文化祭掲示用小説、続いて欲しい

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Prolog

残念ながら、あなたの人生は終わってしまいました。

なんて声が聞こえたような気がする、もちろん気のせいだけど。

今、私は大きな街に立っている。

数分、いや、時間は正確にはわからないけど少し前に見た自分の住んでいた街とは違う雰囲気がある。

なんて前置きもつまらないし正直に言おう、私は()()をしたのだ。

 

 

数時間前──

私、大咲 美結(おおさき みゆ)(高2)は部活を終えて帰路を歩いていた。

今日も平和に終わる、なんて綺麗なフラグを立てた瞬間。

黒服に黒い帽子、顔はサングラスにマスクをした見るからに怪しい男性が私の帰宅する方向から凄いゆっくりとした歩き方で接近してきた。

最近よく聞く(気がする)女子中高生を狙った誘拐とか殺人とかする変質者の特徴そのままの服装をしてる男は少しずつ私に接近してきている。

このままではまずい、そう思った私は今通ってきた道を急いで戻り、助けを求めようとした。無我夢中に走っていると──

 

車のクラクションが鳴った。

気づいた時にはもう遅い、後ろからさっきの男が何かを叫んでいるが何を言っているのか聞こえない。

──刹那、私の体に強い衝撃が走り、宙に浮いた感覚を最後に私の意識はブラックアウトした。

 

 

それからどれぐらい経ったかわからないけど、私は目を覚ました。

起き上がるとそこは神秘的と言っていいのか微妙な空間が広がっている。

そして私の視線の先、正確には目の前には赤髪ツインテールの私より少し年上かなぐらいの女性が立っていた。

 

「全く、私よりバカ天然って初めて見たわ」

 

「あの、ここは?」

 

目の前の女性に私がそう聞くと、女性は一瞬驚いたような顔をしたあと、直ぐに呆れたような表情をした。

 

「あのねぇ、まず『あなたは誰?』とかお礼の言葉とかでしょ、第一声がここについてってどういうことよ」

 

「それじゃぁ、あなたは誰ですか?」

 

「あんた馬鹿なの?私の思ってた以上に馬鹿なの?」

 

何を言ってるんだこの人は、私はただ言われた通りの質問をしただけ──と、訴える私の心を読んだのか女性は色々と説明を始めた。

 

「まぁいいわ、私は……とりあえず《シル》って名乗っておくわ、それで私はここ、理想郷(アヴァロン)であんたみたいな()()()()()を生かすかそのまま殺すかを扱っている《女神》よ」

 

「え、私死んだの?」

 

「えぇ……まずそこから?」

 

と、女神と名乗ったシル(仮名)さんは私が死んだとかいう衝撃の事実を口にした、まぁ確かにトラックに轢かれた気もするけど……

 

「あなたは見た目完全に通り魔の一般男性に接近されて『殺される』なんてありもしないことを勝手に考えて、その男がただ道を聞くためにあなたに接近してたことも気づかずにそのまま広いところに逃げようとした、そしてあなたが急に飛び出したことによりトラックの運転手は混乱し何かの間違いであなたに突っ込んであなたはそのまま」

 

「そんな恥ずかしい死に方したの私!?」

 

「えぇ、そして今、現実世界のあなたは……」

 

すごく恥ずかしい話をされたあと、女神様はさらに危ないことを言おうとしたけど、私は

 

「言わなくていいです、とりあえず私をその、女神様なら蘇生とかできるんですよね?」

 

と、信用していいのかわからない人に向かってそんなことを口に出した。

女神様(仮)から帰ってきた返答は───

 

「現実世界のあなたには蘇生できない、というかした所で……って話だから、あなたには()()()()で人生の続きを歩んでもらうわ」

 

なんて答えが帰ってきた。

女神様の言ってることは最近よく聞く異世界転生モノって言うやつだと思う、それが現実的に起こるとは思わなかったけど、異世界転生するってことは……

 

「私もアニメやラノベみたいに強い武器は……」

 

「無いわよ、あんたは」

 

え、今なんて?

