今年もよろしくお願い申し上げます。
やっぱり努力するのは苦手です。
地道にコツコツやるのが一番しんどいです。
炭治郎に置いていかれてしまった焦りなのか、丁寧に教えてもらっても覚えられません。
俺たちって本当にダメだなって思います。
「あ、あはは‥‥大丈夫ですよ。一緒に頑張りましょう」
それでも優しく教えてくれる優月さんが天使に思えてきました。
だけど、やっぱり覚えることが出来ません。
本当に俺たちってダメダメだよね‥‥。
○
炭治郎君が遂に習得した全集中・常中。
この習得により、格段に訓練でカナヲに勝つ確率が増えた。
僕も一度鬼ごっこで腕に触れられてしまった。
これにより、炭治郎君の成長ぶりがわかる。
それに危機を感じたのか、善逸君達も訓練に参加するようになった。
炭治郎君も、やる気になった二人に常中を教えようとしてくれている。
だが、二人は常中の習得に苦戦しているようだった。
それもそのはず、炭治郎君の教え方があまりにも酷いのだから。
「こうして、こう。それでこうやれば‥‥」
現に、訳のわからないポーズをしながら教えている炭治郎君を見ると思わずため息が出てしまう。
それも、逆に善逸君達が可哀想に思えて来てしまうほど‥‥。
「苦戦しているようですね。優月」
突如後ろから聞こえる声。
まあ、誰かは分かりきっているのだが。
「姉さんか‥‥うん、僕もどうすれば良いかわからなくて」
「ふふっ、一つ良い方法がありますよ」
「えっ‥‥?」
姉さんは屈託のない笑顔でそう言った。
ちょうど困っていることだし、是非とも聞きたいところだ。
「ちょっと耳を貸してください」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」ゴニョゴニョ
「え?そんなことで良いの?」
僕はやや疑問に思いながら問い返す。
「はい。今から私が伊之助君に実践しますので、今言ったことを善逸君にやってみてください」
「うん、分かった‥‥」
僕は本当にそんな事で二人の役に立てるのか疑問でしかなかったが、姉さんの言葉通り、一度見ることにした。
「三人とも、成果はどうでしょうか」
「あっ、しのぶさん。実はちょうど今二人が苦戦していて‥‥」
「「‥‥‥‥‥‥‥」」ズ-ン
「そうですか‥‥まあ、常中は基本、というか初歩的な技術なので、できて当然ですけれども。会得するには相当な努力が必要ですよね」
そう言い、姉さんは伊之助君の方に近づく。
「まあ、出来て当然ですけども。仕方ないです。出来ないなら。しょうがないしょうがない」ポン
「は、はあーーん!!?できてやるっつーの当然に!舐めんじゃねぇよ!乳もぎ取るぞコラ!」
そして、姉さんはこちらに視線を送ってきた。
多分、さっき言っていたことをやれということだろう。
あれをやるのは少し恥ずかしいが仕方がない。
僕は善逸君の方に近づく。
「が、頑張ってください。善逸君。一番応援していますからね」ギュッ
僕は姉さんに言われた通り、善逸君の手を握り、精一杯の笑顔でそう伝えた。
すると、善逸君の顔は見る見る真っ赤になった。
「私も応援していますよ。善逸君」ニコッ
さらに姉さんの一言も重なる。
「ハイッ!」
善逸君は顔から湯気が出そうなほど真っ赤にさせて、元気に返事をした。
本当にこれで二人は常中を習得出来るのか僕は不安にしか思えなかったが、姉さんはまるで、よくやりました。とでも言いたげな顔をしてこちらを見ている。
果たして、これで良かったのだろうか‥‥?
