サソリサン・・・こんなんでよかったんだろうか。
什捌ノ葉 操り人形
~ ■ * ■ ~
「さて、第三回言霊会議、始めるわよ! 議題は言わずももがな、シイロが拾ってきたこのサソリ!」
「おい、人を物扱いしてんじゃねぇよ」
全員が揃った明くる日、全員の体調が整ってから始まったサソリさんの処遇を話し合う会議。まぁ、最初からここにおいておくことは決まりきっていたのだけれど、ぼくたちの連携の秘密がばれないための体裁で執り行われている。言霊の秘密、
そんな議題のサソリさんであるが何を考えているかわからない笑みで知っている情報を喋った後、クレイさんの部屋に引っ込んで行った。どうやら同じ職人同士、ついでに何も聞かない喋らないクレイさんの部屋がいいらしい。まぁ、見ていてもずっと傀儡のパーツ作りしかしてないから安心と言えば安心だ。クレイさんはパーツを削る小刀でどうにかなるような人ではないし。
・・・さて、今の状態を纏めると、リョク君はベッドから動けない状態。ルリさんは工作で忙しい。シイロさんもしかり。クレイさんはサソリさんをみていないといけない。ぼくはやっと動けるようになった。だからこれから本格的に動くことになるだろう。
きっと少しぐらいの活動であれば大丈夫。暁は顔を認識している程度と言う話しだったし、顔を隠して置いて素早く行動すれば鉢合わせなんてこと早々ないしねぇ。会ったとしても逃げれば大丈夫だろうと思う。
・・・そう思っていた数時間前の自分を殴りたい。ちょっと買出しに出かけた途中のお寺前で黒地に赤い雲の模様が入ったコート二人組みを見かけました。ぼくの着ているいつものマントを見て、寄ってきたと思えば声をかけられた。まぁ、すぐ逃げるけどね!
「なぁ、アンt「スミマセンが人違いです。はい。さよなら」ってまだ何もいってねェ!」
「変な格好をした人に話しかけられたらそう答えろって教えられたんで! じゃ」
「まてェゴルァ!!」
そうして始まった命がけの追いかけっこ。すぐ終わると思ってたらそんな早く終わるわけがなかった。相手はS級犯罪者だもの、そんなに簡単に振り切れるわけがないのにね。ぼくってバカだ。
飛んだり跳ねたりして攻撃を避ける度に破壊されていく木々、出動するお坊さん、ばったばったと薙ぎ倒してやってくる暁の人、空飛ぶお坊さん・・・。白目を向いたお坊さんを足蹴にして逃げながら謝っておく。ごめんなさい、火の寺の人たち。でもありがとう。凄く時間稼ぎにはなったよ。
暁の人が持った大鎌での薙ぎ払いからのコンビネーションを避けつつも状況と敵について纏めていく。「ゲハハハハァ!」と嗤いながら追いかけてくるオールバックで三連の鎌をブンブン振り回す見た目も言動も危険な人は飛段で、頭巾を被っていて、ちょっと人離れした外見になってしまった人は角都である。
まず、飛段はジャシン教という宗教の教徒で、その教えに従って動いている。教えと言うのは『汝、隣人を殺戮せよ』というちょっと意味のわからないところがある教えだ。確か、相手の血液を摂取し、自分の血液で書いた陣の中で自分を傷つけると相手にも同じ怪我が与えられる、と言う術を使えるはず。接近戦だったらぼくは押し負けてしまうので要注意だ。
次に、角都。彼は初代火影の時代から存在している忍で、禁術で得た五つの心臓を持つ厄介な人である。火遁、水遁、雷遁、土遁、風遁・・・貰い受けた心臓によって全ての形質を使えるのでこれも厄介。頭に血が上りやすく、イラッとすると殺したくなるのも
と、嫌な感じがしたので地面を蹴って木の枝を掴み、一回転することで勢いを消す。そうして木の上に降り立ってみると逃げ道を塞ぐように仮面をつけたバケモノがそこに居た。・・・たとえるならば黒い糸こんにゃくとかが近いかもしれない。
「なぁー、角都ぅ。アレってコハクとか言う奴であってるよなぁ?」
