と言うことでお送りします。
我愛羅視点が出てきますが詳しくふれないでくださいぃい~
ぼくの親は貧しかった。行商人だったからね。人手も足りないし、信頼も無いし、そこでぼくが役立たずだったからイライラすることばかりだったんだろう。
だから、ぼくに当たった。
いつも殴られたり蹴られたりするのは当たり前だったし、酷いときは一週間ご飯をもらうことすらできなかった。とは言っても、いつも貰うものが残り物ばかりだったけどね。
ぼくはいつもフラフラしていたけど、親には敬語で話していたし、家事は全部やらなきゃいけない。だから笑顔を浮かべて親の顔色を窺って過ごすのが日常だったね。
飯が不味いと殴られて、売り上げが少ないと蹴られて、存在が邪魔と物を投げられた。今思えば理不尽だったけど、その頃は全部ぼくが悪いんだって自分を責めていたよ。
その頃のぼくは幸せを知らなかったから、これが当たり前だと思っていた。
・・・でも、そんな日々も長くは続かなかった。
その時は親と共に砂漠を越えようとしていたんだ。なぜか機嫌がいい父親と一緒に。
砂漠の周りを歩いていけば、なぜか旅団風のテントの前で男の人が待っていた。
ぼくは作り笑いを浮かべる父親に腕を掴まれて、そのキャラバンの人に手渡された。
これだけは聞こえた。
「で、本当にいいんだな?」
「あぁ! 家事も出来るし、女だからなぁ。育てばいい値で売れるだろうよ。そんときは・・・よろしく頼むぜ?」
「わかってるよ。半分な」
・・・・ぼくは父親に売られたってこと。
気が付いたら、ぼくは父親の手を振りほどいて砂漠へと走り出していた。もう、何もかもが嫌だった。
だから、砂漠の中を走って走って走って・・・兎に角、逃げたかったんだ。
自分を売った親から、人買いから、自分の置かれた状況から。
ぼくが女だから売られるのか。そう思った。
母が一度だけ呼んだ名前を、父には一度も呼んでもらっていなかったのに・・・・。
父に認めてもらえなかった。“ぼく”としてみてもらえなかった。
ぼくは・・・一体何のために生まれたのだろうか?
ワカラナイ。ワカラナイ。ワカラナイ・・・・。
「・・・っ、うぅ、っく」
考えているうちに
呼吸が上手くできなくなって、それでも走って泣いた。砂の上は上手くバランスが取れなくて、何度も転んで擦り傷を作った。ジクジクとした傷の痛みでやっと止まってみる。
追いかけてくる足音は、どこにもなかった。
でも、それでも、何かに追われているような気がしてぼくは走り出す。何かしていないと辛かったんだ。
その内に疲れ果てて動けなくなった。今思えば脱水症状も起きていたんだと思う。
倒れこんで、上手く息が吸えなくなった。段々暗くなっていく視界に“死”の恐怖を覚えた。
だけど、同時にこう思ったんだ。
“ボクはイラナイんだ。だから・・・死んでも、いいんじゃないか”
~ ■ * ■ ~
「・・・まぁ、その後砂の上忍さんに拾われて病院に運ばれた。そこでヤシャマルさんと出会って、我愛羅と出会って、友達が出来て・・・そしてこうして忍者になった。
今は幸せだよ? でも、どこかで不安なんだ。男の子で居れば友達でいられる。女の子ってばれたらその関係も全部崩れてしまうんじゃないかってね」
「―――――こはく」
「う、うわわ!?」
苦笑しながら自分の愚かさを語っていると、いきなり名前を呼ばれて抱き締められた。
何事かと慌てていると、耳元でテマリさんが呟き始めた。
「・・・辛かっただろう。そんなに不安を抱えていて・・・。もう、抱え込まなくていいんだよ?」
「テ、マリさん・・・」
どこまでも優しいその声に、ぼくは込み上げてくる感情を抑えられなかった。視界がゆるゆると滲んでいって見えなくなる。頬に、雫が伝っていった。
ボロボロと零れ落ちて行くそれは、あの日流した以来の涙だった。
何も言わずにテマリさんはぼくを抱き締めてくれた。こうして優しく声をかけてくれた。
それがぼくには何よりも嬉しかったんだ。
「・・・ありがとう。テマリさん」
「テマリでいいよ! こっちは大切なことを聞かせてもらったんだし」
「じゃあ・・・テマリ姉でいい?」
「うん! それでいい」
涙を拭いて感謝する。テマリ姉は綺麗な笑顔を浮かべて頭を撫でてくれた。
・・・うん、もう大丈夫だ。笑える。ぼくは精一杯の笑顔を浮かべてテマリ姉を見る。
