりたい。
だが、現実は非情だ。
今の所、僕と初対面で会って男だと判断できたのは、お館様ぐらいだった。
僕達を助けてくれた悲鳴嶼さんでさえ、僕を女だと思っていたそうだ。
僕は女として見られることに嫌悪感は無いが、少し悲しくなってしまう。
でも、これからしっかり鬼殺隊で鍛えればいつか男としてみてもらえるようになるかもしれない。そう期待する僕がいた。
しかし、これからまた一つ、絶望的な事件が起きる事を、僕はまだ知らなかったーー。
そして、カナヲが来てから数ヶ月の月日が経過した。
僕は今日、カナエ姉さんとの合同の任務についていた。
今回の任務は最近ここらで女性が居なくなるという事で、見回りにつく仕事だ。
鬼が活動する時間は夜。
僕と姉さんは警戒しながら、夜の町へ歩みを進める。
すると、奥の暗い道から、何やらバキッ、ボキッという何かを踏む様な音がした。
僕と姉さんの警戒心はさらに強まる。
そして、奥の方からこちらに音が近づき、
姿が現れる。
「あれ〜こんな所に女の子が2人。今日はついてるなあ〜本当にいい夜だ」
現れたのは鬼。その鬼は呑気にも悠長な口ぶりで話す。
腑抜けた様な口調をしているが、僕と姉さんは感じ取った。
この鬼は強いーー。
体にビリビリと伝わる圧。この張り詰めた空気。
静かな夜が、ここを戦場だと改めて理解させる。
この鬼の目には上弦の弐と書かれている。
おそらく十二鬼月だろう。それも上弦だ。
黄金の地に蓮の文様が描かれた鋭い対の扇を持ち、こちらを見ている。
そんな中、姉さんが口を開く。
「ここで女性が居なくなっているのはあなたの仕業ですか」
すると鬼はヒラヒラと扇を振りながら言葉を返してくる。
「うん、そうだよ。ここら一帯の女の子は俺が喰べたからね」
「くっ!やっぱり‥‥」
僕は目の前の鬼を睨み、刀の鞘に手を掛ける。
「そっちの女の子は気が荒いみたいだね。さっきは落ち着いてたみたいだけど。もしかして、鬼に恨みでもあるのかな?」
「っ‥‥僕は女じゃない」
「ええっ!そうなのかい?可愛い女の子に見えるのだけどね。でも、君は美味しそうだ。
僕が喰べてあげるよ」
「そんな事はさせないわ」
「ああ、安心してよ。君も後で喰べてあげるからさ」
そう言い、鬼は扇を振りかぶろうとする。
僕はそれよりも早く身体を動かした。
「花の呼吸 伍ノ型 [[rb:徒の芍薬> あだのしゃくやく]]」
鬼の首を目掛けて、斬撃を放つ。
「血鬼術 粉凍り」
相手の鬼は霧を周囲に発生させた。
「おっと、君、速いね。いつのまにか片腕を落とされていたよ。でもね‥‥」
「‥‥‥っ!ゴホッ!ゴホッ!」
僕は思わず座り込んだ。
何故だ、あの凍えるほど冷たい氷が直撃した訳ではないのに呼吸が出来ない。
「苦しいだろう?まあ、俺の術を吸っちゃったからね。肺が壊死してるだろうし」
そういう事か‥‥あの技は吸っただけで肺が壊死するほどの技なのだろう。
「それにしても不憫だなあ。俺を倒すにはやっぱり頸を狙わなくちゃ。君、俺の腕と脚しか狙ってないでしょ?」
まさにその通りだ。僕は相手の頸は狙わず、手足だけを狙った。
その理由?