「・・・あっているかは捕まえてから考えろ」
「へいへい。そうだよなァ、捕まえりゃどうとでも出来るよなぁ!!!」
会話が終わるか終わらないかの内にビュウン、と投げられた三連の鎌が仰け反って避けたぼくの鼻先を通っていく。戻ってくる鎌の音を感じながらぼくは投げたワイヤーを引いた。あらかじめ遠い所に引っ掛けておいたワイヤーだが、その前に角都が仕掛けてくることはわかりきっている。だからこそ先日もらったワイヤー巻取り機が活躍するわけだ。袖に仕込んだリモコンのボタンを押すと遠くの方でモーター音が聞こえて腹部に衝撃が走る。グエ、ちょっと吐きそう・・・。
そんなぼくを追いかけるようにガバっと開いた仮面の口から炎が迸った。迫り来るその炎の壁との追いかけっこは少しトラウマになりそうだが、そこで、ぼくもついこの間まで鍛錬した成果をみせようと印を組んだ。素早く、正確に組んで、その術の名を紡ぐ。
「インストール水遁・
ぼくが通り過ぎた後の空中に薄墨色の波が広がって、蛇口をいきなり捻ったかのように勢いよく同じ色の墨が噴き出した。大洪水のような風景を苦笑しながら眺める。その薄墨の壁を突き破ってきた二つの塊、飛段と角都へとワイヤーを引っ掛けた木にぶら下がったままシイロさん印の札を投げつけた。札はまるで吸い込まれるように二人へと向かっていく。そこでぼくは「発動!」とキーワードを言った。薄墨によって視界を遮られ、札が見えなかった二人の服へと張り付き、札は服へ溶けるように消えてしまう。だが、それがあの札の効果である。
「気を付け!」
大声での号令。それと共にビビッと電流が走ったように痙攣した二人が素早い動きで号令通りに動く。・・・試作品、成功したよシイロさん。ぼくは満足そうに一人頷いた。どうやら動こうとしても動けないのは数分程度らしいが、今はそれで十分だ。
目をシロクロさせている二人に手を振って「じゃあ、またね!」と声をかけるとぼくは砂隠れの術でその場を後にした。あんな人たちを放っておけないけれど、倒すほどに暇はない。ならば制約でもかけてしまえばいいと言うことだ。効果は『他人を殺せない事』と『ぼくらの言う事を聞かなければならないと言う事』の二つである。我ながらいい仕事をしたなぁ、と思いながらその場を後にしたのだった。あの人たち放っておいたら大変だ。一人はお金大好きな限定的不死で一人は狂信者で不死なんて、最凶最悪なツーマンセルだと思う。対処法があれば簡単だし、時間は掛かるけど、ぼくらで倒せるが、あんまり目立ちたくない今はやりたくない。
そんなことは後回しにして、お金好きならうちのシイロさんも負けていないよね。あの人、賭け事だけは負け無しだし。
~ ■ ☆ ■ ~
「へくちっ」
うう、誰かが俺の噂をしてやがるな。油断した。ズビリと鼻を啜って身震いすると仕事着の上から羽織を纏った姿で木ノ葉の里を歩く。里に侵入は勿論、情報集めは簡単すぎて欠伸が出る。呪屋なんてこう言う事を毎日のようにやってるようなもんだったからな。上忍騙せねェでどう生き残んだよ。バレた途端に死亡するわ。S級撒けなくてどうやって買い物いくんだよ。俺の通う店行くだけで三千回ぐらい死んでるぞ。
ソレはさて置き、要約すると暁のメンバーが暴れて火の寺に大損害があったらしく、今し方坊さんが何人か慌しく火影邸へと入っていくところを見たと酒を一緒に飲んだオッサンが言っていた。ちなみに初対面である。いやー、酒は偉大だね。凄く口が軽くなる。俺はまだまだイケる口だが。・・・それにしても、暁だけの御活躍としか知らされていないというのが引っかかる。随分とこはくがやらかしたはずなんだがなぁ。
そういや、なにやら付けられている感じがしたのでさっさと離脱することにした。付けてた奴らが見たのは路地裏の行き止まりに吹く