もう大丈夫だよって意味と、ありがとうって感謝の意味を込めて、ぼくは笑うんだ。
いつか、我愛羅やカンクロウさんにも、話せたらいいな。
一番カンクロウさんには申し訳ないことをしてしまっている。ぼく、あれから男性がニガテで・・・。
バキ上忍とかカカシ上忍とかも仕事だから割り切っているが、それでもニガテである。だからあまり一緒にいたくない。
薬箱先輩とかは別。優しいもん。あと、我愛羅は別格。一番目の友達だからね。
「テマリ姉。そう言えばどんな用事で来たの?」
「・・・あ! そうだ。我愛羅の奴、様子がおかしいから、こはくに相談しようと思ったんだ。・・・いつもすまないな」
「友達の事だもん。大丈夫だよ」
ちょっと申し訳なさそうな顔になったテマリ姉に笑いかける。別に我愛羅の、“トモダチ”の事だもん。全然辛くないんだけど、テマリ姉は怖いんだよね。
確かに砂は防ぎようの無い物だから、怖いよ? でも、我愛羅の中の物や力で判断するのは間違っていると思う。・・・折角、
「じゃあ、ぼくは我愛羅のところに行くよ。丁度その用意をしていたところだから」とテマリ姉に言って立ち上がる。テマリ姉とカンクロウさんにはどこかに行ってもらうことにした。今は満月に向かっているところだから我愛羅もぼくと二人の方が楽だと思うし。
テマリ姉と一緒に部屋を出て、ぼくは部屋に鍵を掛けた。
よく休むようにテマリ姉に言って屋根に飛び乗る。そして我愛羅のチャクラの元へと駆け出した。
すぐに見つかった。なぜなら屋根の上で座っていたから。
傍に降り立つと我愛羅は顔を上げた。ぼんやりとしている事から寝ていない顔だということがわかった。
「我愛羅、静かな所に行こうよ。その方が気が楽でしょ?」
「・・・あぁ」
ぼくが手を差し出せば我愛羅は手を取ってくれた。感じるのは温かさ。
・・・我愛羅だって、人なのにね・・・。
彼をバケモノと呼ぶ人がいなくなればいいのにと思う。そうすればみんな幸せでいられるのに、って。
でもそれを言うことはない。だってそれは叶わないことだから。
我愛羅と並んでぼくは屋根や木の枝を蹴っていく。そうして辿り着いたのは木が立ち並ぶ林。それよりも先は崖だ。
木の間から降り注ぐ柔らかな光にぼくは頬を緩ませた。砂の里ではこんな緑が無いからね。
丁度いい木陰に腰を下ろして、ぼくは持ってきたものを隣に座った我愛羅に渡す。食べる余裕がなさそうだからおにぎりを作ってきたんだ。
ぼくからの物には毒は入らないからね。安心して食べれる。
「はい、おにぎり。お昼食べてなさそうだったから」
「・・・・ありがとう」
「別にいいんだ。ぼくも一緒に食べようと思ってたから」
ぱくりと同じ物を取り出して食べる。我愛羅も同じように食べる。
我愛羅が三つ食べ終わる頃を見計らって水筒を取り出して渡した。ぼくも同じように飲む。
無言の時間はそんなに嫌いじゃない。だって、静かにいられるから。・・・だれも悲しまないしね。
そっと我愛羅の表情を窺えば、少し落ち着いているのがわかった。あぁ、よかった。これで一安心だ。
安堵の微笑を浮かべていると我愛羅が呟いた。
「・・・気を使わせてしまったな。すまない」
「謝らなくていいよ。友達でしょ? それに、ぼくが好きでやったことだし」
こう言う時間も好きだしね! と言って笑えば我愛羅も微笑んでくれた。うん、笑えるようになれば少し余裕が戻ってきた印。ぼくも嬉しいな。
その後は他愛も無い話をした。また屋台の砂肝を食べたいとか、修行の内容はどんなものがいいかとか。
ぼくは“砂の鎧”を常に纏ってみるのはどうかと提案した。そうすれば我愛羅の欠点であるスタミナの無さなども補えるのではないかという思い付きだ。
試してみる、との返答だったので結構いい思い付きだったのではないだろうか。
「ぼくも手伝うよ」と言ったけど、我愛羅の返答が帰って来なかった。何事かと思って横を見ようとすると、肩に寄りかかってくる気配がした。耳元でスヤスヤと寝息が聞こえる。
・・・どうやら限界だったようだ。ゆっくりと我愛羅の頭を膝に移動させ、一息つく。
チャクラを探れば辺りには誰も居ない。ただ、小さな鳥のチャクラや風の囁きが聞こえ来るだけだ。日差しは柔らかくて暖かい空気を作り出している。なんて居心地がいいんだろうか。