異世界転生モノならお決まりの主人公最強パターンは私には無いんですか、転生した直後に強力なボスが出てくるのにそれを一撃で倒すスキルとかないんですか。

 

「まぁ、私もこっち(アヴァロン)で応援するから頑張ってね」

 

「ちょっと、せめてあなただけでも着いてきてくださいよ!?」

 

「私は忙しいの、そういうことだからバイバイ」

 

本当にこの人は女神なのか、女神だとしても駄女神ってやつじゃない?──なんて考えていると、私の足元が光り、急に浮遊感に襲われた。

 

 

「ちょ、ほんとに私1人なの!?」

 

と、浮遊しながら女神様にそう質問するけど、女神様は私に聞こえない声で何かを言いながら笑顔で手を振っているだけ。

 

「この、駄女神が──!」

 

 

 

 

と、叫んでから私の意識は飛び、冒頭に戻る。

そう、あの女神と名乗る人が私を本当に転生させたらしい、チート無しで。

これは夢なんかじゃない、空気の冷たさも街にいる人々の声も本物だ。

 

「さてと……」

 

転生したらやっぱりまずは自分の種族とかジョブを登録するとかそういうのだけど……

さっきから何故か街の騒がしさ以外の()が聞こえるけどもしかして……

 

「お、この街にエルフとは珍しいねぇ」

 

「え?あ、はい……?」

 

商店通りよような場所に入って見たら屋台からおじさんが私の方を見て「エルフ」と、確かにそう言った。

そして改めて私は自分の体を見てみる、というかおじさんから手鏡を貸してもらって顔を見てみる。

すると、耳がとんがっていて、さらに目が青く、髪色は白に薄黄緑が少し混ざっているような感じのショートヘア……

 

 

「これが私……?」

 

そう、転生する時にチートは無いと言っていたあの女神は私を高校生の姿のままではなく、色々な作品で様々な扱いをされている種族、エルフとして私をこの世界に送ったのだ。

もしかして、私が転生する前、女神が何か言っていたのは「まぁ、エルフにはなるけど」とかなのか、なんだあの人……

 

「お嬢ちゃん、もしこの街に来たのが初めてなら【冒険者ギルド】で冒険者に登録してみな」

 

「あ、手鏡ありがとうございます、行ってみます!」

 

見た感じ怪しそうな感じがしたおじさんはすごく優しくて、冒険者ギルドなんてものがあるということを教えてくれた。

私は借りた手鏡を返してお礼をしたあと、妙に軽い動きで教えて貰った場所に向かった。

 

まるで地面を滑るかのような軽い足取りで移動すること数分、街の中心あたりに立つその建物の前に到着し、閉まっている扉を開くと──

 

「ようこそ、冒険者ギルドへ!冒険者志望の方はこちらで登録できます」

 

中に入るとそこはゲームとかでよく見る光景とほぼ同じ、冒険者ギルドといえばこんな感じ、といった雰囲気を醸し出している。

そして中に入ってすぐ、酒場のようなものの奥にあるカウンターから私に声をかけてきた女性のところに行くと冒険者に登録する手続的なものを始められた。

そういえば私、こっちの世界での名前ってどうなってるんだろう──なんて考えているとカウンターの女性は私に……

 

「《エル》さんはどのジョブにしますか?」

 

と言いながら各ジョブの説明書的なものを出して──

って、今なんて?え、エルってもしかして私の名前……?