○九日後
「やってやったぞゴラァ!!」
「俺は誰よりも応援された男!」
二人の怒声の様な声が響く中、何と善逸君達は九日で常中を習得した。
三人は歓喜の声を上げて喜んでいる。
「優月、大丈夫だったでしょう?」
僕が少し困惑している中、姉さんが話しかけてきた。
「う、うん。僕も流石に驚いたけどね。姉さんは人に教えるのが上手いよ」
「ふふっ、嬉しいですね。ですが、優月の可愛い応援があったからだと私は思いますよ」
「っ‥‥何さ!可愛い応援って!」
「あら、可愛かったですよ。善逸君の手を握って少し顔を赤くしている優月が」
「顔なんて赤くしてないってば!それと、可愛いとか言うのやめて欲しいんだけど‥‥」
「無理ですね。それと、私にもやってくださいよ。手を握って『姉さん、一番応援してるからね』と言ってくれたら私はもう無敵ですので」
「い、いやだ‥‥姉さんには絶対やらない」
「良いじゃないですか〜」ジリジリ
「ち、ちょっと!こっち来ないで!」
「ふふっ、このままでは壁に追い詰められてしまいますよ?そうしたらもっとすごいことやってもらいますから」
姉さんの言う通り、後ろはもう壁。逃げ場なんてない。
姉さんはさらに距離を詰めて近づいてくる。この状況はまさに絶体絶命だ。
というか、此処には炭治郎君達もいるんですが‥‥。
炭治郎君達は一向に気づかなさそうだけど。
「あ、あのさ。炭治郎君達も居るわけだし‥‥」
「‥‥確かにそうですね。仕方ありません。また今度やってもらいましょうか‥‥」
姉さんが僕から離れていく。
な、何とか助かったようだ。
炭治郎君達が居なかったら一体どうなっていたことやら‥‥。
まあ、そんなことより、今は三人の全集中・常中の会得を喜ばなくちゃね。
○
「姉さん、見送りは良いの?」
「はい、きよちゃん達がしてくれていますので」
今日は炭治郎君達がついに出発する日。
僕は今、姉さんの自室にいる。
その理由は姉さんから呼ばれたからだ。
理由はまだ聞かされてないが、僕は炭治郎君達の見送りをするつもりだった。
しかし、僕は姉さんの方を優先した。
「それで、どうしたの?急に呼んで」
「実はこれを渡そうかと」
そう言い、姉さんは袋に包まれたものを出した。
「これは?」
「取り敢えず開けてみてください」
僕は姉さんの言われるがまま袋を開ける。
すると、中には簪が入っていた。
「えっと‥‥これは簪?」
「ええ、そうです。優月に似合うと思って買いました」
姉さんからの贈り物。そう考えるととても嬉しいのだが、なんせ簪は女性用だ。
それを僕がつけるとなると、少し抵抗がある。
「ありがとう、姉さん。でも、何で簪?」
「優月なら女物でも似合いますからね。それに髪が長いですし、たまには髪を留めた優月が見たくて」
「はあ‥‥それが本音か。まあ、嬉しいから良いよ。でも、いきなりどうしたの?」
「いえ、たまたま町を歩いていたらこの簪を見つけたんです。それで優月に似合うと思ったから買ったんですよ」
「それはまた、いきなり‥‥」
僕は手元にある簪をもう一度見る。
すると、簪に花の蕾の柄があることに気づく。
僕は疑問に思い、姉さんに問いかけた。
「この柄、花の蕾?何の花なの?」
「ああ、それは薔薇の蕾らしいですよ」
「薔薇の蕾‥‥そうなんだ」
何故蕾の柄が入ったのを選んだのかは分からないが、姉さんの贈り物は毎回その人に合ったものを選んでくれるから嬉しい。
前は櫛を貰った。なんか髪に関しての贈り物ばっかな気がするけど。
でも、やっぱり嬉しい。この感情が僕の中で溢れる。
「本当にありがとう。姉さん」ニコッ
感謝の気持ちを精一杯の笑顔で伝える。
対価としては割に合わないと思うけど、姉さんは満足したようだ。
「はい、喜んでくれたようで何よりです」
姉さんも微笑みながら言葉を返す。
家族からの贈り物。
それは心が暖まる不思議な感覚。
幸せと実感させるこの感情はとても心地良い。
僕は改めて家族の暖かさを知った気がしたーー。
薔薇の蕾の花言葉って色によって異なるんですよね。
良かったら調べてみてください。