我愛羅の少し硬めの髪を撫でながら・・・ふと撫でている事に気が付く。あれ? いつから撫でていたんだろうか? まったく無意識だった。どうやら自分でも気が付かないぐらいに動揺していたらしい。だから安心できる行動――――例えば猫を撫でたりとか――――をしてしまったようだった。
そんな自分が可笑しくて、クスッと笑う。やっぱり過去の話と言うのはぼくにとってトラウマになっているんだなぁ。昔から『捨てられたくない』とか思うのはここからだろう。
ゆっくり目を閉じる。優しい草の匂いや土の匂いは安心できて、眠りに誘う。あまり眠れて居なかったのもあって、ぼくはそのまま意識を手放したのだった。
~ □ ☽ □ ~
ふと目を醒ます。いつの間にか眠ってしまったようだ。
ゆっくりと身を起こしてみた。友達であるこはくは膝を貸してくれていた。だが、その間に寝てしまったのだろう。少し赤い目元のまま安らかな表情で寝ている。
蜂蜜のような柔らかい髪やその白い肌は、どこか儚くて脆い印象を受ける。友達は昔から華奢だった。
彼・・・いや
辛いのならばもう笑わなくても、隠さなくてもいい。そう言いたかった。友達の辛い所を見たくは無い。だが、それを口に出したのなら彼女はもっと隠すようになることぐらいわかったから、言えなかった。
過去の事や女であることを隠すのだって、こはくが抱えているものの一つだ。だけど、こはくが言い出すまでは気が付かないふりをし続けることを決めていた。彼女の心の準備が整うまでは、何も言わない。
オレが辛い時にいつでも手を差し伸べてくれるただ一人の“友達”。昔のままの笑顔で、昔のままの表情でそこに居てくれる。
・・・・思えばオレもこはくも、変わるのが怖いと言うだけなのかも知れない。
今は頭の中で響く声は無い。あの、憎悪の叫びを上げる一尾が押し黙るのはこはくの傍だけだ。
スヤスヤと眠るこはくの頭を、そっと膝に乗せる。眠れないオレに彼女がしてくれたように、恐る恐る蜂蜜色の髪を撫でた。自分の髪とは違う、柔らかい感触がする。一本一本が細くてつやつやと輝いていた。
なるほど、と納得する。こはくが『こうやっていると流れる時間が優しくて、とっても好きなんだ』と言っていた意味がわかった。確かに気持ちが落ち着いていくのがわかる。
砂の里とは違う緑豊かな木陰で、こうしているのも悪くない。柔らかい感触は癖になるぐらい心地がいい。
穏やかな時間と言うのはオレも好きだった。二人だけで読書をする時や、何も話さずに座っているだけでも、時間を共有できるのは嬉しかった。
―――――己の中に居るバケモノを忘れられたから。
こはくと離れれば必ず一尾が叫び始めた。『殺せ!』『壊せ!』とオレの頭の中で暴れ回った。
気が付けば辺りが血塗れになり、その血の池に浮ぶ幾つもの骸が恐怖を顔に貼り付けて浮んでいた。
こんなときにはいつも心の中は乾いて、罅割れるような痛みが走った。
だが、そんなに痛んでもどこかで『もっと血を見たい』と嗤っている自分がいると気が付いた時、オレは思った。
あぁ、やっぱりオレは――――“バケモノ”でしかないのだ、と。
こはくの髪から手を放し、オレはその手を眺める。表面上は綺麗でも・・・この手は、血に濡れていた。
掌を握り締めて、オレは目を閉じる。すぐに耳に響くのはあの時の夜叉丸の声。
『私は心のどこかでアナタを・・・恨んでいた』
『アナタは我を愛する修羅・・・。自分だけを愛しなさい。そして、自分のために戦いなさい』
『アナタは愛されてなどいなかった・・・!』
あの時の絶望が蘇る。心の奥底がギリリと痛みを発していた。
でも、すぐにこはくの声が聞こえた。
『殺されても、ぼくはいいよ』
『君は、一人じゃないってこと。少なくともぼくがいるよ』
『言霊こはくの・・・友達になってくれますか?』
いつでもこはくはオレを助けてくれた。一人は嫌だと世界の全てに憎しみを抱いていたオレに『一人ではない』と言ってくれた。
感謝をしてもしきれないぐらいの恩が彼女にはある。少しでも返したいとは思う。
・・・・だが、オレは壊すことしか出来ないから。
だから、せめて彼女の隣にいよう。無理をしているこはくに気が付けるように。
こはくが望むならいつまでも友達のままでいよう。安心できる場所でいられるように。
こはく→我愛羅(友愛&親愛)
我愛羅→こはく(友愛と・・・?)
と言うことでしました、伍話目。
恋愛に発展するかは二人次第!
我愛羅は自分の気持ちに気が付いているのか!?