ま、まぁ気を取り直してジョブは何があるかな……

 

ウィッチセイバー……魔法も使うことが出来る近距離が得意な職

ウィザード……攻撃魔法がメインの魔法職、さらなる進化が可能

プリースト……支援魔法がメインの魔法職

クルセイダー……味方を守るタンク職

 

一つだけ名前豪華過ぎないか?なんて思いながら私は迷いなく1つのジョブ……職を選択した。

すると、私の体が一瞬輝き、力が湧いてくる気がした。多分気の所為だけど。

 

「ウィッチセイバーを選んだんですね!それでは、冒険者ライフを楽しんでください!」

 

カウンターの女性は私に【冒険者カード】と書かれた小さなカードを私ながら満面の笑みでそう言った。正直実感無いけどこれで冒険者の仲間入りということになる。

 

 

 

「お、嬢ちゃん、冒険者になったんだな」

冒険者ギルドから出てとりあえず装備を買おうと思って入った装備屋には私に冒険者ギルドをおすすめしてくれたおじさんがいた。

さっき屋台やってたじゃん、そう思っているとおじさんは私の心の中を読んだのか「アレは手伝いだ、本職はこっち」と私の方を見ながら言った。

 

「お嬢ちゃん、冒険者になってすぐじゃ防具は買えないぞ」

 

「あ、お金……」

 

 

おじさんに言われるまで忘れていたけど、私は今、金欠というかこの世界で使用出来る金銭を全く持っていないのだ。

一応、ギルドの人に「クエスト受ければ報酬を貰える」と言われたけど、そんな大切なことを考えずに私は装備屋に入っていた。

 

「まぁ、この街では珍しいエルフの冒険者だ、今回は初回サービスとして売れ残りではあるが使える装備をやるよ」

 

おじさんはそう言うと店の奥から少し古びた防具と売れ残りには見えない真剣を取り出して机の上に置いた。

装備のサイズとかどうなのか、と思ったら意外とピッタリの女性用防具を出してくれた。剣も防具同様軽いけど、よく見たらわかる絶対殺傷能力高いやつ……。

 

「ありがとうございます、でもほんとにこれをタダで貰うってのは……」

 

「いいって、タダであげる代わりにお嬢ちゃん、絶対に生きて強くなってくれよ、それでまた俺の店で防具を買ってくれ」

 

「うん、分かった、行ってくる!」

 

私は真剣の入った鞘を腰に付け、おじさんに礼を言って装備屋をあとにした。

 

 

 

「【ビッグスライムの討伐】は見るからに女性の敵だから却下……でも【ボブゴブリン】に関しては初心者には敵わなそう……」

 

一度、クエストを受けるためにギルドに戻ってきた私は、クエストの掲示板を見てどれにするか迷っていた。

難易度や報酬を見ながらやるのはリアルでゲームをやっていた時のあの感じに似ているが、私は1プレイヤーではなく、自分自身がクエストを受けるという今更ながらのプレッシャーに襲われていた。

 

「迷ってるならこれがオススメです、どうぞ」

 

「え、あ、ありがとうございます?」

 

プレッシャーを今更感じていると、いつの間にか私の横に誰か立っていた。そしてその誰かは私に1枚のクエスト募集カードを渡してきた。

しっかりとその人の方を見ると……

 

赤い髪のツインテールに黒い目、ローブのような服を羽織った見た限り私より少し年下ぐらいの女の子が右手に杖を持って私の方を見てきていた。

 

「私が気になりますか?説明したいところですが今日は忙しいのでまた後で、そのクエストをクリアした後、夜にここで会いましょう」

 

少女はそう言うと1枚のクエストカードを取ってカウンターの方に行って手続きのようなものをした後、私が礼をする暇もなくギルドの外に行ってしまった。

「あ、これお願いします」

私は少女に渡されたクエストカードの内容を確認したあと、カウンターで受注して指定された場所に向かった。

 

 

 

【クエスト:キャビッツの討伐】

「えっと、これを倒すの?」

クエストの指定場所にはキャベツみたいな丸っこい生物が大量に地面を転がっていた。

これを倒すのは気が引けるけど、私の生活がここで金欠エンドとか笑えない、だからキャビッツには悪いけど倒させてもらう。

なんて、意気込んだけど今私は、この球体の生物に囲まれ、体当たりを食らっている。

誰が「キャベツは切れる、つまりこのキャビッツも切れる」なんて考えたんだ、いや私だけどさ……。

とにかく、剣術をキャビッツにぶつけてみたけどこの生物、キャベツとは思えないほど軽くて硬かったのだ。

 