だって、僕は1人で戦ってないから。
僕には姉さんがいる。
「花の呼吸 肆ノ型 [[rb:紅花衣> べにはなごろも]]」
下から上にかけて、捻れる特殊な軌道をした斬撃が鬼に襲い掛かる。
そう、僕は相手の注意を引いたに過ぎない。
カナエ姉さんが相手の隙を伺い、頸に斬撃を入れる。
これを狙っていたのだ。
だが、これが通用する。という確証は無い。
結果はどうなったのか、呼吸ができない苦しさを我慢しながらただ待った。
「うんうん。二人揃って速いのはすごいけど力不足かなあ。そんな力じゃ俺の頸は斬れないよ」
鬼の声を聞くだけでわかった。
失敗したのだと。
でも、これが通用しなかったからといって負けたわけではない。
僕はもう一度姉さんと連携を取るために合図を送ろうとする。
「かはっ‥‥‥」ゴホッ
だが、姉さんの身体からは多くの血が出血していた。
「姉さん!!」
僕はとても大きな声で姉さんを呼ぶ。
よく見ると斬撃を食らった跡がある。
恐らく、相手の鬼の攻撃だろう。
いつの間に斬撃を放ったのか、僕には見えなかった。
最初の攻撃で両腕を落としていれば‥‥相手は扇を振ることができなかっただろう。
僕は失敗したと心の中でものすごく後悔した。
だが、その後悔している時間が今は命取りだ。切り替えるんだと自分に言い聞かせる。
この状況でどうすればいいか僕は脳をフル回転させて考えた。
姉さんは多分動けない状態だ。
僕も肺を壊されている。呼吸の連発はできない。
なら、これを使うしかない。
もう後悔はしたくない。
このままじゃ、姉さんも僕も死ぬ。
そんなの、絶対嫌だ。
だから、精一杯の力を込めて放つ。
この、僕だけの技。
刀を握り、僕は立つ。
「わあ!?君、立つのかい?肺が壊れて苦しいだろう?今俺がすぐ楽にさせてあげるからね。無理しないで!」
「っ‥‥僕は負けない!絶対に負けない!」
「‥‥素晴らしいよ、君は。姉の為にそこまで頑張るなんて‥‥素晴らしいよ!君は僕が喰うべきに相応しい人だ。男だとしてもね。来なよ!君の全力で!」
僕は苦しい中でも、大きく呼吸する。
「 全集中 花の呼吸 拾ノ型
[[rb:乱れ咲> みだれざき]] [[rb:百花繚乱 > ひゃっかりょうらん]]」
僕は相手の頸目掛けて、最大限の速さで飛び込む。
目にも留まらぬ速さで何百発の突きを打ち込んでいく。
「(速い!攻撃が読めない‥‥)」
脚、胴体、手、頭、そして首を切り落としに行く。
「これで終わりだ!」
この一太刀が通れば切れる!
そう確信した時、
『キーーーーン!』
扇と刀がぶつかり合う。
鋼が折れた時に聞こえる甲高い音。
それは僕を絶望に陥れる音だった。
「う、嘘で‥しょ‥‥」ドサッ
僕は身体に力が入らず倒れ込む。
「いや〜危なかった危なかった。刀が折れなかったら、今頃頸が跳ねられてたよ」
「ん〜君達を喰べたいところだったけど、朝日が昇ってきそうだから仕方ないね」
「それじゃあ、苦しそうな君は可哀想だから、今楽にしてあげるよ」
そう言って、鬼は扇を振りかぶる。
僕はもう無理だなと、諦めていた。
でも、これならカナエ姉さんは生き残れる。
カナエ姉さんならきっとこの鬼を次こそ倒してくれる。
そう信じて、僕はそっと目をつぶった。
「血鬼術 枯園垂ーーー」
「花の呼吸! 陸ノ型 渦桃!」
「なっ‥‥」
一瞬、僕は何が起きたのかわからなかった。
助かった?何故?
僕は恐る恐る目を開ける。
そこには、血塗れになりながらも僕の前に立ち、鬼の両腕を落としていた姉の姿だった。
「君も動けたなんてねえ〜これは盲点だったよ。でも、見た感じだともう助からなそうだね。肋、肋骨、肺も壊れてるし、弟くんよりも酷い状態だ」
「さてさて、もう朝日が昇りそうだ。今日は帰るとするよ。それじゃあね」
「あ、そういや名前を聞いてなかった。俺は童磨。君達は‥‥」
「確かそっちの可愛い弟君は優月君だっけ?そして、お姉さんの方は‥‥」
「っとと、もう帰らないとね!じゃあね、もう会うことはないかもしれないけど」
そう言い、鬼は瞬く間に姿を消した。
「‥‥‥ゴホッ!ゴホッ!」
「‥ね、姉さん。だい、じょうぶ‥‥」
僕は何とか立ち上がり、姉さんの近くへ行く。
あの鬼の言葉なんて一言も聞いていなかった。