「お前、守鶴とコンビ組んでから気が緩んでるぞ。砂にいたときみたいに守ってもらえるわけじゃねえのはわかってんだろう。あんな術の多用は命取りだからな。・・・俺とは違ってこはくが死んだら、悲しむ奴は沢山いるんだから、気をつけねえと駄目じゃねえか。」
「・・・うん、ごめんなさい」
「わかればよし。おら、帰んぞ。擦り傷とかの手当てしにな」
「そ、そんなの大丈夫だよ! ほ、ほら、血も止まったし」
「駄目に決まってんだろ。着物にも血が付くだろうが。血は洗っても落ち辛いんだ。さっさといくぞ」
大慌てのこはくを担ぐと片手で印を組んで飛ぶ。こはくの抗議の声なんぞ聞こえない、聞こえない。こはくが暴れてもそんなに痛くないのは、コイツが優しすぎるからだろう。どうせ俺が疲れてると思って気遣っているんだ。本当に忍に向いてねえ奴だとは思う。
さて、飛んできたいつもの広間には誰も居なかった。どうせ自分の里にでも赴いているか、材料集めの旅に出てるか、寝てるのだろう。暴れるこはくを適当なソファーに置いてちゃっちゃか手当てをしてしまう。自分以外に手当てをするのはあまり得意ではなかったが、この数週間に慣れてしまっている自分がいる。・・・慣れって怖ぇわ。数週間前ではありえないほどのきっちりした包帯の巻き方が目の前にあった。
「・・・シイロさん、なんか格段に腕上がってるよね。元々手先が器用なんだ」
「好きでなったわけじゃねえけどな」
自分にやるならば適当でもいいのだが、他人だとどうしても金を取る取らないが入ってきてしまうので、丁寧になるのが俺の悪いクセだ。金を取らない相手にでもそうなる。もうこの考えは染み付いて取れねえんだと思う。生まれが生まれなんでしょうがないか。
手当てが終わり、立ち上がった俺にこはくは笑顔で礼を言ったが、礼を言われることでもないと思いつつ、手を振ることで答えて木ノ葉の賭博場で稼いだ金を数えるために自分の部屋に引っ込むことにした。眠いのもある。が、自分の金があるところにいた方が落ち着くのだ。人間と違って金は裏切らないから気が楽と言うだけだが。
部屋に入ると視界を埋め尽くす金庫やアタッシュケースの山がそこにある。前帰って来た時と寸分違わぬ景色に安堵しつつ、俺は追加を置いて開いた。中には札束がズラリ。・・・今日は少ないがしかたない。時間も無かったしなぁ。賭博場の奴には引きつった顔をされたが少なすぎただろうか。もっと短時間で稼げるようにならねば。そう思いながらいつものように札を数えながら偽札が無いかチェックしていく。あったらあったで賭博場にクレームつけてやるがな。
パラパラパラ、と見ているとノックと声が聞こえてきた。
「・・・入るぞ」
「・・・・・・お? サソリか。入れ入れ」
入ってきたサソリは入り口で止まる。棚は全て金庫、床には踏み場も無いほどのアタッシュケースが積まれており、辛うじて見える机には帳簿の山とソロバン・・・。まあ、止まってもしかたねえとは思う。普通の奴ならここは人の部屋かと疑うだろうな。唖然としているサソリの顔をみて口を開く。「ちなみに金庫とケースは貰い物で、金は全部俺のもんな。あとコレは一部だ」と言うと少しだけ引きつったように見える。人形なんで変わった訳ねぇけど。気を取り直してサソリが口を開くのを横目で眺めながら金を数え続ける。もう偽札は見なくてもわかる。手先だけでわかるのに目を離さないのは、コレだけには騙されたくないという思いがあるからであった。
「まぁいい。なんでオレを助けた」
「ん? なんでかな。取り合えずアンタなら、仲間になってもいいかと思って。クレイも気にしてたし」
「・・・」
不服そうな顔(俺の主観だが)をしたままのサソリ。どうやら俺の答えはサソリの望んでいたものではなかったらしい。まぁ、俺は心を読めるような深い付き合いしてねえし、俺の中の答えはそれだけだ。だから別にそれ以上の言葉を重ねるつもりはないね。