何か手はないか、とキャビッツの突進を喰らいつつ考えていると、一つある意味賭けの策が浮かんだ。私の選んだのは【セイバー】じゃなく【ウィッチセイバー】、魔法も使える剣士なんだ。

 

 

「一か八か……!」

 

私はギルドカウンターで言われたスキルの取得法──カードの欄から取得──をするために突進を受けつつカードを取り出して【スペル】を獲得した。

本来ならスキルポイントなるものが必要って聞いたけど何故か私はポイント無しでスキルを取得出来た。何故?

 

「お願い、喰らって───【ウィンドフレイム】!」

 

地面に手を付け、取得したスキルの名前を叫ぶ。

すると、私の足元に魔法陣のようなものが展開され、それが光った瞬間、少しの衝撃が私を襲った。

熱と風が私の周りに発生した。それと共に私の周りに群がっていたキャビッツの気配が全くしなくなった。思わずつぶっていた目を開くと私の周りにはキャビッツはいなくなり、何故か少し燃えたような跡だけが残っていた。

 

 

「うっそぉ……」

目の前の光景に思わず思考停止をし、再び目の前の状況を改めて見た私は少し気の抜けた声でそう呟いた。

ほんとにこれが自分の放った魔法の威力なのかと疑いたくなる、というか疑ってる。ありえないでしょ、初めて撃った魔法がこの威力って、どこぞの異世界でチートする魔術師じゃあるまいし。

なんて、色々と考えながら冒険者カードをよく見るとステータスやレベルが表示されていることに気がついた。

 

 

冒険者エル:Lv.10

筋力:B

俊敏:S+

魔力:EX+

幸運:A+

SP(スキルポイント):50

 

 

これのどこがチート無しなんだろう。チートって言われても仕方ないステータスじゃないですか。

エルフって種族が元々魔力高い可能性もあるけど、それにしても他のステータスも高いって完全にチートですよこれ。

と、誰にも届かない独り言を心の中で言っていると──

 

 

ズドン、と私の目視できる方向で突然大きな爆発が発生、私の──いや、エルフ的勘が「魔法ではない爆発」が起きたと感じている。

 

 

──待ちなさい。

嫌な予感がして爆発のあった方に行こうとした私はどこからともなく聞こえる声によって止められた。

──あんたじゃ()()は止められないわ。

誰ですか、なんて聞く必要も無い、この声は私をこの世界に転生させた女神様(シル)だ。こいつ直接脳内に……?

「というか、なんで止めるんですか」

──危険というか今のあなたじゃ敵わないからよ。

「それじゃあ、あの爆発は女神様の言う()()ってやつの起こした爆発ですか?」

──ええ、そしてアレは魔術的爆発じゃ……ない……って、あんた!?

「誰かが傷ついてるなら助けないと……だから行きます!」

──あんたねぇ……わかったわよ、向こうに着いたらサポートするわ。

 

 

などと女神様とのやり取りをしてから数分、私の目の前に広がったのは──

「何これ……」

元々、ここには村があったと思うけど、家は燃えて村人の気配がしない。

燃えて灰となった建物の残骸がそこらじゅうに飛散して至る所に血のような赤い液体が飛び散っている。

だけど、村人どころかこの村を襲ったと思われる《アレ》とやらの気配も全くしない。そして声も聞こえない。

つまり、既にここは襲われたあとでさらに村人はどこかへ──

 

「いい女見つけたぜぇ!」

「な……っ!?」

 

悲惨な状態の村の中を何かないかと探していると、瓦礫の中から突然緑の半裸巨体──多分これがゴブリン──がまるで変態のように私に飛びかかってきた。

瞬間的に私はおじさんに貰った剣を抜き、ゴブリンに刺した……けど、ゴブリンは「何したこいつ?」みたいな顔をしながら私の剣を軽々しく折った。

 