それよりも、姉さんの方が大切だ。
僕は姉さんを壁に寄りかけさせる。
「ね‥‥姉さん、姉さん!しっかり!」
僕は必死に姉さんを呼ぶ。
姉さんは掠れた声で僕に言葉をかけた。
「優月‥‥ごめん‥ね」
「姉さん!!死んじゃ嫌だ!お願いだよ!姉さん!」
壊れている肺を何とか呼吸で補い、大きい声で姉さんに言葉をかける。
「‥‥‥姉さん、優月‥?」
突然、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
その正体はしのぶ姉さんだった。
「っ‥‥!どうしたのその怪我!?まさか鬼にやられたの!?」
「しのぶ姉さん‥‥僕よりもカナエ姉さんが‥‥」
「姉さんが!?‥‥姉さん!しっかりして!」
カナエ姉さんは涙を流しながら僕としのぶ姉さんの頭を撫でた。
そして、小さい声で言った。
「しのぶ、優月‥‥鬼殺隊を‥やめなさい」
「「っ‥‥!」」
「しのぶと優月には‥‥お爺ちゃん、お婆ちゃんになるまで‥‥幸せに暮らして欲しいから‥‥」
「そんなの、無理だよ‥‥姉さんが居ない所で‥‥幸せになんてなれない」
「私もよ‥‥姉さんが居なくなるなんて耐えられない!」
「‥‥‥大丈夫。貴方達なら私が居なくても、きっと‥‥」
姉さんは優しく微笑む。
これが最後の姉さんの笑顔だった。
そして、姉さんの大事なものがプツンと切れた。
「姉さん‥?姉さん!?姉さんってば!」
「っ‥‥ゴホッゴホッ!」
僕がなんとか呼吸で補っていた肺も補いきれなくなり、口から吐血する。
「優月!?‥‥待ってて!今家に連れてくから!」
そうしのぶ姉さんは言い、僕をおんぶし、カナエ姉さんの羽織を取って走り出した。
僕はどんどん離れていくカナエ姉さんの方を見て思いっきり叫ぶ。
「嫌だ‥嫌だ‥‥姉さーーーん!!!!!」
僕の意識はここで途切れた。
○
「‥‥き!‥‥づき!」
誰だろう。どこからか声が聞こえる。
でも、視界は真っ暗。何も見えない。
そんな時、一箇所に光が射した。
その光からは1つの姿が浮かび上がる。
カナエ姉さんだった。
「優月、貴方はここで亡くなってはいけない。起きなさい、胡蝶優月」
起きる?そんなこと言われたってどうやって‥‥。
「優月。お願い。貴方が起きてくれないと‥‥しのぶは独りぼっちになってしまうわ。お願い‥‥優月」
全体が光り輝く。
先程の真っ暗な視界が嘘のように辺りが煌めく。
そうだ、起きなくちゃ。
僕はまだここに居るべきじゃない。
やる事があるんだ。夢を叶える為に。
みんなが平和に暮らす。
その夢を叶える為にーー。
「ありがとう‥‥優月。貴方ならきっと出来るわ」
○
薄らと視界が開ける。
見覚えのある天井だ。
辺りを見回すと、何やら物を落としているしのぶ姉さんがいた。
僕は小さい声で姉さんを呼ぶ。
「しのぶ‥‥姉さん」
「‥‥優月。起きたのね‥‥良かった、本当に良かった」
しのぶ姉さんが僕を抱擁する。しのぶ姉さんの温もりが体全体に伝わる。とても暖かい。
しのぶ姉さんは涙を流している。それほど長く眠っていたのだろうか‥‥少し申し訳ない気持ちが残る。
そして、僕はもう一度辺りを見回す。
「姉さん‥‥‥‥」
辺りにはしのぶ姉さんだけ。
カナエ姉さんは‥‥そう言葉にしようとした時、僕は姉さんが亡くなったことを理解した。
「うっ‥‥ぐっ‥‥ごめん、しのぶ姉さん。僕が、僕が力不足だったばっかりに‥‥」
僕は嗚咽を吐きながらしのぶ姉さんに謝る。
僕にもっと力があれば、鬼の頸を斬れていれば、姉さんを助けれたかもしれない。
そんな自分の非力さを実感しながら、涙を流した。
「‥‥大丈夫。優月は頑張ったわ。貴方のせいじゃない。悪いのはあいつらよ‥‥」
あいつら‥‥鬼のことだろう。
またしても大切な人を亡くした。
今回は自分の力の無さをも実感し、大きな絶望感に覆われた。
そんな中、しのぶ姉さんは言った。
「優月。これからは2人で、姉さんの夢を叶えましょう。姉さんの想いを私達が引き継ぐのよ」
姉さんの想い。
そうだ、僕達が姉さんの分の願いを叶えなくてはいけない。
僕は決心する。
「うん。絶対に‥姉さんの夢を叶える。絶対に‥‥」
僕は絶対に叶える。
姉さんの夢‥‥いや、"僕の夢"を。平穏な日々を取り戻すために。
そう、誓ったのだからーー。