言の葉紡ぎの日常   作:惰眠貪り隊

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什漆ノ葉 各々の思い

 

 

 

 

 

~ ■ ☆ ■ ~

 

 

 

 

 

せっせと後を付け、そしてたどり着いた大蛇丸のアジト。薄暗い廊下の続くそこは、方向感覚が狂うようにでも出来ているのか、どこも同じような作りをしていてさながら迷路のようだ。

方向音痴でもなんでもないが、敵や木ノ葉の奴らと鉢合わせしても困るので感知をしつつ歩を進めているとナルトが目を覚まして「な、なんだってばよ、ここ何処だ、誰だ兄ちゃん!?」とか言ってヘロヘロと暴れだした。中途半端にしか治してねえから当たり前だ。だが、ここまで回復が早いのは出してくれなかったと拗ねた九尾の意趣返しか。あんにゃろう、地味な嫌がらせしやがる。

ガリガリと頭を掻いてから「まだ身体回復してねえんだから暴れんな。ちょっと黙ってろ。お前をとやかくしている場合じゃねえんだよ」と言って札をベチンと口に貼ってやった。簡単な命令である『自分で剥がす事が出来ない』と言う文を小難しく書いてあるだけなので、身体の自由は奪わないが声を出せないようにするモノ。動いてほしくないわけじゃないからな。

何が起こっているかわからないらしいナルトを担ぎ直し、暗い廊下を歩く。部屋の一つを拝借しようとして、一つ目の部屋は開けてすぐ閉めた。意味わかんないものがゴロゴロしていた。なんかシカとかキメラとかケルベロスみたいな犬とか。次の部屋は人の皮らしきモノがズラリ・・・。ナルトの顔が青褪めた。その次の部屋はベッドしか無かったので取り合えず此処でいいだろうと思い、ナルトを降ろして防音と気配絶ちの札をペタリと貼り付ける。これでいくらか騒いでも大丈夫だろう。ついでに札を口からベリッと剥がして肩を回す。ふぅ、流石の俺もひと一人担いで飛んだり跳ねたりすれば疲れる。荷物を降ろせてよかったよかった。

まぁ、そんなことはどうでもいいとして、始めましてからか。コイツと話すのは。大体記録(ログ)でしか見たことなかったな。面倒だがコミュニケーションは大切だ。と言う事で自己紹介をしよう。俺が拷問担当だった時も自己紹介から始めたっけ・・・。そんなことを思い出しながら口を開いた。

 

 

「・・・さて、と。自己紹介から始めるか。俺の名前は言霊シイロ。今はちょいと活動停止中の呪屋だ」

 

「言霊ってことは・・・リョクは、リョクはどうしたんだってばよ?」

 

「アイツ? あぁ、帰らせた。簡単に言えば死に掛けなんでなぁ」

 

「な、なんでリョクが死に掛けてるんだ・・・? なんで、オレ、ここに―――」

 

 

・・・あれ、コイツ憶えてねえのか。だが、事前に起きたことを思い出したみたいだな。いきなりシリアスな暗い顔になったナルトの顔を眺めた。俺が何も言わなかったのは他の木ノ葉三人組がやっと侵入したことを感じ取ったからだ。時間が無いみたいなので治療忍術を施して核心を突いてみる。時間がねえからゆっくりやってらんねえし。拷問だったら楽なんだけどなぁ。あー、面倒だ。

 

 

「お前さん、リョクに色々と言われたんだろ」

 

「・・・」

 

「ソレな、ウチの一族の宿命が関係してるんだわ」

 

「!!・・・それって、何なんだってばよ?」

 

「おいおい、敵に情報ねだってどうすんだよ。自分で探しな。あ~、一番近いのはうちはかな。あと千手一族の話を聞いてみるといいかも知れねえぜ」

 

 

アホ代表NA☆RU☆TOのためにヒントを出すと、がばっと勢いよく顔を上げた。ちょっと元の明るさが戻ったように見えた。あぁ、ガキは世話が焼けるもんだ。そう思いながらちゃっちゃと治療を終え、「これで話は終わりだ」と言ってから叩き出した。いきなりの事に驚いた顔をして尻餅を付いたナルトに「また、な」と手を振り、扉を閉めると同時に違う部屋に札で飛んだ。今頃、扉をもう一度開いたナルトが誰もいない部屋で困惑している頃だろう。事実「ど、どう言う事だってばよ~!!!」と言う叫びが遠い所で聞こえた。だが、一応治療は済ませたからな。後は知らん。他の奴らも来ていたし、後はなんとかしてサスケと会うだろう。俺の管轄外だから、帰る事にする。

・・・仕事終わったら賭博場にでも行こう。

 

 

 

 

 

~ ■ * ■ ~

 

 

 

 

 

やあ、久しぶり。こはくだよ。扉を開けて台所に行こうとしたら血塗れのリョクくんとボロボロのサソリさんが居てびっくりした。慌ててソファーにシーツを引いて、その上にリョク君を乗せた。サソリさんは一言断りをいれて隣のソファーへ。しかし、大広間にサソリさんがアジトにいるとなんか違和感があるなぁ・・・。まぁ、取り合えず出しておいた本を興味深そうに眺めているので、暇では無さそう。

まぁ、それよりもリョク君だ。酷い状態で内臓が痛んでいる部分もある。

 

 

「ゲホッ、ゲホ、ゴホッ」

 

「リョク君・・・。ちょっと辛いかもしれないけど、我慢してね」

 

 

そう声をかけてから、いつも白い肌が真っ青になったリョク君に絶えず医療忍術をかけ続け、言霊で強制的に治った為に歪んでしまった骨や内臓を元の正常な状態に治していく。それはとても辛くて激痛の伴う作業だ。だけど、今のうちにしなければ後々の生活に支障が出てしまうから、迅速に、かつ丁寧にそれを終えた。