「ならこれだ……【ウィンドフレイム】!」

 

腹の肉のせいで物理が効かないと判断して物理が効かないなら魔力をぶつけようと私が今撃てる唯一の魔法を放ったけど──

「攻撃ってのはこうやるんだよ!」

ゴブリンには傷一つ付かず、そして私はゴブリンが持っていた棍棒のようなものが振り下ろされたことに気づかず、そのまま腹部を打たれて近くにあった瓦礫の山まで飛ばされた。

 

 

痛い。

いや、痛いってレベルじゃない。

強い衝撃は既に少し前に受けているけどこれはそんなレベルじゃない。

視界がはっきりしない。わかるのは私が飛ばされた瓦礫は崩れ、その破片が私の装備の薄いところに刺さり、頭や手足から血が流れているということ。

なんて、考えるのも辛くなってきた。出血量が酷いからだろう、いくらエルフと言え人間と同じ、私は──

 

 

──死にたくない、でしょ?

薄れ行く意識の中、私にそう話しかけてきたのは女神様。

死にたくない、誰が死にたくて生きるんだ。逃避行した挙句死のうとするやつがいるんだ。

私は自分の命は限界が来るまで使い果たすって決めてるんだ、まぁ1度死んだ身だけど……

人生の途中で命を投げ出すような愚かなやつらとは違う、今私は生きるために立ち上がらないといけない。

まだ、生きてる人達を守るために──

 

 

「ゴブリンごときに負けられない……」

 

私はそう呟き、ボロボロの体を無理やり動かし、立ち上がる。

立てる、手足も少しだけならまだ動く。

動くならまだ負けてない。

女神様──いや、()()、聞こえてるなら私があのゴブリンに一撃を入れた瞬間に回復魔法をかけてください。

 

 

──了解、あと、あんたにヒントよ

私の心の声を何気なく読んだシルはヒントと言うより攻撃方法を教えてくれた。

その手があったか、なんて思いながら私は私に興味をなくしているさっきのゴブリンに気づかれる前に近くに落ちている私の折れた剣を拾い、それを右手に持ってゴブリンに接近する。

足元がふらつくけど、これぐらいならゴブリンのスピードじゃ敵わないはず、そう信じてゴブリンの目の前に立つ。

 

 

「なんだ、まだ生きてんのか人間の娘」

「生憎、あんたの一撃じゃ死にはしない……死ぬのはあんたよ」

「へっ、やってみ──

「それじゃ、遠慮なく行かせてもらう──!」

 

私は右手に持った剣をゴブリンの頭上に投げ、ゴブリンがそれに気を取られた隙を狙って馬鹿みたいに開けている口目掛けて手を突っ込み、ゴブリンが動く前に【スペル】を言葉にした。

「外からが効かないなら中からやるのみ……【ウィンドフレイム】!」

「あ、があぁぁぁ!?」

 

 

正直気持ち悪い感触しかない場所に突っ込んだ手を魔法が発動したのを確認したところで抜き、まだ息をしてるゴブリンにさっき頭上に投げた剣を掴み、口内に剣を突き刺してもう一度ウィンドフレイムを発動した。

 

 

魔法の爆風によって起こった砂埃が消えると、ゴブリンは跡形もなく消え、私の周りには私の魔法とゴブリン達の襲撃によって悲惨なことになっている村の爪痕が広がっていた。

そして、願った通り私には回復の魔法がかけられていた。感謝しないと。

これで私の初めてのクエストは終わる、そんなキレイなフラグをたてていると

──あんた、今すぐそこから逃げなさい!