そんなこんなで金を数えて確認も済ませた俺はアタッシュケースに仕舞うと鍵をかける。その鍵を鍵束の一つに混ぜた。・・・ん? どれがどの鍵かわからなくならないか? 記憶力はいい方なんでな。わからなくなることはない。そもそも忘れても開けてけばわかるだろ。時間はかかるがな。
さて、とアタッシュケースの上に座布団を並べ、寝る場所を作る。そしてサソリに「寝るわ」と言って横になった。徹夜を続けたためか、すぐに瞼が落ちて意識が遠退いたのだった。
~ □ ☽ □ ~
すぐに寝てしまったソイツ・・・シイロはよくわからない男だった。噂に聞いていたソイツだと守銭奴で冷徹、多額の金を積めば100%依頼を遂行する奴だという話だったが、オレを助けた時や話している様子を見る限りは大分違っていた。・・・守銭奴なのは違わなかったけどな。
情報と違っていたのは他の奴らもだった。全員が全員のほほんとしていて、暁の情報とは全く違う。だが、戦闘になれば変わる。敵に回したら怖い、と言うのはこいつらのことだったのだろう。この言霊と言う一族の底は計り知れない。そう思うようになったのはデイダラもこの一族に引き入れられていた、というのを聞いたからだ。そんな素振りは見えなかったし、いつもようにクソ生意気なことばかり言っていた。・・・その相手に悟られずに記憶を書き換えるという術は印なしで出来るらしいから、このオレですら恐ろしいと思う。オレもそのような術を作ったが面倒だし、たまに壊れるのでどうでもいい部下に使っていた。それを軽い副作用で出来るというのだから是非とも盗みたいものだ。
札束に埋もれるような部屋を抜け出し、与えられた部屋へと帰る。監視と言う名目でクレイという奴と共に居るが、ソイツはソイツでおかしな奴だった。
思い出したように視線を向けたりするが、基本は傀儡作りに没頭しているために飯の時間を忘れる。声を掛けても気が付かないありさまなのだから、監視が出来ているかどうかすら怪しいものだ。だがしかし、完全に油断しているわけでもない。オレが動けば視線を向けるし、刃物を持てば迎撃できるように身構える。その隙のなさは少し感嘆するぐらいには様になっていた。
聞けば何かしらの武術をやっていたというのだから驚きだ。傀儡師であるにも関わらず、武術までそれなりに鍛えられるというのはあまり聞いたことが無い。只でさえチャクラ糸という繊細なコントロールを必要とするモノを扱っているのだ。派手なことをしようとすればボロが出る。だからこそ傀儡師は肉弾戦が弱いというセオリーが出来た。
・・・だからこそ、かもしれない。コイツは自分なりに欠点を補おうとした結果なのだ。オレがヒルコを作ったように、接近戦を自身の肉体で戦い抜く術を模索したソレは、オレに無い発想で新しいと感じた。そう、この場所は新しいモノばかりだった。
「・・・どうした」
「いや。ココに居るのも悪くない・・・そう思っただけだ」
「・・・そうか」
ちらりと顔を上げたクレイの問いに答えると、クレイはいつもと同じように短く返答して傀儡の調整へと意識を沈めていった。・・・オレも新しいモノを作ろう。そう思い立つと様々なアイディアがオレの脳内を埋め尽くしていく。結局はオレも、コイツのことを言えない立場にあるのだ。そう思いながら小刀を木片に滑らせるのだった。
オリジナル忍術
インストール水遁・
目潰し兼マーキング。いきなり水面に突っ込まれたかのようになるため接近戦を得意とする忍の天敵である。
札遊び・
張り付いた瞬間に相手のチャクラを勝手に使用してノリのようにくっつくと電気信号を誤魔化して指示の通りに動くことを強要する。案外悪質な札であるので最終手段の“一つ”として普段は封印される。