全てを一度に終わらせるほどのチャクラはぼくには無いから、一番優先するべきことを終えた後、シイロさんが軽く塞いだ傷に包帯を巻いていく。出血してしまったら困るからね。特に酷かった部分はシイロさんが粗方治したので、あとはリョク君自身の回復力と、ぼくのチャクラが回復次第、定期的に医療忍術をかけ続けることかな。

式神を使ってリョク君を部屋に運んでいる間に、治療に使っていたソファーの上のシーツを片付ける。血塗れだし、コレを洗っても赤く残るし、何に使われてしまうかわからないから後でクレイさんに燃やしてもらおう。うん、そうしよう。

シーツの処理をして、一息ついたぼくにサソリさんが声をかけてきた。どうやらずっと観察してたみたいだ。・・・ぼくは見世物じゃないんだけどなぁ。

 

 

「・・・ここがお前等のアジトか」

 

「え、あぁ、そうだよ。ここがぼくらのアジト。出入りは完全に言霊だけしか出来ないようにルリさんが作ったみたい」

 

 

そう言って、暗に「ここからは逃げられないよ」と告げる。だけどサソリさんの表情は変わらず、むしろどこか感心したとでもいいたげな顔をした。どうやら逃げる気は全く無く、不思議に思ったから聞いたと言った表情だった。

・・・なんとなくだけど、暁にいたのは利害の一致だけなのかなと思った。それだけならばここに居てもギスギスした雰囲気を出さないのにも納得できるのだけど。一応捕まってるわけだから、警戒ぐらいしてもいいと思うんだ。

と、そう考えていた所でクレイさんの部屋の扉が開いた。今日は徹夜したらしく、元々薄っすらとあった隈がもっと濃くなってしまった目つきの悪い顔。ぼくに「・・・おはよう」とぼーっとした表情をしながら挨拶をして扉から出てくると、ふらふらと水道(地下水をくみ上げている・・・らしい)のある台所へと消えて行った。どうやらサソリさんには気が付いていないようだ。そして水を持って来た時にピタリと止まった。隣に居るのが言霊の人で無い事に気が付いたようだ。パチパチと目を瞬かせ、目を擦り、サソリさんが幻覚でないことがわかったのか指差す。

 

 

「・・・おい、こはく」

 

「ぼくが連れて来た訳じゃないよ。文句ならシイロさんに言ってね」

 

「・・・そう言う訳だ」

 

「・・・」

 

 

なんだかニヤっと笑ったサソリさんとクレイさんの間には剣呑な空気が流れた。クレイさんは同じ傀儡師としてあまり良く思っていないらしい。自然の(ことわり)を無視したサソリさんの人傀儡はクレイさんの芸術の形と全然違うものね。造形の無駄の無さは評価していたけれど、そこは絶対に許せないようだった。

ふと、クレイさんがサソリさんの今の状態に気が付いた。右腕と左足は砕けて、左腕と右足が切り取られているしそこら中が穴が開いたりしてボロボロだ。徹夜明けクレイさんの眉間の皺がもっと深くなっていく。多分、傀儡を大切にしているクレイさんからすれば見るに耐えないんだろう。だからこそ、勢いよく立ち上がって「借りるぞ」と短く言ってサソリさんを担ぐとさっさと自室へと引っ込んだ。きっと試作した人の形の傀儡がいくつかあるからそれをくれるのだろう。

そんな二人を見送って、ぼくは立ち上がってリョク君の部屋へと向かう。リョク君はきっちりしてるので新品で着てないモノはタンスの一番上の段に入れてあるのだ。そんな一段目からマントとシャツとズボンを取り出し、クレイさんの部屋へと向かった。サソリさんとリョク君は体格とか身長とか同じ位だから丁度いいかなと思ったんだ。クレイさんは身長があるし、ボクは少し小さいし、シイロさんは部屋に入っちゃいけないって言われてるからね。

ぱぱっとまとめてクレイさんの部屋へ向かうとノックをする。応答があったので開いて部屋の中を覗いた。

 

 

「もしよかったら使ってない服があるけど、どうする?」

 

「・・・助かる」

 

「流石にそのボロボロの服じゃ、大変だしね」

 

 

にっこり笑って一式をクレイさんに手渡す。部屋の中には身体を動かして不備が無いか確かめているサソリさんと目が空洞になった元サソリさんの傀儡が転がっていた。暗がりに転がっていたら絶対怖い。悲鳴上げそうなくらいホラーだ。

まあそれはさて置き、流石はクレイさん。サソリさんの本体と傀儡を連結する構造は見ただけでわかったらしい。人傀儡は創ることはしないが、構造を真似るぐらいなら簡単だ、と以前言っていた覚えがある。天才の言う事は違うなぁ。

じゃあね、と一言告げてからリョク君の治療に戻ることにした。・・・早くルリさんとシイロさん帰ってこないかなぁ。ぼくだけだと辛いのだけれど。

ぐるぐると肩を回してから伸びをした。背中が伸びて少しだけ疲労が取れた気がする。

 

 

「・・・さて、がんばりますか!」

 

 

パチンと頬を叩いて気合を入れる。やる気は万全。だから、ぼくはぼくの出来る事をするだけ。

チャクラを練って、リョク君に向き合うと医療忍術を発動させる。彼が死んでは計画を進めることは出来ない。それは避けなきゃいけないんだ。

言霊の悲願は何時叶うのだろう。せめて次の言霊にこの役目を伝えないよう、ぼくも頑張る。我愛羅やテマリ姉、カン兄に辛い思いはさせたくない。平和な世のために、君も死なないでね? リョク君。

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。

待っていただいている方に申し訳ないですが、もうすこしお付き合いください。
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