と、女神様が渡しに行ってきた。

その理由は聞くまでもなく()()()()()()を見ればわかった。

──さっきのゴブリンのボスとその手下のようなヤツらがざっと数えて100、いや……1000近くあんたを狙って進んできてる、それも猛スピードで。

「いやぁ、あれは爆破すると楽しそうですねぇ、あとは任せてください」

 

 

女神様の忠告を聞いていると、私の横にギルドで遭遇した少女が立っていた。

「さぁ、派手に飛ばすので爆風には気をつけてくださいね」

ゴブリンの群れが近づいてきている中、少女は落ち着いた様子で私にそう言ってきた。

何故か私は「危ないから逃げよう」なんて言葉を出さなかった、いや、魔法を使えるからか本能的に()()()()()()()()()()思ったのかもしれない。

 

 

「ほう、メスが2匹、片方が俺の仲間を潰してくれたんだろうな……2人とも俺らの糧にしてやるぜ」

と、遠くからそんな汚い声が聞こえる、ゴブリンの親玉がそう言っていると思うがなかなかに気持ち悪い。

「ふっ、我が聖なる大地に足を踏み入れた愚物が群を作って我が炎に焼かれに来るとは……いいだろう、全力の爆裂を与えてやろう!」

私がゴブリンの気持ち悪さに引いていると、私の少し前に立った少女はそう言った。

「我が名は《エーテル》、族内最強の魔術使いにてお前ら愚物を浄化する者。我が魔術食らうがいい!」

少女が名乗って手に持っている杖を構えたその時、少女、エーテルの杖を構えた方と足元に大きな魔法陣みたいなものが出現した。

 

 

「我が魔術は全てを破壊する至高最高の禁忌術──愚物どもを焼き払う漆黒の炎──【万物を燃やす神焔(ウェスタ・ウニヴェルズム)】!」

 

 

エーテルが詠唱のようなものを言い終えたその時、私たち、というか私を狙ってきたゴブリン達は突如として発生した大規模な爆発になんのリアクションも出来ずに巻き込まれ──

しばらく経って爆発により発生した砂埃が消えると、大きなクレーターみたいなのもが出来て、大量にいたゴブリンの気配は全く無かった。

 

 

「ふっ、我ながら本気で消し飛ばしてしまった──話したいことはありますがとりあえずこの村の人の安否を確かめて、それからギルドにでも行きましょう」

「あ、ありがとうございます、エーテルさん」

「エーテルでいいですよ。さ、行きましょう」

エーテルはそう言って村周辺の捜索を始めたけど……結局、生き残ってたのは村に住んでたらしい子供数人だけで、それ以外には見当たらなかった。

 

 

「さて、あの子達はギルドに預けてあなたはクエストの報酬をゴブリン討伐のおまけ付きで貰ったことですし、少し心残りはありますが今日は自己紹介だけしてお別れとしましょう。私はエーテル、ゴブリンを蹴散らすついでに名乗りましたが()内最強の魔術使いです、嘘偽りはありません。」

ギルドの端にある飲食スペースに座って色々と話して自己紹介を軽く終わらせた何故か自慢げなエーテルに私も転生したなんてことを言わずに自己紹介をした。

「なるほど、冒険者見習いですか……本当なら手伝ったりしたいところですが残念ながら今はお別れです」

「気をつかってくれてありがとう、私は大丈夫だよ」

「わかりました、慌ただしくて申し訳ないですが私はこれで。またいつかお会いすることを願ってます」

エーテルはそう言うと立ち上がってそのまま出口に歩いていった。

私は後ろ姿を見ながら感謝を心の中でしたあと、ギルドカウンターの人に宿屋みたいなものがないか尋ね、教えて貰った宿で一夜を過ごすことにした。

 

 

こうして、あまりにも地味な人生の終わりを迎えて女神様に転生させてもらった私、大咲美結は異世界でエルとなり、激闘を経て初日を終えた。

異世界で生きるなんて無謀なことがほんとにできるのか不安だったけど、そんな不安をかき消すような出来事が起きて私はこの世界での目標を見出していた。

現実世界で何も出来なかった分、この世界で私はエルフとして第2の人生を迎える。そして、さっきの村のような悲惨な状態が二度と生まれないように、この世界の人たちを私は守り、助けよう。

 

 

そんな目標を心に決めた私に、早くも危機が迫るなんて、この時は知る由も無かったけど、それはまた先の話───。


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